トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫 JA タ 11-1)
- 早川書房 (2012年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150310684
作品紹介・あらすじ
税金滞納者を取り立てる皆の嫌われ者、徴収官。なかでも特に悪質な事案を扱うのが特別国税徴収官(略してトッカン)である。東京国税局京橋地区税務署に所属する新米徴収官ぐー子は、鬼上司・鏡特官の下、今日も滞納者の取り立てに奔走中。カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に立ち向かいつつ、人間の生活と欲望に直結した税金について学んでいく。仕事人たちに明日への希望の火を灯す税務署エンタメシリーズ第1弾。
感想・レビュー・書評
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専門分野のおしごと系エンタメは別世界にトリップできるようで楽しい。
税金ネタなので身近だし大切!とは思っても、ニコニコ源泉徴収の身では、節税の葛藤とは縁が薄い。せいぜい節約といえば国民年金かNHKくらい(クズ)
本作は法律コテッコテではないものの、あとがきになってマルサの女は法人相手、トッカンは個人相手という違いをやっと理解するようなハードさ。そこに貧困や自殺、詐欺といった問題が存在するということも知らなかった。お金に殺されないで、という主人公の叫びは悲痛だし、異世界だ。
またクセ強キャラ(Audibleナレーターさんのアニメ声もあって)であるずぼら系主人公のドタバタ感もすごい。セフィロスのようなパーフェクト上司も相まって、いかに共感できるかと格闘しながら読んだ。
自分の票田や天下り先に税金をつぎこむセンセたち。その怒りだけが共通項かも。市民側であるにもかかわらず、国家の大義との板挟みになる徴収官は大変な仕事だ。
きっとそれは、公務員全般にも言えるんだろうなと思った。民間なら淘汰されそうな変な職員もいるし。
あらゆる方面から挟まれがちな、日々まじめにがんばってみえる公務員のみなさんに頭が下がる思いがした。
シリーズがあるようなので全クリ目指そ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
テーマは面白かった。
国税庁の調査官が主人公。徴税というテーマで、物語が作られている。
法人部門をさんずい、個人部門をにんべんと呼ぶらしい。などなど。全く知らなかった専門用語に心躍る。
主人公らが対峙するのは脱税をした人々。
どこに、どのように現金をかくしているのか、というのはさながらミステリー要素。
答えが分かった時、なるほどそう来るか!と膝を打つ想い。
ただ、良かったのはそれくらいかなぁ。
キャラクターはよくある感じ。
ちょっと抜けてるんだけど暗い過去を持つ、若い女性が主人公。
そして、主人公の上司。一見、人の心を持たない、徴税が大好きなスーパーエリート。
それから、ライバルの意地悪な同年代女性。そして、ちょっと妖艶な謎多き女先輩など…。
ちょっとテンプレが過ぎる感じ…笑
ストーリーに関しても、割りとよくある展開かなぁ。
小説としては星3つくらいな感じ。
続編が出てるらしいけど、読むかは微妙なライン。
若い小説初心者向けの一冊かな。 -
お仕事系小説。舞台は税務署。特別国税徴収官(略してトッカン)とその部下の新米女性徴収官の話。優秀な上司とダメ部下、よくある展開だが、『マルサの女』みたいなシーンがあり、結構面白かった。
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'22年10月9日、Amazon audibleで、聴き終えました。高殿円さんの作品、初体験。
コミカルで、楽しくて、少しホンワカ…と、とても面白く聴きました。
しかし…「グー子」って!最高に可愛くて、笑ってしまいました!アハハ!しかも、相手は「ハスキー犬」です!笑うって、幸せですね!
テーマも背景も、全然違いますが…思わず「元彼の遺言状」を思い出しました。あれも、楽しい小説だったなぁ、と。
唯一、僕にはちょっと甘くて…というところは、いわゆる「お涙頂戴」な点。少し、ベタかなぁ。まあ、そこもこの小説の魅力、だとは思います。あくまでも、僕の好み、です。
あとがきで、作者の言葉として紹介されていた言葉で…「縁、は…欲張って、両手いっぱいに何かを持っていると、掴めない」というようなことがありました。少し、背筋がのびる思いがしました。
感謝…次の作品も、もちろん聴きます! -
特別国税徴収官、所轄のマルサのような仕事。映画のマルサは法人専門だが、こちらは個人の方の仕事。国税庁の仕事のことが楽しくわかる。人生の保険のために安泰な公務員の仕事に就いたが、むしろ憎んでいた国税庁で働くことの意義を学んでいく。
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最初主人公のぐー子がなんだかなーと。結局最後までそんなに好きになれませんでしたけど、自分で気づいて認めて成長していくところは良かったです。
トッカン、そんな職業があることを知らなかったので、勉強になりました。 -
税務署を舞台にした小説ではあるが、良くも悪くも細かい仕事内容にはあまりフォーカスしておらず、割と想像の範疇にある。だから、税務署の仕事の世界を知りたいという欲求はあまり満たせないかもしれない。
しかし、滞納者には滞納者の人生があるというところを重視しているようで、それが物語に奥行きを持たせている。ただの勧善懲悪ではなくて、滞納者にはこんな悲劇が…みたいな単純なお涙頂戴でもない。
滞納者にもこれまで生きてきた人生の厚みがあるし、一方で人間なのだから衝動的に変化が起こることもある。
深樹が滞納者を前にお役所対応をしたことを恥じたのと同じようにハッとさせられた。
どんな仕事でもそうなんだよな。
客というのはただお金を持ってくるカモではなくて、その人にも生活があるということを理解してあげないと、いい取引相手にはなれない。 -
税金徴取の現場をコミカルに描かれている。ぐー子は甘いけど、鏡のもとで今後成長していくことを期待。
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トッカンこと特別国税徴収官のお話。鏡特官とぐー子、なかなか良いタッグを組んでストーリーも面白い(^^)
ただ鏡特官、ぐー子に対してそれは言い過ぎなんじゃというところがあって今でいうパワハラ?セクハラ?発言なのでは?? -
最期までぐー子のことはあまり好きになれなかった。
お話としては面白かったけど。
その中で白川燿子のセリフがいい。
「この世にどんな極悪非道な悪人がいたとしても、一番多くの人間を殺しているのは紛れもなく国よ。死刑という法で、あるいは弱者の救済がおろそかで、予算の無駄遣いで、国は多くの人を見殺しにしている。」
今声を大にして叫びたい気持ちです。