ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : redjuice 
  • 早川書房
4.14
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本棚登録 : 1844
レビュー : 179
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

感想・レビュー・書評

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  • 「虐殺器官」の対になっていると言われている小説。

    「人間は健康で、かつ幸福であるべきだ」という思想の下、医療的監視システムであるWatchMeを体内に入れ込むことで、人間を「健やかに」管理することが可能になった社会。
    誰も病気にならない、傷つかない、苦しまない。精神的にも肉体的にも誰かを傷つけることは許されない、優しさに覆われた背か。善意の世界。ある種のユートピア的な世界。

    私たちはどん底を知らない。どん底を知らずに生きていけるよう、全てがお膳立てされている。

    感情や生死にすら作用する"WatchMe"
    見せかけの優しさで守られる世界と「人間らしく」いきたい少女たちの物語。
    例えばどうしようもない悪意や嫉妬に潰れてしまいそうになることを私たちは人生で何度も経験する。

    「ハーモニー」が描く世界はその逆で"善意と愛で窒息する人間"という発想がすごく新しい

    ここでいう「善」はたた「良いこと」ではなく、「何らかの価値観を継続させる意志」であり、永続性の内膳は淘汰されていくから、意志は進化をしなくちゃいけない。でも、進化の意志には傷つけ傷つけられることが必要だから結局人は苦しみから逃れられない。

    「逆ユートピア」的な発想。

    "生かされていること"に対して疑問を抱いて人間らしくあろうと思える、人間らしくありたいと思える。

    傷つくことも厭わず、悲しむことも厭わず、
    ユートピアを創造したはずがそこはディストピアだった。

    純白の退廃。

    1秒1秒緩やかに死に流れいく人生の中で命よりも大切なものって一体何なのだろうか。

    ユートピアなんてない。

    6畳1間を作る白い壁、白い天井、意志は取り残されたまま。吐き出した息と一緒に消えるだけ。

    さよなら、わたし。さよなら、たましい。
    今人類は、とても幸福だ。

    ------------------

    にゃんたこさんの紹介が素敵すぎたので、メモ的に引用させてもらいました。ありがとうございます。

  • 何十年後かの世界で、ウェアラブルを超えて、人に何かを埋め込むようになったとき、生殺与奪を政府(生府)に握られるようになるのだなというディストピアな世界を描いた小説。
    例によって前半は読むのが重い感じだったが、絵は無いのに目に浮かぶような残虐シーンがあり、陰謀に迫っていく主人公という展開から引き込まれていった。

  • 昨日、今日とで一気読み。非常に巧妙なプロットでグイグイと引き込まれる近未来を描いたストーリー。ウェアラブルデバイスがまだ普及していない時代、WatchMeのアイディアを落とし込んだ彗眼には驚嘆する。病床の鬼気迫る状態で書き上げた渾身の遺作である。

  • 伊藤計劃さんの本で2冊目に読んだもの。「虐殺器官」の後に読んだため、彼の世界観を存分に味わえた一冊。
    「確かに未来はこうなっているかもしれない」そう思わせる世界の仕組みにまず驚かされた。近未来的な世界だと感じた。
    未来にあるかもしれない影の世界を想像できる内容で、主人公が芯を持っている強い女性の活躍が印象的。
    最後が少しあっけなく感じたが、納得もできる終わりだった。

  • 21世紀に起きた地球規模の核兵器使用による大災厄の反省から、社会は生存者の健康を極端に尊重するようになった。個別医療システムで超健康至上社会が実現した。誰もが病気にならず、平等で、平和で、争いのない社会。そこは人びとから意志、意識を奪い取る、強権的な優しさが支配する社会。

  • 「THE Books green」という本で、ある書店員さんが、
    「日本で一番この本を売りたい」と書いていたので、読んでみた。
    読み終わって、作者である伊藤計劃が既に亡くなっている
    ことが、悲しくなった。
    次の作品を読んでみたかった。

  • 高度に社会化した人類。
    開かれた内面、縮小する自己。

    身体も、欲望も管理された世界で、
    内なるものは、「わたし」は、何処へ向かうのか。

  • わたしには、この物語を、推し量ることができない。
    読後、最低でも一箇月はこの話で頭がいっぱいだった。
    優しさがやさしく首を締めてくる世界は、確かにディストピアだ。
    恐ろしいのは、そこから抜け出したかった彼女たちが選んだのも、またディストピアということ。
    どちらのディストピアか選べと迫られたら、最初のディストピアを選んでしまいそうだ…だって、結末の世界は、それ、「生きている」って言わないんじゃないの…?

  • 誰かにとってのユートピアは、きっと誰かにとってのディストピアだ。逆も然り。

    虐殺器官よりも読みやすいけど、納得いったのはあちらの方だったかなぁ。
    続編と考えてもいいような虐殺器官よりもさらに未来の話。
    たまたまこれ以前に読んでいた小説でも過剰な健康至上主義への警鐘、WHOが出てきたので偶然とはいえ驚いた。

    ↓ネタバレ

    最初の方は思春期の少女特有の、美しく脆い世界の雰囲気がいい。なぜかケルト風の名前(男性名だよね)も、ミァハの理屈の厨二っぽさも好みだった。
    キアンの死は衝撃的だったし、明かされていくミァハの過去もドラマチックなんだけど、大人になってからミァハは急速に魅力を失って見える。
    というより成長しない少女のまま、自己中心的に行動しただけに思えて怒りさえ感じる。
    彼女は帰ろうとしただけだろう。本来の自分の故郷へ。そのために他人の命を失わせ、断りもなく意識を奪った。
    トァンが復讐をするのは唐突にも見えるが、理解もできる。彼女の憧れだったミァハはもういないし、目的のためにミァハがしたことはトァンにも身勝手に思えたんじゃないかな?

    わからないのはDummyMeはWatchMeの報告機能を書き換えるしか出来てなかったのか? 最後にトァンの意識も消えたならそういうことだよね。でもWatchMeは全人類に搭載されていたわけじゃない。少数の意識のある人々はどうなったんだろう?
    そして意識がもともとなかったミァハに意識が芽生えたなら、こうして意識のない幸福を作っても、また生まれてくるんじゃないかな?
    それが逆に希望に思えた。

  • 201705
    虐殺器官、屍者の帝国、ハーモニーの順に読んだ。
    WatchMeを入れてない人たちがその後どうなるのか。あーでも、表面上はわからないから何も変わらないのか。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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