ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

著者 :
  • 早川書房
4.18
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感想 : 377
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

感想・レビュー・書評

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  • アニメがなかなかよい作品で原作を読んでみる気に。文字で読んでこそ面白い物語。アニメで背景説明が足りなかった部分も補完されて満足。

  • 最近は『ポスト伊藤計劃』みたいなわけわかんない言い方もされなくなったのでホッとしとります。
    伊藤計劃は早死したから神格化されてる部分はあるなと思いつつ、やっぱり素晴らしい才能の持ち主だったとは思う。惜しい人を亡くしました。

    病気で苦しんだ作者が、管理された健康を拒もうとするキャラを生き生きと書いたってことは、凄い。
    ラストは衝撃を受けたけど、あの結末には納得できないところもあったり……。このもやもやは、伊藤計劃が遺した宿題でしょうか。

  • ユートピアとは何か、人間の意識とか何かということを問いかけてくる小説。個人的にはhtmlをもじったetml形式と言うのがちょっとハマった要素であった。

    人のプライベートを完全に公共のものにしてしまう、あるいは、人は社会のためのリソースであるといった思想は、かなり極端で非現実的だが、確かに、公共性ゆえに犯罪も起こり得ないだろうし、健康管理も自主的に行うシステムがあれば、表面上は皆が幸せに暮らせるユートピアが誕生するようにも思える。

    しかし、そのような理想的な社会も一人一殺を達成しないと自分が死ぬと言う脅しで、揺らいでしまうという儚いものである。

    現代のSNSは一種の監視システムとして機能しうるのではないかと思うとともに、人間らしさっていうものはもっと欲望の近くにあり、人間のドロドロした部分が現れるところなんだろうなと感じた。

    小説的には、内容的にそんなに凝った設定であるわけでもなく、登場人物の心情描写もあまりなく、なんとなく無機質な感じを与えるが、これもこの小説の味なのだろう。

  • 設定が難しかったから深く考えずに読んだ。
    何でもできる主人公がかっこいい。
    でも、何がしたいのかはついて行けなかった。

    優しすぎる世界が苦しいっていうのが、わかるようなわからないような…。
    死にたくなるほどしんどいというのがあまりピンとこなかった。
    ミァハちゃんを殺してしまう意味がよくわからなかった。

    意識は自分。今の人間はつぎはぎの産物。感情は必要があって生まれた。
    世界はなにで動いてるんやろうと思わされた。

  • 健康帝国主義と化した一見ユートピアだけど、ディストピアな世界。わたしがわたしであること、が自明ではなくなっていく。意識すら、必要ないとされ、人間が個ではなく社会的存在となる結末に、上田岳弘にも通ずる世界観に達していたことを感じる。文学の最先端は突き詰めると似通うのか(流れる空気は全然違うけど)。もっと遡ればエヴァンゲリオンの人類補完計画の変奏なのかもしれない。ただ、地球上でオフラインの残り2割には関係ない話であることが、なんとも…と。

  • 「虐殺器官」の対になっていると言われている小説。

    「人間は健康で、かつ幸福であるべきだ」という思想の下、医療的監視システムであるWatchMeを体内に入れ込むことで、人間を「健やかに」管理することが可能になった社会。
    誰も病気にならない、傷つかない、苦しまない。精神的にも肉体的にも誰かを傷つけることは許されない、優しさに覆われた背か。善意の世界。ある種のユートピア的な世界。

    私たちはどん底を知らない。どん底を知らずに生きていけるよう、全てがお膳立てされている。

    感情や生死にすら作用する"WatchMe"
    見せかけの優しさで守られる世界と「人間らしく」いきたい少女たちの物語。
    例えばどうしようもない悪意や嫉妬に潰れてしまいそうになることを私たちは人生で何度も経験する。

    「ハーモニー」が描く世界はその逆で"善意と愛で窒息する人間"という発想がすごく新しい

    ここでいう「善」はたた「良いこと」ではなく、「何らかの価値観を継続させる意志」であり、永続性の内膳は淘汰されていくから、意志は進化をしなくちゃいけない。でも、進化の意志には傷つけ傷つけられることが必要だから結局人は苦しみから逃れられない。

    「逆ユートピア」的な発想。

    "生かされていること"に対して疑問を抱いて人間らしくあろうと思える、人間らしくありたいと思える。

    傷つくことも厭わず、悲しむことも厭わず、
    ユートピアを創造したはずがそこはディストピアだった。

    純白の退廃。

    1秒1秒緩やかに死に流れいく人生の中で命よりも大切なものって一体何なのだろうか。

    ユートピアなんてない。

    6畳1間を作る白い壁、白い天井、意志は取り残されたまま。吐き出した息と一緒に消えるだけ。

    さよなら、わたし。さよなら、たましい。
    今人類は、とても幸福だ。

    ------------------

    にゃんたこの紹介が素敵すぎたので、メモ的に引用

  • 何十年後かの世界で、ウェアラブルを超えて、人に何かを埋め込むようになったとき、生殺与奪を政府(生府)に握られるようになるのだなというディストピアな世界を描いた小説。
    例によって前半は読むのが重い感じだったが、絵は無いのに目に浮かぶような残虐シーンがあり、陰謀に迫っていく主人公という展開から引き込まれていった。

  • 昨日、今日とで一気読み。非常に巧妙なプロットでグイグイと引き込まれる近未来を描いたストーリー。ウェアラブルデバイスがまだ普及していない時代、WatchMeのアイディアを落とし込んだ彗眼には驚嘆する。病床の鬼気迫る状態で書き上げた渾身の遺作である。

  • 伊藤計劃さんの本で2冊目に読んだもの。「虐殺器官」の後に読んだため、彼の世界観を存分に味わえた一冊。
    「確かに未来はこうなっているかもしれない」そう思わせる世界の仕組みにまず驚かされた。近未来的な世界だと感じた。
    未来にあるかもしれない影の世界を想像できる内容で、主人公が芯を持っている強い女性の活躍が印象的。
    最後が少しあっけなく感じたが、納得もできる終わりだった。

  • 21世紀に起きた地球規模の核兵器使用による大災厄の反省から、社会は生存者の健康を極端に尊重するようになった。個別医療システムで超健康至上社会が実現した。誰もが病気にならず、平等で、平和で、争いのない社会。そこは人びとから意志、意識を奪い取る、強権的な優しさが支配する社会。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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