開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 2154
感想 : 184
  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311292

作品紹介・あらすじ

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男。戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が…解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む、本格ミステリ大賞受賞作。前日譚を描いた短篇を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 期待して読んだ。
    期待し過ぎていたのかも知れない。
     
    舞台は十八世紀、イギリスはロンドン。
    今ほど医学は進んでおらず、解剖という行為そのものにまだまだ誤解や偏見がある時代。
    解剖学を進歩させようと情熱を傾ける医師ダニエルの私的な解剖教室から、四肢の切断された謎の少年の遺体と顔を潰された謎の男の遺体が突如発見された!
     
    ツカミは抜群!
     
    さらに
    解剖学に心血を注ぐ外科医。
    その容姿端麗な一番弟子。
    天才的な素描画家の弟子。
    盲目の治安判事。
    その姪で判事の目となる助手。
    「鉄の罠」の異名を持つ助手。
    などなど個性的な登場人物が活躍します。
     
    でも……。合わなかったな~。
    ワクワクもドキドキも恐怖も不思議も愛着も何も感じることができなかった。
    残念。

    はっきりとした難点がひとつ。
    登場人物が把握しづらい。
    たとえば、外科医の容姿端麗な一番弟子、エドワード・ターナーは、仲間内では「エド」と呼ばれ、「ターナー君」と呼ばれることもあり、公的には「エドワード・ターナー」と呼ばれることも。
    他の登場人物も同様にいろいろと名があります。
    おかげで500ページ近くある本書のラスト近くまで、巻頭にある登場人物一覧に指を挟んだまま読むことになりました。
     
    続編も出版されているようなので期待したんですが、読み終えて「疲れたな~」という感想しか持てませんでした。

  • 18世紀のロンドンを舞台とした、極上のミステリー。

    建物は煤煙で汚れ、治安や衛生状態の悪いロンドンは、袖の下が横行し、犯罪者が公正に裁かれることの期待できない、前近代的な社会でもある。街には追い剥ぎや浮浪者に溢れ、犯罪事件に事欠かない。

    コヴェント・ガーデンで外科医のダニエルが運営する解剖教室は、違法に死体を確保しなければ人体解剖できず、日々死体確保に四苦八苦している。

    そんな解剖教室で、四肢を切断された少年と顔を潰された男、二体の謎の死体が発見される。事件には、ダニエルの弟子のエドとナイジェルが関わっているようなのだが、捜査が進むうち、事件は複雑度を増していく。

    探偵役は、盲目の治安判事ジョン・フィールディング(サー・ジョン)とその姪で助手を務めるアン=シャーリー・モア。この二人のコンビがなかなかいい。

    ラストに予想外のどんでん返しが用意されている。終わり方もスッキリしていて気持ちいい。是非、続編「アルモニカ・ディアボリカ」も読んでみたい!

    解説によれば、ダニエルやサー・ジョンにはモデルとなる実在の人物がいるとのこと。「解剖医ジョン・ハンターの数奇な運命」、サー・ジョンの兄が書いたという「トム・ジョーンズ」、本書と同じくサー・ジョンが活躍するミステリー「グッドホープ邸の殺人」にも注目したい。

    なお、本作のタイトルは、外科医ダニエルの弟子達が遺体を解剖する時に遺体に敬意を表し言葉から。『「さて、開かせていただき光栄です」delighted to meet you――お目にかかれて光栄です――を、dilateed to meet you と言い換えて、クラレンスは男の骸に会釈した』

  • カタカナの名前覚えられねーーー!! と2回挫折した本ですが、1年ぶり3回目にして読み終わりました。そしたらまあおもしろいことおもしろいこと。。。テーマは復讐でしょうか。鬱積したものが終盤に解き放たれて清々しいです。
    さらに著者が執筆時に80歳ということで、本筋とはまったく関係ないところで驚きました。文章が若々しいので失礼ながら20代の作家さんを想像してました。

  • 2冊目の皆川さん。ちょっとダークで耽美な世界観のミステリー。ダニエル先生の解剖学教室で起こった死体が増える事件の謎を個性豊かな弟子たちや、盲目の判事が追う?
    舞台となった欲望渦巻く18世紀ロンドンがまるで見てきたかのような描写でそれだけでも読み応えあると思うのに、ミステリ自体も私は最後まで分からなくて面白かった。
    何考えてるかわかんないながらもエドに感情移入して呼んでいたから最後は少し切なかったな。

  • すこしまえに「王妃の離婚」を読んだが、知らずに似た時代の傑作を読んでいた。
    ミステリーとしても、時代考察の資料としても、最高に面白い一冊だった。「壁」「恋紅」以来の皆川博子作だったが、歳を重ねても衰えない筆力に脱帽。

  • 初めて皆川博子作品読みました。解剖とか四肢を切断とか物騒な言葉があらすじに並んでいたので読むのに躊躇していたのだけれど、どうしても気になる悪夢のようでいて魅惑的なカバーイラストが忘れられず思い切って手にとりました。もうそれはそれは夢中になりました。いやいや、のめり込んでしまったという方が正しいようです。まるで阿片チンキを入れたワインを飲まされたようなめくるめく退廃的で淫靡な世界観。その中で起きる殺人事件は何が正義で何が悪なのか、境界線がわたしにはわからなくなっていました。殺人事件は解決し、バートンズの子どもたちの明るさや利口さ、絆に救われ、ダニエル先生をはじめ子どもたちを思いやる大人たちの想いにも触れ、ただただエドとナイジェルの未来にどうか幸あれと願うことを許してください神さま。何だか心の中に重石をおかれたような忘れられない一冊になりました。

  • 溜息がでるほど美しい装丁とタイトルですね。
    自分の皮で本をつくったら、内容はミステリーにしてもらおう。そして金の箔押しを。

    ダニエル先生と弟子の子たちのやりとりが微笑ましい。
    「隠せ!」から始まるやりとりにずっとニヤニヤ。解剖ソングが可笑しくて哀しい。

    なんともやり切れないラストなんだけど、でも!
    愛してる、愛してるよ!

    こんな素敵な本格ミステリを、いやいや読ませていただき光栄です。

    • HNGSKさん
      musicarossoさん、お邪魔します。
      素敵なレビューだったので、つい。
      その作品の装丁、綺麗ですよねえ。もし、自分が解剖されたなら...
      musicarossoさん、お邪魔します。
      素敵なレビューだったので、つい。
      その作品の装丁、綺麗ですよねえ。もし、自分が解剖されたなら・・・なんてネイサンみたいなことも考えてしまいますし。
       そして、最後のエドとナイジェルのあのセリフ。「愛してる」しびれました。
       共感するポイントが一緒すぎて、コメントをいれずに入られませんでした。
      2014/01/31
    • うさぎ堂さん
      ありがとうございます。
      とっても嬉しいです!
      何を書いてもネタバレになりそうで、でも愛してるだけは伝えなきゃと思いました…!
      素敵なコ...
      ありがとうございます。
      とっても嬉しいです!
      何を書いてもネタバレになりそうで、でも愛してるだけは伝えなきゃと思いました…!
      素敵なコメントをいただき光栄です。
      2014/02/01
  • 十八世紀のロンドンが舞台。
    法医学や筆跡鑑定等の科学捜査は、まだまだ未発達な上に、警察組織も確立されていない状態の頃です。

    そんな舞台設定なのに、きっちりとミステリ。
    しかも、事件は二転三転して、最後の最後に、まさかの「やられた!」感。

    ミステリ部分そのものもとても面白いのですが、ダニエル先生をはじめ、彼の弟子のバートンズが、すごく良いのです。
    悪い人は、とことん悪いのだけれど、正義を貫こうとするサー・ジョンや、盲目の彼の目の役割を担う、姪のアン、銀行のヒューム氏等、良い人も多いです。

    併録されている前日譚の短編も、面白かったです。
    バートンズの絆にほのぼの。
    鬘をもう被らせてもらえなくなって、しょんぼりするチャーリーも可愛い!


    本編とは全く関係ないのですが、ダニエル先生の容姿についての描写を読んでいて、昔、山城新伍氏が映画解説で、ジェラール・ドパルデューの事を、「じゃがいもみたいなおっさん」と言っていた事を思い出しました。
    なので、何となく、ダニエル先生は、ジェラール・ドパルデューみたいなイメージです。
    そう言えば、ジェラール・ドパルデューは、ヴィドック役をしていましたね。

  • 文句なく素晴らしい!!!でもこの本は実は一度途中でやめてた。それというのもやはり皆川さんの描くペダンティック的文体(悪口ではないつもり)には、描く世界の前知識がないと若干辛いのですよ。ところが奇しくも「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」を読んだ後に読み返し始めたら、面白いこと面白いこと。本作の主人公ダニエル・バートンは明らかにジョン・ハンターがモデルであり、実在の彼を取り巻く人々、兄や最愛の弟子たち、そして当時の習俗がこれでもかと描かれており、伝記を読んでいた身としてはあちこちでニヤニヤできるという。いやホント、まずジョン・ハンターについてしっかり知識をつけておくことで本書を読む楽しさが何倍増にもなるのでオススメですよ。

  • 物語は面白いのだけれど、期待しすぎた為か途中から飽きてしまった。時代背景など丁寧に書かれていて良かったが、登場人物の多さや名前の長さが読み進めるにつれてやや面倒…。

    続編が気になるものの、手に取るかどうかは悩ましい。

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著者プロフィール

1930年旧朝鮮京城市生まれ。1973年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で日本推理作家協会賞を、『恋紅』で直木賞を、『薔薇忌』で柴田錬三郎賞を、『死の泉』で吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出される。

「2021年 『OTOGIBANASHI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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