ファンタジスタドール イヴ (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 375
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311308

作品紹介・あらすじ

大兄(おおえ)は幼い頃の鮮烈な記憶に衝き動かされ、東京大学で理論物理の研究に明け暮れている。ある日、新任研究員の遠智(おち)にその目的を見抜かれ……人気アニメの前日譚たる誕生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 野崎まど「ファンタジスタドール・イヴ」は傑作。野崎まど劇場を読んでいただけに、女体に対する主人公の想いや純文学風の文体は最初、悪ふざけにも見えたがガチな作品だった。…文体については多少の悪ふざけ要素はあるだろうけれどw ただ、作品のテーマに相応しい語り口調であるのは確か。

    文学的・哲学的なSF作品というと「テクノロジーと倫理」という問題はよく出てくるが、この作品ではSFを背景にしながらも、人間自身を描いているのが面白い。人に言えない異常性に苦しみ、だからこその罪悪感や孤立感に苦しむという、誰しもが持つような苦しみが描かれる。

    笠野と遠智の二人の友人の対比もよかった。大兄は自らの異常性に苦しむ遠智に共感するが、笠野らを愛すべき友人とも思えるんである。そして、中砥の最後の一言がなんともいいじゃないですか!どうしても自分の異常性ばかりに目が行ってしまうが、実は程度の差なのかもしれない。

    とにもかくにも素晴らしい中編小説でした。や、女性の造形が持つ魅力というのは、男にとってはこれくらい強烈なものなのですよw しかし、主人公の名前といい、組織名での笑いといい、著者がどこまで本気で悪ふざけなのか分からん!という部分はあるw いずれにせよ、今年一番のインパクトかも。

    …ちなみに、アニメのファンタジスタドールは1話をほんのちょっとみただけですはいw アニメを知らない方でも、思いっきり楽しめる小説です。

  • 1Pでいきなりエレクトロンボルトを力の量とか言ってて萎える。

    読了。人間失格のパスティーシュ?結局物語が動き始めるあたりで唐突に終わった印象でよくわからなかった。

  • 結構真面目に読んでたのに「彼が、残された右腕で触れる乳房が、こんな陳腐でありふれた、そこら辺の、誰にでも手に入る乳房でいいはずがない」という越智の台詞出てきた時に『ギャグかよ!』ってなった。多分壮大なSFギャグ小説だったんだと思う、前フリ長い!

  • え?これアニメだと美少女日常系なの?嘘でしょ?と感じてしまった、「ファンタジスタドール」というアニメの前日譚を書いた小説。アニメは見ていないのだが、これを読んでいるとてっきり鬱々としたSF作品かと思った。

    そう、本作はエンタメSF版私小説とでも言おうか、根暗な主人公の一人称で語られる展開や言葉選びや音引きの使い方など、大正期から昭和初期の純文学を思わせるのだ。その癖読みやすいのだから、著者の筆力に脱帽だ。

    男女間に限らない、情愛と心の距離と体の変化、その機微もよく描かれ心が痛む。

  • 谷口さんの文章を読み終わってやっと『ファンタジスタドール』というアニメのメディアミックス作品だと気付いた。『ファンタジスタドール イヴ』というオリジナル作品だと思って読み進めてしまっていたので、ちょっと違和感があったのはこれか~と最後の最後に気付くという、間抜けな自分にため息がでた。

  • 野崎まどは、書くのに縛りが無ければ無いほど良いものを創り出す作家だ。「何でもあり」と言われて、本当に面白いものを書ける人は意外にいない。
    どの領域にまで到達するのか予想もつかない、というのが持ち味の作家に、本作は原作付きの前日譚というゴールが分かっている真逆の条件。それでも文学的風味付けを施して十分に良作として仕上がっている。言ってみれば、伊藤計劃のMGSノベライズのような位置づけか。

  • それは、乳房であった。

  • 父子家庭に育ち、幼少期から使用人、同級生、など身近な女性たちと性に纏わる背徳的な思い出を重ねながら、それを払拭するかのように研究に打ち込む主人公と、その前に現れる、婚約者に裏切られた過去を持つ同僚。研究室の後輩女性を巡る主人公の想い、そこから導かれるものとは。

    これまでの「THE野崎まど節」のようなテイストではなく、どこか純文学や古典SF小説の香りのする文体。最後の最後の活字遊びが野崎風味?(でも多分野崎氏オリジナルの発想ではなく、メディアミックスありきの設定として前提に決まってた部分なんだろうな)

  • 文学でSFな野崎まど。

  • スピンオフのクヲリティにしては面白く読めた。女中とのオネショタ、小学生時代の同級生へのピーピング、母親の身体に対する値踏み、中砥の玄姦なと抜きどころ満載でありながら、あからさまなギャグを一切取っ払った文学的な構成に野まどへの信仰を強めざるを得ない

  • 薄いページ数に反して濃厚な体験でした

  • 背表紙見た瞬間すっごくいい匂いがした。
    開いてみてよくわからない単語にドキドキした。
    読むのが楽しみ。

    期待通りの一作。
    今後展開されるであろう元のアニメ?部分について全く無知でも堪能できる。
    主人公の変人→変態へと突き進んでいく過程が丹念で、頭はいい思春期の男の子が周りの環境とちょっとしたきっかけでわき道にそれてそのまま踏み外していく様が純文を読んでいるようで引き込まれていった。(むしろSFとかより純文でいいと思う。)

  • 深夜アニメ「ファンタジスタドール」の前日譚だ。
    が、イブを読むのにアニメの方を見る必要はおそらくない。俺も見ていない。読後にアニメの方の概要を見て、あまりの雰囲気の違いに二度見するくらい関係ない。

    すべての話が最後の一点に向けて加速するためにあるような物語をブラックスワン型と自分の中で呼んでいるのだけど、イブもこのブラックスワン型だ。


    ファンタジスタドールイブはある少年が学者を志し、大学生活を経て研究者となり、歴史を変えるような偉大な発明をするお話だ。今思い返してみれば、これは何を創りだしたのかが最後に分かる偉人伝のような話で、まさしくその一点に向かうために主人公の人間関係や苦悩が書かれている。

    複雑な家庭に育ち、ある失敗から修行者のように学問に没頭した彼は大学で自分の人間性に疑問を持つようになる。仲良くしている同期や、自分を慕う後輩にすら膜のような隔たりを感じ、自分が人間のふりをした別の何かのように思う。その一方で同期と一緒に飲む楽しさや、負けず嫌いな後輩と科学について話す時間の得難さが本物であるとも感じる。世界を変えうる研究をしながら、自分は人間か、いや人間になれるかと彼は悩む。

    彼の人生の節目には必ずそれに大きく関わる女がいて、その時々の女性との関係が主人公である彼に大きな影響を及ぼす。大体身をよじるような結末を迎えるのだけど、そのどれもが主人公を科学者として加速させ、常人には決して辿りつけない「本当の目的」に向かわせる。その「本当の目的」こそが主人公の根本的な問題点であり、主人公が歴史に名を残す理由なのだ。


    すげえ、純文学みたい。

    すべての加速が終わって病院のベッドでうなずくシーンがとてもすごくいいのだけど、タグをつけるとしたら謎の感動だと思う。その直後の「帰りたまえ」も心情は今までの流れで十分分かるし初見では違和感なかったけど一旦素に戻るとおもしろおじさんペアすぎる…

    全世界から有能なバカが集まっちゃった話ではあるんだけど、実際にがんばれば手に届く位置にそれがあったなら。全世界からジークジオンとつぶやく声が聴こえることでしょう。倫理観とか捨て置け。

  • 明治・大正の頃を思わせる文章なのに、パラレルワールドの現代、あるいは近未来を描いている不思議な感覚。わずか150ページほどの物語でも、濃く、深い。まるで純文学を読んだ様。これが前日譚なら本編を知りたくなる。野崎まど、恐るべし。

  • この物語は、ファンタジスタドールの誕生秘話である。アニメを鑑賞することで、いっそう楽しめる。そのはずなのだが、アニメはまだしも、小説は仰々し過ぎて好きではない。ちなみに、タイトルバック画像はファンタジスタドールのアニメを使用している。

  • 野﨑さんが書く、と聞いて事前にアニメもちょっとチェックしておいたくらい楽しみにしていたのに、購入後積んでる間に見失って悲嘆にくれていましたが、このほど発見。面白すぎて泣きそう。
    純文系シリアスギャグ素晴らしいです。
    主人公と遠智さいこう。
    とりあえず、\ファンタジスタッドー/

  • 戦前かと勘違いするような古風で淫靡な雰囲気。女体に固執し、懊悩するマッドサイエンティストの独白が綴られます。女という生き物に絶望した彼が禁断の人体生成術の研究に至るまでの物語です。
    しかし…やめとけばいいのに、元のアニメを見て…脱力しました。
    この小説の尤もらしい物理学の結果があの理想のヨメ⁈ 人間捨ててまで、まさに狂気の所業ですね‼︎
    シリアスを貫く高度な笑い、嫌いじゃないです。

  • アニメ全話視聴済みで読みました。確かに小説のほの暗い雰囲気はアニメとまったく違いますが、アニメの「少女の成長物語」の中に潜む、おかしさや不思議さが好きだった人はこちらも十分楽しめると思います。

    「頭のよい主人公が、女性の身体への執着をこじらせ、理想の女性を作るまでにいたる動機」が高潔に感じられるように書かれていて、すごく絶妙なバランスで成り立っている本でした。

  • 野崎まどの名に惹かれて購入。アニメは未視聴。

    女性の身体、特に乳房に複雑なる感情を抱く青年が、人間であることから離れ、初めてのドール・イヴを作るまでの話、だと思う。だと思う、と書いたのは、後半は推測でしかないから。人間らしい生き方を教えてくれた親友と好意を抱いた女性から離れ、高次元の思考を持つがまともな人間とは軸がずれている青年と女性生成を目指す。まるで太宰治の人間失格を読んだかのように、自らの異常性の吐露と人間になろうとしてならなかったことなどが書かれる。アニメも見たくなったが、この小説にあるような重厚で秘めたような、ともすれば暗い告白をするような雰囲気はないのだろう。明るい女の子達のキャッキャうふふを見せられた日には堪らない。

    とても良い作品でした。本に厚みはないが中身が薄いとは全く思わなかった。

  • アニメ「ファンタジスタドール」の前日譚…らしい。
    アニメの知識無しで読んだが非常に面白い。世界観が確立しており年表まであり実在かと錯覚させるほどに作り込まれている。
    アニメも見てみようかと思う。

  • 野崎まどさんが著者ということと、あらすじが生々しそうだったので購入。元となったアニメはこの作品がきっかけで知りました。アニメの絵を見て、読み終わって、またアニメの絵を見てみて、その空気感の違いがすごいなあ、と。これ本当にアニメの前日譚であってるのか、私の勘違いじゃあるまいなと今現在も混乱中。どう考えても、アニメは「乳房がー」「私は狂ってるー」みたいな話じゃないと思うんだ。読んでて、『人間失格』を思い出すような、男の暗い心の話だったから尚更分からん。とりあえず、とっても好みでした。アニメも調べてみよう。

  • 妄執の話、或いは童貞を拗らせた話(実際そうではないのだが)。最後の事故以降は宛ら質の悪い冗談の如き雰囲気なのであるが、素っ気なく添えられた年譜や、何より解説の監督の口振りがそのまま「秘密結社」の一員であるかの様であり、何とも笑えない。

  • 終わり方が爽快です

  • アニメ『ファンタジスタドール』未視聴の状態で読了。
    読了後、アニメ版のほうもちょっと見てみたけど
    雰囲気が全く違うことに気づいて乾いた笑い。

    アニメ『ファンタジスタドール』の前日譚という位置づけなので
    アニメ知らない・見たことないのに話わかるかな?という
    不安や危惧を抱えた状態で読み始めたものの
    アニメ全く関係ないし、むしろアニメ見ないほうが
    いいじゃないかという気がするくらいの別物。

    世界観の共有というところは多少あるのだろうけど。

    どこまで本気で、どこからが冗談なのか全くわからないのが
    野崎まどの魅力だけど、これはさすがに引くレベルのわからなさ。

    とはいえ、女性の体に強い執着を感じるがゆえに
    現実の、心と感情を持った女性には恐怖を感じたり
    どう接していいのかわからないという葛藤を
    心の奥底に抱えた人間の苦悩を描いた純文学風の味わいと文体で
    外側をくるみつつ、中身にSF小説のエッセンスを
    ギュッと凝縮した小説に仕立てあげた試みは出色の出来。

    なにをどうやらかそうが、面白いっていうのは正義である。

  • 野崎まど、「know」に続くハヤカワ2作目。体裁や文体などあらゆる面で古典を意識しているかのようで、新しくなっているなあと感じた。太宰の「人間失格」を感じた人は多いでしょう。ただ、ジャンル的に言えばSFなので、古典とSFとの融合的な部分を強く感じた。

  • TwitterのTLで話題になっていた+同じ作者の『know』が面白かったので、アニメーションの朧げな概要以外、殆ど何の予備知識もないまま購入。



    …最後まで読んで、「何だそのオチはっ!」とリアルに叫んでしまった…(笑)
    (簡単に、矮小化した表現をするのはどうかと思うのだけれど、上手く言葉にできないので致し方ない。)
    「拗らせる」とは、こう云うことなのかしら、と思いました。
    何となく、色々な方面へものすごい波紋を投げかけたのではないでしょうか…。勿論作者自身も自分で少なからずなダメージを被っただろう、とも。
    大変面白かったです。

  • 野崎まど流人間失格にSF要素を加味した何とも不思議な今作。
    最後の最後にアニメ前日譚ということを思い出させるようなラストは若干こじつけ感が否めないかも…
    ただあのアニメをこういう形でノベライズするのは面白い手法!
    あと、没頭していたからか、Y-Ome(ワイ・オーム)って最後まで"嫁"だってことに気づかなかったw

  • 太宰さんの『人間失格』が題材になってますねー
    というか、理系の大庭葉蔵?

    主人公の大兄太子さんは、葉ちゃんの女性に対する興味と恐怖の部分にフォーカスして作り出されたような人でした。
    最後の一言(帯にもなっていますが)に尽きるような人だったかと思います。

    なんにせよファンタジスタドール本編とは全くことなる雰囲気でした。
    あと年表がすごい。

  • 2013 10/10読了。Amazonで購入。
    アニメでやってたファンタジスタドールの前日譚、という位置づけらしいが、それをよりによって野崎まどに頼むか、と。
    案の定、とても可愛い女の子がいっぱい出てくるアニメ関連のノベライズとは思えない出来に。
    前日譚なので当然、尻切れ感はあるけれど、それを除けば独立した小説みたい。

  • なにこれ
    評判は知ってたけどファンタジスタドールの小説でこれが出てくるのがすごい…。
    あっという間に読み終わってしまった。
    いろいろと本編の裏側の考察というか妄想が広がる…。

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著者プロフィール

『[映]アムリタ』が第16回電撃小説大賞《メディアワークス文庫賞》を受賞、同作品にてデビュー。『know』が第34回日本SF大賞にノミネート、『バビロン』がTVアニメ化。ほか、TVアニメ『正解するカド』、劇場アニメ『HELLO WORLD』の脚本も手がけるなど、多方面で活躍中。

「2019年 『舞面真面とお面の女 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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