ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : redjuice 
  • 早川書房
4.14
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本棚登録 : 1840
レビュー : 179
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

感想・レビュー・書評

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  • 2冊目として読了。「平和」であることの意義・理由を問うという点では良い。アニメ版も比較的忠実で良かった。
    読後感は別として、雰囲気としては平和な本書の方が好みではあった。

  • アニメがなかなかよい作品で原作を読んでみる気に。文字で読んでこそ面白い物語。アニメで背景説明が足りなかった部分も補完されて満足。

  • ユートピアとは何か、人間の意識とか何かということを問いかけてくる小説。個人的にはhtmlをもじったetml形式と言うのがちょっとハマった要素であった。

    人のプライベートを完全に公共のものにしてしまう、あるいは、人は社会のためのリソースであるといった思想は、かなり極端で非現実的だが、確かに、公共性ゆえに犯罪も起こり得ないだろうし、健康管理も自主的に行うシステムがあれば、表面上は皆が幸せに暮らせるユートピアが誕生するようにも思える。

    しかし、そのような理想的な社会も一人一殺を達成しないと自分が死ぬと言う脅しで、揺らいでしまうという儚いものである。

    現代のSNSは一種の監視システムとして機能しうるのではないかと思うとともに、人間らしさっていうものはもっと欲望の近くにあり、人間のドロドロした部分が現れるところなんだろうなと感じた。

    小説的には、内容的にそんなに凝った設定であるわけでもなく、登場人物の心情描写もあまりなく、なんとなく無機質な感じを与えるが、これもこの小説の味なのだろう。

  • 何十年後かの世界で、ウェアラブルを超えて、人に何かを埋め込むようになったとき、生殺与奪を政府(生府)に握られるようになるのだなというディストピアな世界を描いた小説。
    例によって前半は読むのが重い感じだったが、絵は無いのに目に浮かぶような残虐シーンがあり、陰謀に迫っていく主人公という展開から引き込まれていった。

  • 21世紀に起きた地球規模の核兵器使用による大災厄の反省から、社会は生存者の健康を極端に尊重するようになった。個別医療システムで超健康至上社会が実現した。誰もが病気にならず、平等で、平和で、争いのない社会。そこは人びとから意志、意識を奪い取る、強権的な優しさが支配する社会。

  • 「THE Books green」という本で、ある書店員さんが、
    「日本で一番この本を売りたい」と書いていたので、読んでみた。
    読み終わって、作者である伊藤計劃が既に亡くなっている
    ことが、悲しくなった。
    次の作品を読んでみたかった。

  • 高度に社会化した人類。
    開かれた内面、縮小する自己。

    身体も、欲望も管理された世界で、
    内なるものは、「わたし」は、何処へ向かうのか。

  • 核戦争<大災禍>の後、健康が大きな価値を持つ時代。人々は健康監視システムWatchMeを身体に「インストール」し、不調があれば直ちに医療分子メディモル(つまり薬)が生成されて正常な状態を回復することができる。病気は基本的に撲滅され、寿命や不慮の事故以外で死ぬことが基本的に無くなったばかりか、痛みや不快さを感じることすらほとんど無い世界。
    そんな、身体が高度にシステム化され最適化された中で、やがて脳・心を操作しようとする考えが生まれる。脳の報酬系を操作し、最適な価値判断を行うように操作したらどうなるか―。それは、迷いの消失、全てが自明なものとしての判断、すなわち意識の消失に等値だった。
    ----------
    WatchMeやメディモルは医療の一つの理想形かもしれないが、とはいえ全くの夢物語というわけでもない。現在でも、ペースメーカーは患者の心拍に合わせて電気刺激を加えるし、糖尿病患者の血糖値を常にモニタリングして必要なインスリンを分泌する機械だって誕生している。そういう意味では、身体のシステム化・機械による代替は既に始まっていて、本書の世界とは単に程度の差でしかない、ということもできる。
    問題はシステムよりも人々の価値観、”空気”なんだろう。医療が進歩して寿命が延びるのは基本的にはうれしいことだが、だからといって「生きること」自体が生きる目的ではない、そのなかで何をするかという生の中身が大事なのだ。―とみんなが思っている、はずで。
    だけど、<大災禍>のようなことが起こったり、極限まで医療が進歩したりすると、その価値観も変わってしまうのかもしれない。生きること自体が目的となった世の中では、人間の精神・魂すら特別なものではないと考えられてしまうのは、ある意味自然なのかもしれない。

    人間の心・意識は「進化のために”場当たり的に”誕生したもの」なのか?「今はもう不要」なのか?
    (再読)

  • 大災禍(≓核戦争)を経験した後の世界。
    医療が発達した結果、病気というものの大半がなくなり、あらゆる有害な物から遠ざけられ、人々はお互いを慈しみ、支え合い、ハーモニー(調和)を奏でるのがオトナである、とされる世界になっていた。
    自分の体なのに自分の自由にならない、そういった世界を嫌悪するミァハは、トァンとキアンの2人を誘い、大人になる前に死を選ぼうとするが・・・。

    <以下、ネタバレです。>

    たぶん、『虐殺器官』と同じ世界のその後の話。
    所々で、タグで囲まれた記載のある独特な文章。
    最後の最後で、どういう事だったのかが分かり「!!」ですよ!
    争いや自殺がなくなり、迷いも、選択も、決断もない完全に調和した世界。
    完璧ではあるけれど、そこに個々の人間(・・・とは呼べませんが)の存在する意味がない、薄ら寒い世界。
    こういう設定の話は、割と好みです。
    これもまた、映像で観たい作品。今年か来年あたり、TVでやってくれると嬉しいなぁ。

    返す返すも、早世された事が残念でなりません。
    伊藤さんの書かれる小説をもっと読んでみたかった・・・。

  • わたしの心が、幸福を拒絶した。

    前作「虐殺器官」の続編、というかその後の世界が舞台となっている。
    人が病気で死ぬことがない、徹底的に健康管理された社会。この話を作者が入院中に書いていたことが衝撃的。そして何より、作中に溢れていたコマンドの意味が分かった時は鳥肌がたった。表現方法が好みすぎる。
    百合っぽいって言われてるけど、男性から見たらそう見えるだけかな。女性の私からすれば、この程度、思春期の女の子なら大なり小なり覚えのある感覚な気がする。なので、あまり構えることなく多くの人に楽しんでもらいたい。

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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