華竜の宮(下) (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.11
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本棚登録 : 467
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310868

感想・レビュー・書評

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  • この世界観は初めて。ハリウッド映画か、スピルバーグか…本を読んでこんなに見たこともない映像が自分の頭の中に広がったこと、なかったかも。新しい読書体験でした。とんでも映像の中に、青澄やツキソメをはじめとする登場人物やアシスタント知性体が、しっかりと生々しく生きているのがいいなぁ。終盤、ユズリハの中で繰り広げられたアクションなんか、もう手に汗握って読んでました。マキ好きだ。夢をつなぐあの終わり方、好きだ。

  • ホントに面白いSF小説だった。これほど重厚で考えさせられるSFエンターテイメント大作を読ませてもらったのは久しぶり。

    人類があと数十年で滅亡するかもしれないという状況で人々はどうやって生きるのか?

    そんな究極の状態でも各国陣営は自分たちの利益をいかに守るか、そして自分たちがいかに生き延びるかということに汲々とする。
    このお互いの腹の探り合いや政治的駆け引きの描写は行き詰まるものがある。

    本書では日本はアメリカを中心とした国家連合ネジェスの中に含まれているが、いざという時にネジェスが本当に日本を救ってくれるかは分からないという状況。これは現在の日本の状況を皮肉的に描いているのだろう。

    主人公である日本の青澄外交官のひたすら普通に人々を救うのだという生き方は共感できるし、他の官僚の「もう自分は十分に生きたから何もしないで死を迎える。その方が楽だ」という考え方もやむを得ないだろう。

    ただ、青澄外交官に家族がいた場合はどうだろうか、ここまで自分を捨てて人に尽くすことができるだろうか。子供や孫に普通の生活をさせたい・・・普通の生活がダメなら、せめて生きながらえさせてやりたいと思うのが人間だろう。
    ただ、それが人間の外観を失ってまでそうしたいかって考えると、う~ん、難しい。

    地球環境が激変し、全人類が滅びた場合に備え、人間の元となる生物的な種を深海に仕込んでおいて、将来、地球環境が好転し、何百年後、何千年後、何万年後かに、その生物が進化していき、もう一度人間になるのを期待するとか・・・もう、壮大過ぎて・・・うっとりとしてしまう(笑)。

    本書では地球環境激変開始までの40年くらいが端折ってあるが、そこは続編『深紅の碑文』『リリエンタールの末裔』で楽しもう。

    それにしても「L計画」って凄まじい。人間をそんな風にしてしまうなんてね。
    続編では青澄外交官やツキソメは出てくるのかな。人工知性体のマキのその後も気になる。オーシャンクロニクル・シリーズ、さらに楽しませてもらおう。

  • ドキドキの展開。この駆け引きは見逃せない!!
    どうなるの??ってグイグイひきこまれました。やっぱりすごいこの世界観。
    『死ぬのを見るために、産み育てたわけじゃない。』
    当たり前のことなのに忘れがちになる親心にも、そうだよなぁと素直に共感しました。

  • 読み始めたら終わりまでやめどきが見つけられない
    それくらい続きが気になるストーリーでした
    海洋生活のリアリティが溢れています
    アニメでガルガンティアみたいのがありましたが、あれが好きだった人は絶対に気にいると思います

  • 再読。
    つらい記述が多くて、もう少しこう、とか思うけれども、、
    一生懸命生きたい思いを、揺り起こす力を感じるなあ。

  • 上官のところに書きます

  • 『交渉というのは価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても平行線にしか見えないことも……。

    けれども、それに対して知恵を絞り、言葉を絞り、体力を絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。

    たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしても、最後まで決してあきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は暴力を止められることもある。それを忘れてはいけない。』

    人類滅亡が迫る中、言葉の力だけで平等で人々が安心できる社会を築こうとする青澄の行動原理に共感はできないけれども、共感できないからこそ物語が面白くなっているのですごく良かった。

    人間の複雑な感情が織りなす物語をAIの視点で描いているところが秀逸。そのAIにこそ感情移入してしまう不思議な作品。

    人類滅亡が始まるまでの40年間を描いた続編も読みたい!
    久しぶりのSFだったけど、素敵な作品だったなぁ。

  • 色々思いすぎて感想書けない

  • いまを生きる世界から少しあと、もしくはかなりあとに起こりうるかもしれないテンペスト。異形の者たちが生き生きと(殺伐と)暮らす世界で、それでも外交官や海の生き物など現実世界の香りが残っているのがとてもいい。
    練りこまれた物語に引き摺り込まれたらあっというまでした。

  • こりゃすごい。びっくりです。SFをあんまり読まないのでよくわからないんですが、こんな本格的なSFを書ける女性作家って、いま他にいるんだろうか。
    ショコラティエの話を書いてる人っていうイメージでした。

    もう気を抜いたら置いて行かれそうなくらい、読むのにも集中力がいる。全部読むのにかなり時間がかかってしまった。
    でも、ページを開けば一瞬で別世界に連れて行ってくれる牽引力はハンパないです。
    専門的な科学的知識(たぶん)に基づいて描かれた近未来は、ぜんぜん見たことのない独特の世界。
    「魚舟」とか「袋人」とか、よくこんなおかしなものを思いつくなあ、っていうのがまずひとつ。イマジネーションの力ってすごい、と純粋に感動しつつ作者の作り出す世界に浸れます。
    環境が変わった自然界に生まれた奇妙な生命体たちが描かれるいっぽうで、それとは真逆の、人間の技術で生み出したコンピューターたちの世界も描かれます。
    人間のサポートをするアシスタント知性体っていうのが登場するんですが、これがちょっとスタンドっぽい、ポケモンっぽい。かっこいい。ほしい。

    でもって、全体としてはスケールの大きな地球規模の異変を描いてるのに、官僚同士の権力争いとか、理解のない上司の下で身動きとれないとか、些末で人間的な小競り合いの描き方もあるあるすぎて絶妙。
    過去のトラウマを抱えつつ理想のために死にもの狂いで動く外交官の主人公・青澄や、海で生きる伝説の女性・ツキソメなどのキャラクターたちもそれぞれの立場でしっかり信念を持っていて魅力的です。

    要するにどの角度から読んでも面白い、死角がない、すんごくよくできた物語なんです。

    壮大な地球の物語、最後に残されたのはほんの小さな希望。
    生き物はどんな形であれ、生まれたからには生き抜こうとする権利がある。
    行きつくそのテーマに大きく頷いて、読了。

著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2011年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。同作は「SFが読みたい! 2011年版」国内篇第1位に選ばれ、『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』の各表題作、『華竜の宮』の姉妹編『深紅の碑文』と合わせて《Ocean Chronicleシリーズ》と呼ばれ、読者からの熱い支持を集めている。近著に『妖怪探偵・百目』シリーズ、『薫香のカナピウム』など。

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