- 早川書房 (2013年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (100ページ) / ISBN・EAN: 9784150311308
作品紹介・あらすじ
大兄(おおえ)は幼い頃の鮮烈な記憶に衝き動かされ、東京大学で理論物理の研究に明け暮れている。ある日、新任研究員の遠智(おち)にその目的を見抜かれ……人気アニメの前日譚たる誕生の物語。
感想・レビュー・書評
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明日を夢見る力
独白のような語り口で進むストーリー、言葉の一つひとつが重く、自然とページを捲る手が重くなる。読み終わって今、何もわからなかったような、でも最初からわかっていたような、そんな不思議な気持ちになる。本作はアニメの前日譚とのことだが、良い意味で先を期待させない、でも布団の中で明日を夢見るような余韻のある。この先もう一度読むかどうかはわからないが、本棚にいて欲しい、そんな一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アニメがあって、その前日譚が本書らしい。アニメは見ていない。この作家の登場人物の思考描写が毎回ユニークなものでとても興味深く拝見している。
私にはない発想にいつも驚く。本作品も期待を裏切っていない。 -
ファンタジスタドール プロジェクトの一環として、
メインストーリーの過去話となる作品。
ある物理に携わる人間の人生とイヴとい存在を生み出すまでの物語。
メインとなるアニメは観ずに、野崎まどの作品として読みました。
太宰治の人間失格に寄せて書かれたというのを見たのですが、
読んでみて、たしかに、人間失格に似ているし、
三島由紀夫の青の時代にも似ているという印象。
読んでいる感じでは、そういういった文豪に寄せたことで、
少し古い感じの流れや文章と言う感じであるのに、
高度な物理学やLANが出てくるあたりは、現代か未来でSFであることが
わかります。
この作品から読むのとアニメなど他の作品を観たり読んだりしてから、
読むのとでは印象が変わってくるでしょう。
自分としては、アニメを観てみないことには、何とも評価が難しく、
唐突な最後の展開には難儀ですが、伏線的なところを鑑みれば、
繋がる展開なのかとも思うところ。
理想の女性とは・・・。 -
プリキュアのようなアニメのメディアミックス作品と思わせておいて、この倒錯した話はまったく・・・さすが野埼まどです。『それは乳房であった』から始まる話はなかなかないね。
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今更ながらこの本の存在を知って読んでみました. アニメは全話見ていましたが,あのアニメの前日譚だと言われないと気が付かないほどに違った雰囲気な作品でした. また,店で本を手にとったとき,とても薄いなと思いましたが,実際に読んでみると見かけ以上の内容の濃さだと感じました.
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野崎まどは、書くのに縛りが無ければ無いほど良いものを創り出す作家だ。「何でもあり」と言われて、本当に面白いものを書ける人は意外にいない。
どの領域にまで到達するのか予想もつかない、というのが持ち味の作家に、本作は原作付きの前日譚というゴールが分かっている真逆の条件。それでも文学的風味付けを施して十分に良作として仕上がっている。言ってみれば、伊藤計劃のMGSノベライズのような位置づけか。 -
深夜アニメ「ファンタジスタドール」の前日譚だ。
が、イブを読むのにアニメの方を見る必要はおそらくない。俺も見ていない。読後にアニメの方の概要を見て、あまりの雰囲気の違いに二度見するくらい関係ない。
すべての話が最後の一点に向けて加速するためにあるような物語をブラックスワン型と自分の中で呼んでいるのだけど、イブもこのブラックスワン型だ。
ファンタジスタドールイブはある少年が学者を志し、大学生活を経て研究者となり、歴史を変えるような偉大な発明をするお話だ。今思い返してみれば、これは何を創りだしたのかが最後に分かる偉人伝のような話で、まさしくその一点に向かうために主人公の人間関係や苦悩が書かれている。
複雑な家庭に育ち、ある失敗から修行者のように学問に没頭した彼は大学で自分の人間性に疑問を持つようになる。仲良くしている同期や、自分を慕う後輩にすら膜のような隔たりを感じ、自分が人間のふりをした別の何かのように思う。その一方で同期と一緒に飲む楽しさや、負けず嫌いな後輩と科学について話す時間の得難さが本物であるとも感じる。世界を変えうる研究をしながら、自分は人間か、いや人間になれるかと彼は悩む。
彼の人生の節目には必ずそれに大きく関わる女がいて、その時々の女性との関係が主人公である彼に大きな影響を及ぼす。大体身をよじるような結末を迎えるのだけど、そのどれもが主人公を科学者として加速させ、常人には決して辿りつけない「本当の目的」に向かわせる。その「本当の目的」こそが主人公の根本的な問題点であり、主人公が歴史に名を残す理由なのだ。
すげえ、純文学みたい。
すべての加速が終わって病院のベッドでうなずくシーンがとてもすごくいいのだけど、タグをつけるとしたら謎の感動だと思う。その直後の「帰りたまえ」も心情は今までの流れで十分分かるし初見では違和感なかったけど一旦素に戻るとおもしろおじさんペアすぎる…
全世界から有能なバカが集まっちゃった話ではあるんだけど、実際にがんばれば手に届く位置にそれがあったなら。全世界からジークジオンとつぶやく声が聴こえることでしょう。倫理観とか捨て置け。 -
野崎まど、「know」に続くハヤカワ2作目。体裁や文体などあらゆる面で古典を意識しているかのようで、新しくなっているなあと感じた。太宰の「人間失格」を感じた人は多いでしょう。ただ、ジャンル的に言えばSFなので、古典とSFとの融合的な部分を強く感じた。
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野崎まど「ファンタジスタドール・イヴ」は傑作。野崎まど劇場を読んでいただけに、女体に対する主人公の想いや純文学風の文体は最初、悪ふざけにも見えたがガチな作品だった。…文体については多少の悪ふざけ要素はあるだろうけれどw ただ、作品のテーマに相応しい語り口調であるのは確か。
文学的・哲学的なSF作品というと「テクノロジーと倫理」という問題はよく出てくるが、この作品ではSFを背景にしながらも、人間自身を描いているのが面白い。人に言えない異常性に苦しみ、だからこその罪悪感や孤立感に苦しむという、誰しもが持つような苦しみが描かれる。
笠野と遠智の二人の友人の対比もよかった。大兄は自らの異常性に苦しむ遠智に共感するが、笠野らを愛すべき友人とも思えるんである。そして、中砥の最後の一言がなんともいいじゃないですか!どうしても自分の異常性ばかりに目が行ってしまうが、実は程度の差なのかもしれない。
とにもかくにも素晴らしい中編小説でした。や、女性の造形が持つ魅力というのは、男にとってはこれくらい強烈なものなのですよw しかし、主人公の名前といい、組織名での笑いといい、著者がどこまで本気で悪ふざけなのか分からん!という部分はあるw いずれにせよ、今年一番のインパクトかも。
…ちなみに、アニメのファンタジスタドールは1話をほんのちょっとみただけですはいw アニメを知らない方でも、思いっきり楽しめる小説です。 -
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図書館で。
物凄い拗らせた系の男性が女性に対するリビドーを昇華させた感じのお話。個人的にはそれでも博士になれるんだからすごいと思う。
彼は異性への興味を不順な、唾棄すべきものとしかとらえられなかったんだな~
で、その作られた生命体が出てこないなと思ったら、メディア展開されたゲーム?だかアニメだかの前日譚だったんですね。 -
え?これアニメだと美少女日常系なの?嘘でしょ?と感じてしまった、「ファンタジスタドール」というアニメの前日譚を書いた小説。アニメは見ていないのだが、これを読んでいるとてっきり鬱々としたSF作品かと思った。
そう、本作はエンタメSF版私小説とでも言おうか、根暗な主人公の一人称で語られる展開や言葉選びや音引きの使い方など、大正期から昭和初期の純文学を思わせるのだ。その癖読みやすいのだから、著者の筆力に脱帽だ。
男女間に限らない、情愛と心の距離と体の変化、その機微もよく描かれ心が痛む。 -
谷口さんの文章を読み終わってやっと『ファンタジスタドール』というアニメのメディアミックス作品だと気付いた。『ファンタジスタドール イヴ』というオリジナル作品だと思って読み進めてしまっていたので、ちょっと違和感があったのはこれか~と最後の最後に気付くという、間抜けな自分にため息がでた。
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それは、乳房であった。
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父子家庭に育ち、幼少期から使用人、同級生、など身近な女性たちと性に纏わる背徳的な思い出を重ねながら、それを払拭するかのように研究に打ち込む主人公と、その前に現れる、婚約者に裏切られた過去を持つ同僚。研究室の後輩女性を巡る主人公の想い、そこから導かれるものとは。
これまでの「THE野崎まど節」のようなテイストではなく、どこか純文学や古典SF小説の香りのする文体。最後の最後の活字遊びが野崎風味?(でも多分野崎氏オリジナルの発想ではなく、メディアミックスありきの設定として前提に決まってた部分なんだろうな) -
文学でSFな野崎まど。
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スピンオフのクヲリティにしては面白く読めた。女中とのオネショタ、小学生時代の同級生へのピーピング、母親の身体に対する値踏み、中砥の玄姦なと抜きどころ満載でありながら、あからさまなギャグを一切取っ払った文学的な構成に野まどへの信仰を強めざるを得ない
著者プロフィール
野﨑まどの作品
