黒猫の約束あるいは遡行未来 (ハヤカワ文庫 JA モ 5-5)

著者 :
  • 早川書房
4.22
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本棚登録 : 297
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312473

作品紹介・あらすじ

渡仏した黒猫と、日本に残った付き人。二人の旅路を交差させるのは“生きている塔”?

感想・レビュー・書評

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  • 約束によって突き動かされる。
    トットとエレナは15年間その約束によって動いていた。
    遡行する塔は芸術作品として他を魅了するが、実際は少女であるエレナからトッレの恋心が根本にあるというのが切ない。
    付き人と黒猫もこのタイミングで言葉ではない約束がやっとできた。

  • イタリアで塔の謎を解く話。いやまさか屋敷の人が俳優だったとは。突然後ろ姿でいいから映画出るってアリなの?エンドロールに名前出るんじゃない??ギャラもらった??祭りの時とかちゃんと映画ロケしてますと言った??肖像権大丈夫???とかそんな細かいことが気になってダメだった。黒猫とマチルドのコンビが「絶対にくっつかない安心感」があって割と好きだった。今回のポォ作品は『メエルシュトレエムに呑まれて』。

  • 2人とも気持ちは言葉に出さず、約束に向かって歩き出す。イタリアという遠い地で、やっと、やっと逢えたのに。でもそれが黒猫と付き人らしい。

  • きたー!キスしたよ!ついにだよ!
    一歩一歩の二人だけど、こちらもゆっくり構えて見守る覚悟はできてる。
    でもでも、目に見える進展があると、興奮するものだわ。

    言葉の約束の方が確実に思えるけれど、逆に言葉にしてしまうと空になるというか。
    言葉を交わしていない二人の約束の方が、強く、確実なものに感じる不思議。

    樋沼邸での出来事を回収するのがマチルダだとは。そして、映画に確実に残った黒猫の思い。なかなかよかったわー。
    エレナさんの言葉が胸に沁みた。
    『大丈夫。自分で選び取った未来には、悪いことは何も起こらない』

    美学、芸術に関する解体は、相変わらず理解に難く、でも不快ではなくなってきている笑
    『限界に挑んだ芸術作品は、作者の企図を超えて真理の暗号と化す。ゆえに美学上の重要なイデーが含まれている』
    ふふ、みんな本当に理解できてるのだろうか?

  • 2019/06/13

    冒頭「浮気じゃん……」
    中盤「浮気じゃん!?」
    読後「なんかよくわかんない」

  • 最初の間取り図を見て、黒猫で館もの!と興奮。普通の館ものとはちょっと趣が違った。想像の上をいく「遡行する塔」。
    犯人はなんとなく予想がついたけれど、黒猫の「美しい謎解き」は堪能しました。

    映画のはなしは面白かった。言われてみたら、私はいつも、黒猫シリーズの「からだ」しか見えてない気がする〜
    最後に映画全編の描写があって、なんかとてもイタリアっぽい(あたりまえ)。

    トッレ監督と彼女の、果たされた約束。
    黒猫と付き人の約束。
    「約束がないと走れない距離」っていう言葉と、それを黒猫が言ったことにきゅんとしてしまった。
    文庫版デザート(?)の短編の、最後の一文を読んで、ふたりともあの公園からずいぶん遠くへ来たんだなあとしみじみした。歳のせいかな…

    ジェラートパフェと黒猫のつくる料理が美味しそうであった。

  • 黒猫シリーズ第5弾。
    第4弾までの、短編は面白く長編は小難しく今一つというこのシリーズの傾向を覆す作品。
    建築家亡きあとも「成長」し続ける塔の謎を解くミステリと、黒猫と付き人の関係を一歩進める展開に胸が締め付けられる。
    黒猫も付き人と同じように悩んでいるんだとわかってニヤリ。それにしても、自分に厳しく、好きな人に背を向ける付き人に、じれったいような尊敬するような気持ち。
    あ~一刻も早く第6弾を読んで、二人のこれからを見届けなくっちゃ!←もはやミステリは二の次(笑)

  • 黒猫シリーズ第5弾の長編小説。
    今回もミステリーとして、恋愛小説としても面白かった。そして美学に関する話題も興味深かった。

    黒猫と付き人はそれぞれ違う目的で向かったイタリアで偶然出くわす。
    黒猫が調査していた〈遡行する塔〉と付き人の出演する映画に意外な結びつきがあって…。

    最後まで読んでみて、本作でもいろんなところに謎のヒントがあったことに気付かされた。(私の推理力はマチルドと同レベル。)
    もう一度、最初から読んで、改めて一つ一つの出来事や登場人物の言動を検証したくなった。

    トッレ監督の〈彼女〉が、まさかの人物だった。そして恐ろしく高い知性を持つ女性だったとは思いもよらなかった。


    黒猫と付き人の関係も言葉はなくても少し進展したのが嬉しい。付き人の黒猫に対する気持ちはずっと描かれてきたけれど、文庫本特典?『約束の朝』でようやく黒猫の気持ちを垣間見ることができた。

  • 遡行する塔の問題より二人の関係が気になってしょうがない。
    言葉が無くても交わされた約束を感じ、互いにそこに向かう事を信じているのが凄いなと思います。
    成長してそこにたどり着くようにと、歩みを止めない姿勢が美しい。

  • 2人の濃密な時間がじれったく、彼女の頑なさがじれったく。

    逆さを向く塔はとても興味深く、その背景にあるストーリーもまたなんとも残酷でなかなかわくわくする展開だった。

    2017.4.20

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著者プロフィール

1979年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。日本大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。ライターとして漫画脚本などを手掛けながら小説の執筆活動を続け、『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞(早川書房刊)。同作は続刊も刊行され、「黒猫シリーズ」として人気を博している。ほか、『名無しの蝶は、まだ酔わない』(角川書店)の「花酔いロジックシリーズ」、『ホテル・モーリス』(講談社)、『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)、『かぜまち美術館の謎便り』(新潮社)などがある。

「2021年 『使徒の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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