みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.50
  • (3)
  • (10)
  • (13)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 93
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312077

作品紹介・あらすじ

無人宇宙探査機の人工知能には、科学者・雨野透の人格が転写されていた。夢とも記憶ともつかぬ透の意識に繰り返し現われるのは、地球に残した恋人みずはの姿。法事で帰省する透を責めるみずは、就活の失敗を正当化しようとするみずは、リバウンドを繰り返すみずは…無益で切実な回想とともに悠久の銀河を彷徨う透がみずはから逃れるため取った選択とは?選考委員満場一致の、第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 科学者・雨野透の人格転写AIを載せて、無人宇宙探査機は数万年の時を過ごしつつ宇宙を経巡っている。その大半は何の変化も無く、退屈極まりない日々を送る透のAIが白昼夢のように思い出すのは、地球に残してきた過食症の彼女・みずはの思い出。「ひとくちちょうだい」が口癖で、透に依存し切っていたみずはのネガティヴな記憶に責めさいなまれ続ける透は、気を紛らわせるために自分を複製したり人工生命をばらまいたりするが、その結果はいつも自らの悩みを増やして行くこととなる。AIゆえに死ぬことも出来ない、悠久の時を生き続ける透がみずはの面影から逃れるために取った行動とは・・・?

    第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。文庫になったら読もうと思ってました。が、人によって評価の高低がもの凄く激しいので、ちょっと躊躇していた作品でもありました。
    意を決して読んでみた感想。思ったよりも面白かったです。ただし、ダメな人は徹底的にダメだと思います。

    前半3分の1と中盤3分の1、そして後半3分の1では、かなり印象が違います。
    前半3分の1では、主人公の透(ただし、AI転写前の生身の男性)と恋人のみずはとの日常的なやり取りが、特に起承転結もなくだらだらと描写されます。これが後々のAI透の思考や行動を決定づける要素になっており、ストーリーの背景として重要な描写ではあるのですが、透もみずはも双方とも欠片ほども感情移入できないメンヘラ系キャラで、ここでまずくじけそうになりました(^_^;何でこの二人が恋愛ごっこできるんだろう。全然「恋人同士」じゃ無いじゃん。って現実的な感想は、この作品には持ってはいけないのかなぁヽ( ´ー`)ノ
    中盤3分の1は、透が暇つぶしに生み出した人工生命「D」と透とのやり取りに終始します。様々な種類に進化した「D」と透(この時点で自分をも暇つぶしにコピーしており、オリジナルの所在は不明となっています。元々AIなのでどれが「オリジナル」なのか、という観点もあります)の言語的バトルが何度も何度もリフレインされ、もはや「語り芸」の領域にヽ( ´ー`)ノ似たようなシチュエーションをちょっとだけ変えつつ繰り返す手法は、ちょっと古典落語「天狗裁き」っぽいですね。

    そして、ラスト3分の1。
    既に数万年の時を旅しているAI・透にとって、みずはの詳細な記憶は抜け落ち、純粋な欲望の象徴と化しています。みずはの欲望と異種知性体の欲望とが混じり合い、自らが欲望の権化と化して宇宙そのものを貪り食らい始める透。宇宙滅亡のヴィジョンを描写して、この物語は幕を閉じます。
    SFとして、このラストシーンはなかなか面白いのですが、鴨的な印象ではそこに至るまでのキャラの行動理論にいまひとつ同化出来ず、読後感は「はぁ、そうですか」とかなりの第三者感ヽ( ´ー`)ノ感情移入できると、相当面白い作品なのだと思います。そういう意味では、限りなく「私小説」に近い作風なのかもしれませんね。
    いやー、日本SF、まだまだ個性的な作者が現れそうですね。

  • なんて凄い設定なんだと感動した/ しかしオチを除いて中〜終盤は少し退屈であった/

  • アニメ調の装丁を見て少々舐めて読み始めたら、装丁より格段にハードなSFでびびった。嬉しい誤算。
    憎まれ口を叩きながらも淡々と宇宙を(壮大な時間の流れを)飛び続けるのが、とてもドライでよい。そして、随所に挟まれるみずはの記憶は当初はみずみずしくて微笑ましく、徐々に生傷のような痛みを伴い始める。よくあるつまらない恋愛かとこれも舐めてかかったら、予想外にシリアスで、緊張感が高まる。そして、信用できない語り手という古典的な手法と人格を転写されたAIというこれも古典的な仕掛けが、すごくぴったりとマッチして、広大な世界の中の人間のちっぽけさに光を当てる。いやほんとに結局人間なんてみずはのことを繰り返し思い千々に乱れる程度の心しか持っていないのよ。
    あと進化した人類の姿が一々興味深い。

  •  無人宇宙探査機の人工知能には、科学者・雨野透の人格が転写されていた。夢とも記憶ともつかぬ透の意識に繰り返し現われるのは、地球に残した恋人みずはの姿。法事で帰省する透を責めるみずは、就活の失敗を正当化しようとするみずは、リバウンドを繰り返すみずは…無益で切実な回想とともに悠久の銀河を彷徨う透がみずはから逃れるため取った選択とは?


     あらすじをまんまコピペ。これだけ読むと、メンヘラなカノジョを地球に置き去りにしたことへの後悔と自責を垂れ流す人工知能くんの、深宇宙への物寂しい旅を描いた小説、と勘違いすると思うんだ。

     違うんだよなぁ。

     メンヘラカノジョをメンヘラたらしめる、飢餓感、に己の精神を呪われた主人公が、その呪詛から逃れるために地球を遙か離れた銀河の彼方へと逃げようとするも、自分が暇つぶしにやらかしたアレやコレやのせいでかえって飢餓の呪いを強めてしまい、全宇宙をむさぼり食うバケモノへと変貌していく様が描かれた小説、ってのがこの作品の骨子。

     そう、この作品、ホラーです。ハードSFとサイコホラーを絶妙なバランスで混合してある、ミックスジュースみたいな小説。そもそもタイトルからして露骨だよね、無間って無間地獄のことだし。
     読んでてほんと、背筋が凍った。暇つぶしに作った生命体が飢餓感を去勢したはずなのに、主人公のあずかり知らない場所とアプローチで飢餓感を覚えて使いこなそうとしたり。その生命体を捕食した地球外知的生命体も飢餓感に呪われて、主人公に「お前を食わせろー」と迫ったりとか。こえーよ、ある意味カニバリズム小説だよこれ。多元を含む全宇宙に飢餓の呪いが充満して食い散らかされていく様ってのは、独特の怖さがあった。
     数学用語がぽんぽん出てくるので、読む敷居は結構高い。でも、乾いた冷ややかさで設えてあるハードSFと、ドログチョした冷たさを持つ現代恋愛ものをうまーく交錯させてあって、読み応えはものすごくあった。
     総じて、怖いだけじゃなく読んでいてハラハラする、質の高いSFホラーだと思った、かなり面白く読めました。

     個人的に、サーフの怒りにはものすごくうなずけた。世界を憎むのも当然だと思う。それだけにサーフの最期は悲しいものがあったなぁ。

    みずは「オレサマオマエマルカジリ」

    透「ああ逃れられない!」(食欲のカルマ)

    サーフ「いいぞもっとやれ」

  •  もう語り芸という芸風と呼んで差支えないのではなかろうか。
     SF的なうんちゃらは置いておくとして、語り手の滑らかなストーリーテリングを味わうだけで楽しい。
     ただ、みずはに対してどういう感情を抱けばいいのか悩ましい。
     けなげなのか、うざいのか……とまぁ、結局この話に出てくるみずはは、水は本人ではなく主人公から見たみずはなんだけどね! みずはも主人公もどこにも行かないところ、そしてそれでも面白いところがすごい。まさに語り芸か。

全6件中 1 - 6件を表示

六冬和生の作品

みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)を本棚に登録しているひと

ツイートする