開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 2605
感想 : 205
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  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311292

作品紹介・あらすじ

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男。戸惑うダニエルと弟子たちに治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には詩人志望の少年の辿った恐るべき運命が…解剖学が最先端であり偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちが可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む、本格ミステリ大賞受賞作。前日譚を描いた短篇を併録。

感想・レビュー・書評

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  • すごい…⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝

    感動的におもしろい…!!



    1770年、ロンドンが舞台。

    ダニエルの解剖教室では、5人の弟子達が学んでいる。

    イギリスでは解剖学が他国より遅れをとっていた時代。

    墓を暴いて手に入れた死体を買い、解剖をしている為、役人の目に注意しながら研究を続けている。

    急に来訪した治安隊に、慌てて暖炉の裏に死体を隠した弟子達。

    暖炉の裏には、隠した死体の他に、2体の死体が隠されていた——。

    しかもそのうちの一体の四肢が切断されているとキタ。
    気になりすぎる作品でした( ✧﹃✧)


    ダニエルの弟子達5人がとても賢くて先生想いで尊い……(ღ*ˇ ˇ*)。o♡

    法医学という名前もまだない時代ですが、解剖学に全てを捧げているダニエルを慕って、真剣に、時にコミカルに描かれている弟子達の様子がとても魅力的です。

    『盲目判事』ジョンは、目が見えない代わりに他の器官が研ぎ澄まされ、虚言を見抜く力があるのも面白い。

    判事の姪であり、治安隊の一員であるアンは、彼の『目』になり、状況を正確に伝えます。

    面白いと思ったのは、状況説明ではなく(彼女の言葉で)現在行われている行為が、見たままに伝えられている描写です。
    ミステリなので、そんな言葉も警戒しながら読んでしまいますね(^▽^;)

    登場人物が多いので、怪しい人ばかり笑

    余計な推理はさっさと放棄して、楽しみました(^▽^;)

    翻訳された海外作品を読んでいる気分…(〃´-`〃)♡

    徐々に真相が明らかになってくるので、後半は一気読み必至。

    ラストまで気が抜けない展開で、めちゃめちゃおもしろかったです!!

    とにかくキャラが魅力的なこの作品。

    3部作らしいので、続きも読みたい!!ヽ(´▽`)ノ


    おすすめです!!

  • 舞台は18世紀のロンドン。この時代のロンドンならではというべき(個人的には全然詳しくないので完全に感化された感もありますが)ミステリーを堪能した。序盤から不可解な謎が重なり、魅力的な登場人物たちによって解決されていく。これだけ書くととても普通なのだが、当時のロンドンの環境や暮らしぶり、身分、文化、医療の発達度合、そのあたりがとても想像しやすく描かれているため、読んでいるこちらは自然と物語の中に没入していく。登場人物たちがみな魅力的でどこかひと癖もふた癖もありそうなところも、グッと入り込んでしまう理由だろう。思いがけない結末は現代では許されないことなのだが、とても人間らしさを感じて咎める気にはならない。罰は社会が与えるのではなく、個人で受けるその覚悟に適正だと思いたい。それくらいこの時代の物語に魅了された。ただ、時代を遡って暮らしてみたくはないが。

    人体を切開することに偏見があり、解剖学では遅れているイギリス。物語は妊婦の女性の解剖中に、犯罪捜査犯人逮捕係が解剖室に押しかけてくるところから始まる。立ち入られる前に訳あって屍体は暖炉の中に隠すのだが、話の末いざ隠した屍体を出してみると四肢のない屍体にすり変わっている。さらに顔が潰れた別の屍体まで発見される。その場の誰も知らない二体の屍体。ここから最後まで驚きと同調で存分に楽しめる。続編も楽しみになったし、参考文献にある『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』も読みたくなって読後に購入してしまった。こちらも読んでみよう。

  • 学生時代の一時期、皆川博子先生の作品にどハマりして、合う人合う人に薦めまくっていたことがある。幻惑的で妖しく、各場面が眼前に浮かぶような筆致、そして張り巡らされた伏線を回収する巧みさ…どの作品にも魅力された。 

    それから二十数年、皆川先生は齢90を超えてなお現役で健筆を振るっておられる。なんとありがたい。私がハマるきっかけとなったのは名作『死の泉』だが、70代以降の作品は名作揃いで、辻真先先生と並ぶレジェンドである。

    本書は再読で、久しぶりに皆川作品を読んだ。三部作の文庫版が近く出るということで、一作目を読み返したのである。そして、めくるめく皆川ワールドに陶然としている。有栖川有栖先生の解説もありお得な文庫である。

    皆川作品はいいぞ!と久しぶりに誰かに薦めたくなっている。

  • 期待して読んだ。
    期待し過ぎていたのかも知れない。
     
    舞台は十八世紀、イギリスはロンドン。
    今ほど医学は進んでおらず、解剖という行為そのものにまだまだ誤解や偏見がある時代。
    解剖学を進歩させようと情熱を傾ける医師ダニエルの私的な解剖教室から、四肢の切断された謎の少年の遺体と顔を潰された謎の男の遺体が突如発見された!
     
    ツカミは抜群!
     
    さらに
    解剖学に心血を注ぐ外科医。
    その容姿端麗な一番弟子。
    天才的な素描画家の弟子。
    盲目の治安判事。
    その姪で判事の目となる助手。
    「鉄の罠」の異名を持つ助手。
    などなど個性的な登場人物が活躍します。
     
    でも……。合わなかったな~。
    ワクワクもドキドキも恐怖も不思議も愛着も何も感じることができなかった。
    残念。

    はっきりとした難点がひとつ。
    登場人物が把握しづらい。
    たとえば、外科医の容姿端麗な一番弟子、エドワード・ターナーは、仲間内では「エド」と呼ばれ、「ターナー君」と呼ばれることもあり、公的には「エドワード・ターナー」と呼ばれることも。
    他の登場人物も同様にいろいろと名があります。
    おかげで500ページ近くある本書のラスト近くまで、巻頭にある登場人物一覧に指を挟んだまま読むことになりました。
     
    続編も出版されているようなので期待したんですが、読み終えて「疲れたな~」という感想しか持てませんでした。

  • 18世紀のロンドンを舞台とした、極上のミステリー。

    建物は煤煙で汚れ、治安や衛生状態の悪いロンドンは、袖の下が横行し、犯罪者が公正に裁かれることの期待できない、前近代的な社会でもある。街には追い剥ぎや浮浪者に溢れ、犯罪事件に事欠かない。

    コヴェント・ガーデンで外科医のダニエルが運営する解剖教室は、違法に死体を確保しなければ人体解剖できず、日々死体確保に四苦八苦している。

    そんな解剖教室で、四肢を切断された少年と顔を潰された男、二体の謎の死体が発見される。事件には、ダニエルの弟子のエドとナイジェルが関わっているようなのだが、捜査が進むうち、事件は複雑度を増していく。

    探偵役は、盲目の治安判事ジョン・フィールディング(サー・ジョン)とその姪で助手を務めるアン=シャーリー・モア。この二人のコンビがなかなかいい。

    ラストに予想外のどんでん返しが用意されている。終わり方もスッキリしていて気持ちいい。是非、続編「アルモニカ・ディアボリカ」も読んでみたい!

    解説によれば、ダニエルやサー・ジョンにはモデルとなる実在の人物がいるとのこと。「解剖医ジョン・ハンターの数奇な運命」、サー・ジョンの兄が書いたという「トム・ジョーンズ」、本書と同じくサー・ジョンが活躍するミステリー「グッドホープ邸の殺人」にも注目したい。

    なお、本作のタイトルは、外科医ダニエルの弟子達が遺体を解剖する時に遺体に敬意を表し言葉から。『「さて、開かせていただき光栄です」delighted to meet you――お目にかかれて光栄です――を、dilateed to meet you と言い換えて、クラレンスは男の骸に会釈した』

  • カタカナの名前覚えられねーーー!! と2回挫折した本ですが、1年ぶり3回目にして読み終わりました。そしたらまあおもしろいことおもしろいこと。。。テーマは復讐でしょうか。鬱積したものが終盤に解き放たれて清々しいです。
    さらに著者が執筆時に80歳ということで、本筋とはまったく関係ないところで驚きました。文章が若々しいので失礼ながら20代の作家さんを想像してました。

  • 皆川博子さんにしか書けないような作品だった
    18世紀ロンドンの不潔さと猥雑さ
    身分と貧富の差に支配せれている
    偏見に満ちた【解剖】に取り組む外科医と弟子たち
    優秀すぎた弟子の途方も無い犯罪
    登場人物たちの濃いキャラで一気に読んだ
    終始、煤けている灰色の物語

  • 18世紀のロンドンの解剖医学教室という設定がとても興味深かった。
    謎が謎を呼ぶミステリーとしても面白かったけど、歴史小説としても楽しめた。
    医学にしても、法曹界にしても、未発達で、こんな酷いことがまかり通ってたんだと、びっくりした。
    美少年、天才画家、盲目の判事と彼に眼になる姪などキャラクターも魅力的だった。

  • 2冊目の皆川さん。ちょっとダークで耽美な世界観のミステリー。ダニエル先生の解剖学教室で起こった死体が増える事件の謎を個性豊かな弟子たちや、盲目の判事が追う?
    舞台となった欲望渦巻く18世紀ロンドンがまるで見てきたかのような描写でそれだけでも読み応えあると思うのに、ミステリ自体も私は最後まで分からなくて面白かった。
    何考えてるかわかんないながらもエドに感情移入して呼んでいたから最後は少し切なかったな。

  • すこしまえに「王妃の離婚」を読んだが、知らずに似た時代の傑作を読んでいた。
    ミステリーとしても、時代考察の資料としても、最高に面白い一冊だった。「壁」「恋紅」以来の皆川博子作だったが、歳を重ねても衰えない筆力に脱帽。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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