オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫 JA フ 4-3)

著者 :
  • 早川書房
4.26
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本棚登録 : 452
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312299

作品紹介・あらすじ

2020年、〈メテオ・ニュース〉の木村和海が衛星軌道上で発見したデブリの不審な動きは前代未聞のスペース・テロの始まりだった。

感想・レビュー・書評

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  • 本当に面白かった。
    振り返ると、和海が〈サフィール3〉の2段目が圏内に落下することなく高度を上げていることに気づいてから、たった6日間の出来事だったことに驚く。
    世界を揺るがす宇宙テロ計画と対峙した6日間。
    チーム・シアトルの失敗が許されない闘いに、彼らとともにわたしも全神経を注ぎ込んだ。それほど夢中になるストーリーだった。

    今、自分が何をすべきか。自分が出来ることは何なのか。そして、チャンスを引き寄せ、逃すことなく自分の持つスキルや魅力、人脈、地位、富なんかを物怖じせずに注ぎ込めるチャレンジ精神。そういうものがあらゆる場面に詰まった、プロフェッショナルな人々の物語。 

    “Great leap for the rest of the word”
    (とり残された国々の偉大なる跳躍)
    宇宙に手が届かない“持たざる国”の連中を救いたい。そんな想いを悪だからと簡単に割りきることなど、わたしにはできない。
    困ってる技術者やスタッフを見捨てきれない。そんな優しさが、いつの間にか道を違えることになっていた。
    嘆かわしいことに“持てる国”だからといって、夢が叶うとは限らない。理不尽さに失望することだって多々起こる。
    だからこそ彼に仲間がいたら、同じ夢を抱くチームが組めていたなら、まだ道は未来へと繋がっていたのかもしれない。優しい彼には、和海とともに宇宙を目指して欲しかった。
    “持たざる国”で認められず、力を発揮できなかったもうひとりの彼にも、和海とともに研究する道を選んで欲しかった。
    そうなのだ。和海はテロリストを正義で追いつめようとするわけではない。それこそ“持たざる国”の発案者に敬意を払い、“持てる国”を捨てた技術者が発想した夢の塊を、テロで汚すわけにはいかないと訴えかける。ただ宇宙を夢見た彼らとともに、未来を考えたいと願うのだ。

    タイトル『オービタル・クラウド』“軌道の〈雲〉”の意味がわかったとき、雲霞のごとく広がった〈雲〉が卓絶した美しさを放っているように思えてしかたなかった。こんなにも美しいものには夢が、希望が、未来が似合う。
    「俺は見たかったんだよ。地球が」
    本当にそうなんだと思う。ただ本当にそうだったんだと思う。

    6日目の夜。シアトルの空を飾った流星雨。
    彼らの夢をのせた流星を想像する。
    わたしはこの夜を決して忘れない。

    • ハイジさん
      地球っこさん
      こんにちは!
      上巻のレビューから、面白そう♪と気になっていましたが、下巻のレビューでもう確実に読みます(笑)
      素敵な作品をご紹...
      地球っこさん
      こんにちは!
      上巻のレビューから、面白そう♪と気になっていましたが、下巻のレビューでもう確実に読みます(笑)
      素敵な作品をご紹介くださいましてありがとうございます(^ ^)
      2020/07/20
    • 地球っこさん
      ハイジさん、こんばんは。
      嬉しいコメントありがとうございます!

      ぜひぜひ(o≧▽≦)
      とってもオススメです!

      読み進めるうち...
      ハイジさん、こんばんは。
      嬉しいコメントありがとうございます!

      ぜひぜひ(o≧▽≦)
      とってもオススメです!

      読み進めるうちに、まるでハリウッド映画を観ているかのような気分になりました。
      ジャンルはSFですけど、お仕事小説としても読めます。

      池澤夏樹さんの「いつだって読むのは目の前の一冊なのだ」で、SF好きの方の娘さん(たぶんSFのブックガイドも出されてる声優の池澤春菜さんだと、わたしは思ってます)にオススメされた本として紹介されてました。

      ハイジさんのレビュー、楽しみにしてまーす♪



      2020/07/20
  • 下巻になって圧倒的に面白くなった。
    ぜひ映画化してもらいたい。
    日本SF映画の金字塔になるはず。

  • "大躍進" 計画は、「スペース・テザーの〈雲〉で宇宙ゴミ衝突に擬装した事故を増やし、現在、人工衛星を運用している国家の宇宙開発に取り組む意欲を削いでい」く一方、逆に「北朝鮮が宇宙開発へのさらなる投資を発表」し、「優秀な科学者、エンジニアを集め」て北朝鮮(とその同盟国)が宇宙開発の主役に躍り出よう、とする北朝鮮の策謀だった。そしてそのメインミッションは、「四万あるスペース・テザーを全て投入して、低軌道を巡る二千個の人工衛星を、同時に、全て地球に叩き落とす」"低軌道虐殺" だという。

    なんて壮大な計画! しかも北朝鮮に魂を売った日本人エンジニア(白石)が一人で遂行しようというのだがら恐れ入る。まあ、でもソフトウェア技術を駆使すれば一人でも何とかなってしまいそう、と思わせるものはある。

    下巻では、スペーステロとの激しい攻防が繰り広げられる。スリリングで無駄のない展開、なかなか面白かった。ただ、話を盛り上げるためか、わざとらしい展開になっちゃってるのが少し残念。関口・黒崎がせっかく(もはやテロリストの)ジャハンシャ博士を追い詰めながら、黒崎が(関口に人殺しはさせられない、とか言って)邪魔してジャハンシャをまんまと逃がしてしまう展開は、さすがにあり得ないよな。和海主導の作戦でフィナーレを飾ろうという著者の魂胆がみえみえで、ちょっと白けた。

    特に意味はないのだが、タイトルにもなってる「オービタル・クラウド」が出てくるセリフを二つほど。まずはチームシアトルのリーダー、クリスのセリフ「四万のスペース・テザー……。まるで、軌道の〈雲〉ね」。そして、地上の管制官がパイロットに向けて叫ぶセリフ「こちら、コントロール。マドゥ、見えたぞ。雲だ。軌道の雲だ!」

  • 上巻が良すぎて下巻で落胆しないかとビクビクしつつ読了。結果的には大満足。(難しい理系ゾーンの話はあまりこだわらずに…)最後までハイペースで読みきってしまったので、またゆっくり読み返したいなぁ。
    イランが打ち上げたロケットの2段目が、大気圏に落下せず逆に高度を上げていることに気付いた主人公。そこからJAXAやらCIAやらアメリカの大富豪やらが絡んできて、テロ計画に立ち向かっていくという…言葉にしてしまうとなんじゃそりゃ!的な話なのですが、これがまぁフルコースのエンターテイメントで面白い。

    強いて気になった点を挙げるとすると、解説でも「感情的に行動する人物や頭の悪い人物はほとんど出てこない」と書かれていますが、登場人物がみんな完璧超人で、頭の回転が速すぎ。シン・ゴジラよりも展開が速いのでは(笑
    特にジャムジェドが決断するくだりは「え、それなに一瞬で判断したの?」という印象で現実離れしているような気も。
    また、シライシの意思をカズミがどう昇華していったのか、ちょっと不明瞭なのが残念。

    とは言え、スピード感は本著の良い面でもあって、息もつかせぬ展開にページをめくる手が止まらなくなる没入感は何とも言えず気持ちが良いもので。最高にデカい舞台装置を使いこなしたストーリー展開も快哉を叫びたい気分です。
    文字を読んでいて情景が頭に浮かんでくるようなシーンも多く、ついつい映画化を期待したくなるのですが、宇宙のシーンを抜きにしても予算がかかりそうな要素しかない。。いや、コレでも絶対良い映画になるなぁ。

    藤井さんの本、もうちょっと読んでみたいと思います。

  • 面白かった。各分野のプロフェッショナルが集結し、それぞれが死力を尽くして戦う構図が熱くてかっこいい。SFでありサスペンスであり、そのどちらの視点からも素晴らしいエンタメ作品として楽しめた。
    ただ、主人公チームの能力がほとんどチートと言っていいほど高すぎるために難問が難問として機能しておらず、ただ主人公チームの「凄さ」を強調するための装置としての役割しかなくなっていることが惜しく感じた。
    また、「なんてやつだ!」「たったこれだけの時間でこんなことを!」のような持ち上げが多すぎて途中から「はいはいすごいすごい」と感じてしまったのが正直なところだった。
    しかし、最後は大団円を迎えて読後感も非常に爽やか。重ねて面白かった。

  • 映画を見ているような感覚でした。

    親ガチャと言われているように、生まれや育った環境により、本来画期的な発明を行う可能性を奪ってしまっている現状は寂しいと感じました。

  • 解説で大森望氏が書いている「仕事小説のリアリティ」がすべて。上巻終わりの膨大な注釈も斜め読みし、雰囲気を味わう。宇宙に夢を持つということがよくわかる。厳しい政治情勢下のイラン人科学者が痛ましい。

  • 上下巻一気読み
    物語の「関係のないプロ達が集まって敵に立ち向かう」構図がたまらない。
    世界各地の人々ごとに
    うまく場面を切り替えていく感じが
    映画を見ているようにスピーディで
    話が大きくなるのも気にならず
    これはすごい

  • 質の良いSF。ロマンですねえ

  • 和海がスーパーマンすぎてそんなにトントン拍子に上手くいくのか、という気もするけど、技術と理解力でアメリカを巻き込んで活躍する感じ、かっこよかった。流し読みだったので、スペーステザーがどういう仕組みでどんなものなのかイメージが把握しきれなかった。

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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