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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784150310868
作品紹介・あらすじ
〈国際環境研究連合〉は、この星の絶望的な環境激変の予兆を掴み、極秘計画を発案する──最新の地球惑星科学をベースに、この星と人類の運命を真正面から描いた2010年代日本SFの金字塔
感想・レビュー・書評
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上田早夕里さんの描く世界は、最後にあなたなら、どうする?どうしたい?どうするべき?と問われているような感覚に陥ります。だから、物語の中で読み手の私は決着がつかないのです。この先の未来の行く末は、あなたたちが選択するのです……と言われているようで。
まだ『破滅の王』と、この『華竜の宮』しか上田さんの作品は読んでいないのですが、この2つの世界はそんな風に胸にどっしりしたものが流れ込んできて、私はもがき苦しみます。それでも上田さんの世界は、苦しいだけの世界ではなく、水面はキラキラとしていて美しく、希望の光が水底まで差し込んできてくれます。
絶望的でそれでも美しい世界なのです。
そして、その中では人間はいつも愚かで、ちっぽけな存在です。
『華竜の宮』では、人類が滅亡するかもしれない、そんな絶望的な状況が迫っているにも関わらず、人々は争いを続け、各国の政府は利権を得るために簡単に人の命を見捨てます。そんな人間に対して、何ものにも囚われない地球や自然は猛々しく牙を剥きます。更にこの世界には獣舟、魚舟などの異形のものが人間の手によって生み出されています。
今、何と戦うべきなのか。答えは簡単なのに、それが何故こんなに難しいことになるのでしょう。
結局どれだけ手を尽くしたところで、地球は滅亡するのかもしれないし、人類は絶滅するのかもしれません。
それでも、最後まで懸命に人々は生きていく姿を上田さんは見せてくれます。
「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか」
と。 -
上巻に続いて再読。
あちこちの思惑が絡んでくると、青澄たちはどうするんだろうと気になって、次へ次へと面白く読めた。
舞台が25世紀であっても、人間の本質は全然変わっていない。変わらないんだろうなと思う。
だけど、どうしようもない人間ばかりじゃない。本気でどうにかしようとする人たちがいて、そういう希望があることに安心する。
エピローグは、これまで以上に未来に思いを馳せた。
この先どうなるかなんて分からないけれど、これはなんともロマンじゃないか。
大変な危機に直面した人間の争いや憂いや醜さを思うよりも、可能性を繋ごうとすることに対する感動のほうが心に残った。 -
下巻は一気に読んだ。面白くなると、読むスピードがどうしても速くなってしまう。だから文庫版を選択して電車で読む作戦にしたのだが、目的の駅を何度通り過ぎたか。
今年(2024年)に入って直ぐに北陸で大地震が起きた。しかし復興支援は不十分。オリンピック誘致で国の金を湯水のように使ってIOCに賄賂を渡し続けた奴が知事をしているのだから、進むものも進まない。国もただ金を出すだけで、どの様に有効に使うべきかが判らないため非効率的な支援しかできない。とどのつまりが、GO TO トラベルまがいの旅行支援をまたも行おうとしている。これじゃあ、復興なんて夢のまた夢。そのくせ、バラマキキシダこと増税メガネはウクライナにまた兆レベルのお金をバラ撒こうとしている。こいつは日本国を潰す気か?早く総選挙をやってくれ!海外でも、ロシア・イスラエルの侵略は止まらず、紅海では海賊が勢いを増し、アメリカでの「もしトラ」で世界的に恐怖が高まっている。そうそう、志賀原発が無事でよかった、珠洲市に原発を建設しなくて本当に良かった。
こんな世界の悪政が世界の人々を恐怖に陥れている状況はデフォルトと思わなければならない。人間は悪政の中で生き抜いていく運命にある。平和な社会なんてありえない、なぜなら人間から私利私欲を取り除くことは殆ど無理だから。本作品の主人公の様なタイプの人間はほんの少し存在しているから現実味を帯びている。人間から私利私欲がなくなったら、精神的エントロピーは増大し続け、人間社会は滅亡するだろう。
エピローグでは予想通りの結末となったが、避難民全員を救出することなんて無理、これまで唯一上手くいったのは小松左京の日本沈没の日本人難民くらいだろう。いくら万全の準備をしたとしても、ある程度の犠牲はしょうがない。だが、生き残った人には未来に向けて頑張って欲しい。人間であるがゆえに間違いを繰り返すだろう。地球上で生きていかなければならないので大小の紛争は避けられないかもしれない。でも、人間には知恵がある。知恵だけが人間を救う。人間が人間であることを捨てても生きたい。全ては生きるために何をするか?に尽きる。この様な観点で人生を見直すと新しい発見が突如出現するかもしれない。しないかもしれない。さあ、どっちだ?
上田早夕里さん、純文学方面に向かっていますね。それが彼女の現在の選択。いつか、オーシャンクロニクルの世界に再び戻ってきて欲しい。 -
この世界観は初めて。ハリウッド映画か、スピルバーグか…本を読んでこんなに見たこともない映像が自分の頭の中に広がったこと、なかったかも。新しい読書体験でした。とんでも映像の中に、青澄やツキソメをはじめとする登場人物やアシスタント知性体が、しっかりと生々しく生きているのがいいなぁ。終盤、ユズリハの中で繰り広げられたアクションなんか、もう手に汗握って読んでました。マキ好きだ。夢をつなぐあの終わり方、好きだ。
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SFならではの話の壮大さに、肚の座った登場人物の仕事への意気込みを感じる掛け合い、多くのプレイヤーを動かしながら全体の調和を取る構成力、全てのレベルが高いと感じた1冊です。
ただでさえヤバくなってる地球が更にヤバくなる!(語彙力ゼロ)という状況となった下巻における序盤のハイライトは、理不尽だったり絶体絶命だったり、とにかく酷い状況に立ち向かおうとする人の気高さだったと思います。
登場する3者がそれぞれ3様の行動を取るものの、その行動はどこまでも自分のためではなく、所属するグループであったり、それ以上に人類全体であったりを想うがための行動。
限界の状況における職業倫理、あくまで誇り高くあろうとする意思。相手を思いやろうとする心。熱くて泣ける良い展開でした。
(ただ、「厳しめ」のストーリー展開は、あぁラノベじゃなくてSFだったなぁと痛感しました。どこまでもロマンチックではあるのですが)
SFであるからこそできる思考実験だなぁと感じたのは、「人間に似た何か(遺伝子操作の果て)」と「異形の人間(知性ある生命体)」、どう区別をつけてどう順位をつける?ということ。
AIがより洗練を極めつつある社会において、実際の課題になることもあるんじゃないか。個人的にはSFは尖った未来予測だと思っているので、良い課題提起を貰ったなぁという印象です。
しかし、自分が海上民をデザインするんだったら、ネットワーク通信機能は絶対につけるなぁ。 -
「オーシャンクロニクル」シリーズ、初の長編!
華流の宮です。上下巻まとめてのレビュー。
前にも書きましたが、舞台は25世紀の地球。
未来少年コナンみたいな、ウォーターワールドみたいな感じです。
が、読んでみると、これはプロットがガッチリ出来てる。
良くある「温暖化の影響により極地の氷が溶けて」なんてヌルいものじゃありません。
地殻変動により海溝が隆起。海面が260mも上昇した後の世界から物語スタートです!(リ・クリスティシャス)
そして50年後、地球深部からのアレで「プルームの冬」が訪れる。
これに人類はどう準備、対応するのか?って話です。
物語は、青澄の人工知性体「マキ」による”三人称”で語られていきます。人工知性体なので当然、意識も感情も共有されているので、違和感が全く無い。
これは上手いと思います。
もちろんSFで、ファンタジー的な要素が多いんですが、少し”池井戸潤”の要素が入ってる。権力争い、共闘、裏切り、利益を貪りあうせめぎ合い。
「獣たちの海」と「魚舟・獣船」を読んでココにたどり着いたんですが、読み応えありますが、この手の物語は先が知りたくて先に先に。いつもより早いペースで読み終わりました。
私的には、ツキソメ、ジェイドのタイフォン、月牙(ユェアー)に会って見たいです。
ちょっと期間を置き、反芻してから続編に挑みます。 -
人類を含む全ての生物が絶滅する程の危機を前に、人類は何ができるのか。
それでも、自分たちが生き残る為に他は犠牲にするという政治闘争や連合間権力闘争に明け暮れる政府に対して、青澄やツェン・タイフォン上尉の姿勢が心に残りました。上尉と月牙の最期悲しかった。
避けられない絶滅に、人間であることを捨ててルーシィとなって魚のようになる人もいる。それでも生き延びられないかもしれない。
マキのコピーを含む人工知性体は宇宙へ。彼らは地球で生物が生き延びたかを知ることはないだろうけど、「彼らは全力出生きた。それで充分じゃないか。」という言葉はこの物語の締めくくりに相応しい救いでした。
プルームテクトニクス理論、検索してみたけどよく理解できなかったので、わたしのプルームテクトニクスは「華竜の宮」の描写でインプットされています。
海上民と陸上民や、政治的な駆け引きの人間ドラマと、どこまでも広がる海と唄う魚舟、何もかもを貪る獣舟が迫ってきて、再読でも圧倒される世界でした。
「深紅の碑文」も読みます。 -
黙示録的な展開であるにも関わらず、鬱展開にならないのは青澄を始めとする最善を尽くそうとする人々の奮闘と希望に満ちているからだろう。
原作版「ナウシカ」のようなニヒリズムが無いところも読後感が良い理由なのかも知れない。 -
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何百メートルという海面上昇が起こった地球が舞台の、壮大なSF。SFといえば宇宙のイメージも強いが、これは地球にしがみつくことを選ぶしかなかった物語。大異変が起ころうが人間はやっぱり内輪の権力争いに明け暮れており、そのことに組織の内部から抵抗しようとする外交官の奮闘ぶりが描かれている。体を改造した「海上民」や進化したテクノロジーなど色んな要素があり、引っ張られるように読めた。ラストで人工知性体がこう呟く、「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか」。結果に関わらず納得できるまで行動することが大事だ、と読み替えると「生きること」に限らないもっと身近な行動規範としてのメッセージだと読める。
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ホントに面白いSF小説だった。これほど重厚で考えさせられるSFエンターテイメント大作を読ませてもらったのは久しぶり。
人類があと数十年で滅亡するかもしれないという状況で人々はどうやって生きるのか?
そんな究極の状態でも各国陣営は自分たちの利益をいかに守るか、そして自分たちがいかに生き延びるかということに汲々とする。
このお互いの腹の探り合いや政治的駆け引きの描写は行き詰まるものがある。
本書では日本はアメリカを中心とした国家連合ネジェスの中に含まれているが、いざという時にネジェスが本当に日本を救ってくれるかは分からないという状況。これは現在の日本の状況を皮肉的に描いているのだろう。
主人公である日本の青澄外交官のひたすら普通に人々を救うのだという生き方は共感できるし、他の官僚の「もう自分は十分に生きたから何もしないで死を迎える。その方が楽だ」という考え方もやむを得ないだろう。
ただ、青澄外交官に家族がいた場合はどうだろうか、ここまで自分を捨てて人に尽くすことができるだろうか。子供や孫に普通の生活をさせたい・・・普通の生活がダメなら、せめて生きながらえさせてやりたいと思うのが人間だろう。
ただ、それが人間の外観を失ってまでそうしたいかって考えると、う~ん、難しい。
地球環境が激変し、全人類が滅びた場合に備え、人間の元となる生物的な種を深海に仕込んでおいて、将来、地球環境が好転し、何百年後、何千年後、何万年後かに、その生物が進化していき、もう一度人間になるのを期待するとか・・・もう、壮大過ぎて・・・うっとりとしてしまう(笑)。
本書では地球環境激変開始までの40年くらいが端折ってあるが、そこは続編『深紅の碑文』『リリエンタールの末裔』で楽しもう。
それにしても「L計画」って凄まじい。人間をそんな風にしてしまうなんてね。
続編では青澄外交官やツキソメは出てくるのかな。人工知性体のマキのその後も気になる。オーシャンクロニクル・シリーズ、さらに楽しませてもらおう。 -
上巻終盤から世界に迫る新たな危機が明らかになり、物語が新たな展開を見せる下巻。
愚直なまでに自分の立場を抱え込み苦悩する登場人物たちの様子は読んでいてとても切ないです。
スケールの大きさはやはり格別! 全地球を巻き込む危機に、各国の巨大組織がどのように動くのか、その動きに対し青澄はどのように動くのかという政治的な駆け引きも読みどころです。
最後は少しトーンダウンしたかな、という印象もありますがそんな中である意味印象的だったのがエピローグ。未来へ希望は残されたのかその後の地球はどうなったのか、いろいろと想像させられました。
すでにこの世界観の話の姉妹編の作品も刊行予定だそうです。そちらも気になるなあ。
第32回日本SF大賞-
とし長さん、またお邪魔してしまいました。
とし長さんの『火星年代記』と『華氏451度』のレビューを見ちゃおうと本棚にお邪魔しました。
そ...とし長さん、またお邪魔してしまいました。
とし長さんの『火星年代記』と『華氏451度』のレビューを見ちゃおうと本棚にお邪魔しました。
そうしたら、もうね、たくさん面白そうな本と素敵なレビューにドキドキしちゃいましたよ。
いつも最新のレビューを読ませていただいてましたから。
もったいないことをしてました。
これから、急に昔のレビューに「いいね!」ついちゃうと思いますが、びっくりしないでくださいね。
上田早夕里さんのこの作品は、私も読みました。
『破滅の王』で上田さんを知ったからです。
上田早夕里さんの描く世界は、最後にあなたなら、どうする?どうしたい?どうするべき?と問われているようで考えさせられます。
絶望的でありながら美しい世界的……そんな印象でした。
とし長さんの仰るとおり、スケールの大きさは格別でしたね!2020/01/20
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ドキドキの展開。この駆け引きは見逃せない!!
どうなるの??ってグイグイひきこまれました。やっぱりすごいこの世界観。
『死ぬのを見るために、産み育てたわけじゃない。』
当たり前のことなのに忘れがちになる親心にも、そうだよなぁと素直に共感しました。 -
人間と人間じゃないものの境界線とは何か
ここは、圧倒的な世界が広がる、地球と人類の未来。
それは、いまあるものがない世界。
でも、確かに現在の環境破壊からシミュレーションした未来の地球の姿……。
遺伝子操作による生物科学的人類の変容
人工知能補助による機械工学的人類の変容
そんな世界を舞台に、ひとりの辺境の外交官が、陸上民と海上民の対立、不思議な海上民の“オサ”をめぐる各国の思惑の狭間で、自己の意思を貫こうとする。
ちょっとした地球の動きであっという間に死滅していく生き物のはかなさ。
他の生物が環境変化に対して自然に淘汰や変化していく中、人間だけが自らの力でもがき足掻く……。
そこが功罪合わせて「人間らしさ」なのかも。
お話は、「お仕事小説」箇所の下りや突然のアクションシーンなど、SFであることを忘れそうになる。
また、たくさんの登場人物のなかには、もう少し掘り下げてほしかったようなキャラクターもあったりして、読後も少し心残りがある。
関連する物語が他にも出版されているよう、ちょっとそそられる。 -
上官のところに書きます
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摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB99458223 -
2024I204 913.6/Ue/2
配架書架:A4 -
25世紀、ホットプルームの活性化によって起こった海底隆起の結果、世界の姿はそれまでとは全く違うものとなっていた。最終的に250メートル以上の海面上昇が起こった結果、平野部が大半を占めた国家は国そのものが消滅し、山岳地帯へと逃れようと人口の大移動が起こったことで武力紛争が世界中で勃発した。それでも混乱が一段落すると、人類は再び繁栄を謳歌し始めた。陸上では陸上民が高度な情報社会を築き、海上では海上民が「魚舟」を駆ってコミュニティーを形成した。しかしその繁栄は、更なる災厄の前に訪れた一時の平穏でしかなかった。
(選定年度:2025~)
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感想 :

nejidonさんの素敵なレビューが読めなく
なるのは、すごく寂しいです。
でも、nejidonさん...
nejidonさんの素敵なレビューが読めなく
なるのは、すごく寂しいです。
でも、nejidonさんのお気持ちもよく分か
ります。何だか、心が疲れた時とかザワ
ザワと落ち着かない時なんかは、特にそう思います。
でも、nejidonさんいつでも覗きに来てく
ださいね。とはいえ、ほんとムリしない
で下さいね。
心が疲れると本も読めなくなっちゃいますから。
本が好きって気持ちだけで、nejidonさん
と繋がっている……そう思えるだけでいい
のですから(*^^*)
ずいぶん昔のレビューを読んでいただきありがとうございます(笑)ただ、初期のレビューは、本当に一...
ずいぶん昔のレビューを読んでいただきありがとうございます(笑)ただ、初期のレビューは、本当に一、二行程度のものなので、あまり期待はしすぎないでください……
さて、SFに興味を持ち始めた時に読んだのが、上田さんの『リリエンタールの末裔』そして『魚舟・獣舟』でした。特に『魚舟・獣舟』の表題作は、読んで衝撃を受けた覚えがあります。
この短い短編で、これだけの世界を広げ、その上どこからが人なのか、どこまでが人なのか、という問いを投げかけることができるのか、と。
そこから「魚舟・獣舟」と同じ世界観の『華竜の宮』その続編『深紅の碑文』と読み進めていきました。SFの面白さは上田さんに教えてもらった、といっても過言ではない気がします。
最近の上田さんはSF以外にも作風を広げていらっしゃる印象を受けています。でも作風がSFであっても歴史であっても、きっと上田さんの作品の根底から問いかけてくるものは、通じるものがあるのでしょうね。地球っこさんのレビューやコメントを拝読してそんなことを思いました。
それでは、失礼いたしました。
上田さんには知らない世界へ連れて行ってもらいました。
先が見えない不安でいっぱいなのに、どこかにちゃん...
上田さんには知らない世界へ連れて行ってもらいました。
先が見えない不安でいっぱいなのに、どこかにちゃんと希望もある……
読み終えるとそんな気持ちでいっぱいになる、そんな世界です。
SF以外の作品も書かれてるなんて、とても気になります。
教えていただきありがとうございます♪