猫舌男爵 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.73
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本棚登録 : 312
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311759

作品紹介・あらすじ

絶版本の翻訳から生じた恐るべき混乱とは?爆笑、幻惑、戦慄溢れる幻想ミステリ短篇集

感想・レビュー・書評

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  • 皆川さんを敬遠してた理由でもありますが手強かった。幻想的であったりコミカルであったり、こってりとした濃密な空気が渦巻いている。生と死、背徳と官能、真実と虚実、現世と異界、変幻自在な物語です。猫舌男爵、棘のある舌を持った残虐冷酷な男爵が清純な乙女を苛む物語とあり、ホラーかと思いきや完全にだまされた。なにこのズレたやりとり。

  • 「水葬楽」
    平均寿命が異常に短い近未来のグロテスクなSF。兄弟(解説では兄妹になってたし私も最初はそう思ったけど、冷静に設定を考えたら兄弟だよね?)が実は・・・というのはまあわりと早い段階で予想がつきましたが、奇妙な美しさのある作品。

    「猫舌男爵」
    これ実は結局「猫舌男爵」という小説そのものは読ませてもらえません(気になるよう!)。ポーランド人の青年が偶然みつけた日本の本「猫舌男爵」を翻訳した、その「あとがき」と、日本から寄せられた感想や、日本語の師匠からの苦情、その他もろもろで構成されていて、かなりユニークで面白かったけど、個人的には「お願いだから小説・猫舌男爵を読ませて!」というストレスがたまりました(苦笑)

    「オムレツ少年の儀式」
    タイトルもなんだか可愛らしいし、ちょっと足穂っぽい印象で始まったのに意外な結末。

    「睡蓮」
    精神病院で亡くなった女性画家の半生を、時系列を逆にして本人および周辺人物の手紙や日記で遡ってゆく構成が面白い。

    「太陽馬」
    戦時のロシア、ドイツ移民、コサックと、部分的に挿入される不思議な作中作、もろもろ含めて作者のお得意ジャンルで、長編としても十分書けそうな題材でした。

  • 2014-11-9

  • 皆川作品に触れるのはこれが初めてだが、おそろしく濃厚で上質な短編集を読んだという感じ。

  • 表題作があって、解説がそうなら
    各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
    この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
    ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。

  • 「水葬楽」「猫舌男爵」「オムレツ少年の儀式」「睡蓮」「太陽馬」を収録。
    講談社からハヤカワ文庫へ。ただのいつものトールサイズなのに、横書きの目次とローマ字表記が不思議と瀟洒。それとカバーイラストも。

    講談社版の刊行年と中身からして、著者が思う存分自由に書く(書ける)ようになってからの作品群なんだと思う。どこか技巧と実験の気配もありつつ、かなりのところ現在の作風が確立している感じ、かも。
    でもやっぱり「同じ音色は、二度は味わえない」のだから、魅力ある多作はいいものだ。何かしらの異界を描く作家ならなおのこと。
    どれも複雑な味わいがあって面白かったのだけど、やはりその異色で際立つのが「猫舌男爵」。勘違いに次ぐ勘違いの頓珍漢が、気が付いたら大真面目に華麗なアクロバットを決めているのだからもう可笑しくて可笑しくて。「ハリガヴォ・ナミコはどうでもいいです」のあたりなんか無性に笑える。
    穏やかに始まる「オムレツ少年の儀式」の回想明けと、死の色濃いクライマックスが先に立つ「睡蓮」の逆廻しに狂気を増していく様子にはぞくぞくしたし、「水葬楽」の荒涼たる世界観と詩の交響、「太陽馬」のふたつの物語が絡み合っていく様子もとても面白かった。
    解説までひっくるめてグラスハープのような一冊。完成度が高い。

  • 短編集。
    表題作が面白かった。どんどん話が逸れていく。訳者も、手紙の相手も、友人も、皆話が逸れていく。
    逸れた話が可笑しいから、猫舌男爵が何たるかなんてどうでもいいのだ。

  • 多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。

  • 2/13 読了。
    純粋な水が注がれた密閉された箱の中で長期的安楽死を迎える技術が富裕層のあいだで常習化されている、そんな近未来SFの設定を、双子の兄妹をめぐる耽美的な悲劇に落とし込んだ「水葬楽」。ろくに日本語の読めない山田風太郎ファンのポーランド人青年が訳した、謎の日本人作家ハリガヴォ・ナミコの小説が発端となって引き起こる日波横断スラップスティック「猫舌男爵」。父を亡くして田舎から都会に出てきた母子の破滅をえがいた「オムレツ少年の儀式」。精神を病み、30年以上も精神病院に入ったまま生涯を終えた女性作家の一生を遡行していく「睡蓮」。中華風のおとぎ話と、ロシアでのコサックとボリシェヴィキの闘いがシームレスに交差する「太陽馬」。タイプの異なる短篇5篇を収めた短編集。

    これ以外の結末はないにも関わらず、最後の段落でハッと胸を突かれる思いがした「オムレツ少年の儀式」が好き。いたってよくある<純粋な魂が都会に染まっていく話>なんだけど、腰にぶら下げた角笛と尾鰭の幻想を回収する手つきが見事で圧倒される。

  • 相変わらず素晴らしい。
    『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
    表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
    『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
一九三〇年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。
72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。
73年6月「アルカディアの夏」により第20回小説現代新人賞を受賞後は、ミステリー、幻想、時代小説など幅広いジャンルで活躍中。
85年『壁――旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会協会賞、86年「恋紅」で第95回直木賞、90年「薔薇忌」で第3回柴田錬三郎賞、98年「死の泉」で第32回吉川英治文学賞、12年「開かせていただき光栄です」で第12回本格ミステリ大賞、13年 第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。
異色の恐怖犯罪小説を集めた傑作集「悦楽園」(出版芸術社)や70年代の単行本未収録作を収録した「ペガサスの挽歌」(烏有書林)などの傑作集も刊行されている。

「2017年 『皆川博子コレクション10みだれ絵双紙 金瓶梅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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