ディアスと月の誓約 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房
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本棚登録 : 356
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311834

作品紹介・あらすじ

極寒の王国〈緑の凍土〉が危機に見舞われたとき、王子ディアスの選択が未来を切り拓く

感想・レビュー・書評

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  • ファンタジーだけど、その世界にしっかりと根をおろして生活している人たちの息づかいが聞こえそう。守り人シリーズを連想させる世界観。
    アンローサとナナニが北の国で生活している描写が好き。
    ナナニが戻ってくるといい。

  • この方も良いファンタジーを描くなあ。
    最近、萩原規子さんや上橋菜穂子さんといった、素晴らしいファンタジー作品を多く読ませてもらえて嬉しい限りである。

    『夜の写本師』を読んで、その時はちょっと硬質な味気なさを感じたのだけど、今作は良い具合に世界とキャラクターがマッチしている。(上橋菜穂子『鹿の王』を先に読んだからか、重なる所もあるけれど)

    あらゆるものの「欲望」が表れ、罪を起こしてゆくのだが、そうした罪が簡単に帳消しされるという結末はなくて、安易なエンディングは迎えない。
    けれど、国という社会基盤が続いていく中で、それを負うて人が生きていくことで、見えない結末の先に道があるのだと感じた。
    そういう点で、重みはあるのだけど、ファンタジーとしてはまだ物足りないくらいかな。

    実は『写本師』の続編を眠らせてあったので、楽しみにして読もうと思う。

  • ディアスが国を離れてからの展開が
    早すぎる気もしたが、この物語で
    最も心惹かれたのは ファンズと
    共に生きる北の民の限りない誠実さと
    その暮らしの掛け値ない正しさ。

    アラスカの原住民族から着想したのだと
    思われるが それ以上の生命力と誠実さに
    本当に心が洗われた。

    ディアスとイェイルの交感の中で
    このファンタジーを貫く生と死の思想が
    幻想的に語られる。

    …そんなこんなよりも気になったことを
    やはりどうしても書きたくなった。

    この物語に出てくる架空の食事たちが
    やたらに美味しそうに見えるのですよ。

    それからディアスが南に向かう時
    イショーイが寄こしてくれた護衛の名は
    タンダというのですよ。

    なんか大好きな上橋菜穂子さんの
    守人シリーズにいろんなところが
    重なるのですよ。この物語。

    作者にも作品にも失礼だとは思いながら
    上橋作品に心奪われ 来る日も来る日も
    上橋作品を読み続けていた日々を
    あたたかく懐かしく思い出しました。

    乾石作品はもっと心に痛く 悲しみから
    逃れられない人の性のようなものを
    いつも感じながら読んできたので
    とても意外な作品との出会いでした。

  • 神世から人の世に移り変わる兆しの出来事を描いた物語。
    ディアスが旅の中で見たこと、選びとったこと、伝え残そうとしていること。過去を知り、現在に悩み、未来を見据えてゆく。
    ディアスだけでなくアンローサも同じか。彼女が旅の中で経験したこと。王国の中では決して経験体感することのなかった出来事が、これからの人生にどんな影響を与えて、周りの人々にどんな伝わり方伝え方をしてゆくのか。

    降りかかる災難に対して明確な答えを持っていた王国。サルヴィというそれに頼ることができなくなった、ディアスたちの世代の王国。しなくなった、の方が正確かな。
    彼らが選んだ道は、答えのない長い旅路だろうけど、困難に負けず強く逞しく歩んでいってほしいです。ディアスとアンローサが経験したことが、必ずしも答えを導くわけではないだろうけども、一助にはなっていると思うので。

  • 大人になって初めて読んだファンタジー作品。
    場面場面の描写が細かくて想像しやすく、本当にこんな国があるかのように読み進めることが出来ました。面白かったです。

  • オーリエラントのシリーズがだいすきな乾石さんのノンシリーズ。魔法が絶えたのちの、王国の物語であった。どうしても上記シリーズを頭から消すことはできず、さらにはそのカバー絵との親和性の高さなども考えてしまうのだが、そうはいってもこちらもすてきな作品だった。想像力の賜物としてもよくまとまっている。魔法の杖を振らなくてもファンタジーはそれとして確たる芯を持つのだと改めておもい、ワクワクしつつ読んだ。主人公が世界の広さを体感して逞しさを増すというのは王道だが、この著者ならではの導きかた、やはりそれが好きだと感じた。

  • (`・ω・´)b

  • いやー、ほんとこの作者さんは素晴らしい。極上でした。
    真っ当で真っ直ぐなジュブナイル、久しぶりに読んだ気がします。

    ただの冒険活劇ではなく、生きることの辛さや重さが詰め込まれています。
    少年少女の成長譚は、そのような裏付けがあってこそ、説得力を増すのです。

    もう、間違いないですね。
    これからも、注目していくべき作家さんです。

  • とてもよくできています。
    いつものごとく。

    四つあった月を人が引きずり降ろして、その力で凍土を人が住める街にする。
    宝石で着飾った豪奢な暮らしをしたい、というのが望み。
    ファンズの王サルヴィが赤と金の髪の魔法使いに警告するが、魔法使いは聞き入れずサルヴィを殺す。
    サルヴィはその角をもってして災いを妨げられると忠告を残すが、その角が滅びるとかならず疫病が流行った。

    その偉業をなしとげた王の息子の一人、ディアスは夢を見る。サルヴィが首を切られる夢。

    彼は家臣のマイハイのもとで育てられ、権力抗争から<降りて>いる状態。
    しかし陰謀に巻き込まれ、角を破壊した罪に問われ国外追放とされてしまう。

    サルヴィの角に代わる解決策を見つけてこいと言われたディアスは旅に出て、赤い海で竜と出会う。
    竜は強い力で隆盛を誇っていたが、その力を永遠に持ちたいと望み、ディアスを乗っ取ろうとする。

    サルヴィはディアスに問う。
    永遠か、滅び繰り返す命か。

    ディアスは答える。繰り返す命と。
    サルヴィは彼に呪いを終わらせる方法を伝え、ディアスの、幼いころに亡くなった乳兄弟イェイルと死者たちがそれを贖って物語は終わる。

    ディアスという青年が何を考えているのか、短い物語のなかで視点が変わるせいか、いまいちつかめなかった。
    とても賢くて何か特別なものを感じさせる青年だというのはわかるんだけど、その彼の<核>になるものというか、突き動かすものが何なのか、感情の流れが伝わってこなかったなぁ。
    写本師とは違って、だれかを憎んだりしているわけじゃないし。
    なので王の後継者になってもさもありなんというか、予定調和的なエンディングに見えてしまうのが少しもったいない。

    ただ相変わらず絢爛豪華な文章で、比喩に次ぐ比喩、
    そのためにところどころつまり何が起こってるんだと思うこともありましたけど(笑)
    読み応えがあって、没入感があって、私は好きです。

  • 寒い土地に暮らす人々のために月をおろし、緑豊かな土地に変えようとひとりの人間が、月を守るサルヴィを殺したことで、その土地は繁栄と共に呪いを受け継ぐことになった。そして、人間の血筋であるディアスが、延々と続く呪いに終止符を打つために、半ば強制的にですが、役目を負うことになり、南へ旅立ちます。
    とても話は魅力的なのですが、淡々としていたような感があります。最後はこれから新たな呪いを背負った子達が生まれるのでしょうが、170年分どれだけの人数で分け合ったのか、一回で終わればいいですが、なかなか平和は遠いですね。

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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