know (ハヤカワ文庫 JA ノ 4-1)

著者 :
  • 早川書房
3.98
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感想 : 276
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311216

感想・レビュー・書評

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  • 近未来、電脳化が進んだ社会を描いたSF。

    脳に埋め込まれ、ネットワークから膨大な情報を取得・処理して脳を強力にアシストする「電子葉」。この電子葉の移植が義務化された近未来、電子葉脳に産みの親、道終・常一は、量子コンピュータを用い性能を格段に向上させた「量子葉」の開発に成功した直後に失踪してしまう。その14年後、道終は最後の弟子(御野・連レル)の前に姿を現すが、量子葉を装着した娘(道終・知ル)を連レルに託し、目の前で自殺してしまう。この知ルこそは「世界最高の情報処理能力を持った人間」、神にも等しい驚異的な能力の持ち主だった。

    こういうタイプのSFは結構好きなので、ワクワクしながら読めた。ただ、ラストは呆気なくて、失速した感がある。"死" をテーマの一つにしてると思うんだけど、 "死" についてほとんど描かれてない(敢えて描いていない)点にもちょっと不満が。

  • 超情報化社会。大量の情報を処理するには、人の脳は脆弱すぎた。
    しかし、人造の脳葉〈電子葉〉の移植という技術が開発され、人々が膨大な情報を瞬時に活用出来るようになった現在、“情報格”=クラスにより定められた、新しい格差が生じていた。

    情報庁に勤務する御野・連レルは、0から6までのクラスの中でクラス5の能力と権限を持つトップ官僚。
    彼の恩師で天才研究者の道於・常イチは14年前から行方不明だったのだが、彼の残した暗号を読み解いた御野は、道於との再会を果たす。
    そして御野は、クラス9…ケタ違いの情報処理能力を可能にした〈量子葉〉を移植された少女、道於・知ルを託されたのだったが…


    てなことは読んでもらうことにして。
    『タイタン』が面白くて追いかけ…というか遡り始めた野﨑まどさん、3作目。
    まずは、近未来のSFを読んだ満足。現在の延長に、確かにありそうなリアリティがいい。
    すぐにでもアニメ化されそうな、文章だけでスタイリッシュな映像を思わせるのもいい。

    そして、birth から始まった章立ての、生まれて死んでその先にあるもの、最後のエピローグの余韻が良かった。
    知ルは、間違いなく帰ってきたのだ。

    幸福かどうかなど、どうでもいいこと。知れるだけのことを知りたいから、という力の凄まじさ。
    死んだ後のことまで知ることのできるようになった世界は、恐れることがない世界ではあるだろうけれど、何に夢を描き望めば良いのだろう。


    細かい事を言えば、登場人物の名前が凝りすぎて物語に入りにくいとか、こんな時代に制服とかどうでも良さそうなのに…とか、知ルは御野と実践しなくても良かったんじゃ…などなど、ちょっとした違和感はあるけれど。
    そして、ひたすらカッコいい感じで登場をした御野が、何とも微妙なダメさと有能さのスキマみたいなキャラに落ちついていくのが、お気の毒。

    作品世界の、超情報化世界のスピードに乗って、危うすぎるジェットコースターに乗せられた気分を味わう。たかがスマホやPCのスキルでギャップを感じるいまをわらう。
    トリップできるSFの面白さだと思った。

  • 全ての情報を「知る」ことで行き着く世界とは何なのか。生きるために知り続けた少女が辿り着いた終着点と結末、それがもたらした新しい世界の在り方、そしてエピローグの締め方が本当に美しく、「いいSFを読めた」という高い満足感を得られました。どことなく「ハーモニー」に近い世界観(情報に管理された社会の在り方や、個性的な名前など)も好みでした。

    ただ、割と展開が力技に感じられたことと、主人公が好みではなかったこともあって、途中までハマり切れなかったのだけ残念でした。とはいえこれは個人の好みの問題なので、間違いなく日本SF小説の傑作の一つだと思います。

  • 情報ネットワークが発達した近未来、電子葉という脳をネットワーク世界に繋げるためのものを頭に入れていることが当たり前の時代、知らないことがすぐ調べられる時代に、知るとはどういうことなのか、人はなぜ知りたがるのかを電子世界最強の脳を持った少女と共に知る話。
    世界観や設定は結構好きで、登場人物も濃い人たちなので覚えやすく話が入ってきやすいので大分楽しめた。先生天才すぎる。
    あと情報遮断した部屋での行為はいるかな…?と思ったのは正直なところである…

  • 西暦2081年、極度に発達した情報化社会に対応するために子供の頃から「電子葉」を脳内に埋め込むことが義務化されている社会。情報庁のエリート・御野連レルは、かつての恩師・道終常イチが世界一の情報産業企業アルコーン社の機密情報を持って失踪したとの情報に接する。常イチからの特殊な暗号を読み取った連レルが向かった先で出会ったのは、常イチが手塩にかけて育ててきた「量子葉」を持つ少女・知ル。電子葉とは格段に異なる高度な情報処理能力を持つ量子葉を開発した常イチは、連レルに「この子を頼む」と言い残して自らの命を絶つ。それは、量子葉を狙う各勢力の追跡から逃れるための連レルと知ルの逃避行の始まりだった・・・。

    脳に機械を埋め込んで処理能力をアップさせ「超人」を生み出す、というアイディア自体は、従来からよくあるSFの超定番のひとつです。そんな使い古されたテーマではありますが、古い歴史と最新の情報技術が混在する未来の京都を舞台に疾走感溢れる現代的な文体でぐいぐいとストーリーを押し進め、なかなか読ませる作品になっています。
    登場するキャラクターの描き方が良くも悪くも「今風」で、かつ理屈抜きにイメージ先行で強引に展開する場面も目に付き、古いSF読みの鴨にとっては「おいおい」と突っ込みたくなる要素も満載なのですが、最終的なSF的アイディアの「オチ」が小松左京「ゴルディアスの結び目」を彷彿とさせるアバンギャルドさで、そう来たか!と膝を打ちました。

    鴨が印象的だったのは、SF小説としての「絵的」な展開。
    「SFとは絵である」、とはよく言われることですが、この作品から受けるヴィジュアルは当初から映像化を想定しているかのようなある意味「わかりやすい」派手さが感じられ、旧来のSF、即ち文体の特徴やリズムといったものから自律的に想起されるヴィジュアル(エリスンやディレイニーやティプトリーの作品に感じられるような)とは本質的に異なる何かを鴨は感じました。SFの「見せ方」が変わってきた、ということですかね。古いSF読みとして、ちょっと時代を感じましたなー。

    • たまもひさん
      こんにちは。
      私も「古いSF読み」ですが、これは面白く読みました。ついていけんわ~と思うところも多々あったのですが。

      もしかして以前...
      こんにちは。
      私も「古いSF読み」ですが、これは面白く読みました。ついていけんわ~と思うところも多々あったのですが。

      もしかして以前「たなぞう」でも書いてられましたか?アルファベット表記のハンドルネームで。違っていたらごめんなさい。
      プロフィールにある、インコの名前は「志ん鳥」というのに笑いました。いいですねえ。

      またお邪魔させてください。
      2017/07/21
    • ま鴨さん
      たまもひさん、コメント&フォローありがとうございます!
      「たなぞう」にはあいにく投稿していないのですが、私と同じテイストのレビュアーさんが...
      たまもひさん、コメント&フォローありがとうございます!
      「たなぞう」にはあいにく投稿していないのですが、私と同じテイストのレビュアーさんがいらっしゃったんですかね。ちょっと嬉しいです。SF限定の偏向甚だしい本棚ではありますが、良かったらまた遊びにいらしてください。お待ちしております!

      因みに、2羽目のインコを迎えることになったら、名前は「圓鳥」にするか「米鳥」にするかで悩んでおりますヽ( ´ー`)ノ
      2017/07/21
    • たまもひさん
      勘違いだったんですね。どうも失礼しました。たなぞうでもそうだったんですが、ここブクログでもSFの感想を書かれる方ってそんなに多くないので、も...
      勘違いだったんですね。どうも失礼しました。たなぞうでもそうだったんですが、ここブクログでもSFの感想を書かれる方ってそんなに多くないので、もしや?と思ってしまいました。
      私は「SF読み」と言うほど読んでないぬるい読者ですが、好きなんですよね。年とともに、こりゃ読めん…というタイプのものが増えているような気もします。

      二代目の命名については、関西在住者なので「米鳥」に一票入れたいところです。
      2017/07/22
  • 野崎まどさんはメディアに出演することがないので作品以外からの解釈ができず難しい。
    本作は近未来のSF小説で天才と天才の邂逅が描かれている印象だ。知るというと、何を知れていないかということ。突き詰めて読み進めると概念の解釈が難しい。尖った才能ある作家さんなんだなぁ…。

  • 『指先が冷たい、当たり前でしょ、死んだんだから』

    野崎まどは面白い。読めばだれだってわかる。1番稚拙な例えをするなら、西尾維新と伊坂幸太郎と森博嗣を足して3で割らなかったような作家だ。渦巻いている。均等なんかではない。溺れる夢のような現実に取り残されそうだ。死んだあとの先なんか、私は知りたくないけれど。

  • 知ルが可愛いんだな。舞台が京都というのも、街の狭さが効いていてよかった。
    中盤の雑魚キャラはなんとかならないかな。とある某作品かと思ったことよ。
    テーマ的にはもっと掘り下げられる内容で、3倍くらいのボリュームで展開したら楽しそうな。
    知ルがとにかく可愛いので市川春子の絵で読みたいなぁ。

  • 面白かったです。しかし情報の取得・流通の技術革新はわかったけど蓄積については触れられていないような気が。情報量が増えたなら物理的制約がついて回ると思うのでそこにも言及してもらわないと違和感があります。そして腐った眼鏡を掛けると前半は先生に対する壮大な恋愛話に見えます、よ。

  • 世界観と物語の締め方は好き。ただキャラクターには全く魅力を感じられなかった。あえてそういう描き方かもしれないけど。終盤のロリコン的展開にはドン引き。部下の女性キャラもほぼ意味がなかった。

  • テーマも面白かったし、ところどこパンチもあるし、エンタメ小説として面白いと思ったのだけれど、最後まで「ノレ」ませんでした。
    やっぱり一番無理だなって思ったのが、女性キャラの描き方・扱い方。フィクションとはいえ中学生のヒロインと…彼女に対して…というところが、まあ出だしのプレイボーイぶりからも結構うーんって感じだったんだけど、最後までうーーーーーーんでした。全然関係ないですが、チェンソーマン無理だなって思ったのと同じ理由で無理でした。他の作品もこういうテンションなんだろうか。

    せっかくギミックやテーマは面白いのになあ…
    最後の一文の「死んだ後のことなんて、子供でも知ってるよ」も良かったんだけどね…うーん残念。死んだ後のことってなんなんでしょうね?そういうところはすっ飛ばして綺麗にまとまった印象。

  • 知るということ。

  • 何だか途方もない気分になるお話。

  • 電子葉を中心とした世界観には引き込まれたが、登場人物やストーリー展開があまり好きになれなかった。

    ますどの人物も掴みどころがなく感情移入しにくかった(あえてそうしているのかもしれないが)。

    また基盤となるのが超情報化社会であり、他にもコードや脳、死後の世界などがテーマとなっているが、個人的に興味をそそられる分野ではなく、全体を通して機械的で単調だと感じた。

  • 宇宙船=子供として生まれ変わるはなるほどなぁとなった。そう思うとラストシーンの意味もわかる(むしろ子供だから知っているのか)。読解力がないので厳しい。基本全部真相が明かされるミステリを読んできた弊害か。

  • なぜ近未来の京都にしたんだ?know、知る・知りたい、、、高知にすりゃいいじゃないか!!クラス0が反旗を翻すって話とかのがよかったな。死んだあとのことまで知りたいとは思わない。話の流れが良いだけになんかもったいない。先生が自殺する必要あったのだろうか?

  • 伊藤計劃さんのハーモニーに比べるとあまり面白くない部類に入るライトノベルかな
    個人情報管理の精緻化や電脳化が実現された際、ランク付けによる差別やクラッキングによる脳死状態は起こりうるだろうなぁとは思った
    今も前者は起こりつつあると思う

  • 図書館で。
    情報ネットワークにヒトの脳が直接コネクトできる時代…面白い発想。とは言え、処理能力の方が追いつかなさそうなのでそこは埋め込み型の機器を介するってのは面白い。けど、その演算機能はアプデしないんだろうか?とか今ふっと疑問に思ったり。

    情報をいかに引き出せるかではなく、引き出した情報でどのように思考するか、というような話だったように思います。情報は素材なんですよね。
    個人的には主人公と14歳の女の子はアリなのか?とちょっとそこは引っかかりました(笑)部下の彼女の方が個人的には好みだな。←それは好みの問題ってだけだな、ウン。
    このタイトル、脳にもかけてるのかな?面白かったです。

  • 映画「Hello, World」の紹介に関連して本作に触れた記事では「ゴリゴリのSF」と書いてあったのだが、どちらかというとFantasy色が極めて強くて、SF部分は結構弱い。
    正直にいうと、読みながら「あれ?」と思う部分はたくさんあったのだが、もしかしたら最後まで読めば解釈可能になるのかもしれないという期待で最後まで読みきった。その期待は半分あたりで半分はずれだった。。

    色々きになる点があるのだが、最も決定的なのは、本作のクライマックスである「ダンスをしながら銃弾を避ける」シーンが、本作の設定を受けいれると無理だということなのだ。
    京都御所はその性質から情報材を受け入れていない。そのため、京都御所を目指す連レルと知ルは量子葉を使うことができず、情報庁の妨害をどのように避けるか・・・というのがこの部分の見所だ。

    この危機に、知ルは「事前に情報庁の人間の情報を取得することで弾丸を全て予測し、ダンスを踊ることで連レルの体をリードして避ける」ことを実現するのだが、これ実は無理なのである。しかも作中で、その矛盾に気づいていないように見える。

    作中ではダンスの最後、知ルが御所の石の上に足を乗せる・・・というシーンが出てくる。屈指の名場面だが、ここでの疑問は「知ルはどうやって石の場所を正確に理解したのか?」ということだ。
    上述したように京都御所は情報材を利用することができない。つまり、御所の地面の石の配置や凹凸、形の不揃いを事前に把握することはできないのだ。なのに、知ルはまるで「知っているかのごとく」ダンスを踊ることができた。


    ・・・・という感じで、SFとしては色々な粗が目に見えすぎて、評価は辛くならざるをえない。
    とはいえ、それが話として面白くないということを意味するわけではない。ファンタジーとしてとらえれば素晴らしく美しい場面が複数あるし(ハイクラス同士の戦闘シーンは興奮した)、テーマとなる輪廻転成もうまく処理されている。

    ストーリーテラーとしてのレベルは非常に高いことはこの1作から明らかなので、次はSFではない作品を読んでみようかと思っている。

  • 電子処理副脳が義務化されるほど普及した超高度情報社会下に
    量子処理を行えるすーぱーヒロインが大降臨
    というお話
    量子副脳なら現在の充分な情報で高精度未来予測もできるらしい
    ムジュンとかラプラスとかそういう次元じゃないんである
    中編くらいの素材をはったりかまして
    語り手にやっぱり天才すごい言わせているだけのような気もするが
    娯楽作品としてはなんら問題ない

著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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