ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 462
感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311308

作品紹介・あらすじ

大兄(おおえ)は幼い頃の鮮烈な記憶に衝き動かされ、東京大学で理論物理の研究に明け暮れている。ある日、新任研究員の遠智(おち)にその目的を見抜かれ……人気アニメの前日譚たる誕生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「それは、乳房であった。」
    幼い頃、初めて見たミロのヴィーナス像の乳房の美しさに打ちのめされた大兄太子。
    彼が知ったのは、女性の体の形状、心とは何の関わりもない物体としての、どうしようもない魅力だった。

    長じて学問にのめり込んでいった大兄は、彼と同等の天才を持つ青年・遠智と出会い、さらにただひたすらにサイエンスの極みへ、禁断の研究へと突き動かされていく…


    『タイタン』が面白かったので、野崎まど作品を順に読み倒すべく、たまたま図書館ですぐそこにあった一冊から読んだ。
    アニメは見ていないので、この世界がこの後どう展開してゆくのか全く知らず、ただSFとして読んで、面白かった。

    架空の超物理理論の黎明期が、むしろレトロな雰囲気を持った日本?の《鳴和〜白飾》時代の出来事として語られるのが、不思議な感覚。

    その研究の理論を担う大兄の幼年期から青年期までの懊悩。運命の友となった遠智との、それぞれに傷付き壊れた心が絡み合う友情、理想と絶望がぶつかり合う運命の実験の日。

    大兄太子という人間の前半生、「イヴ」を生み出した人々の熱狂の物語の始まりとして、謎めいて妖しい魅力があった。
    読み終えてみれば、ごく薄い、170ページ足らずの物語なのに。

    その成果である人造女性「イヴ」と「ドール」の生成が成った後に、研究が凍結されたことが年表で示されて終わるところも、良かった。


    この続きとなる物語はアニメやアプリ、ジュブナイルがあるようだけれど、解説を読む限り、どうも手ざわりがまったく違うようなので、触らない方がいいのかも…
    軽い異世界物もファンタジーも大好きだけれど、こういうのも、完全にトリップ出来ていい。
    次はどの作品を読もうか、楽しみ。

    誰にでも大声でお勧めできる面白さではなさそうなので、評価の星は2つにしたけれど、面白さは限りなく3つ。満足。

  • プリキュアのようなアニメのメディアミックス作品と思わせておいて、この倒錯した話はまったく・・・さすが野埼まどです。『それは乳房であった』から始まる話はなかなかないね。

  • 深夜アニメ「ファンタジスタドール」の前日譚だ。
    が、イブを読むのにアニメの方を見る必要はおそらくない。俺も見ていない。読後にアニメの方の概要を見て、あまりの雰囲気の違いに二度見するくらい関係ない。

    すべての話が最後の一点に向けて加速するためにあるような物語をブラックスワン型と自分の中で呼んでいるのだけど、イブもこのブラックスワン型だ。


    ファンタジスタドールイブはある少年が学者を志し、大学生活を経て研究者となり、歴史を変えるような偉大な発明をするお話だ。今思い返してみれば、これは何を創りだしたのかが最後に分かる偉人伝のような話で、まさしくその一点に向かうために主人公の人間関係や苦悩が書かれている。

    複雑な家庭に育ち、ある失敗から修行者のように学問に没頭した彼は大学で自分の人間性に疑問を持つようになる。仲良くしている同期や、自分を慕う後輩にすら膜のような隔たりを感じ、自分が人間のふりをした別の何かのように思う。その一方で同期と一緒に飲む楽しさや、負けず嫌いな後輩と科学について話す時間の得難さが本物であるとも感じる。世界を変えうる研究をしながら、自分は人間か、いや人間になれるかと彼は悩む。

    彼の人生の節目には必ずそれに大きく関わる女がいて、その時々の女性との関係が主人公である彼に大きな影響を及ぼす。大体身をよじるような結末を迎えるのだけど、そのどれもが主人公を科学者として加速させ、常人には決して辿りつけない「本当の目的」に向かわせる。その「本当の目的」こそが主人公の根本的な問題点であり、主人公が歴史に名を残す理由なのだ。


    すげえ、純文学みたい。

    すべての加速が終わって病院のベッドでうなずくシーンがとてもすごくいいのだけど、タグをつけるとしたら謎の感動だと思う。その直後の「帰りたまえ」も心情は今までの流れで十分分かるし初見では違和感なかったけど一旦素に戻るとおもしろおじさんペアすぎる…

    全世界から有能なバカが集まっちゃった話ではあるんだけど、実際にがんばれば手に届く位置にそれがあったなら。全世界からジークジオンとつぶやく声が聴こえることでしょう。倫理観とか捨て置け。

  • 野崎まど、「know」に続くハヤカワ2作目。体裁や文体などあらゆる面で古典を意識しているかのようで、新しくなっているなあと感じた。太宰の「人間失格」を感じた人は多いでしょう。ただ、ジャンル的に言えばSFなので、古典とSFとの融合的な部分を強く感じた。

  • 野崎まど「ファンタジスタドール・イヴ」は傑作。野崎まど劇場を読んでいただけに、女体に対する主人公の想いや純文学風の文体は最初、悪ふざけにも見えたがガチな作品だった。…文体については多少の悪ふざけ要素はあるだろうけれどw ただ、作品のテーマに相応しい語り口調であるのは確か。

    文学的・哲学的なSF作品というと「テクノロジーと倫理」という問題はよく出てくるが、この作品ではSFを背景にしながらも、人間自身を描いているのが面白い。人に言えない異常性に苦しみ、だからこその罪悪感や孤立感に苦しむという、誰しもが持つような苦しみが描かれる。

    笠野と遠智の二人の友人の対比もよかった。大兄は自らの異常性に苦しむ遠智に共感するが、笠野らを愛すべき友人とも思えるんである。そして、中砥の最後の一言がなんともいいじゃないですか!どうしても自分の異常性ばかりに目が行ってしまうが、実は程度の差なのかもしれない。

    とにもかくにも素晴らしい中編小説でした。や、女性の造形が持つ魅力というのは、男にとってはこれくらい強烈なものなのですよw しかし、主人公の名前といい、組織名での笑いといい、著者がどこまで本気で悪ふざけなのか分からん!という部分はあるw いずれにせよ、今年一番のインパクトかも。

    …ちなみに、アニメのファンタジスタドールは1話をほんのちょっとみただけですはいw アニメを知らない方でも、思いっきり楽しめる小説です。

  • 1Pでいきなりエレクトロンボルトを力の量とか言ってて萎える。

    読了。人間失格のパスティーシュ?結局物語が動き始めるあたりで唐突に終わった印象でよくわからなかった。

  • ファンタジスタドール プロジェクトの一環として、
    メインストーリーの過去話となる作品。
    ある物理に携わる人間の人生とイヴとい存在を生み出すまでの物語。

    メインとなるアニメは観ずに、野崎まどの作品として読みました。
    太宰治の人間失格に寄せて書かれたというのを見たのですが、
    読んでみて、たしかに、人間失格に似ているし、
    三島由紀夫の青の時代にも似ているという印象。

    読んでいる感じでは、そういういった文豪に寄せたことで、
    少し古い感じの流れや文章と言う感じであるのに、
    高度な物理学やLANが出てくるあたりは、現代か未来でSFであることが
    わかります。
    この作品から読むのとアニメなど他の作品を観たり読んだりしてから、
    読むのとでは印象が変わってくるでしょう。
    自分としては、アニメを観てみないことには、何とも評価が難しく、
    唐突な最後の展開には難儀ですが、伏線的なところを鑑みれば、
    繋がる展開なのかとも思うところ。

    理想の女性とは・・・。

  • 図書館で。
    物凄い拗らせた系の男性が女性に対するリビドーを昇華させた感じのお話。個人的にはそれでも博士になれるんだからすごいと思う。
    彼は異性への興味を不順な、唾棄すべきものとしかとらえられなかったんだな~

    で、その作られた生命体が出てこないなと思ったら、メディア展開されたゲーム?だかアニメだかの前日譚だったんですね。

  • 結構真面目に読んでたのに「彼が、残された右腕で触れる乳房が、こんな陳腐でありふれた、そこら辺の、誰にでも手に入る乳房でいいはずがない」という越智の台詞出てきた時に『ギャグかよ!』ってなった。多分壮大なSFギャグ小説だったんだと思う、前フリ長い!

  • え?これアニメだと美少女日常系なの?嘘でしょ?と感じてしまった、「ファンタジスタドール」というアニメの前日譚を書いた小説。アニメは見ていないのだが、これを読んでいるとてっきり鬱々としたSF作品かと思った。

    そう、本作はエンタメSF版私小説とでも言おうか、根暗な主人公の一人称で語られる展開や言葉選びや音引きの使い方など、大正期から昭和初期の純文学を思わせるのだ。その癖読みやすいのだから、著者の筆力に脱帽だ。

    男女間に限らない、情愛と心の距離と体の変化、その機微もよく描かれ心が痛む。

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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