日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 早川書房
4.56
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本棚登録 : 78
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (798ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150313173

作品紹介・あらすじ

「レオノーラ」「虎は暗闇より…」「エスパーお蘭」などの傑作短篇、黒人警官の苦悩を描く『サイボーグ・ブルース』全篇収録

感想・レビュー・書評

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  • 普遍性のある傑作揃い。幻魔大戦やウルフガイは(この年代にしては)読んでいる方かと思いますが、短編はやや敬遠する向きがあったので反省しています。解説に「異様な迫力」との表現が登場しますが、まさにその通り。善悪が歪む世界で戦う個人の姿はハードボイルド的であり、ともすれば神話的ですらあります。オススメ。

  • 平井和正作品にハマったのは「SFアドベンチャー」からで、『真幻魔大戦』が切っ掛け。遡る形で他の本も集めて読みまくったっけ。...( = =) トオイメ
    生頼義範の妖艶な半裸美女の挿絵がいつも共にあった作品を授業中に読んでいたりしましたが、漫画やグラビア雑誌と違って、先生に咎らめられることは無かった、セーラー服な時代。w

  • どれも最初の1行目のつかみがすごい。中2くらいで出会いたかった。

  • 平井和正『日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース』ハヤカワ文庫。

    隔月刊行の全6巻。現代日本SF誕生60周年記念シリーズの第4弾。800ページに迫る圧倒的なボリュームで、平井和正の作家活動のマイルストーン的な作品を中心に収録されている。

    平井和正と言えば、最近、ハヤカワ文庫から新装版が刊行されたウルフガイ・シリーズと、幻魔大戦、エイトマンの印象が非常に強い。

    しかし、約40年前には本書に収録されている人間の精神世界をテーマにしたSF短編を描いていたのだ。

    本書に収録されている『レオノーラ』や『死を招く女』などはバリバリのSFでありながら、精神世界をテーマにしているところが斬新だった。

    また、幻魔大戦の原型『エスパーお蘭』、ウルフガイ・シリーズの原型『悪徳学園』、エイトマンの原型『サイボーグ・ブルース』など平井和正の作家活動のマイルストーン的な作品が収録されており、非常に良いセレクトになっていると思う。

    【訂正追記】
    『エスパーお蘭』より幻魔大戦の漫画が先で、その後に『エスパーお蘭』、小説『幻魔大戦』という順番。また、『サイボーグ・ブルース』よりエイトマンが先らしい。

  • 【注:本レビューは,旭川高専図書館Webサイトの「私の推薦する本」に掲載した文章を,執筆者の許可を得て転載しています】

     昔,あるスポーツを楽しんでいましたが,目の前で見る黒人選手達の身体能力の高さには,大いに劣等感を掻き立てられていました。アメリカでは,なぜそこに住んでいるのかという悲劇的なルーツを理由に,多くの黒人の方々が苦しんでいます。本作品で,主人公は勇敢で優秀な男性の黒人警官でした。そして,犯罪者に銃撃されて死んでしまいました。しかし,優秀な警官が欲しかった警察当局により,軍用サイボーグ体への脳移植が行われました。そして,そのサイボーグ体は生前の黒人青年の姿でした。本作品は,映画「ロボコップ」より,かなり前に発表されています。
     さて,機械やコンピュータと聞いて,嫌悪感を持つ高専の学生は少ないと思います。テレビの子供番組ではサイボーグのような主人公がよく出てきますから,ヒトが機械製の体を持って動くサイボーグという言葉にも違和感はないと思います。では,あなたの脳の小片がサイボーグ体に入れられたとしましょう。耳や目や,他の感覚器官はセンサーで,体は優秀な機械製のロボットで,神経は電線です。ただし皮肉にも外見だけは生前の,人間の姿を保っています。主人公も,本当の悲劇は,苦労の果てにサイボーグ体に慣れてから始まると言っていますが,人間だった自分が,生きたまま,人間でなくなるというのは大きな衝撃ではないでしょうか。
     物語では,世界最強の軍用サイボーグの体を持ちつつ,人間の気高さ,弱さも持ち合わせた黒人青年の苦悩が描かれますが,最後は超能力を持つ集団の話になります。主人公と対するのは,警察の警備ロボット,サイボーグの不良少年グループ,悩める殺し屋サイボーグ,実は悪の組織に属していた昔の警官仲間(人間爆弾)で,サイボーグになる前の恋人は囮に使われ,会いに行った彼は囚われます。とにかく無敵のサイボーグ警官が,闇と狂気に彩られた相手に,人間としての感情を持って立ち向かいますが,負けそうになることもあります。
     作中,サイボーグになり魂を失った自分には歌えないと思い込んでいたブルースを,人間にそっくりなアンドロイドが歌います。ロボットに魂のこもった歌を歌わせるのは,プログラミングの天才だったらできるかな,と考えますが,そのような天才が作った機械人形を,人間の女性と勘違いして,主人公が恋をしてしまうのは,切ない話でした。軍用サイボーグですら見抜けないものを作る技術力は,悪魔のような技です。そして,補助電子頭脳に囲まれた脳の切れ端しか人間の部分がない主人公でも,美しい女性には魅入ってしまう男の業からは逃れられないといった人間らしさを示しています。美しい蓮(はす)の花が汚い泥の中で咲くように,手ごわい犯罪者相手の闇でもヒトとして輝くサイボーグ警官の話は,技術偏重の傾向がある高専生にも読んでほしいと思います。
     最近私は,ライトノベルと呼ばれる異世界やファンタジー世界の本を読むことが多いです。しかし残念なことに,この「サイボーグ・ブルース」のような読みやすい文章,奇抜な視点,物語として完成度の高い起承転結があり,文字情報だけであるのに状況が頭に浮かぶような文章力を伴う作品には,なかなかお目にかかれません。本作品は1971 年に出版された作品ですから,すでに半世紀が経過しています。もし作者の平井和正氏が生きていたら,現代ライトノベル作家の力量の無さを嘲笑し,かつ憂いていたことでしょう。「おまえら,それでもプロか」と。
     最後になりますが,現代では許されない差別的表現も少し出てきます。古典作品(50年前)なので,どうか許してあげてください。
    (電気情報工学科 有馬 達也 先生)


    ▽配架場所・貸出状況はこちら(旭川工業高等専門学校蔵書検索)
    https://libopac3-c.nagaokaut.ac.jp/opac/opac_details/?kscode=004&amode=11&bibid=1014156041

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著者プロフィール

 1938年5月13日、神奈川県横須賀市生まれ。
 1963年、漫画原作を担当した『8マン』(少年マガジン連載)は、その後自らがシナリオライターのチーフを務めてTBSでアニメ化され、大ヒットを記録する。
 1971年、『狼の紋章』が爆発的にヒットし、松田優作のデビュー作として映画化。『ウルフガイ・シリーズ』は若い世代の心を捕らえ、永遠のバイブルとなっている。
 1967年に刊行開始した『幻魔大戦シリーズ』は“ハルマゲドン”旋風を巻き起こし、総計2000万部を超える大ベストセラーを記録。1983年にアニメ映画化される。
 1994年、日本で初の本格的オンライン小説『ボヘミアンガラス・ストリート』をネット連載。『月光魔術團』『ABDUCTIONシリーズ』『幻魔大戦deep』など現在も精力的な執筆活動を続ける。

「2008年 『幻魔大戦deep トルテック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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