アリスマ王の愛した魔物 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2017年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784150313098

作品紹介・あらすじ

『老ヴォールの惑星』『フリーランチの時代』『青い星まで飛んでいけ』に続く第4短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • SF短編集 全5編
    表題のアリスマ王は弱小国に生まれた醜悪な第6王子がその醜悪から武芸を必要とされず、ひたすらと算術を極め上り詰めていく話
    SF、算術となると最近だと「三体」のアレが鮮烈な場面と思うがこれは短編で語り手から
    むかしむかし
    と語り手パターンで始まる体なのでもっとライトで読みやすい
    そしてそれはあくまで刺身のツマでオチがいい

    最後に書き下ろしで
    リグ.ライト 機械が愛する権利について
    という作品がある。「チクタク」より分かりやすくロボットの権利について描かれている

    全部そこそこ面白いのだけれど天冥の標の箸休め感が

  • 読書会で勧めていただいた一冊。
    バイクとオペレータとのお話 ろーどそうるず
    西洋と東洋があべこべのやつ ゴールデンブレッド
    醜い数学が得意な王様のお話 アリスマ王の愛した魔物
    ちいさな宇宙の港町 星のみなとのオペレーター
    じいちゃんの形見の車と美人ロボット リグ・ライト

    全部よかった。評判とおりのろーどそうるずもよかったですが星のみなとのオペレーターが可愛くて。AIが好きになるお話たちでした。

  • 意思、であるとか

    意志、であるとか。

    ひとが作り出したものに、それが宿るのかというのは、ひとつの大きなテーマだろう。

    そこには、宿って欲しいと、思う場合と、宿られてはたまらない、と思う場合があるような。


    宿って欲しい、と思うのはどこか、
    愛着、や信頼感みたいなものを、作られたもの、と共有したいと云うか、
    それぐらい出来てもいいんじゃない? と云うか、どうせやるならここまでやってやろう、みたいな思いがそうさせていて、


    宿られてはたまらない、というのは、
    そういう感情の機微、みたいなものを大事にしたいから、
    或いはそれすらひとの手で造られてしまったらと思うとゾッとするから、本能的に反対しているのか。

    でも結局それってもしかしてどちらも、
    ひとの意地、なのかもしれない。

    …ふむ?
    よしその意気だ!



    あれ登録漏れてるじゃん! というわけで今更。

    短篇集、と云うには各話ボリュームが多いので、作品集と云うのがいいのかしら。
    星雲賞受賞の表題をはじめ、どれも骨太なSF、なのだけれどどうにもおちゃらけてるのが魅力的。そのへん表題以外の作品にほんとうの魅力があるように思います。
    イチオシは書き下ろしのリグ・ライト。
    どれもこれも粒揃いなので☆4.2

  • おすすめしてもらった、ろーどそうるずも良し。
    一番は、最後の短編かな。
    権利とか、資格とか決めてるのは人間で、
    時が経つにつれて捉え方も変化して
    だから何だって自分次第なのよきっと(飛躍?)

  • SF短編集
    SFとしては他のが面白いんだろうけど個人的には1作目が良かった
    最後のと比較するとアイデアは最後が優れてそうだけど、それだけじゃなくて登場するキャラクターに共感できるかが大事な気がする

    ファンタジーもそうだけどSFも世界観やアイデアとキャラクターがマッチすると爽快と言って良いような感覚になる

  • 星雲賞受賞の表題作『アリスマ王のー』ほか、全5篇収録の短編集。

    『アリスマ王』は、何もかもを数字で予測しコントロールしようという装置"算廠"が不気味。
    はじめ、アリスマ王子は数字に取り憑かれた、「ただの天才」だった。ほかに理解者がいないとあきらめた時に魔物が現れ、王子が狂気の力をふるいはじめるくだり、今まさに私たちの日々もデータとして集められ続けている不気味さに通じるようで。

    個人的には、『ゴールデンブレッド』や、『星のみなとのオペレーター』『ろーどそうるず』の方が好み。
    異文化間であったり、AIと人間であったりしても、きっと理解しあえる、信頼しあえる…というSFらしい愛と希望と夢がいい。

  • 29:収録作のうち「ろーどそうるず」「アリスマ王の愛した魔物」「星のみなとのオペレーター」は既読だったけど、新鮮な気持ちで読めた。「星の〜」は自作「宙の渚のローレライ」の元ネタでもあり、ライトでポップなSFに憧れて書いたものなので、文庫になって嬉しい。
    書き下ろしの「リグ・ライト」が壮絶かつ力作かつ問題作で、「未知のもの・わからないもの」に対する近寄り難さ、きもちわるさ、得体の知れなさがひしひし感じられた。人に似たボディを持つAI、そうでないAI、両者ともに人間にとっては「考え方がわからない」ブラックボックスと化してゆく薄ら寒さと、それを超えてAIが一歩を踏み出す結末が「エクス・マキナ」を思い出させて、語彙が吹っ飛んだ。プロって凄い。
    これまで、小川作品の導入として「老ヴォールの惑星」を挙げていたけど、それに代わる代表作になりそう。

  • 久しぶりの小川一水。
    表題作が読みたくて買ったのだが、他の短編も面白かった。正直、熱心な読者ではなかったのだが、たまに読んでみるといいなぁ。

  • 異文化コミュニケーションか、未知との遭遇か。既存の概念と、それ以外と出会った出会ってしまった人間の、悲喜交々を描いた短編集。
    「ろーどそうるず」はちょっと意味合いが違うか。

    自立する人工知能の葛藤や成長、という点だけ抜き出した時、どうしても『火の鳥』のロビタを思い出さずにはいられない。あちらは人間の脳が移植されて、なので人工知能とは違うのですが、「リグ・ライト」のラストは瞬間に、整然と溶鉱炉へ進むロビタの行列が浮かんでしまいました。AIの独立の結果、反旗を翻す結果になってしまった。
    あれのオマージュだったりするのかな。悲劇的な終わり方であったロビタとは違う形のAIの行き着いた先、という点で。

    「アリスマ王の愛した魔物」寝物語に語られた、偏執の先にある光景の一つ。そして、もう一つが新たに生まれようとする瞬間。
    数字の天才アリスマ王がたどった覇道に付き従った魔物。彼?彼女?が次にこの世に作り出そうとしている光景はいかがなものか。
    ただただ、アリスマ王と魔物が作りだした異様な光景に、圧倒されるばかりの物語でした。怖い、のだけど怖いだけではなくて、滑稽さも当事者でないので感じます。その二つが共存するので、余計に怖くなり、滑稽さはあるのだけど笑えなくなる。
    変なお話ですよ。

    「星のみなとのオペレーター」なんでもない一般人が、なんやかんやあれよあれよと世界の危機の矢面に立つことになってしまってどうしよう。
    久しぶりにこういう文脈の小川一水作品を読んだ気がする。『フリーランチの時代』の空気感に似ているかな。職責以上の仕事量だけど、やるしかないならやるしかないね、という苦労性な主人公という意味合いで『ポプラパレス』にも通じているかなぁ。
    世界の行末を背負っている、という『天命の標』タイプの小川一水作品も好きですが、日常から半歩ぐらいはみだしたトラブルに巻き込まれてしまったどうしよう、のタイプも好きです。苦労背負い込んでも、気風の良さがあるんだよね。気風の良いヒロイン好きですね。

  • どれも面白いんだけど会話が多いというか一水さんの短編集にしてはピンと来なかった。「アリスマ王の〜」もアマチュアの人が書いたファンタジあやかし系小説のような。
    一番好きだったのは最後のアサカと車の人を愛する機械の話。

  • SF短編集。人間くさいAIの話がおもしろい。

    ■ろーどそうるず
    バイクの制御AIと指令センターとのやりとり。ライダーや所有者ののとをあれこれ言う様子がおもしろい。AIの一生みたいな話でちょっとほっこり。

    ■星のみなとのオペレーター
    宇宙港に出入りする船を管制するオペレーターの話。ラブコメっぽい。宇宙ウニってなんだ?

    ■リグ・ライト
    自動運転AIの話。責任を負わないはずのAIが運転手をかばうために責任を負おうとするのか?AIに罰則を課したらAIの判断ロジックが変わるのか?いろんな想像をさせる。

  • 小川一水さんこんなのも書けるんだ、イヤ書けるだろうけども。
    素晴らしいです、最後のAIのやつ。
    車か、そうきたかって。
    いろんな意味でもこれまでのくびきから解放されてる世界かー。来るかなー。来るかなー。バイクとかもっと愛着湧くんじゃない。

  • 「ろーどそうるず」はバイク搭載の制御AI視点の話。直接運転はできないので状況を淡々を中央のAIに報告するだけなのですが、搭乗者を思う気持ちに泣かされます。「リグ・ライト」もAIによる自動運転時の責任の所在がこれからどうなっていくのか、現実でも気になるところです。

  • 全5篇の短編集。
    「ろーどそうるず」市販バイク搭載AIと仮想供試体との交流。 それぞれの子供たちが出会うラストがたまらない。 
    「ゴールデンブレッド」小惑星間戦争で不時着した田舎の星。 そこで出会った人々との交流で兵士の心境に変化が・・・ 
    「アリスマ王の愛した魔物」弱小王国の王となったアリスマは、その類い希なる計算能力で帝国を築いていく。 彼の愛した魔物とは? 
    「星のみなとのオペレーター」小惑星イダの管制官筒見すみれ。 彼女が見つけた巻き貝のようなミニミにロボット船「コンちゃん」 実は、コンちゃんには秘密があった。
    「リグ・ライト -機械が愛する権利について」なぜか自律運転車に乗せられる人型ロボット「アサカさん」 AIが責任を負う状況とは? 
    好みとしては、「ろーどそうるず」と「星のみなとのオペレーター」かな? 

  • 星のみなとのオペレーター、リグライト、この2作品はラノベ調で書かれているのでとても読みやすかった。表題作のアリスマ王の愛した魔物は個人的にはあまり面白くなかったです。

  • 短編集、特にSFの短編集は苦手なのですが、小川一水さんなら面白い。「ゴールデンブレット」が一番好きかな。

  • 全5篇の短編集です。
    「ろーどそうるず」「ゴールデンブレッド」「アリスマ王の愛した魔物」
    「星のみなとのオペレーター」「リグ・ライト」

    好きなのは、最初の「ろーどそうるず」
    バイク搭載のAIと、サポートAIのやり取りの話なんだけど
    思わずウルッとしてしまいました。
    「星のみなとのオペレーター」は、ラブコメみたいで楽しい。
    「リグ・ライト」もAIの話なんだけど、
    人間と共存する上で、必ず問題になるであろう「責任」問題に
    焦点を当てていて、別の意味で好きです。

  • ろーどそうるず。やばかったです。バイクAIもので会話で話が続いていくのですが、…ちょっと泣ける話です。いやかなり…。ゴールデンブレッド。食がテーマのSF。日本人の食の欧米化と欧米での日本食ブームへの皮肉かなと。アリスマ王。初出でも一気読みでしたが再読でも一気読み。悪夢のようなお伽噺。星のみなとの~はほのぼのしたSFで、やっぱり地球外生命体書かせたら天下一品ですね。リグ・ライト。ライトな口調でテーマは重いなと。品揃え豊富で読みごたえのある短編集だと思います。

  • 車載AIから太陽系内に人類が広がっているような世界まで、いろいろなタイプのSFが詰まってます。表題作の「アリスマ王の愛した魔物」は数学、統計、コンピューターあたりがテーマですが、こちらはファンタジー色が強いかな。
    個人的には「星のみなとのオペレーター」が一番好きかな。

  • リリース:茂樹さん

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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