トマト・ゲーム (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-6) (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.68
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本棚登録 : 206
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311971

作品紹介・あらすじ

ライダーレースの衝撃の顛末を描く表題作他、問題作「獣舎のスキャット」など全8篇。華麗なる狂気の世界に浸る奇想犯罪短篇集!

感想・レビュー・書評

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  • 皆川さんの、1973~76年ごろの作品を収めた短篇集。

    読みたくて読みたくて買って、でも、すぐに読むわけじゃなくて、積読というのとも違って、「私の準備が整うまで、待っていて欲しい。その背表紙を毎日眺めて、どっぷり浸かれるようになる日を待っていて欲しい」本の、待機場所というのがある。
    そこで半年眠っていてもらった、「トマト・ゲーム」である。
    半年間、何度も手に取り、表紙をうっとりと眺め、ブックカバーをかけようとして、「でも、まだだ…」と感じ、本棚に戻した。
    やっと、皆川さんの世界にずぶりと沈みきる準備ができました。

    『いつか華麗な狂気の世界を、文字の上にもあらわしたいと、一枚、二枚、と書きつづけています。』(p.431、受賞コメントより。皆川さんの言葉。)

    不安と恐怖は、狂気と仲良しだ。
    いつの時代も、きっとそれらは仲良しなんだろう。
    全然違う時代の、全く知らない少年少女の、恐怖や不安や焦燥や憎悪を、しかし私は知っていると思った。
    登場人物たちを、身近に感じてしまう。
    その身近さに同族嫌悪を感じる、孤独さも。

    心配ばかりが降り積もる、不安と恐怖とそれから憎悪に絡め取られたら、輪郭の曖昧な狂気の世界の靄が足元からたちこめる。
    皆川さんがその怖ろしさを、『華麗に』描いてくれるから、孤独にならずにすむことができるのだと、感じた。

    何の音楽もかけず、皆川さんの本とこんな時間を過ごせる。
    今日は素敵な一日だった。
    また「待機場所」に皆川さんの本を新しく追加しないといけない。

  • 壁に向かってオートバイで全力疾走する度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が……第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇収録。恐怖と奇想に彩られた、著者最初期の犯罪小説短篇集。(裏表紙)

    トマト・ゲーム
    アルカディアの夏
    獣舎のスキャット
    蜜の犬
    アイデースの館
    遠い炎
    花冠と氷の剣
    漕げよマイケル

    今まで皆川さんの初期の作品は幻想と狂気が薄めだと思っていたのですが、単純にモノを知らなかっただけだったんだなぁ、と。
    全編、濃淡あれど狂気に彩られていました。
    近頃のものであればそこに幻想が加えられますので、幸か不幸か生々しさが薄れていたのですが、これはもう、グロテスクな感じさえ受けました。

  • 単行本版、文庫版を統合した完全版。「華麗なる狂気」という言葉がこれほど似合う短編集はなかなかありません。背徳的でありながら、どうしようもなくうっとりさせられてしまう作品ばかりです。なかなかにえげつない物語が多くって、「美しい」という表現はなんとなくそぐわない気もするのだけれど。受ける印象はやはり美しいんだなあ。
    お気に入りは「遠い炎」。一番素朴な印象を受けたのだけれど、結末がなんとも恐ろしくって。読むほうも震えが止まらなくなりそうです。
    「獣舎のスキャット」も凄いなあ。もうあまりに邪悪でどうにもこうにも、酷いとしか言いようがありません。なんて凄いものを書かれたんだ皆川さん! これを好きとは言い難いけれど、一番インパクトのあった作品かも。

  • 2015-6-11

  • 休みなく注がれる毒に感覚が麻痺していくのを感じた。より強い刺激を求めて、もっと、もっととページを繰ってしまう。

  • テイストは変わってないけど、密度の高さがない。でもその分スピードがある。若さだなあ、青春だなぁ。このノリを半世紀も前からやってるなんて、ホント偉大だ。

  • "少女外道"を越える黒と赤の生臭い各短編。陰鬱、淫靡、沈美、いや華麗なる狂気の波動に悩殺される

  • 短編集。それぞれ、狂気の余韻があって面白かった。

  • 「私は、泥に顔を埋め、すすり泣いていた。悪臭にみちた獣舎のなかで、私は、腐って落ちてゆく太陽の幻影を見た。」最高やで。

  • 女性作家特有のねっとりとした毒々しさが苦手だと毎度言っているわけですが、幻想文学などにおいてはそれが濃密であればあるほど独特の幻惑感となって良しとされるのもまた理解できるし、そのとおりだとも思う。
    しかしながら、実際問題としてどうしても凶悪な胸焼けで内臓が爛れていくまま読み進めなければならない。不快感に苦しめられるとわかっていてもなお、その世界観を垣間見たいと思ってしまうジレンマ。

    その最高峰たる皆川作品は、その強烈な誘引力には到底逆らえず、何度も手にとっては内臓を焼かれながら必死に喰らいつき、読了後は屍のようになるのが常。
    今回もまたその美しい蜘蛛の巣の糸に絡め取られて手を出し、いつもの様に打ちのめされて今に至ります(苦笑)。
    それでもまた懲りること無く、繰り返しその艶やかな華に手を伸ばすことをやめられない。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
一九三〇年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。
72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。
73年6月「アルカディアの夏」により第20回小説現代新人賞を受賞後は、ミステリー、幻想、時代小説など幅広いジャンルで活躍中。
85年『壁――旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会協会賞、86年「恋紅」で第95回直木賞、90年「薔薇忌」で第3回柴田錬三郎賞、98年「死の泉」で第32回吉川英治文学賞、12年「開かせていただき光栄です」で第12回本格ミステリ大賞、13年 第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。
異色の恐怖犯罪小説を集めた傑作集「悦楽園」(出版芸術社)や70年代の単行本未収録作を収録した「ペガサスの挽歌」(烏有書林)などの傑作集も刊行されている。

「2017年 『皆川博子コレクション10みだれ絵双紙 金瓶梅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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