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Amazon.co.jp ・本 (640ページ) / ISBN・EAN: 9784150310646
作品紹介・あらすじ
第一次大戦下ポーランド。薔薇の僧院の実験に導かれた、驚くべき美と狂気の物語とは?
感想・レビュー・書評
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美しい悪夢の中を存分に彷徨った。これほどの没入感を読者に与えられる作家はそうそういないだろう。まさに小説を読む醍醐味。これは、耽美な妄想と厳しい現実が入り混じり溶け合う作品だ。物語を必要とする人々に、幸あらんことを。
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3時間越えの重厚な映画を観たあとのような読了感。それなのに全く長さは感じず、先が知りたくて一気に読み進めてしまった。戦争のどさくさに1人の男が作ろうとした幻想世界に取り込まれてしまった人達の物語。
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馥郁、芳醇、妖艶、幻惑、眩惑。薔薇を彩る形容詞ばかり読後感としてふさわしい。
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悪夢のように恐ろしく、どこまでも美しく、そしてどこか哀しい。「物語を必要とするのは、不幸な人間だ。」と記したのはヨハンネス・アイスラー(ヨハン!ヨハン!)だが、その一文は作中の世界のみならず、薔薇密室という物語を今まさに彷徨っている私たちにも突き刺さる。…でもこの物語を読むためなら不幸であることすら構わないと思ってしまうほどの背徳的な甘美さに酔う幸福が、この物語にはある。
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とても良い香りで、味も抜群の料理を食べていると、不意に奥歯で砂利を噛んでしまった。
温かくて手触りの良いストールを巻くと、ちょうど首の後ろの部分にに何かの棘がついていた。
靴に入り込んだ小石。
わずかに漂ってくる悪臭。
そんな決定的に不愉快だとは云えないまでも、落ち着かない気分になる物語。 -
第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけてドイツ・ポーランドの国境近くの修道院で行われた秘密の実験。
脱走兵に、ポーランドの少女、修道院の作男、と、語り手は変動していく。でもって、どれも<信用のならない語り手>なのだ。
なので、翻弄され困惑し、気がつくとがっつり世界に取り込まれている。
にしても、薔薇と人間を融合させるという実験が、あの病気の治療云々につながっていくとは…。
とはいえ、まぁ、どれもこれも共感できない人物のオンパレードで、ある意味、人間の基本的な嫌な部分、というか自分自身が嫌悪していることを凝視させられる気になる。
やっぱ、怖いです、皆川博子。
でも、癖になる面白さ。 -
「薔薇密室」4文字が象徴するかのような格式張った美が称えられ、
理想とする美を追求する、理想とする物語を追求する悲しい人々。いや悲しいのか。
内容は知らないほうがいいので、とりあえず読んで
全文はブログで
www.akapannotes.com -
登場人物
イヴォナ ポーランド人9
コンラート 私 19
ラウレンツ・ホフマン 博士 35 201
ヨリンゲル 薔薇レーサー 39
オーディン 薔薇下士官ヨアヒム 43
クライン・シュトゥム 82
アルベルト 83
ベンルハルト 83
エンゲル 83
クレストフ 83
グラツィア尼 84
ハイニ 軍人83ヒムラー
ヨアヒム・エーデルスハイム SS少尉 98
150
ルツィア 姉 103
ミルカ・コバルチク 妹私 103
ミロスワヴァ・コヴァルチク312
ユーリク 男の子 112
ユリアン・ミウォシュ クライン・
シュトゥム181 285
パニ・イヴォナ・ザゥィスキ秘密教室132
ナタニエル・ホフマン映画技師146 326
フラウ・ホフマン ナタニエル母196
タンテ・フリーダ
エルゼ 218
ココシュカ263
ラスカー・シュラー264
リューディガー 医師299 -
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始めスゴいファンタジーで、ヤバかったけど、やっぱり半ばくらいから引き込まれていった
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死の泉という作品を読んだあとに、こちらの作品にあたりました。
第二次世界大戦前後のドイツ、マッドサイエンティスト、政治や社会から隔絶された不気味な空間、登場人物たちそれぞれの運命の糸が絡み合うドラマチックな展開、などなど、死の泉と共通点がいくつもあるものの、ここでは全く異なる世界が繰り広げられ、新たな感動を得られました。こんな充実感に浸れる作品は中々出逢えません。
長年にわたりソ連やドイツはじめ周辺国に翻弄され続けているポーランドのことも詳しく知ることが出来ます。なぜドイツとポーランドを舞台にしたのかは、最後まで読めば理解できるようになっています。勘のよい方は、もしかしたら結末を予想できるやもしれません。
一番素敵なポイントは、主人公のうちの一人(この作品は見方によって主人公が変化します、そこも見所です)である、ミルカという薄幸の少女の内面描写です。
彼女の持つコンプレックス、恋への憧れ、健気さ、打算、家族への愛と本心、、様々な場面でミルカ自身が語ります。女性の方なら特に、ミルカの、ユーリクに対する自然な愛情と、一瞥しかしていない端正なヨアヒムに対する盲目的な恋慕が共存する複雑な乙女心に、グッと来るかもしれません。
大抵の人が直視したくないような自分の弱さや醜さを、よくもまぁこんな自らえぐり出してくれるな笑、とツッコミも入れたくなるのですが、これだけ描写してくれるからこそ、最初から最後まで彼女のことを自然と応援したくなり、結果どんどん皆川さんワールドにはまりこんでいくことになります。
皆川さんは、極限状態にいる人間のなかの美徳&悪徳をほんとうに違和感なく表現してくれるので、どのキャラクターも厚みがあります。なぜこのキャラクターがここでこんな行動をとるのか、ちゃんと筋が通っています。万が一わからなくても、読み進めれば必ずや理解できるよう仕掛けています。そのため、
[なんだこのキャラ、ウザいな。このキャラは嫌い]
と感じることは基本的にないと思います。
読み進めるほどに、何が真実で何が夢想なのか、今どこの視点にたってる描写なのか、徐々に倒錯していく耽美な混沌に、溺れること間違いなしです。
是非手に取ってみてください。
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とても面白かったです。仄暗い世界観にひきこまれ、くらくらしながら読みました。どこまでが幻覚なのか、正気の在り処を見つけられませんでした。戦時下の描写は胸に痛く、皆川さんにしか描けないだろうなと思ってしまいます。薔薇と若者や少年の融合も狂気的でしたが、綺麗だろうな。幻想的な物語でした。
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長編ゆえに一気には読めず、また所用もあったので読了まで1日かかったのだが、作品に触れていない間のおそろしさといったら……! 何が現実で何が嘘なのか、あるいは、用意された虚構なのか狂気なのか。混乱・混線し、作品世界から帰ってくることができず頭をぐるぐるさせていた記憶がある。しかしこのような混乱(人間が、知恵をめぐらして建てた秩序が壊れた状態)こそが逆にたしかなものなのかもしれないと思う。「なにもない状態が「ある」」というように。時代に、なんらかの理由で(環境や信条、性質など)置き去りにされることを考えたとき、以前読んだキーンの著作を思った。
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美しいバラの花と腐乱した死臭、
生きた精液がかおるような妖しい序盤の物語から一転、
謎の語り手の物語に。
そして、語り手は少女に移り。
物語は視点を変えながら、事実か創作か幻覚か夢想か
あやふやになる記憶と現実が、ミステリーの騙しの
ためではなく、この物語の世界として溶け合い
一気にラストまで読み手を導いていく。
そして、それまでの世界を一気に転換してしまう
ような最後の最後。人が現実の中で
爽やかな愛を胸に力強く立ち上がる姿よ。 -
弟に借りた本。
最初は何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。
一度挫折して、少し寝かしておいて、数カ月後に改めて読了。
幻想なのか、現実なのか。
繋がるとは思えなかった人間が繋がっていく。
今はいつなのか、これは誰なのか。
難解な小説だったが、最後にはすっきりと読み終えられたのが不思議。 -
皆川博子の作品は、作中小説が出てくる複雑な構造になっているものが多いですが、その中でもこれは白眉じゃないでしょうか。めまぐるしく入れ替わる語り手、謎の手記、誰の書いた物語なのか、どこまでが真実で、どこからが虚構か、どこまでが現実で、どこからが妄想か、とにかく最後まで翻弄されまくりました。
作中でヒロイン自身が何度か思うように「カリガリ博士」的な、誰が本当の狂人かわからくなる怖さ(日本でいうならドグラマグラ的な)。あやしい実験をしている博士の一族の名前が「ホフマン」なのも象徴的。ナタニエル・ホフマンの「ナタニエル」は、「砂男」で狂気に陥る主人公の名前だし。
ナチスドイツの時代、薔薇の僧院と薔薇の士官、集められた奇形の子供たち、と、作者のお得意の耽美的モチーフ満載なのだけれど、読後の個人的印象は、「雪の女王」。ヒロイン自身が、自分をゲルダになぞらえていたことで(童話のように少年を救い出すことはできなかったけれど)、アンハッピーエンドの純愛小説のような余韻が残りました。 -
面白い。
読者に驚きを与えるために綿密に練られた文章と感じた。騙されたい、筆者の思うままに身を委ねたいと思った。
幸せのような不幸のようなふわふわとした気持ちのまま最後まで読み進み、小序を読み直して、ガイドの名前と語る内容を見てミルカの幸福な一生を感じて読了した。 小説でしか味わえない驚きがあるのがとても好き。
著者プロフィール
皆川博子の作品
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