- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150312596
作品紹介・あらすじ
異なる進み方の時間を生きる男女の切なさを描いた「時尼に関する覚え書」をはじめ、著者デビュー作である表題作を含む珠玉の8篇。
感想・レビュー・書評
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SFロマンス短編集。
新しめのSFしか読んでこなかったから斬新だった!ってことはなく、むしろ今まで読んできたSFはこれらの短編のオマージュなのかな?って感じた。50年前の作品には思えない。すごい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昔から梶尾真治作品はきちんと読んでみようと思いながら機会がないところに,なんとも挑発的なオビが目に入り短編集ということもあり購入.梶尾作品が時間と恋愛なのは知っていたけど,今まで読んだのはエマノンくらい.あとはキャラメルボックスの舞台で「クロノス…」は見たかもしれない.
やはりSFといっても優しい感じで,ロバート・F・ヤングの読後感に近い.とはいえ,決してハッピーエンドではない時の流れの残酷さを感じる作品が多く,なかなか面白い.
私の読書好きの根っこは「SFジュヴナイル」なことを思い出して,改めて色々読み直してみようと思う次第.-
梶尾真治の作品の中にロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」が出てきますよ「クロノスジョウンターの伝説」というお話でです梶尾真治の作品の中にロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」が出てきますよ「クロノスジョウンターの伝説」というお話でです2022/12/20
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古き良きアメリカのSF全盛期を彷彿とさせる面白い作品ばかりでした。
あらすじ(背表紙より)
出会うたび、時間を巻き戻すかのように美しく若返っていく不思議な女性・時尼。彼女を深く愛し始めたとき、その正体と儚き真実が明らかにされる――「時尼に関する覚え書」。並行世界で邂逅した想い人・江里の運命を、生命を賭けて変えようとする研究者の物語「江里の“時"の時」。そして、異なる時の流れに分かたれた男女の哀惜を綴った著者の伝説的なデビュー作「美亜へ贈る真珠」など、 時間と恋愛がテーマの傑作八篇。 -
カジシンのデビュー作。
80年代の日本SF界を盛り上げた梶尾真治氏。
一般的?には『黄泉がえり』の作者といえば「あぁ〜……」と理解してもらえるカジシン。
梶尾氏自身、父親との確執があったようで(その辺りはWikipediaで調べてみよう)親子愛を題材にした作品が多々ある。
この短編集の時点で既にその作風が確立していたんですな。 -
私にとってこの短編集の中にある「時尼に関する覚え書」は初めて梶尾真治に触れた作品。
時間というテーマを扱いながら柔らかく切ない。
面白いから読んでくれ。 -
2003年の『梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 美亜へ贈る真珠』に「時の果の色彩」を追加収録した新版。
帯には「『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『君の名は。』など――すべての時間&恋愛SFの原点たる八篇」とある。
その通り、どの作品もロマンチックSF。
しかし、結ばれない展開ばかりで、切なさだけが目立つ。
「美亜へ贈る真珠」☆☆☆
「航時機」という過去から未来への一歩通行のタイムマシン。
コールドスリープと違い、搭乗者は眠っているわけではなく、内部の時間を遅くすることで時間跳躍を可能にしている。
未来へと旅立った青年と、置き去りにされた女性、そしてその二人を見守る主人公の物語。
二人の思いこそ通じ合っていたものの、だからこそ「どうして」という謎が残る。
古橋秀之の『ある日、爆弾がおちてきて』に収録されている「むかし、爆弾がおちてきて」という短編がすごく似ている。この作品は2005年の作品なので、「美亜へ贈る真珠」の方が先か。
若干ではあるが、「むかし、爆弾がおちてきて」の方が好み。
「詩帆が去る夏」☆☆☆
不幸な行き違いで生命を落とした最愛の妻・詩帆。
複製である裕帆は、詩帆の記憶を少しずつ取り戻していくのだが……。(表紙帯より)
主人公が冷静になれてよかった。
といっても、妻のクローンを娘として育てて、いずれは恋人に……という考えは、気持ち悪く思う人が多いかもしれない。
でもこういう暴走が男にはありうるんだよなあ。
「梨湖という虚像」☆☆☆
婚約者を事故で亡くした梨湖は、地球から遠く離れた寂しい惑星で、彼の人格を完全に再現した虚像を創り上げる。(表紙帯より)
出ましたハミルトンの「フェッセンデンの宇宙」。
恋人の虚像を映し出すコンピューターの名前がフェッセンデン。
虚像の世界はいわばもうひとつの宇宙ということだな。
「フェッセンデンの宇宙」の物語に忠実に則っているわけではないが、物語の道具の一つとして名前が登場するとわうわくしてしまう。
主人公は置いてきぼり食らって寂しいな。
「玲子の箱宇宙」☆☆☆
新婚だが孤独な日々を送る玲子の自宅に届けられたユニバース・ボックス。その中には本物の宇宙が存在していた――。(表紙帯より)
ユニバース・ボックスの送り主はまたもやフェッセンデン社。
こちらの方が「フェッセンデンの宇宙」に忠実。
SFの道具としてはおもしろいが、登場人物たちは救われないな。
「〝ヒト"はかつて尼那を……」☆☆☆
異星の民に征服された地球にて、最後に生き残った〝ヒト"が持っていた希望は、在りし日に恋した尼那の思い出だった。」
また横恋慕か。
そろそろ主人公結ばれてくれ、と思わずにいられなかった。
「時尼に関する覚え書」☆☆☆
これはまさに「ぼく明日」。
設定はやや「時尼」の方が複雑だが、淡々とした印象。
「ぼく明日」がこの作品をもとにしたかどうかはわからないが、上手に焼き直したといえる。
「江里の“時"の時」☆☆☆
結ばれない男女と、それを傍観する第三者という構図がすごく多いのだが、この作品に限っては第三者は不要だったように思える。
この短編集唯一のパラレルワールドを示唆する作品。
時と空間を隔てた男女の思いが交錯する点、崩壊する世界から女性を救うために男が行動する点などは「君の名は。」に似ているのかも。
「時の果の色彩」☆☆☆
早くに亡くなった母。その臨終のときの色彩を持つ不可思議な記憶は、自らの出生と時の流れの秘密につながっていた。(表紙帯より)
時間は川の流れではなく波であり、その発生から消滅の間でしか時間移動はできないという解釈。
その期間は38年間。
したがって、現在からみて19年間しか過去へも未来へも移動できない。
過去に亡くなった人物に会いに行こうと思っても、19年を過ぎると会えなくなってしまう。
どこかで区切りをつけなければならないという切なさ。
それが前向きに影響していてよかったが、踏み出すまでの紆余曲折が見れたらよかった。
過去の作品からアイデアを得て、それが後の作品のアイデアとなるという系譜が見られてよかった。
「すべての時間&恋愛SFの原点」という文句に偽りはなかった。
しかし、ロマンチックSF好きとしては、切ないだけの物語ばかりだけではなく、少し甘く味付けした物語も読んでみたい。 -
時間と恋愛がテーマの8篇。
古典SFはガッツリのものが多いので、体力がないときにサクッと読める短編が◎
短編ながら、どの話も古典SFのような味わいがあって、ふと読みたいときに1篇だけ読んで満足できます。
同じテーマの作品集なので、全部いっぺんに読んでしまうと食傷になりそうです。
2016年発行のこちらの版は、字が大きくて読みやすいです。
ちなみに収録作の一つが、映画にもなった有名な恋愛小説に酷似しています。それ故にこのタイミングで新版を発行したんだというウワサ。
個人的には知らずに読んだのでビックリしました。パクリ作品で大ヒットというのは由々しきことですが、そのお陰でこちらの作品、字が大きく読みやすい新版で読めて良かったわけで、フクザツな心境。
それにしても、黙ってパクらないで、出展を明示すればいいのに…って、こちらの本には関係ない話ですね。蛇足でした。、 -
表題である『美亜へ贈る真珠』のなかの「時尼に関する覚え書」は、七月隆文の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の叩き台となった短編だ。時間の流れが真逆の世界にそれぞれ生きる者が、人生のわずかなポイントで交錯し、惹かれ合っても離れなければならない悲哀を描く。着眼点が秀逸だが、あまりにも短くまとめすぎたように思う。そのため、感性に訴えるものが少なく、それほど話題とならなかったのだろう。とは言え、著者が重きを置いているのは、そこではないかもしれないから、短所とは言えないだろう。
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2019/04/20
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bangarabingenさん、はじめまして
そうでしたね。うっかり本のタイトルを書いてしまいました。さっそく修正しました。ご指摘ありが...bangarabingenさん、はじめまして
そうでしたね。うっかり本のタイトルを書いてしまいました。さっそく修正しました。ご指摘ありがとうございます。2019/04/20
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時間と恋愛がテーマのSF8篇
タイムスリップものが多かったな。
「時尼に関する覚え書」って『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の元だったのかな。これがいちばん好きだな(^O^) -
この小説のジャンルは
おそらくSFに当たるのだろう。
私SF読んだのもしかして初めてかもしれない...
失礼ながら、科学というものは無機物的で、
人の機微だとか情緒とかが欠けるのでは、
と感じているところが私にはあったのだが、
この小説を読んで考えを改めた。
どの短編も科学的な要素が魅力的に描かれているが、すごくドラマティックで、
人の感情と科学は相性がいいんだと思った。
他にもSFが読みたくなった。 -
時間と愛をテーマにしたSF集。全体的に、難しい機械や用語や概念はあまり出てこず、普遍的な感情が描かれていて分かりやすい。
侵略された地球の、最後の1人のヒトと、侵略した異星人の子供の交流を描いた話「"ヒト"はかつて尼那を・・・」が良かった。
思考の目覚めとでもいうか、現実や実物に対峙することで呼び起こされる疑問や感情を体験することが、いかに大切かということ。子供の言葉にできない悲しみのようなものは、生きるものへの普遍的な愛だということ。そんなことを感じた。
ヒトが抱いていた過去の愛、形は変わってもいいからいつかどこかでその愛の結晶が生まれてほしいという思い・・・については比重が少なくあまり感情移入できず。 -
おもしろかった。ただ表題作『美亜へ贈る真珠』では、「アキが最後に贈った真珠は隠し持っていたパール? それともヨダレ?(「口は大きく開かれようとして」ってあったから……)あ、涙か……」というトンチキな思考に陥ってしまった。個人的には他の七篇のほうがクオリティが高かったような気がする。
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新装版。
旧版は若い頃に図書館で読んだんだったか……久しぶりに読み返したが、良いなぁ。