ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

感想・レビュー・書評

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  • 読んだ直後の感想としては指数関数的な階段を登っていって最後に無重力な世界に解き放たれた気分
    現実世界の雑多な軛から解放された浮遊感を感じる

  • 人々の意識が消え、
    わたしが、たましいが消える
    喜怒哀楽のない世界
    人々は秩序を守り
    社会という大きな枠組みのリソースとなり
    ハーモニーを描く、ユートピア世界

    それがハッピーエンドなのか
    デッドエンドなのかは分からない

    「人間は幸福を求めて生きること」
    それはこのハーモニーの世界のように
    自分の体を社会に、外注へと委ねた

    「真理を求めて生きること」
    それは苦しみや死の極限状態を生むかもしれないが
    それを求め、歩む姿は美しいものかもしれない

    どちらかがいいなんて一概に言えない

    私は自分の意識はなくなること
    わたし、が死ぬことには抵抗はない
    めんどくさいことって多いから
    ミャアハと同じ考え。
    だからといって苦しみも味わいたくない。

    どっちかなんて選びたくないよね、
    わたしたちに。

    「選ぶ」?
    その特権を
    自分は放置してないだろうか。

  • 映画も見た。html風の書き方(etml)が面白かった。ハーモニーの世界に行きたい。社会生態学・進化論みがある。脳科学・意識の問題に興味を持つきっかけになったと思う。

  • 刊行から数年経っているが、そんな今読んでも「新しい」と思った。
    科学の進歩によって肉体が不要になる物語はいくつか聞いたことがあるが、人間を完全な社会的存在へと昇華するために意識を消すとは。他人から与えられる野蛮にも幸福にも堪えかねた「私」が、まさか私を消して幸福を享受しようとは。
    ここでは幸福とは何かというよくある哲学的な問いは全く意味を持たない。が、ある種仏教的に考えると涅槃寂静、さとりの境地にたどり着いた状態に人類がシフトしたように思える。本書のなかにも書いてあったように、人間は既に「人間ではなくな」った。一部を除いて大多数が成仏した。世界は仏に埋め尽くされた。正に天国。
    世界が大好きだから、これから自死する人たちを生かすために人類を変えたミァハは、結果的に死観すら変えてしまった。生きるとは、死ぬとは。この世とは、あの世とは。答えは出ようもないが、本当に考えさせられる物語だった。

  • ハーモニー…この小説の世界観はなんともいえない気味の悪さを感じる。

    さこの世界は大災厄が起こったあとの日本の話だ。
    二度と悲劇を繰り返さないように人々は平和な世界の実現を目指した。

    子供はリソースとして社会に存在し
    大人になるとwatchmeという機械を体に埋め込まれる。

    「あなたは残酷なものを見ました。セラピーを受けてください」
    「体重が一キロ増えました」「この食事は塩分が…」
    などなど、人々の体を1から10まで管理してくれるので
    人々は病気から解放された。

    おまけに人の健康状態や個人情報まで知ることができる。
    つまり、犯罪を犯せばすぐに知られることになる。
    その前に人々は平和な世界で善意に包まれて生きているので犯罪すらない。

    そのお陰で、この世界は平和になった。

    しかし、優しさで窮屈なこの世界で 
    平和を憎んでいたミァハという少女がいた。
    彼女もこの世界では重要な資源だ。

    物語の主人公トァンとキアンと共に
    このきれいな世界を汚すために自殺という形で
    抗議することにした。
    リソースである自分を殺すことで社会に
    痛手を負わせようとするというお話。

    この小説…特に序盤は読んでて謎の窮屈さに見舞われました。

    ちょうど「規制」「嫌煙」「悪影響」などと
    ヒステリックにがなりたてる人々を見たときのような
    居心地の悪さににている。

    人間には少しの毒も必要なのだ。

    それを一切、取り除いたら
    人はどうなるだろう?本当に平和になるのだろうか?
    そう考えさせられた。

    ちなみに、この物語は自殺に失敗し大人になったトァンが主人公。
    前作の「虐殺器官」がハードボイルド系統だとすると
    「ハーモニー」は少しミステリー風味で楽しむことができました。

  • 2冊目として読了。「平和」であることの意義・理由を問うという点では良い。アニメ版も比較的忠実で良かった。
    読後感は別として、雰囲気としては平和な本書の方が好みではあった。

  • アニメがなかなかよい作品で原作を読んでみる気に。文字で読んでこそ面白い物語。アニメで背景説明が足りなかった部分も補完されて満足。

  • 最近は『ポスト伊藤計劃』みたいなわけわかんない言い方もされなくなったのでホッとしとります。
    伊藤計劃は早死したから神格化されてる部分はあるなと思いつつ、やっぱり素晴らしい才能の持ち主だったとは思う。惜しい人を亡くしました。

    病気で苦しんだ作者が、管理された健康を拒もうとするキャラを生き生きと書いたってことは、凄い。
    ラストは衝撃を受けたけど、あの結末には納得できないところもあったり……。このもやもやは、伊藤計劃が遺した宿題でしょうか。

  • ユートピアとは何か、人間の意識とか何かということを問いかけてくる小説。個人的にはhtmlをもじったetml形式と言うのがちょっとハマった要素であった。

    人のプライベートを完全に公共のものにしてしまう、あるいは、人は社会のためのリソースであるといった思想は、かなり極端で非現実的だが、確かに、公共性ゆえに犯罪も起こり得ないだろうし、健康管理も自主的に行うシステムがあれば、表面上は皆が幸せに暮らせるユートピアが誕生するようにも思える。

    しかし、そのような理想的な社会も一人一殺を達成しないと自分が死ぬと言う脅しで、揺らいでしまうという儚いものである。

    現代のSNSは一種の監視システムとして機能しうるのではないかと思うとともに、人間らしさっていうものはもっと欲望の近くにあり、人間のドロドロした部分が現れるところなんだろうなと感じた。

    小説的には、内容的にそんなに凝った設定であるわけでもなく、登場人物の心情描写もあまりなく、なんとなく無機質な感じを与えるが、これもこの小説の味なのだろう。

  • 設定が難しかったから深く考えずに読んだ。
    何でもできる主人公がかっこいい。
    でも、何がしたいのかはついて行けなかった。

    優しすぎる世界が苦しいっていうのが、わかるようなわからないような…。
    死にたくなるほどしんどいというのがあまりピンとこなかった。
    ミァハちゃんを殺してしまう意味がよくわからなかった。

    意識は自分。今の人間はつぎはぎの産物。感情は必要があって生まれた。
    世界はなにで動いてるんやろうと思わされた。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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