オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

著者 :
  • 早川書房
3.49
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本棚登録 : 179
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311483

作品紹介・あらすじ

時間SFの新機軸として絶賛を浴びたハヤカワSFコンテスト最終候補作ほか5篇を収録

感想・レビュー・書評

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  • パラレルワールド、過去改変をテーマにした短編集。著者の最初期作だとのこと。

    デビュー作ということもあり、少々荒味があってザラっとした読み感もあるものの、補ってあまりあるセンスオブワンダーな世界に魅了される。

    創造主にもてあそばれ、自らが創造主となったときは創造物にもてあそばれるのが愚かな人間というもの。小さいけど健気に生きているのが人間やねんでほんま。

    明らかにSF小説なんだけど、人間の哀愁を感じさせる味わいがよい。かといってウェットではなくドライな哀愁、無機質なおかしみとかなしみ。

    その味わいが最後に収録された、唯一SFとちょっと呼べない短編で、ブワっと開花する。SFじゃないのにパラレルワールドだし、今までのドラい風味がなぜかここで湿りを帯びだす…構成の妙、こういう展開好きやなぁ。

    次回作、早いこと出してください!

  • ハードディスクに上書きされるように過去が突然書き換えられる世界で記憶保持装置のモニターとなった男。設定だけでも面白いのに、途中で少しずつ雲行きが怪しくなり、翻弄された揚句ふっと自分の現実を確かめずにはいられなくなるほどどっぷり浸かっていました。この表題作「オニキス」をはじめ「神の創造」「猿が出る」「三千世界」までどれをとっても満足いくものです。ラストの「満月」の優しい収束がまた上手いですね。デビュー作とは驚きです。普段SFはあまり読まないのですがこれは素直に面白かったです。今後の作品も楽しみです。

  • 07/11/2017 読了。

    図書館から。

  • オニキス 村上春樹風の文体。物語の軸足が揺れ動く。それに伴い、読者の視点も変わる、ゆらゆらと揺り動かされる。話がどこへたどり着くのか
    途中で主人公が変わるのも

    神の創造 面白かった。内容的にオニキスを読んだあとなので警戒しながら読み進んだが、オニキスの流れとは違う内容なので、安心して読める。
    載せる順序はこちらが先の方が良かったかも。

    猿が出る 最後、猿との決着がどうなるのか、気になりつつ読み進んだ。昭和SF的な終わり方でちょっと残念。オチの子供とネズミも昭和的。

    三千世界 ともすると、目まぐるしくて、ごちゃごちゃしすぎて読んでいる方は訳が分からなく、置いていかれそうな世界構成だが、きちんと書かれており、整理して読みやすく、没入できた。

    ここから、オチに関わるネタバレ情報を書いています。









    全般に精神的な、幻覚的な内容が描かれていて、目次順に読んだので、そのあとの物語はオニキスのようなオチを警戒して十分に楽しめなかった。
    オニキスは、最後に持って行くべきか。

    ある意味、夢オチと同義のオチ方なのでこれはちょっとスッキリしない。

  • 過去に干渉する物質『マナ』。歴史は改変し、記憶が改竄され、現実が目まぐるしく書き換わっていく。表題作はこの認識がズレていく感覚が面白いですね。
    自宅の散らかり具合が、重なり合うミニチュアの異世界に影響を与える「神の創造」も良かった。シュールに誇張された異世界は現実社会の矛盾や格差を反映しているというSF小説の構造を描いた話なのかなと思います。

    センスオブワンダーと適度なユーモアのある短編5篇。なかなか楽しめました。

  • 【装幀・デザイン】
    岩郷重力+Y.S 丹地陽子
    【あらすじ】
    「マナ」により過去が書き換えられる世界を観察するため、由良芳雄は記憶保持装置のモニターとなるが――改変される現実と思いもよらぬ結末を描く、第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補の表題作など現代性と普遍性と奇想を兼ね備えた5篇収録のデビュー作品集。

  • ーーーマナという物質により過去が書き換えられる世界を観察するため、由良芳雄は記憶保持装置のモニターとなるが――
    改変される現実と思いもよらぬ結末を描く、第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補の表題作、
    自室の混沌と秩序を反映したミニチュア異世界が重ね合わされた男の日常「神の創造」、
    他人には見えない類人猿の進化を幻視する男の困惑「猿が出る」など、
    現代性と普遍性と奇想を兼ね備えた5篇収録のデビュー作品集


    新人作家、下永聖高の短編集

    パラレルワールドや過去改変なんかの代表的なSF的要素を使いながら、どこか新しい読後感があった。

    今までSFではあまり読んだことのなかったユーモラスな『神の創造』が作品としては一番好きやけど
    『満月』の主人公が語った旅についての考察もドキッとして良かった。




    「三千世界の鴉を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい」

  •  SFマガジン本誌で、表題作「オニキス」を読んで、印象に残っていたので同タイトルの文庫本を手にとった。
     収録作いずれもうまく単語にできないが、変な?奇妙な?妙な?作品で、出だしと途中までは強く印象に残るのだが、最後どうなったかが記憶に残らない。
     しばらくすると、あの話最後はどうなったんだけ?とまた読みたくなるような気がする。

  • 「オニキス」
    マナ兵器によって過去の書き換えが起こされる世界で、世界を観察するために記憶保持装置のモニターとなった人たちの記憶が次々と移り変わっていく。最後の結末はどんでん返しなのか、そうでないのか。スピード感ある展開で理解と考察がついてこない感じがSFっぽいなあ。

    「神の創造」
    現実の部屋の中と繋がる異世界。後半の熱いアクション展開は面白かった。

    「猿が出る」
    徐々に進化していく猿とのやりとりがコミカルだけど、結局猿は何だったのかよく分からなかった。猿は人類創世からの記憶だったのかな?

    「三千世界」
    平行世界を敵から逃げまわる話。未来っぽいガジェットと駆使して追手から美女と逃げる逃避劇は王道の展開だけど、最後の最後の種明かしの部分はちょっと微妙だったかな。

    「満月」
    この作品だけSFではなく、旅行記といった感じだった。恐らく著者が実際に経験した事も盛り込まれているのではないのかな。ひとり旅の物悲しさのようなものが、静かな南国の夜を通して語られている。私自身も、海外旅行を通して同じようなメランコリックな気持ちになることがあったので、面白く読めた。

    「今見ている景色が一瞬前と同じものとは限らない」という現実の不確かさがコミカルなタッチで描かれていて、スピード感のある展開と合わせて、一気に読めた。

  • いま一つ。帯に書いてある「SFを読む喜びを最も味わえたのは、この中篇だった」というSFマガジン編集長の言葉はただの宣伝文句だったということが残念ながらよくわかった。
    『オニキス』、『神の創造』、『猿が出る』、『三千世界』、『満月』(フルムーンと読む)の5編。
    『オニキス』は、脳波サンプル被験者に応募した主人公の話。マナという物質によって引き起こされる過去の書き換えを、記憶保持装置を後頭部につけることで意識することができる。最初は栞が挟まっている頁が変わっている程度の過去の書き換えが、どんどん大きな書き換えに変わっていく。と思ったらいつの間にか主人公が代わっていて、やや話についていくのに苦労する。実はこの実験は、マナ兵器による過去の書き換えの出所を探る一環で行われていて、その主役たるオニキスのような瞳を持った梨花と彼女に恋心を抱く助手の物語になっている。最後に栞が挟まっていた頁にはマナ粒子発見に繋がる数式が記されていたという話で、最初の過去の書き換えに繋がり物語は幕を閉じる。う~ん、書いていてよくわからない(笑)。

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