伊藤計劃トリビュート (1) (ハヤカワ文庫JA)

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  • 早川書房 (2015年8月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (736ページ) / ISBN・EAN: 9784150312015

作品紹介・あらすじ

王城夕紀、柴田勝家、仁木稔、長谷敏司、伴
名練、藤井太洋、伏見完、吉上亮――現代日本SFの中核から新鋭まで全八作の中篇を収録。

みんなの感想まとめ

テーマは、現代社会の複雑さとその影響を受けた人間の心情を描いた多様な短編群であり、特に伊藤計劃の影響を受けた作家たちによる新たな視点が光ります。地震やパンデミック、戦争、AIといった現実の脅威が絡む中...

感想・レビュー・書評

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  • 伊藤計劃氏が亡くなってから16年
    この“トリビュート”が出版されてから10年

    その間、
    大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
    理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
    SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
    現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
    『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。

    多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。

    最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
    まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。

    面白かった。

  • ・公正的戦闘規範
    面白かった。描写の細かさにも圧倒された。また、人々がゲームによって殺人を犯している、というところで小林よしのり『新戦争論』『PSYCHO-PASS2』5、6話のハングリーチキンを思い出した。この設定はSFでは鉄板なのかな。

    ・仮想の在処
    設定にまず驚いた。また、人間の定義についても考えさせられた。AIで姉の存在についての記述が巧みだった。

    ・南十字星
    自己相というものをめぐって話が展開されていた。あらゆる人々のあ間で感覚が共有されている、という設定が興味深かった。民族、文化についての記述もあり、考えさせられた。また最後の、主人公が、短刀を首に当てたためシステムから警告されたことに対し、自分のへの殺意すら肯定しないシステムに対し叫ぶ場面は印象的だった。なかなか難しい文章だったので、また読み返したい。

    ・未明の晩餐
    幻想的な料理の描写が印象的だった。料理人に憧れた。(笑)また、死刑囚に最後の晩餐を作る仕事をする人物が主人公という設定が面白かった。

    ・にんげんのくに
    ぎっしり文章がページを占領していて、単語も難しく読みにくい文書だった。また、人間の本性である暴力性が容赦なく描かれていたため読んでいて、胸糞悪くなる話だった。麻薬が熱帯地域の先住民族の間で宗教的儀式に使われていた話は後で知った。

    ・ノット・ワンダフル・ワールズ
    作中のシステムが『PSYCHO-PASS』のシビュラシステムと似ていると思った。違うところは、この作品内のシステムは、提案されたものを拒否できる点だと思った。また、調和を実現するためには意識を無くす必要があるという話が、『ハーモニー』と似ていると思った。
    ラストが衝撃的だった。AIが全て操っていたとは。

    ・フランケンシュタイン三原則、あるいは死者の簒奪
    まだ読んだことがないが、『屍者の帝国』と似ている設定が使われていた。魂や意識について考えさせられ、興味深い内容だった。また、人物設定に関して、「ナイチンゲール」と、歴史上の人物の名が使われていたり、新撰組のような侍がイギリスで警護役をしているのが面白かった。

    ・怠惰の大罪
    メキシコの麻薬戦争が題材なっている話で、一人の麻薬王の誕生を描いている。元々客の一人であった、AI会社に勤めていたアメリカ人の手を借りてAIを駆使することで覇権を握ることができた主人公だったが、技術が発達するにつれて、犯罪もまた技術的に高度になるという点で、ギャングがAIを使うのは実際に起こりそうな話だと思った。また、AIを効果的に使うことを考えた主人公は賢いと思った。
    以上のように、テーマ的には面白いと思ったのだが、裏世界がリアルに描かれていて、『にんげんのくに』以上に胸糞が悪くなる作品だった。特に、主人公の弟マルコが誘拐されて出演させられたい殺人ビデオのDVD渡された主人公がそれを見るところや、主人公が拷問される場面が読むに堪えなかった。本当に容赦ないと思った。銃で指を吹っ飛ばされ、自害することもできないまま手足を縛られて爪は剥がされ歯は抜かれて目を潰されるなんて。そういえば、生きたまま内臓を出された人もいたな。グロ描写はさておき、全体的に退廃的な世界が描かれており、こちらが侵食されそうになった。それは、作者の文章力が高いからということになるのだが。


    全体の感想
      ↓
    非常に分厚い本で驚いた。一気に読むのは大変だったので、他の作品を途中で読むなどして間が空いてしまい、2020年12月末に読み始め、2021年6月前半に読み終わった。
    内容的にも重厚で重い話が多く、心身ともに疲れたが、いい経験になったと思う。
    『仮想の在処』『未明の晩餐』が気に入った。

  • 伊藤計劃の登場がゼロ年代のSFを方向付けた。戦争やAIや環境問題、そして心の在り処。今を生きる私たちの心に刺さる作品が集まった、レベルの高いアンソロジーだった。一人の作家に対し、プロの作家たちはこんな答えを提示するのかと感嘆したし、特に王城夕紀と伴名練の作品には伊藤計劃への深いリスペクトを感じた。あと作家たちの後書きが面白かった。アンソロジーを通して伊藤計劃を読んだときに見落としてたあれやこれやが浮かんできて、次はもっと深く読めると思う。

  • 伊藤計劃に影響を受けた作家たちによる書き下ろしアンソロジーをようやく読了。

    8人の作家が設定が被ることのない話を各々展開していて、読み応えは抜群。
    一部「ん?これはSFなのか…?」と首を捻ったものもあるが、なるほど、読み終えると確かにSFか、となる感じ。
    8作品の中で好きなのは『ノット・ワンダフル・ワールズ』『フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪』

  • 伊藤計劃って名前のせいなのか?
    この8人の作家による中篇集は、それぞれがかなりの攻撃力を持っている。
    またまた、それぞれが異なる作風で僕をアタックする!
    早逝した怨みを晴らそうとしているようだ。
    たまらん!

  • 目次
    ・公正的戦闘規範 藤井太洋
    ・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
    ・南十字星 柴田勝家
    ・未明の晩餐 吉上亮
    ・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
    ・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
    ・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
    ・怠惰の大罪 長谷敏司

    どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
    この2作品は好きだなあ。
    特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。

    単純な幸福はない。
    幸福に正解はない。
    けれどどの作品も屈託がありすぎて、胸が苦しくなる。

    本の分厚さもあって、心身ともに体力を必要とする読書でした。

  • 2009年に亡くなられた伊藤計劃氏へトリビュート。
    とりあえず買っておくか。

  • ゼロ世代によるトリビュート

     玉石混交というか散弾銃というか、とにかく圧倒の700ページだ。

     気に入ったのは、フランケンシュタインものと料理ものと仮想現実ものかな。具体的には、伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」、吉上亮「未明の晩餐」、伏見完「仮想の在処」。いずれも知らない作者さんだった。

     まぁまぁ楽しめたのが、藤井太洋「公正的戦闘規範」。知ってる作者さんだ。

     あとはギブアップ。続編も楽しみだ。

  • テクノロジーが人間をどう変えるのか、という問いを内包したSF、の中編集。

    サイバーパンクの定義はポストヒューマンという古く新しいテーマとして蘇った。

    ○公正的戦闘規範 藤井太洋

    藤井太洋に苦手意識があって、足踏みしてたけど、読み切ったら正統なトリビュートだった。
    中国語ってやっぱかっこよい。戦争のあり方を巡る個人の闘争。
    説明臭すぎるような。でもこんなもんか?

    ○仮想の在処 伏見完

    AIとして生まれ育った、死産する予定だった、双子の姉との対話。
    そこにも一応、仕掛けがあって。

    メモリアルAIというアイディアとして描写はトリビュートとしてあまりにも正統というか。
    ポストヒューマンSFの中編として隙のない作品。

    ○南十字星 柴田勝家

    クロニスタっていう長編の冒頭部分らしいが、この後どうなるんだ?
    カロリーが高いなこの中編集は。
    戦地に赴く文化人類学者。民族。自己と他者の境界。文体が思弁的過ぎて、小説としてはどうなんだろう。


    ○未明の晩餐 吉上亮

    料理人の主人公が、死刑囚の最後の晩餐を用意する。
    死刑囚が求めているものは何なのか、が解かれる謎となる。
    長編ぽいアイディアとキャラクター設定だけどバランスよく構成されている。

    ○にんげんのくに 仁木稔

    時代設定は実は、現代と変わらないっていうのは読みはじめてすぐにわかった。
    未開文明で生きている少年。
    異人と呼ばれる彼は風に操られるものだということを自覚する。
    風、は物語、作者のことなのかと思った。
    語り手が焦点化した人物(≒主人公)が異人であって、それをコントロールする存在を感知するっていうメタフィクションなのかな、と。

    未開文明のの歴史は19世紀程度にしか遡れないっていうのはそうだろうな、と。
    条件次第で人間になってしまう。
    お題に直球。

    ○ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀

    LeI。巨大コングロマリット。進化ビジネス。

    進化は選択で、ゴールは調和。
    ではない、という話。

    進化は選択で、ゴールはひとり勝ち。
    自己言及的な文章が多くて、このトリビュート自体も冷笑的な態度なのか。

    ○フランケンシュタイン三原則 あるいは屍者の簒奪 伴名練

    ここまでずーっと真っ当なトリビュートが続くのか。
    屍者の帝国的なアプローチで、切り裂きジャックの回顧録を描く。

    ○怠惰の大罪 長谷敏司

    これも長編の第一章なのか。
    AIがキューバの麻薬密売人たちの世界にもたらす影響。
    だが一人の男の立志伝というか、伝説がメインでSFとしてではなく、面白かった。

  • いかにも伊藤計劃トリビュートらしい中編集。
    戦争をAIから取り戻す「公正的戦闘規範」、AIが推奨される選択肢を掲示する世界「ノット・ワンダフル・ワールズ」が特に面白し、伊藤計劃らしさがある。
    分厚さもありSFはじっくり読み込んでしまうので時間がかかったが非常に面白かった。

  • ページ数のボリューム感に感動した…気に入ったのは「未明の晩餐」「ノット・ワンダフル・ワールズ」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」

  • 意図的な選択肢を提示し、それを人が受け入れるようになると、選択肢を提示している人は、人を操れるようになりますが、操られている人はそうであることを認識しませんという話が載っている。たとえ、あやつっていたのが人でなかったとしても。

    ノット・ワンダフル・ワールズ

  • 2017.1.14 4

    良かった。伊藤ケイカクさんの本も改めて読みたいと思った。

  • 藤井太洋「公正的戦闘規範」★★★
    伏見完「仮想の在処」★★★★
    柴田勝家「南十字星」★★
    吉上亮「未明の晩餐」★★★
    仁木稔「にんげんのくに」★★★
    王城夕紀「ノット・ワンダフル・ワールズ」★★★
    伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」★★★★★
    長谷敏司「怠惰の大罪」★★★

  • いろんな作家さんの短編集。
    伊藤計画っぽさとかは問うていないらしい。
    伊藤計画らしいのもあれば、全く違うものも。
    影響を受けて書いた作品というところでまとめてもこれだけ幅のある短編になるんだなあと感心しました。

    個人的には、「怠惰の大罪」という作品が面白く、「公正的戦闘規範」という作品が伊藤計画っぽいかなと思いました。

    読むのに結構時間かかってしまいましたが、その他の作品もお薦めです。

    伊藤計画さんの本を読んでなくても楽しめると思う。

    短編集なのに長編の冒頭だという作品が複数有り、(「怠惰の大罪」もだけど・・・)何だよ~という感じだったので星3つ。

  • SFって本当に無知な分野なんだけど、その分入り込むのにはちょっと時間のかかる作品だったけど愛と気合いのこもった700ページ越えで面白い作品が多かった。

  • 文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。

    以下、個別作品の感想。

    ◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
    格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。

    ◎仮想の在処(伏見 完)
    「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。

    ◎南十字星(柴田 勝家)
    伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。

    ◎未明の晩餐(吉上 亮)
    死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。

    ◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
    ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。

    ◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
    生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。

    ◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
    実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。

    ◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
    人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。

  • 文句なく面白かった。伊藤計劃と同時代のSF作家はこういう世界を作る ということがよく知らされたと思う。第三世界、AI、ドローンなど共通アイテムを持ちながら、それぞれが興味をそそられつつ読んだし、短編ながら充足感があった。
    長編が気に入らなかった某作家が、意外にもここではめっぽうひきこまれるものを読ませてくれたのも発見だった。

  •  今は亡き伊藤計劃。
     彼に贈る儚さに満ちた物語。
     サイコパスまんまだなぁ、とか、ブレードランナーだなぁ、とか、ディックだなぁ、とか。
     藤井さんのゲームの大元が、っていうのは実際ありそうだなー、とか。
     殆どが、血にまみれ肉にまみれ、痛々しい箇所もありますがそれもご愛嬌。

  • ※暴力及び流血描写、性表現の含まれる作品です。

    【印象】
    たっぷりどっぷり自由に集まった。
    4、6-7編目に惹かれます。都市や『屍者たちの帝国』に関連しているため。

    【類別】
    小説、短編集。
    SFやファンタジー、ユートピア/ディストピア等の要素。

    【構成等】
    全8編収録。各編平均90頁ほど。

    【表現】
    地の文は様々であり、また、専門知識は不要です。

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