伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房
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本棚登録 : 284
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (731ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312015

作品紹介・あらすじ

早川書房編集部・編 王城夕紀、柴田勝家、仁木稔、長谷敏司、藤井太洋、伏見完、吉上亮──現代日本SFの中核から新鋭まで全7作の中篇を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 2009年に亡くなられた伊藤計劃氏へトリビュート。
    とりあえず買っておくか。

  • ゼロ世代によるトリビュート

     玉石混交というか散弾銃というか、とにかく圧倒の700ページだ。

     気に入ったのは、フランケンシュタインものと料理ものと仮想現実ものかな。具体的には、伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」、吉上亮「未明の晩餐」、伏見完「仮想の在処」。いずれも知らない作者さんだった。

     まぁまぁ楽しめたのが、藤井太洋「公正的戦闘規範」。知ってる作者さんだ。

     あとはギブアップ。続編も楽しみだ。

  • テクノロジーが人間をどう変えるのか、という問いを内包したSF、の中編集。

    サイバーパンクの定義はポストヒューマンという古く新しいテーマとして蘇った。

    ○公正的戦闘規範 藤井太洋

    藤井太洋に苦手意識があって、足踏みしてたけど、読み切ったら正統なトリビュートだった。
    中国語ってやっぱかっこよい。戦争のあり方を巡る個人の闘争。
    説明臭すぎるような。でもこんなもんか?

    ○仮想の在処 伏見完

    AIとして生まれ育った、死産する予定だった、双子の姉との対話。
    そこにも一応、仕掛けがあって。

    メモリアルAIというアイディアとして描写はトリビュートとしてあまりにも正統というか。
    ポストヒューマンSFの中編として隙のない作品。

    ○南十字星 柴田勝家

    クロニスタっていう長編の冒頭部分らしいが、この後どうなるんだ?
    カロリーが高いなこの中編集は。
    戦地に赴く文化人類学者。民族。自己と他者の境界。文体が思弁的過ぎて、小説としてはどうなんだろう。


    ○未明の晩餐 吉上亮

    料理人の主人公が、死刑囚の最後の晩餐を用意する。
    死刑囚が求めているものは何なのか、が解かれる謎となる。
    長編ぽいアイディアとキャラクター設定だけどバランスよく構成されている。

    ○にんげんのくに 仁木稔

    時代設定は実は、現代と変わらないっていうのは読みはじめてすぐにわかった。
    未開文明で生きている少年。
    異人と呼ばれる彼は風に操られるものだということを自覚する。
    風、は物語、作者のことなのかと思った。
    語り手が焦点化した人物(≒主人公)が異人であって、それをコントロールする存在を感知するっていうメタフィクションなのかな、と。

    未開文明のの歴史は19世紀程度にしか遡れないっていうのはそうだろうな、と。
    条件次第で人間になってしまう。
    お題に直球。

    ○ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀

    LeI。巨大コングロマリット。進化ビジネス。

    進化は選択で、ゴールは調和。
    ではない、という話。

    進化は選択で、ゴールはひとり勝ち。
    自己言及的な文章が多くて、このトリビュート自体も冷笑的な態度なのか。

    ○フランケンシュタイン三原則 あるいは屍者の簒奪 伴名練

    ここまでずーっと真っ当なトリビュートが続くのか。
    屍者の帝国的なアプローチで、切り裂きジャックの回顧録を描く。

    ○怠惰の大罪 長谷敏司

    これも長編の第一章なのか。
    AIがキューバの麻薬密売人たちの世界にもたらす影響。
    だが一人の男の立志伝というか、伝説がメインでSFとしてではなく、面白かった。

  • いかにも伊藤計劃トリビュートらしい中編集。
    戦争をAIから取り戻す「公正的戦闘規範」、AIが推奨される選択肢を掲示する世界「ノット・ワンダフル・ワールズ」が特に面白し、伊藤計劃らしさがある。
    分厚さもありSFはじっくり読み込んでしまうので時間がかかったが非常に面白かった。

  • ページ数のボリューム感に感動した…気に入ったのは「未明の晩餐」「ノット・ワンダフル・ワールズ」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」

  • 意図的な選択肢を提示し、それを人が受け入れるようになると、選択肢を提示している人は、人を操れるようになりますが、操られている人はそうであることを認識しませんという話が載っている。たとえ、あやつっていたのが人でなかったとしても。

    ノット・ワンダフル・ワールズ

  • 藤井太洋「公正的戦闘規範」★★★
    伏見完「仮想の在処」
    柴田勝家「南十字星」
    吉上亮「未明の晩餐」
    仁木稔「にんげんのくに」
    王城夕紀「ノット・ワンダフル・ワールズ」
    伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」★★★★★
    長谷敏司「怠惰の大罪」

  • いろんな作家さんの短編集。
    伊藤計画っぽさとかは問うていないらしい。
    伊藤計画らしいのもあれば、全く違うものも。
    影響を受けて書いた作品というところでまとめてもこれだけ幅のある短編になるんだなあと感心しました。

    個人的には、「怠惰の大罪」という作品が面白く、「公正的戦闘規範」という作品が伊藤計画っぽいかなと思いました。

    読むのに結構時間かかってしまいましたが、その他の作品もお薦めです。

    伊藤計画さんの本を読んでなくても楽しめると思う。

    短編集なのに長編の冒頭だという作品が複数有り、(「怠惰の大罪」もだけど・・・)何だよ~という感じだったので星3つ。

  • SFって本当に無知な分野なんだけど、その分入り込むのにはちょっと時間のかかる作品だったけど愛と気合いのこもった700ページ越えで面白い作品が多かった。

  • 文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。

    以下、個別作品の感想。

    ◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
    格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。

    ◎仮想の在処(伏見 完)
    「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。

    ◎南十字星(柴田 勝家)
    伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。

    ◎未明の晩餐(吉上 亮)
    死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。

    ◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
    ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。

    ◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
    生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。

    ◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
    実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。

    ◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
    人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。

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著者プロフィール

一九七八年八月、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。二〇一四年、第十回C★NOVELS大賞特別賞を受賞した『天盆』(「天の眷族」を改題)で鮮烈なデビューを飾る。著書に、奇病に冒され、世界中を跳躍し続ける少女の青春を描いた『マレ・サカチのたったひとつの贈物』(中央公論新社)、本の雑誌社『おすすめ文庫王国2017』でオリジナル文庫大賞に輝いた『青の数学』(新潮文庫nex)がある。

「2018年 『マレ・サカチのたったひとつの贈物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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