深紅の碑文 (下) (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2016年2月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (592ページ) / ISBN・EAN: 9784150312183

作品紹介・あらすじ

陸海の対立解消に奔走する者、種を宇宙に送り込もうとする者……苛烈な闘争の時代に己の信念を貫く者達が、この星に生の輝きを灯す究極の黙示録巨篇

みんなの感想まとめ

人間の業や信念、そして闘争の複雑さが深く描かれた作品で、登場人物たちの心理的な葛藤が丁寧に表現されています。暴力の連鎖や分断が続く中でも、希望を見出す姿勢に心が打たれ、特に宇宙開発に携わる人々の思いが...

感想・レビュー・書評

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  • 結局、最後まで青澄ら救済団体の善意・好意を拒絶し、逆に攻撃し続けたザフィールとその一味。「欲しいものは自分で決める。手助けはいらない」、むしろ迷惑だししゃくにさわる。過去の不幸な出来事を世代を経ても昇華できない狭量な人間の性がまざまざと描き出されている。

    一方、〈大異変〉が迫る中で強い反対運動に晒されるなど紆余曲折あったものの、DSRDは何とか物資輸送ロケット打ち上げを再開し、宇宙空間で宇宙船アキーリ号を組み立てた。そして25光年彼方のハビタブル・プラネット〈マイーシャ〉に人類の歴史と生命の種、そして人工生命体(コピー・マキ)を載せた無人宇宙船アキーリ号を送り出すアキーリ計画が実行に移されたされた。人類の希望と科学者の夢の結実、現実を取るか夢の実現にリソースを割くか、究極の問い。

    青澄のぶれない信念と行動が印象に残る作品だった。「華竜の宮」に勝るとも劣らない、読み応えたっぷりの作品。

  • 暴力の連鎖が辛い。
    ラブカの闘争は、そうなった経緯や心理的な面も丁寧に描かれていて、こいつらは悪人だと簡単に切り捨てられるものじゃないから色々と考え込んでしまう。

    しかしそれ以上に、宇宙開発に携わる人々の思いがとても心に響いて、胸が熱くなった。
    自分たちが結果を見届けることはない。けれどもきっと、その先があると信じている。
    それってとても心が豊かでいれられることだと思う。

    解説によると、この先にまだまだシリーズの続編が予定されているそうで、楽しみだ。
    惑星マイーシャの話、ルーシィの話、NODEの話、どれも読みたくてたまらない。

  • 下巻も読み応えがある世界でした。人の業は深い。
    人類滅亡が避けられない未来がやってくるのを知りながらも、分断と闘争はなかなか止められないないというのが…血塗れの「深紅の碑文」という言葉が重くのしかかりました。
    陸・海・空をそれぞれ、青澄・ザフィール・ユイという登場人物が中心になって描かれていました。
    青澄は救援活動、ザフィールはラブカでの陸との闘争、ユイはアキーリ号を宇宙へ放つ、というそれぞれの闘いは悲しい結末や消息不明にもなったけど、それでも、アキーリ号出発は救いでした。青澄は脳内で見てたんだな…再読で、意識不明中だったのに気付きました。副脳凄い。
    連作で続編も構想されているようなので楽しみです。

    「反対意見を持つ者を社会から排除したり、力ずくで叩き潰したりするような真似は、どこの誰にもさせてはなりません。それこそが、あの闘争から私たちが学び、最後まで担うべき仕事ではないでしょうか」…今の状況に重なる気がするので覚えておきます。

  • 1を解決するために2を無くす。そうすると2と共存関係にあった3は快く思わない。

    現実も様々な原因や現象が複雑に絡み合っており、この問題はこうすれば解決するという単純な道筋はないのだと感じました。
    また、自分の信念が揺らぎそうになる時、それをどうしたら保つことが出来るのか、それが出来る人は強い人であり、でもそれは側から見ると滑稽にも映ります。
    人それぞれ千差万別の考え方がある中で、多様性を重んじ、簡単に物事を解決しようとしない青澄さんを尊敬します。

  • 人の業の深さを感じる作品。
    前の作品では人一人殺すことすら躊躇していた青澄さんでしたが、彼の一生もまた血の深紅に染まってしまいました。なぜザフィールが今の彼に最後まで心を許さなかったのか少し分かるような気がします。立派な人であることに、変わりはないのですが。
    未曾有の危機を前にしたとき、人はどのように振る舞うのか…。多くの人に読んでもらいたい作品です。高潔な理想だけでは人は救えないということ、理想を実現するためには綺麗なままでは生きられないということを思い知らされます。

  • 様々な登場人物の生きた軌跡から、人間としての愛情豊かな生活が窺われ、未来人も
    やはり私たちと同じ人間だということが感じられる。

    どうぞ、25世紀の皆さんもこのつらい時代を生き抜いてください。

  • 陸と海に加えて空という軸。
    前作をさらに超えてくるとはねえ。

  • 「華竜の宮」の続編
    新たな登場人物の活躍、海の民の未来・・・
    上巻では「焦点を当てる人物が多い気がして、いまいち物語に没頭できなかった」と書きましたが下巻は、これら人物の結末が見事に描かれ、人間の愚かさや思いの強さは何でも叶うという、気持ちいい読了感です。

    この後の世界の小説も考えているようで、ぜひ読んでみたいと思いました。

  • 華竜の宮のラストでコピー・マキが言った「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか」と
    マキの「(アキーリ号にコピー・マキを乗せるという)それを選択なさったのはあなたです。これだけで、もう充分ではありませんか」が重なって泣いた。

    結局作中でプルームの冬はこなかった。
    陸と海が手を取り合うとか、全く綺麗に物事が進まなくてもどかしい。リアル。でも、実際には絶対にそうなるだろうな。海と陸にわかれてなくても世界中が一丸になって、みたいな想像出来ない。

  • 壮年から老境に入り陸の青澄、中年期から次第に老いを自覚していく海のザフィール、青年期から中年へと成長していく空を目指すユイが対照的に描かれる
    過度にきれいな構造や結末にこだわることなく、十分にありそうな紆余曲折が丁寧に描かれる
    主人公も決して、高潔なだけの人物ではなく清濁併せ吞む人物としてほかの主人公に相対する
    しかし降りかかる数多くの問題に苦悩しながらも理想を捨てない姿は逆に胸に迫るものがある
    SFとしての興味とともに、人間ドラマとしても一流のドラマであった
    まだ続編が予定されているようであり、そちらも楽しみである

  • ストーリーの終焉がきれい。

  • 12月15日読了。図書館。

  • RIP 青澄誠司

  • 深紅の碑文を刻むのに、どれだけの犠牲を払ったのか?ザフィールが生き残ったのは意外だった。でも幸せそうじゃないのは仕方がない。青澄は自分のやりたい様にやりきったのか?コピーマキが相変わらず可愛い。オリジナルマキは出来すぎちゃん。ユイとマリエは付き合ってるの?アニスとマリエは無事なの?チャムの人生は苦難が続いたけれど良き理解者に出会えて良かった。ロケットの発射を見届けられるまで長生き出来て良かった。夢追い人が理解されづらいのは現代でも変わらないが、こういう人たちが歴史を動かすのよね。

  • 戦いをやめて欲しい陸と、鬱憤を晴らしたい海と、憧れと情熱で目指すのを諦めない空。

    深紅の碑文ってそういうことかというのを物語内で説明されるまで分からなかった~。

    まだ終わりにはすっきりしないとこもあるなと思っていたら今後中短編くらいでシリーズの続きが出るようで楽しみ。
    他にも読んでいないお話があるので是非読みたい。

    マキみたいなアシスタントが欲しー

  • 大河ドラマって子供のころは親が満てたから一緒に観てたけど、まぁ永らく観てなくって、でも一年を通して見続けると思い入れも出てきて、最後はけっこうぐっとくるのかな、と思ったり。
    この話はけっこう長い時代を語っているから、読み切った後で似たような感慨があるような。
    ああ、頑張ったよなぁ、って。
    こういう感覚ってもしかして年を取らないと分からないのかもね。
    子どもの頃ってあれじゃん、年を取ってやり切って、なんてのが想像できないし。まぁ人によるか。
    一番気に入ったのは、出てくる人たち、いちいち不器用というか、華々しくすごい解決策が出てぱーっと解決したりとかはなくて、頑固で、一途で。
    自身を振り返れば、どうでも良いところで頑固だったり、大事なところで妥協したり。
    はー、もうちっと頑張ってみるか、と思ったのであった。

  • ありがとうございます。
    興奮して先を早く知りたくてよくやってしまう飛ばし読みもせず、我慢して読んで良かった。
    ものの見方、芯をもっての柔軟な思考、といった、磨きたいものの磨き方のヒントを得ていると思う。
    刺激がたっぷりのエンタメで、されど考えさせる。いいじゃないですか。

    そういえば、「つながり」が、一読者としてうれしかったなあ。

  • SFは、想像する世界設定を舞台に思考実験を行うことで、人間とその社会について、それらは一体何なのかを考えさせる契機となる。だから、感情的に決着がつかないように注意深く書かれることが大事だと思う。

  • 25世紀―陸地の大部分が水没し、人類は僅かな土地で暮らす陸上民と、生物船〈魚船〉とともに海で生きる海上民に分かれ共存している。
    再び、地球規模の環境変動〈大異変〉が迫る中で、限られた資源をめぐり両者の対立が深刻化。
    頻発する武力衝突を憂える救援団体理事長の青澄誠司は、海の反社会勢力〈ラブカ〉の指導者ザフィールに和解を持ちかけるが、頑なに拒まれていた。
    一方、困難な時代だからこそ、深宇宙に人類の記録と生命の種を系外惑星に送ろうと計画する協会に、その理念に共感し幼い頃からの夢を叶えるため働き始めた星川ユイがいた。
    人類の滅亡を意味する環境変動を前に、いくたびの難事を経て、なお信念を貫いて生きる者たちを描いたSF巨編。

    前作や関連作をぼんやりとしか覚えてなくて…口惜しい、けど楽しめました-

    相手の主張も解るけれど、それに従えない人間の、エゴ・悲しさ・強さ。
    挫けて祭り上げられて流されるのも、一途にひとつを目指して染まるのも、現実を知りそれでも夢を追い続けるのも、凄い力だと。
    だから皆、わりと納得した最期を迎えて良かったな-と。
    青澄とザフィールは最期まで隣で見守ってくれるパートナーもいて。
    やり残したこと、気がかりはあれど、思うように生きて次世代に繋いで、続いていく希望を感じたと思うから-

    時代や状況が違っても人って根本は変わらないんだろうな-と思いました。

  •  「獣舟・魚舟」『華竜の宮』「リリエンタールの末裔」そしてこの『深紅の碑文』と続いてきたオーシャン・クロニクルシリーズですが、そこにはSFの面白味が詰まっているといっても過言ではない気がします。

     アンドロイドや遺伝子改変といったテーマは、どこまでが人間なのか、どこからが人間ではないのか、といった古くからあるテーマを、より深く追求しているように思われます。

     技術が進んだ上での戦闘兵器の発達、地球の陸地の多くが海に沈んだことによる海上民と陸上民との紛争は、人間の業の深さを考えさせられます。

     SFとしての壮大な世界観をバックに、そうしたテーマをしっかりと浮かび上がらせていくのです。

    そして、世界観の面白さや、倫理面だけにとどまらないのがこの作品のすごいところ!そこに住む人の生き様も、世界観に負けず劣らず濃密に描かれています。シリーズを通して、濃密に世界観が構築されただけあって、そこに生きる人々の生き様もより濃く描けるようになったのだと思えます。

     救援活動を続ける青澄。海上民としての誇りを胸に突き進むザフィール。そして宇宙という夢に希望をつなげようとするユイ。それぞれが全く違う道を突き進んでいるのに、いずれの生き様にも説得力があり、そしていずれも、長編一作品くらいのドラマがある。これもまた、すごいことだと思います! そして、それを通して、過酷な世界に負けない人間の熱意や夢の部分にも光を当ててくれるのです!

     設定負けもせず、世界観を丹念に描き切り、そしてそれぞれの人間ドラマも熱い!

     本当にSF史に残るシリーズだってといっても、過言ではないと思いました!

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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