- 早川書房 (2018年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150313142
作品紹介・あらすじ
「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞した表題作をはじめ、オタク文化と暴走する奇想が脳を揺さぶるSF、全3篇。
感想・レビュー・書評
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この作品集のノリは何なんだ……と呆然としながら考えていたとき、思い浮かべるものがありました。
それはネットの掲示板などで書かれていたSSと呼ばれる、簡単な小説のようなもの。
自分が携帯を初めて手にいれ、アニメやラノベの有名どころを知った時期、夜に布団にもぐりながら、画面をスクロールしていた覚えがあります。
SSの世界は言ってみれば玉石混交。二次創作ものでは本編のキャラを完璧につかみ、本格的なストーリーから、外伝・番外編的なサイドストーリーを描いたものもあれば、
エロ・グロ・ナンセンスを徹底的に極めた、悪ノリとしか言えないものもあります。
でも面白いのは、そんな悪ノリSSでも、キャラを掴んで魅力的に仕上げているものが、あるということ。内容は人に話せるものでは、なかったりするのですが(笑)
でも、ラジオの深夜番組の、さらに攻めたコーナーを聴いているかのような、アンダーグラウンドな世界の、さらにアングラな世界を覗く楽しみが、SSにはあった気がします。
この小説を読んだときに感じたのも、その悪ノリの雰囲気でした。この本に収録されている作品は三編。それぞれに取り上げられるテーマは、アイドル・ソーシャルゲーム・声優といったオタク文化たち。
そんなオタク文化たちを、著者の草野原々さんは、遊び心と悪戯心、愛と皮肉を込めて、徹底的にネットの悪ノリで描きます。
その悪ノリに拍車をかけるのが、パロディや、オタク文化のお約束の数々。ソシャゲの「実質無料」声優の「百合営業」や人気アニメのパロディ。そして、あまりにも極端な思考の登場人物たち……
そんな、ネットの仲間内だからこそ通じるノリとお約束の数々を、草野さんは無謀にも(?)各作品にぶちこんできます。
しかし、この作品のスゴいところは、その悪ノリをハードSFの知識や描写力で、一定の説得力を持たせ、話を成立させてしまうこと。
地球滅亡の危機や、様々な異性物の描写、壮大なスペースオペラから、時空間や宇宙の創生……
草野さんは悪ノリの物語たちに、こうした設定を付与し、それにSF的視点を与えることで説得力を持たせ、成立させてしまうのです。
特に表題作と二編目の「エヴォリューションがーるず」の異生物の描写は、貴志祐介さんの『新世界より』あるいはブライアン・W・オールディスの古典SF『地球の長い午後』に比肩する描写力と、想像力です。
このノリの面白さを、言葉で説明することは難しい……。実際にオタク文化や、ネット文化に馴染みある人なら「読めば分かるから!」と言えます。でも、そうでない人にこの本を薦める勇気は、自分にはありません。
ただこの作品には有名な珍味のような、はまれば抜け出せない魅力があるようにも思います。各作品を読み終えたとき、自分は脳の中をぐわんぐわんさせられ、とんでもないところに連れてこられたような感覚を覚えました。
草野さんの想像力と悪ノリ、そしてSFというジャンルが出会うことでしか、生まれなかったであろう短編たち。それを集めたこの短編集はある意味、現代の奇書ともいえる本になっていると思います。
しかし果たしてこのノリを未来のSF読者は、理解できるのかと思わなくもないですが……
でも、もしかするとこの作品が、これからも続くオタク文化と、その雰囲気を伝える古典にもなるのではないか、そんな可能性も秘めているように思います。
第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞「最後にして最初のアイドル」
第48回星雲賞<日本短編部門>「最後にして最初のアイドル」
第50回星雲賞<日本短編部門>「暗黒声優」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今までに読んだ本で一番面白かったです。(今日現在)
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初原々。どれもそこそこ面白かった。個人的に「エヴォがる」が一番好き。キャラ欲しさに課金してまでガチャを回す様は、自分にもよーくわかるw そのせいで命を落とし、転生後もガチャに沼るとは——もう現代病のひとつに数えてもいいんじゃないかな(^^; 星三つ半。
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「最後にして最初のアイドル」
アイドルSF。形質変化定義追加のアクロバティック。死体を喰らい、宇宙を制覇するアイドル…ってアイドルじゃねぇ!!でも作者が伝えたいアイドルの強いメッセージには心打たれた。文字の注ぎ足しって面白い。
「エヴォリューションがーるず」
ガチャ生物進化SF。現代の社会問題から生物バトル。宇宙に飛び出し、謎の感動。みてないけど、草野版『君の名は』?(みてないけど)
「暗黒声優」
声優百合バトルアクションSF。マクロスかと思ったら、そんなことはなかった。また人を喰らうし、作者は好きやねー。「いっけぇーー!!」の勢いで、宇宙まで勝ち残った人間破綻声優コンビ。彼女らの戦いは始まったばかりだ!!
アニメ化したら、大流行りしそうな、ぶっ飛んだ作品であった。たまにはSFも刺激的。 -
前代未聞
この主人公を想像したら爆笑もの
これこそ本当のアイドル
推しの子どころではない、戦う相手が、だが
ただ「完全にSF」なんで駄目な人は駄目ですね
元ネタはスマホゲームのラヴライブ
やる必要はないけれど知識としてなんとなく界隈を知っているとなお笑える
にこにこにー -
キラキラでかわいい表紙の子は30ページも存在せず、それからはもうぐちゃぐちゃの肉塊が一生懸命アイドル活動していく表題作でした。
「アイドルってなんだっけ?」、この?はその後の「ソシャゲってなんだっけ?」「声優ってなんだっけ?」に受け継がれていきます。
バカSFだけど破綻せず…いや、端から破綻してるし世界は崩壊しているけど、なんかこう、シスターフッドで良き!好きです!!
プロデューサーのおかげで再生し、崩壊した地球でアイドル活動(殺戮とか海外ツアーとかファンの生成とか)をする「最後にして最初のアイドル」〈アイドル〉、
ソシャゲ廃人から転生して、ガチャで出したカードを装備して生物の概念を超えた進化を遂げて行く「エヴォリューションがーるず」〈ソシャゲ〉、
エーテル振動を操れる発声管を持つ声優たちの太陽系の隅々までに及ぶ逃避行と戦い「暗黒声優」〈声優〉……
……オタク要素でハードSF。だいたいの地球は崩壊していて、生命(?)もぐちゃぐちゃ。こんな狂気がまだ存在していたのか。無知でした。
正直、古月みかも新園眞織も洋子もディヤウスもガナパデもヴァーユもアカネも《白鯨》も造型の想像が追い付かなかったし、想像してみようと思っても「とはいっても臓器」と想像するのをやめたりの繰り返しでした。
ソシャゲもガチャも声優も馴染みがなく、唯一地下ドルは好きなグループ複数いた程度のオタクですが、強引な混合でも破綻してないの凄い!
作者のこれからにも期待します。おすすめしてもらえてよかった!!
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めっちゃSF。百合成分が足りない、、、
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本作に含まれるタイトルは3つ、
テーマはアイドル・ソシャゲ・声優。
ただし、まったくもって強めのSF味付けによって語られるため、単なるアイドル・ソシャゲ・声優の小説を求めるなら回れ右するべきだろう。
現代オタク文化にありふれたテーマをこうも壮大に、かつ論理的にサイエンスフィクションとした挙句、風呂敷をたたみ切る技量には唸らざるを得ない。
読みきったあとは爽快感すらある。
作者が好きなものを思い切り詰め込みました、という思い切りのいい作品だった。
ものすごく下卑た感想を言うなら、めちゃくちゃ質のいい「これ金とっていいよ!」というレベルの2ちゃんSS。 -
トップアイドルを目指した少女は夢半ばにして倒れた。人としての彼女は終わった。しかし偶像としての彼女は終わらなかった。自分を意識してくれる物がいる限り彼女は止まらない。グチュグチュになる、億の年が流れる。最期のアイドルである彼女の到達した「アイドル」とは。
もはやぶっ飛びすぎてSFというよりファンタジー。百合テックグロテスクサバイバルファンタジーマシマシって感じ。アイドルだったりソシャゲだったり声優だったりサブカル色が強い。それもそのはずもともと表題作は同人二次創作である。そうしたポップな要素の中に肉体が貪られるようなバイオレンスが共存してるのが面白い。小林泰三や平山夢明とかが好きならオススメ。そして彼らにはない味わいがある。 -
予想をはるかに超える展開。すごい発想。おもしろい。
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短編が3つですが、基本的にはおばかなストーリーにハードSF的なものをかぶせていくスタイルのようです。最近の量子論とか宇宙論を取り入れているようですが、10年、20年後にはどんなテーマで書いているんでしょうね。かなり個性的ではありますが、SF好きにはおすすめだと思います。
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この小説でいう「アイドル」は変数の箱であり、その中に入るのはツインテールの若い女子であったり、人とも肉塊ともつかない怪物であったりする。それでも箱に貼られたラベルはアイドルだから、これはアイドルの話なのだ(表題作)
全体として、この本は生物と宇宙の話だ。ものすごく難しい生態系の話をアイドルやソシャゲの概念を持ち出すことで分かりやすく噛み砕いてくれる、のではなく、実際はアイドルを餌に読者を誘い込んで未知の生態系に引き摺り込み捕食してくる。
意味を持つ単語と単語が接続詞という糸で結ばれて複雑な網を作り、もし単語一つの意味を知っていたとしても、織り上げられた網の全体像を理解することは一般的な知識を持った人間では不可能に近い。
我々はこの小説が作り出した網に囚われる進化途上の虫にすぎない。
でも大丈夫。我々には魂がある。
単語の意味がわからなくても、ぶっ飛んだ展開についていけなくても。魂で「なんとなく感じて楽しく読める」から。
理科が好きだと尚いいだろう。 -
実にSFらしい作品ですが、個人的にはあまりノリきれませんでした。これを楽しめるのは割と一握りに人かもしれません。
読んだらきっとほとんどの人が思うはず。「アイドル」とは? -
とんでもないものを読んでしまった!
脳に閃光が走るとはこういうことなのかもしれない。まるで、宇宙の概念のようなものに触れてしまったかのような衝撃だった。
「アイドル活動頑張ります!」「挫折もあるけど、負けないもん!」的なアイドル作品かと思ってはいけない。気を抜くと10億年くらい経ってたりするのだから。
でもテーマが”アイドル””ソシャゲ””声優”と身近で、どんどんこの世界観に引き摺り込まれていってしまう。恐ろしい、草野氏ワールド。これは癖になりそうだ。 -
タイトルと表紙に、良い意味でまんまと騙された。
短編が3編収められているが、いずれもアイドルやソーシャルゲーム、声優といった現代的なサブカルチャーをテーマとしながら、中身は血で血を争うグロテスクなシーン満載で、最後は壮大な宇宙論・次元論に展開していく。
同人誌のような勝手気ままな俺流の解釈・改変で、理解が追いつかない部分もあったが、今まで読んだことのない作風でもあり、どこへ連れて行かれるのか予想がつかない楽しみで読み進めることができた。
デビュー作である表題作が、第四回ハヤカワSFコンテストの特別賞を受賞したというから、若い世代が台頭してきている日本のSF界は大したものだと感じた。 -
最初はアイドルものだと思いつつ、読み進めるうちに「アイドルとは?」って驚愕する。
けれども、ラストまで読むと「アイドルだった」となる。
さすがSF。 -
ジャケ買いでしたが、イラストの可愛らしさは数ページで失われましたww 題材に反比例して、SFだった。すごい。
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最後にして最初の矢澤ということでR-18G
アイドルとは、ガチャとは、声優とは、というテーマにSF的観点から迫る異端作?
そして百合
短編として「最後にして最初のアイドル」は読んだことあったのに、つい買ってしまう魅力がある
「エボリューションがーるず」はアイドルと大まかな展開か同じような気もしたけど、アイドルは草野原々版ラブライブ、がーるずは草野原々版けものフレンズだと思えば
どちらも少し血生臭いが
きみはガチャが得意ながーるずなんだね!
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オタク的題材をハードSFで昇華した3短篇を収録。
「最後にして最初のアイドル」5…
ぼくが知ってる「アイドル活動」という言葉の意味が清々しく崩壊した。たしかに<実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSF>だった。ラブライブ。
「エヴォリューションがーるず」4…
ぼくが知ってる「ソシャゲ」「ガチャ」という言葉の意味が爽快に爆発した。まどマギ、けもフレ。
「暗黒声優」3…
ぼくが知ってる「声優」という言葉の意味が痛快に霧散した。書き下ろし。 -
アイドルすげえな…アイドルたいへんだな…(『最後にして最初のアイドル』を読み終えてほげぇっとした顔で
『最後にして最初のアイドル』、おもしろい。オタク文化でSFをやる、という発想だいぶぶっとんでて、しかも細部もある程度詰めてある。長期的にどうやっていくのか、という点はチェックしていきたい。
『エボリューションがーるず』。いい話や…。ソシャゲフレンズ宇宙創生バロック百合SFだ…。胸が熱い百合…。
草野原原『最後にして最初のアイドル』。何も言うまい…いや、やっぱり言わせて。萌え絵の表紙にだまされるな!!!
草野原々の作品
