猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2014年11月7日発売)
3.67
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784150311759

作品紹介・あらすじ

期待の語り部が贈る幻想、SF、ミステリ、戦記、メタフィクション……小説の無限の可能性を詰め込んだ奇想短篇集

みんなの感想まとめ

多彩なテーマが織り交ぜられた短篇集は、幻想的な物語からSF、コメディ、ミステリまで、幅広いジャンルを楽しむことができます。特に表題作では、笑いを誘いながらも日本語の奥深さに気づかせてくれます。また、「...

感想・レビュー・書評

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  • 皆川博子の短編集は予想をはるか超えて手強い
    ユーモアあるのはタイトル作品の[猫舌男爵]のみ
    苦痛を知る一冊だった

  • 面白かったです。
    SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
    表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
    「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
    結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
    「水葬楽」がとても好きでした。
    死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのがゾッとします。Back Ground Poemがとてもいい雰囲気です。
    「オムレツ少年の儀式」もラストの鮮やかさ!と思います。
    「睡蓮」も良かった…書簡を時系列の逆から描いていく。これは狂う、と思いました。エーディトの絵、見てみたいです。
    「太陽馬」の作中作が好きです。ナチュラルに、内戦中のロシアの描写と繋がるのにおおっとなりました。
    解説がヤン・ジェロムスキくんだ!熱い文章で笑ってしまいました。訳者の垂野さんは実在するようなのでこの方の文章なのかな?面白いです。

  • 皆川博子さんをはじめてよんだのだけれど、呪いにもにた、神聖さをかんじた。排泄、嘔吐。忌避しがちなことがらをにんげんのどろどろとしたものを目をひらかせてみせてくる、ちょっぴりサディスティックなおもてなし。孤独なものたちの冒険譚。そしてにんげんのグロテスクな神秘が綴られているのに、まるでちがう生き物のことを識っているような幻覚。悪夢を魅せておいて、泣きながら、行き場をなくしたひとりぼっちの魂たちを抱きしめているようでもあったから。わからない、だって表紙の絵からもう、"しかけ" ははじまっているのでしょう(あとがきまで)?
    『睡蓮』がとても好きだった。

    ⬛︎水葬楽⬛︎
    ことばをしり、感情をみとめることはなんと辛いことだろう。幸せを光にかざすとそこにはちゃんと陰があることが、さびしい。無防備な魂はやがて鎧をつけて無垢なふりをする。救うのは詩。それをよむのは孤独な冒険者たち。

    ⬛︎猫舌男爵⬛︎
    ニッポンの、日本語のおかしな矛盾を外国人の目線で語りながらも、うちに秘めた苛立ちの本音がときたまのぞいてかわいい。この世の虚無な可笑しみがすべてつまっているようなサーカス。ほんとう、簡単にはわかりあえないわたしたち。あっちらこっちら勝手なこといってらあ。あーあ、おかしい!

    ⬛︎オムレツ少年の儀式⬛︎
    オムレツをきれいにととのえることができるようになっても、常連さんのこのみが解るようになっても、じぶんのこころのなかがいちばんわからなかった、可哀想な少年の思春期。だれもおしえてくれなかったのだもの。この"尾鰭"がなんのためにあるのかも。

    ⬛︎睡蓮⬛︎
    書簡や日記や記事の引用をもちいて時をさかのぼる。おそろしい過去が、忌まわしき歴史とともに解かれてゆく。痛みをともなう事実は堅固だけれど、ふたりのあいだの"太陽"と"睡蓮"にはふたりだけの愛とよべるものが、そして描かれることのなかったもうひとつの場所には、憎しみが在った故なのかもしれない。あぁ、なんという短編作品だろう。120分の映画をみているような濃密さ。

    ⬛︎太陽馬⬛︎
    ひと という入れ物から、鎖から、逃れたいという欲求をつよく感じた。音も光も言葉も、その概念をすべて宇宙に放ってしまって、現在に堕ちてきた。ひとはその秘めた美しさをみとめる才能を、ただしく用いない。呪われてしまった魂を解放へとみちびいてゆく気概が聴こえた。

  • 5編の短編のうち「睡蓮」「猫舌男爵」が特に面白かった。
    どちらも地の文がなく、手紙や日記をめくりながらストーリーを埋めていく文章で、その開き方が鮮やかで気持ちい。
    皆川さんの著作を読んでいく中で、鶴屋南北や鎌倉権五郎などのモチーフに複数回出会えるのが少し嬉しい。

  • 「水葬楽」
    平均寿命が異常に短い近未来のグロテスクなSF。兄弟(解説では兄妹になってたし私も最初はそう思ったけど、冷静に設定を考えたら兄弟だよね?)が実は・・・というのはまあわりと早い段階で予想がつきましたが、奇妙な美しさのある作品。

    「猫舌男爵」
    これ実は結局「猫舌男爵」という小説そのものは読ませてもらえません(気になるよう!)。ポーランド人の青年が偶然みつけた日本の本「猫舌男爵」を翻訳した、その「あとがき」と、日本から寄せられた感想や、日本語の師匠からの苦情、その他もろもろで構成されていて、かなりユニークで面白かったけど、個人的には「お願いだから小説・猫舌男爵を読ませて!」というストレスがたまりました(苦笑)

    「オムレツ少年の儀式」
    タイトルもなんだか可愛らしいし、ちょっと足穂っぽい印象で始まったのに意外な結末。

    「睡蓮」
    精神病院で亡くなった女性画家の半生を、時系列を逆にして本人および周辺人物の手紙や日記で遡ってゆく構成が面白い。

    「太陽馬」
    戦時のロシア、ドイツ移民、コサックと、部分的に挿入される不思議な作中作、もろもろ含めて作者のお得意ジャンルで、長編としても十分書けそうな題材でした。

  • 短編集。表題作は、読めない日本の稀覯本『猫舌男爵』を巡る外国人翻訳家ヤンと関係者の話。ヤンの余計な気遣いで家庭崩壊しかけているコナルスキ氏が、最後に一応の平穏を取り戻してよかった。「睡蓮」手紙を遡るごとに女性画家の真実が見え、その生涯を噛みしめながら、彼女の美術展に赴いた気持ちになる。「太陽馬」ロシア内戦下で、少尉に随従するコサック兵の秘話。物語を託された側は生き抜いて欲しい。他二作品。

  • タイトルからの直感のみで棚差しから購入。


    解説まで読んではじめて、この作品集の肝が理解出来た。

    一見すると全くバラバラに独立した五つの短編集のようで掴み所がないが、丁寧に読み込むことで物語同士が共鳴するとは驚き。読み手が気づく事で、各物語の’孤独’が救われる。

    第一印象では「オムレツ少年の儀式」「猫舌男爵」が好き。結局、猫舌男爵についてはわからずじまいだったが、みんな幸せな結末を迎えてなにより。

    繰り返し読み必至。



    1刷
    2021.6.12

  • 皆川博子は過去の異国へ誘ってくれるから好きだけど、何かしらのトラウマを残していくので、もうちょっと当分はいいかな…という気持ちになった。『水葬楽』、『睡蓮』は良かった。

  • 猫の話かと思って舐めてかかっていたのですが、一切猫は主役として出ず、短編集の一つに本として登場しただけでした。ただ、その話が一番面白かったです。一冊の翻訳本をめぐっての書簡やメールでのやりとり。日本語が無理やり翻訳されていたり、やりとりが嚙み合わなかったり、ちょっとしたミステリーがあったりと、面白かったです。睡蓮は時系列を遡っていく展開で、ちょっと狂いました。太陽馬のラストは目をつぶると情景が浮かぶような、そんな不思議な余韻で締めくくられていました。とりとめのない感想となりましたが、自分には難解、なかなかヘビーな本でした。

  • 再読。皆川先生の作品は好きだけれども、今はちょっとタイミング的にしんどかったな…と個人的な感想。

    「水葬楽」
    人間の平均寿命が一気に縮み、一方で医療・科学は発達した近未来。結合双生児として産まれ父以外には「存在しないもの」と扱われる私と兄。
    同じように存在しないものとして扱われてきた、親戚の侏儒との偶然の出会いと語りから、おそらく世界大戦前後からの国民の死生観とそれに伴う法整備・医療技術の発達変化が明かされる。
    皆川先生らしい幻想美に溢れているSF、といった所か。純粋な水で造られた楽器、理想の音は一度しか聴けない、という感覚は音楽だけでなく様々な物に通ずる

    「猫舌男爵」
    フタロ・ヤマダ(山田風太郎)作品との出会いから日本の小説に興味を持った外国人青年ヤンによる、稀覯本「猫舌男爵」の翻訳の、あとがきという設定で話は進む。
    ヤンは日本文化と日本語に精通…している訳でもなく知識は偏っている。しかも話は右に逸れ左に逸れ架空の話まで出る始末。そんな翻訳本からヤンの周囲では誤解が誤解を生み騒動となり、最終的には予想外の着地へ。
    誰も彼もが自分の話に夢中で食い違う。翻訳って難しいよね…。ヤンの周りはハッピーエンドだけど、消えた作者の側からするとトンデモ翻訳で読まれてるの嫌だろうな。
    そしてヤン説明する所のフタロ・ヤマダのニンジャものは「ニンジャスレイヤー」の世界が浮かんでまた笑う。偏った知識を持つ外国人によるトンチキニンジャ世界観の解像度が高い

    「オムレツ少年の儀式」
    鍛冶屋の父が亡くなり、母と共に生まれ故郷を出て街へ移り住んだ少年。貧しい暮らしから出会い、下宿先の大家となる靴屋の主人への家賃その他の支払いの為にカフェ銀の猫のオムレツ係として働く事に。牧歌的な風景、自然と鉱石の匂いから都会の石畳の匂い、そしてバター薫るオムレツの匂い…洗練された生活のようで、その実裏側には靴屋の愛人となり高級な下着を与えられ変貌した母、少年の働いて得た金を殆ど取り上げ母に貢ぐ靴屋の存在がある。オムレツの香りは消え、最後には暗く湿った土、生臭い血液、淀んだ黒い水の臭いが漂う

    「睡蓮」
    幻の画家エーディトの生涯。物語はエーディトの名誉回復の為に病院の共同墓地から埋葬地を変えたいという親族の手紙から始まり、時代を遡ってエーディトの描いた「睡蓮」の本質を辿ってゆく。天才少女画家と持て囃されたエーディトは妄想を騙る狂女として精神病院に閉じ込められたまま生涯を終えたが、実際は繊細で怜悧な感性を持った画家であった…。
    物語は手紙のやり取りと、歴史的経緯を綴る文面のみなのでエーディトの真実は読者の想像する所に頼る面もある。夫を愛していたのか、師とは一線を超えていたのか…。一度読んだあと、今度は後ろから(過去から)エーディトの人生を追ってみるのも良いかもしれない。

    「太陽馬」
    おそらく共感覚を持って産まれたコサックの男が綴る、光と音に溢れた世界の物語。男が綴った幻想文学と戦火の光と轟音。なんて眩しくてうるさい!ギラギラと白い光と音が頭の中を駆け回る。
    物語の中の音は美しく、現実の音は哀しい。
    義兄や少尉といった、同じ感覚を持つ存在との魂の交流は美しいが、その結末はあまりに残酷…。

  • 「最後の解説を読むまでが読書です」というメタ小説

  • 2014-11-9

  • 皆川作品に触れるのはこれが初めてだが、おそろしく濃厚で上質な短編集を読んだという感じ。

  • 表題作があって、解説がそうなら
    各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
    この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
    ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。

  • 「水葬楽」「猫舌男爵」「オムレツ少年の儀式」「睡蓮」「太陽馬」を収録。
    講談社からハヤカワ文庫へ。ただのいつものトールサイズなのに、横書きの目次とローマ字表記が不思議と瀟洒。それとカバーイラストも。

    講談社版の刊行年と中身からして、著者が思う存分自由に書く(書ける)ようになってからの作品群なんだと思う。どこか技巧と実験の気配もありつつ、かなりのところ現在の作風が確立している感じ、かも。
    でもやっぱり「同じ音色は、二度は味わえない」のだから、魅力ある多作はいいものだ。何かしらの異界を描く作家ならなおのこと。
    どれも複雑な味わいがあって面白かったのだけど、やはりその異色で際立つのが「猫舌男爵」。勘違いに次ぐ勘違いの頓珍漢が、気が付いたら大真面目に華麗なアクロバットを決めているのだからもう可笑しくて可笑しくて。「ハリガヴォ・ナミコはどうでもいいです」のあたりなんか無性に笑える。
    穏やかに始まる「オムレツ少年の儀式」の回想明けと、死の色濃いクライマックスが先に立つ「睡蓮」の逆廻しに狂気を増していく様子にはぞくぞくしたし、「水葬楽」の荒涼たる世界観と詩の交響、「太陽馬」のふたつの物語が絡み合っていく様子もとても面白かった。
    解説までひっくるめてグラスハープのような一冊。完成度が高い。

  • 短編集。
    表題作が面白かった。どんどん話が逸れていく。訳者も、手紙の相手も、友人も、皆話が逸れていく。
    逸れた話が可笑しいから、猫舌男爵が何たるかなんてどうでもいいのだ。

  • 多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。

  • 2/13 読了。
    純粋な水が注がれた密閉された箱の中で長期的安楽死を迎える技術が富裕層のあいだで常習化されている、そんな近未来SFの設定を、双子の兄妹をめぐる耽美的な悲劇に落とし込んだ「水葬楽」。ろくに日本語の読めない山田風太郎ファンのポーランド人青年が訳した、謎の日本人作家ハリガヴォ・ナミコの小説が発端となって引き起こる日波横断スラップスティック「猫舌男爵」。父を亡くして田舎から都会に出てきた母子の破滅をえがいた「オムレツ少年の儀式」。精神を病み、30年以上も精神病院に入ったまま生涯を終えた女性作家の一生を遡行していく「睡蓮」。中華風のおとぎ話と、ロシアでのコサックとボリシェヴィキの闘いがシームレスに交差する「太陽馬」。タイプの異なる短篇5篇を収めた短編集。

    これ以外の結末はないにも関わらず、最後の段落でハッと胸を突かれる思いがした「オムレツ少年の儀式」が好き。いたってよくある<純粋な魂が都会に染まっていく話>なんだけど、腰にぶら下げた角笛と尾鰭の幻想を回収する手つきが見事で圧倒される。

  • 相変わらず素晴らしい。
    『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
    表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
    『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。

  • 何処の世界の、何処の時代の物語か見当もつかない摩訶不思議な物語5篇と解説を含めた短編集。 表題作を除けば、真面目な物語な筈なんだけれどレトリックに翻弄させられながら「読まされた」感の読後の物語集。 猫舌男爵の本当にありそうで絶対なさそうな話は秀逸。

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著者プロフィール

皆川 博子(みながわ・ひろこ):1930年旧朝鮮京城生まれ。72年『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞受賞。86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。著書に『聖餐城』『海賊女王』『風配図 WIND ROSE』『天涯図書館』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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