言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 103
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150313562

作品紹介・あらすじ

神「【言鯨/イサナ】」によって造られた砂の時代。物資運送キャラバンで働く少年・【旗魚/カジキ】と神の遺骸が邂逅した時、すべての崩壊が始まった――

感想・レビュー・書評

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  •  カバーイラストとタイトルに惹かれて購入。概ね、期待通りの世界設定で、楽しめた。
     SFというよりかは、ファンタジー色が強いかな、と思う。世界設定もビジュアル設定も魅力的だが、文章は思ったより平易で、どことなくラノベっぽい。途中から主人公が強くなりすぎるのと、果たして絆をはぐくむまで三人が長いときを過ごしていたか、というといささか微妙な気がするけれど、基本的には面白く読めた。

  • 端的にまとめれば、「面白いが、詰めが甘い」。
    ストーリーの根幹そのものについては、大変魅力的である。砂に根差した生活に潜む世界の謎――発展途上の形跡もなく、忽然と完成に至ったかのような造船技術、異なる言葉を操る異民族と蟲の関係、そして言鯨とは何なのか。憧れの学者・浅蜊の死の真相を追いながら世界の成り立ちを追究する展開は、ミステリーや冒険譚の要素を存分に生かした「読ませる」文章だと感じた。
    ただ、読み込んでいるうちに、どうも展開の不自然さや描写不足を感じる箇所がいくらか出てきた。私の読解力が足りない点もあるかと思うので、あくまで一読者の疑問としてここに記しておきたい。

    ①浅蜊が公的に死んだことにされた理由は?
    p228-229で明かされた浅蜊の最期は、砂の言葉で分解されたのちに、すぐさま銀鮫の指令で動く人形として形を取り戻したというものだった。それから時系列的には冒頭に至り、言鯨16号を起動させたことになっている。途中で出てくる情報だと、浅蜊は公的に死んだことにされ、言葬も秘密裏に行われたという設定である。しかし、見た目的には生前と変わりない個人を復活させ、すぐさま言鯨16号のところで自滅行動を取らせるのであれば、公的に殺すことに何の必要性があるだろうか。むしろ、言葬から16号の場所へ至るまでの間に、死んだはずの浅蜊が廻楼隊に遭遇するリスクがあることも考えると、ますます社会的に殺す理由が見当たらないのだ。あまりにも描写不足で、ストーリーテリングのために殺されたとしか思えない。

    ②珊瑚の腕はいつ復活したのか?
    p244-245において、珊瑚は言鯨と融合した旗魚を助けようとして、右手と左肘から先を失う。しかし、旗魚が自我を取り戻し、銀鮫・胡渡との戦闘に突入する段階に至っても、彼女が腕を欠損したことに対する何のフォローも入らないのである。それどころか、p270「珊瑚は――シルエットを指差して」、p276「珊瑚が旗魚の服の裾を握りしめる」というように、いつの間にか腕が戻っているのか、あるいは欠損がなかったかのような描写がなされている。つじつまの合わないこと自体は言うまでもないが、仮にもヒロインが主人公のために体を張っているのだから、主人公は何らかのリアクションを取るべきではないだろうか(素人考え的には、旗魚の自我が復活した直後に、得たばかりの砂の力で治してやるのが自然な流れのような気がするが…)。

    ③終章で砂人形を元に戻していく過程について
    (これは単なる個人の好みの問題だとは思うが、)浅蜊と常節について全く触れないというのは、あんまりではないだろうか。

    ほかにも細かい点はいろいろとあるのだが、愚痴はここまでにしたい。世界観が好きだからこそ読み返すことができたことには違いないので、今後多少の改稿が入り、破綻のない作品になることを願うばかりである。

  • 採掘船で働く、学者志望の少年・旗魚が、思わぬ形であこがれの学者・浅蜊と出会う序盤から(そもそも遭遇する前から)、畳みかけるように重なる謎と発見、逃走劇と解答が、一気に読み終えるまでの推進力を持っていて良かった。
    スチームパンクな世界観も緻密、蟲や詠石といった生物・物質の描写も優、後半のある意味無敵モードも快いが、何より相変わらずキーとなる文字/声の描き方のセンスが光っている。見開き一ページ分、(ネタバレ)が来たときには、予想はしていたものの来たか、とテンションが爆上がりだった。言葉を巡る思索のSFらしさも良い。
    タイトルは最後の最後まで読んで、そうかと判る感じだった。終盤は類例をみないわけでもないが、読後感と相まって余韻を残す。

  • ナウシカと砂の惑星とソラリスを足して割って何かスパイスを振りかけたような作品。イサナやそこの住人の正体に驚愕する。旗魚(カジキ)が死にそうになるところではウルトラマンを想像してしまうが、この作品は様々な作品を思い出させるところが欠点でもあり長所でもある。リーダビリティは高い。難しくない作品なので、遠い世界に逃げたくなるような気分の時に読むのがお奨めだ。

  • 現実、と云う枠に想像力をこれでもかと注ぎ込んで溢れ出したものが本当のSFなら、溢れてくるそれはどうしようもなく、ことば、になってしまうよなぁ。

    日本のSF、と云う感じ。物語への執着、と云うか希求と云うか、そういったものを強く感じる作品はとても力強いですね。

  • タイトルに惹かれて購入。
    前情報を全く入れずに読み始めたが、面白かった。サービス満点でテンポが良い。言葉……というか、言語を主題に置いたSFは数多くあるが、言葉の『音』に大きくフォーカスしているのがユニークだと思う。

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著者プロフィール

『エスケヱプ・スピヰド』にて第18回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し、作家デビュー。

「2017年 『ニアデッドNo.7』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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