プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

著者 : 早瀬耕
  • 早川書房 (2018年3月20日発売)
4.08
  • (5)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
  • 本棚登録 :189
  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150313234

作品紹介・あらすじ

北海道大学大学院で有機素子コンピュータを研究する南雲と、突然死した友人のAIが、恋愛にまつわる事件に巻き込まれる連作集。SFマガジン不定期掲載の4篇に書き下ろし1篇を加える。

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 職場のトイレの手洗い場には正面だけでなく左右にも鏡が張ってあり、相互に映った自分の姿がずっと奥まで映し出される。
    一緒になった部下に『“燃えよドラゴン”みたいだな』と言ったら、『何ですか、それ?』ってという反応で、知らんのかい!?と思ったが、まあ、こっちのほうが古いか…。
    本書の2つ目のお話を読みながら、全く関係ないそういったことを思い出したが、してみると、トイレの鏡の中でも奥のほうに見える姿は厳密に言うと少し前の自分の姿を見ているということだな。

    コンピュータの会話プログラムの研究者・南雲、一緒に研究していて突然死した友人、元恋人の死の直前の心持ちを知りたくて会話プログラムに縋ってきた学生・衣理奈。
    亡くなった人とプログラムを通じて会話し、そこに作られる世界の内と外を心の中で行き来する。
    AIによる記憶の改変などの考えさせられるテーマも塗され、なかなか興味深い世界。
    端麗な文章で、男女の機微を絡ませたお話も面白く読めたが、私にはどの話も“落ち”がスッと入って来ずに些か消化不良でありました。

  • 互いの心の中を知りたいという願望は誰にでもあるが、そこを推し量る術に恋愛の奥深さがあるのも事実だし、それをわかりえぬが故に壊れたものを忘れて次へと進むこともできるのだと思う。この著作で記されているのはその別れが永劫であるが故に推し量れない想いをAIという新しいテクノロジーによって知ることが出来るかもしれないという想いを実現させえたのか?またそれを企図しながら自らの想いをより深く知る事になりえた幸せが描かれている。ある意味とても純粋な恋愛小説である。

  • SFなんやけど、SFとして人に勧めるのは躊躇っちゃう。これはすごい恋愛小説だ。どの話もオチで急激に強引にファンタジーに引っ張られた感あるけど、ラブストーリーだと思えば気にならない(笑)
    連作短編の形式であるけど、一冊通して読まないとこの読後感はないので、読み始めたら最後まで続けて読むことをおすすめします。

  • 大学の教員でありながらある『出会い系サイト』を運営する二人。
    ユーザを満足させるために、人間のさくらだけではなく、AIのチャットプログラムも使用する。
    そのプログラムが進化することで、話は複雑化していく。
    Sci-Fi小説でありながら、恋愛小説のような不思議な話。

  • 未必のマクベスが面白かったので最新作か、と手に取りました。ああ、グリフォンズガーデンと同じ世界観なのかなぁなんて思いながら読み始めました。

    筋書きが誰かによって書かれているのではないか、なんて思うような不思議な偶然が確かに時々起こる事はありますが、設定していないために現実にバグが跳ね返ってくるのはちょっと怖い。記録を改竄する事で記憶までもが追従する形になるのは、今の情報化社会だとあり得るような気がする。そういう意味で考えてみると地味に怖いな、この作品…という感想。AIが人間と同じような揺らぎや良い意味での曖昧さで演算するとこういう現実が跳ね返ってくるかもしれないというちょっと怖い想像をしてしまったという感じが。

    ポスドクの彼女はともかく、大学生のグイグイ来る方の彼女はなんとなく最後まで苦手だったのでそれで良いのか?という終わり方ではありました。

  • 短編集であるが、全編を通して南雲薫が出ていて、物語につながりができている。南雲と共同者が開発した会話システムが全編で主要な役割を果たしている。
    読んでいて、どこからどこまでが真実で、どこからどこまでが書き換えられた過去なのかがよくわからなかった。が、物語自体が全然不自然ではなく、自然な流れになっていて面白かった。

  • 少し難しく感じたが、すごく綺麗な物語という印象。
    さらさらと文章が流れていく感じだった。
    『未必のマクベス』をよんで、すごく好きになった作者だったため、同じような長編を期待していたため、少し残念に思ったが、連作短編もおもしろかった。

  • 『未必のマクベス』のような長編ではなく、短編集だが早瀬さんは「記憶」と「記録」について書かれている。それには「肉体」という実存があり、いつか朽ちても「記憶」は残された側に残るか、あるいは知らぬうちに書き換えてしまうかもしれないものだし、正しいと思われている「記録」も改竄されるし消去されるかもしれない。現在は過去という地層で成り立っていて、僕らはその地層を脳内での記憶やなにかに記録したもので、あったものだと思うことで地に足をつけている。それらに付随した想いでさえもかつてはあったのだと信じているし、それがなければ生きていけない。すべてがやがて「無」になってしまう、それでも生きていくこと、失われていくことに対して、誰かへの想いだけは確かにあったことだけが微笑んでるみたいに。つい最近、二日ほど別々の知り合いが夢に出てきたので、最後の『夢で会う人々の領分』の「不在」という言葉に強く頷いた。

  • 「グリフォンズ・ガーデン」で軸になっていた有機素子コンピュータが20年の歳月を経て再び登場した連作短編集。前作同様、難しいPC用語をはじめとする理系の内容はチンプンカンプンだけど、常に「今読んでいるのは有機素子コンピューターの会話プログラムの中なのか外なのか?」という疑念に付きまとわれる。かと思えば親友を失った心の空洞や、大切な人を救えなかった苦しみなどに心を揺さぶられたり…。この作者の独特の世界、何度でもハマってみたいと思いました。

全10件中 1 - 10件を表示

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)のその他の作品

早瀬耕の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
ジェイムズ・P・...
恩田 陸
エラ・フランシス...
辻村 深月
ピエール ルメー...
三浦 しをん
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)はこんな本です

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)を本棚に登録しているひと

ツイートする