ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : 與座 巧  みやうち ゆうすけ 
  • 早川書房
3.59
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本棚登録 : 224
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312008

作品紹介・あらすじ

9・11の現場からアフガンまで世界五都市を舞台に、日本製の機械人形を媒介に民族・宗教・紛争・言語などの本質に迫る連作短篇集。SF的想像力で世界のリアルに肉薄する五篇、文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の某メーカーが愛玩用として開発した少女型ロボット「DX9」。歌うことが主な機能の彼女らは、安価で改造しやすい低スペックの製品であったことから、世界各地で大量に購入され、本来の用途とは異なる目的のために改造・使用され、世界各地で降り続ける。ヨハネスブルグの高層ビルから、ニューヨークのツインタワーから、アフガンの戦場から・・・DX9が「降る」光景を共通項に、不穏な世界情勢の中でもがく人間像をリリカルに描き出す連作短編集。

    少女型ロボットが、空から降ってくる。それも、時によっては雨のように大量に。
    SFとジャンル分けするには、あまりに詩的で幻想的な世界。その一方で、舞台となるのは戦場であったりテロの現場であったり、現実の国際情勢を強烈に意識せずにはいられない設定となっています。読後感は「かなり伊藤計劃」ヽ( ´ー`)ノ伊藤計劃以降、こういうムードの世界観が流行っているんですかね。ただし、未来に多少なりとも希望を残すストーリーが多いところが、伊藤計劃との大きな違い。

    確かに面白い作品です。洗練された筆運びにはただならぬセンスを感じます。この世界観が好きな人には、たまらない作品だと思います。
    が、鴨的には残念ながらどうしてもしっくりこないところがあり、手放しで絶賛するには至りませんでした。しっくりこないところとは、語弊を恐れずに言えば「SFとしての説得力」です。耐久性の試験をするためだけに高層ビルを買収して毎日数千体もロボットを落っことすって、その会社はどんなコスト管理してるのか?安価で低スペックが売りのDX9に、どうやって人格転写できるだけの容量が確保できるのか?あの「9・11」をロボットを使って完全再現する意味って、結局何?・・・などなど、イメージ重視の人にはおそらくどうでも良い細かいことなんでしょうが、鴨にはそのリアリティの無さがどうしても引っかかってしまい、せっかく現実社会と地続きの舞台設定を採用しているのに何だかもったいないなぁ、という印象を得るに至った次第です。

    と、ここで鴨がくどくどと述べるまでもなく、巻末の解説で大森望氏が「最後のところで論理よりも美を優先する反SF的な作風」と端的に表現しておられました。正にその通りの作風で、SFとして評価すること自体が筋違いなのかもしれませんね。気になる作家であることには違いないので、これからもチェックして行こうと思います。

  •  日本製のロボットDX9を媒介に世界各国のテロや紛争地区の近未来を描いた連作短編。

     民族問題や宗教問題などの歴史的背景と問題の複雑さが各短編で描かれるので、正直作品を理解しきれたかどうかは自信がないのですが、それでもこの作品に備えられている力というものは十二分に感じました。

     その力の理由に作品の独創性がまずあると思います。現代においても未だ解決の糸口が見えない民族や宗教の問題、それを近未来とDX9というSFのガジェットを使ってどう描くか。表題作や「ハドラマウトの道化たち」でのDX9の利用法や政治の統治法もすごいなあ、と思ったのですが、なによりすごかったのが「ロワーサイドの幽霊たち」。虚実を織り交ぜて語られる壮大な物語に心を奪われました。

     そしてそうしたアイディアだけでなく文章も独特の詩情があります。だから理解しきれなくても、これは力のある作品なんだな、というのが分かるのです。

    『盤上の夜』を読んだ時も思ったのですが、宮内さんは今までのSF作家とはまた違った世界を目指しているように思います。作中のSF要素もその世界を表現するために一番都合がいいのがSF的な世界観なだけであって、そのうち分類不能な新しい文学が宮内さんの手から生まれるのではないか、読み終えてそんな考えがふと湧いてきました。

    第34回日本SF大賞特別賞

  • 短編集であるが、DX9という歌うロボットが共通なガジェットとして登場する。DX9は日本が開発した楽器扱いの玩具ロボットである。本来の目的は人を楽しませるものだが、この作品では、高性能であるがゆえに、兵器として使われたりする。さらに、DX9は高所から落とされることを運命つけられたように扱われる。この落ちるDX9をどう解釈するか、どう共感するのか、読み手は自由である。ただし、明るい結論は出てこない気がする。本作は直木賞候補だったようだ。ただし、人を楽しませるエンタテインメントではなく、読者に考えさせるエンタテインメントである。純文学に近いかもしれない。

  • 素晴らしい。何でもっと早く読まなかったんだ、あたし。
    今生きている世界について自分が何も知らないってことを教えてくれた。

  • 波長合わなかった…

  • 文章が詩的過ぎるな、というのが気にかかっていたが、それは自分がSFとして期待をしていたからであって、意図していたのはSFチックな設定を借りた文学だったのだろうなと、読み終える段になって気付く。

    DX9に仮託されているものは明記されないが、いずれの短編でも死後の永遠性と、肉体と現実を超越した普遍的な「意識」の世界の象徴として描かれている。宮内が描きたかったのは911以後の血生臭い世界において、脱臭された世界を目指す人々の思いと、それを実現し得る技術の存在であり、ここで数々描かれるその他ガジェットや設定は、そのための装置でしか無いように感じる。

    そしてDX9を経て人々が得るものは、そのモデルたる「初音ミク」によって、ここ10年の日本音楽界が経た過程と酷似する。だからこの物語が夢想であるとも、浮足立ったSFだとも思えず、ただ愚直にこの世界線の先にある未来として、心の通わせられる文学の世界として読み取ることができた。傑作と呼んで良いのではないか。

  • 読解力の問題かもしれないが、少々読みにくさがあるものの伊藤計劃の再来かと思える内容で、近未来SFではあるがSFは舞台装置でしかなく、人間的というか生身の物語だった。

  • 難しかったけど、雰囲気は好みで一気に読めました。

  • のめりこめなかった

  • 馴染みのない言葉にはてなマーク連発
    読むのに苦労した

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プロフィール

宮内悠介(みやうち・ゆうすけ)
1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部英文科卒業。2010年囲碁を題材とした短編『盤上の夜』で第1回創元SF短編賞山田正紀賞を受賞、各種盤上ゲームの連作短編として2012年『盤上の夜』で単行本デビュー。第33回日本SF大賞受賞、第147回直木賞候補。2013年『ヨハネスブルグの天使たち』で第149回直木賞候補、第34回日本SF大賞特別賞受賞。2016年『アメリカ最後の実験』で第29回山本周五郎賞候補。「カブールの園」で第156回芥川賞候補。同作で2018年第30回三島由紀夫賞受賞。『彼女がエスパーだったころ』で第38回吉川英治文学新人賞受賞。『あとは野となれ大和撫子』で第157回直木賞候補。2017年「ディレイ・エフェクト」(『文学ムック たべるのがおそい』 vol.4)で第158回芥川賞候補。

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