後藤さんのこと (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.54
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本棚登録 : 907
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310622

作品紹介・あらすじ

さまざまな「後藤さん」についての考察が、やがて宇宙創成の秘密にいたる四色刷の表題作ほか、百にもおよぶ断片でつづられるあまりにも壮大で、かつあっけない銀河帝国興亡史「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」、そしてボーイ・ミーツ・ガール+時間SFの最新型モデル「墓標天球」など、わけのわからなさがやがて圧倒的な読書の快楽を導く、さまざまな媒体で書かれた全六篇+αを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 職場に後藤さんがいるので、彼には悟られないように気を付けて読みました。

  • 単行本のままの装丁で文庫になるのかな?となんとなく思っていたら、こうきたか!な、思い切った装丁の短編集。後藤さん(と思われる)、こんなにイケメンだったのか!と、思わず手に取った1冊。

    開口一番、しかもしゃらっと「刺すね」とのたまう「後藤さん」の登場する表題作が、すでに可笑しくて怪しすぎる!人間?そうじゃないみたいな気もするし?と、この世にフツーに…というかあまねく存在するという、しかも帽子の似合わない後藤さんの物語。後藤さんのその他あらゆる属性が密に書き込まれ、よくわからないまま「後藤さん、なんかわからんけど、あんたすげえよ!」とファンになって終了!

    どの物語も、フィクション・ノンフィクションを問わずにサイエンスの語彙であふれ、普通の読み手の期待する、お行儀のいい筋立ては飛びまくり、「わからない私がバカなの?」と、論理的思考をものすごく強いられるような印象を受けます。でも本質的には、「理系もしくはSFファンの飲み会バカ話ネタを広げてみました」とでもいえそうな素材なので、ひとつひとつのディテールは突拍子もなく、しかもキュート。『The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire』の、銀河帝国の人気メニューって…なんでやねん!

    そういうポップなノリを織り込みつつも、それぞれの物語がまとう雰囲気はとても優雅で繊細。『ガベージ・コレクション』は、チェスを詰ませて去った(らしい)、女性の存在が行間から立ちのぼってきますし、『墓標天球』の、追いかけても追いつけずにいつの間にかすれ違い、あるいは行き過ぎても戻るすべのない登場人物たちが、エッシャーの『無限階段』やガルシア=マルケスの『エレンディラ』っぽくて、ちょっと胸にきます。短詩がお好きなかたは、『考速』にはハマるだろうし…と、円城さんはことばで世界を描くというより、ことばそのものの機能を試している、という感じもいたします。

    リディア・デイヴィスの短編集『ほとんど記憶のない女』を読んだときのような、少々置いていかれてしまった読後感が残る作品集なのですが、滑らか(でちょっとヘン)なデイヴィスの作品のほうは、繊細さの中の論理性で印象に残り、ガチガチの(ややバカネタっぽい)ロジックを展開するこの短編集のほうが、論理性よりも繊細さで印象に残ったように思います。世の中には、わけわからんけど優雅で面白い作品もまだまだあるな!と愉しく読んだので、この☆の数です。

  • 「また、短編集ですか?」
    「うん」
    「なるほど」
    葉月は目次を開く。ひとまとまりの感想を引き出すのは困難だと判断したらしい。
     
    「んじゃとりあえず、『後藤さんのこと』」
    「今回は前からなの? しかも表題作は最後じゃなかったの?」
    「そんなルールはありませんよ。他の短編集がそうだったからといって、この短編集も同様だとは思わない方がよろしいかと」
    「ああ、そう。まあいいんだけどさ、とりあえず本文4色刷りっていうのがもうすでに意味不明なんだけど、文字に色を付けることでこれだけ遊べるというのが分かっただけでも、読んだ意味があったと思う。あと、後藤さんというのは概念であって、同僚であり資源であり光でありエネルギーでもあるわけだけど、まあ、いずれは消えていくんだね」

    「何を悟ったんですか? とりあえず次行きますけど。『さかしま』」
    「遊ばれている感がはんぱない。またこれか、と思うと、『1.またこれか、と思った方は次の段落へ』とか書かれていたりする。何について書かれているのかも分からない文章を、あっちからこっちからどつき回される感じ」

    「よく分かりませんが、楽しそうで何よりです。次、『考速』」
    「他人の頭の中は覗くものじゃないと思った。以上」

    「はあ、そうですか。んじゃ次は『The history of the Decline and Fall of the Galactic Empire』……っていうか、長っ」
    「銀河帝国に関するあれこれを淡々と並べたものだね。ニーチェの『善悪の彼岸』みたいな感じだと思えばいい。ちなみに、本文中の『銀河帝国』を別の言葉に置き換えると楽しい。『とろろ蕎麦』とか」

    「人様の小説で何やってんですか……んじゃ次。『ガベージコレクション』」
    「とりとめない感じ。言葉遊びがずっと続くけど、やっぱり言葉遊びとも違うし、何だろうこれ」

    「毎回そういうのが1つはありますね。じゃあ次、『墓標天球』」
    「2回読むと物語として機能する。男は溝を掘り続け、少女は階段を登り続け、少年は少女を探し続ける。彼らが同じ時間軸で出会うためには、ダイスの目を書き換えなければならない。そして、節ごとに記載されている記号の意味が分かるのは、後半になってからだ。円城塔は、読者が時空や次元や世界線を越えられると思っているような気がしてきた」
    「時空や次元や世界線を越えられない人は、2回読むしかない、と」
    「そう」

    「ちなみに最後に付いているこの紫色のページは何ですか?」
    どうやら付録らしい。切り離して、ホチキスで留めるように書いてある。
    「ああ、それは……切り離さないで読もうと思ったんだけど、途中で挫折した」
    「そうですか……」

  • 「後藤さんのこと」を始めとした計6編が収録された作品集。

    後藤さんが波や粒子やニワトリやタマゴやダークマターや新エネルギーなどであったり、生きているのか死んでいるのかわからない存在だったりする「後藤さんんこと」をはじめ、読めば読むほどわからなくなって、最終的には「そういうもの」としてしか読めなくなる。

    ホントに表現が難しい。

    いろいろな人のレビュアーを読んでなるほど!という表現があった。
    「どう表現したらいいかよくわかっていないけれど、歌詞の意味も分からずに洋楽を延々流して「これ好きなんだ」と言っているようなものだろうか。」
    そう、まさにこんな感じ。

    本を読んでこんな感じに成るのは初めてだ。
    いやぁ凄いな円城塔は。

    でも、わからないのに新刊出たらまた読みたいと思い、読み始めるとわからないというループに陥って行くんだろうなぁ。

  • 清水義範のテイストをもっと加速させて、
    エログロを取り去った筒井康隆を加えて、
    牧野修の不条理を半回転させて平山夢明を少し流し込む。

    ‥いやいやどう表現しようとも、この人の世界は語れないのかも。

    もう最初に、後藤さんが出てきてしかも
    後藤さんだけじゃなくて後藤さん一般ってんだからもう、笑うしかない。
    で、未来の自分を鉢合わせしたら「刺すね」って。

    あるいは色のスペクトグラムを駆使した後藤さん列伝。
    足し算して行くとちゃんと色が消し去られてる。
    すごいなこの本。
    編集者さんはどういう指示書を印刷所さんに出したんだろう。
    そんなくだらないことまで気になって仕方ない。
    どのページを読んでもくすり。
    正直わかんない部分もたんとある。

    でも、読むことがなんだか、遊園地の乗り物に乗ることみたい。
    次何が来るのか、どの順番で読んでも楽しい。
    何があるのかロジックがわからなくても、
    キャラクターが全部わかっていなくても楽しめる、それに似ている。

    読書がこんなに、筋肉使う(脳味噌とかお腹とか)とは知らなかった。

    表題作の後藤さんのことが一番好きだけど、
    さかしま、と、銀河帝国もすごく捨てがたい。
    ゲームの本を読んでいるみたいに楽しい。
    次何が出てくるのかな?って、作者もむこうでにまにま、
    「こう来るとは思わなかったでしょ?」みたいに笑ってる気がする。

    作品を生み出す作者の苦労とか苦悩をあたしは理解できないけれど、
    多分この人はすごく、楽しくて嬉しくてしかたない、そんな筆運びに見える。

    ねぇねぇこれいくない?
    ってプレゼントをちら見せさせて先に小走りで走ってく作者の背中を追いかけながら、
    ケッコウこの森ハードだよね足痛いんですけど!とかいいいながら、
    でもあたしの顔もにまにましてる、そんな感じ。

    読み終わって広い野原でおにぎりなんかべたに食べながら、
    でさ、あの部分って実はこんな感じなんだよね気づいた?
    なんて、作者がいつまでも読者を喜ばせたくて
    そこにいろんな仕掛けを残してくれてるみたいな。

    あったことも見たこともないけれど、この人、
    すごくあったかくていたずら好きな人なんじゃないかと思うんです。

    いや、まじで御褒美読書でした。
    無人島への一冊、あたし、これでいいや。

  • 話題の円城塔にトライしてみました。
    予想通り、意味不明の小説というか、散文と言うべきか。
    でも決して出鱈目に書いているわけではないことは、私でも分かる。
    まさに、思弁小説かSF小説か実験小説か純文学か。
    唯一面白かったのは表題作。あとは分からん。分からんモノに触れたいヒトは必読。私も、全然分からんながらも、また手に取ってみる気まんまん。
    もしかして、ハマってる?

  • なんでか、読んでてメッチャ眠たくなる本やったけど読むの止めよって思われてへん不思議な本やったわww

  • 【いったい、何を読んでいる?!】
    いやぁ、さっぱりわからん。
    でも、かろうじて「わかった」「わからんけど面白い」が生まれるから円城作品はやめられない。
    まだ2冊目なんだけどね。
    過労時に読むと、よく眠れるだろうし、普通に読んでいても眠気を誘うとかもしれませんが、それについてわたしはあなたを責めないし、円城さんを擁護もしません。

  • 短編集なので表題作『後藤さんのこと』以外もあったが後藤さん以外の作はついていけなかった

  • 2012-3-11

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著者プロフィール

円城塔(えんじょう とう)
1972年、北海道生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。複数の大学で研究員を務める。34歳の時、研究を続けることが困難となり、2007年にSEとして一般企業に就職。2008年に退職、専業作家となる。
デビューのきっかけは、研究のさなかに書いていた「Self-Reference ENGINE」。各所で認められデビュー作となった。2007年『オブ・ザ・ベースボール』で第104回文學界新人賞、2010年「烏有此譚」で第32回野間文芸新人賞、2012年『道化師の蝶』で第146回芥川賞、同年『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で第31回日本SF大賞特別賞、第44回星雲賞日本長編部門をそれぞれ受賞。他にも2012年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)、2017年「文字渦」で第43回川端康成文学賞をそれぞれ受賞している。
その他代表作に『これはペンです』『エピローグ』などがある。「新潮」2016年5月掲載号で川端康成文学賞を受賞した短編小説、『文字渦』が2018年7月に発売された。

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