ヒッキーヒッキーシェイク (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 230
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150313791

作品紹介・あらすじ

「人間創りに参加してほしい」カウンセラーのJJは年齢性別さまざまな4人の引きこもりを連携させ、あるプロジェクトを始動する

感想・レビュー・書評

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  • 幻冬舎から出た単行本を既読なのだけど(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4344029410)なんだかいろいろあったようなのでハヤカワさんに感謝の気持ちで文庫版も購入。まあ一連の騒動についての賛否は別として(しかし販売部数云々についての部分は笙野頼子の純文学論争と同質な気はする)津原泰水の知名度が上がったと思えばそれはそれでいいんじゃないかと。もっと読まれていい作家なのは間違いないし、これを機会に読む人が増えるといいな。

    既読とはいえ2年以上前に一度読んだだけなので、キャラクターは覚えていたものの結末をほとんど忘れており、初読同様新鮮な気持ちで楽しめました。改めて、ちょっとした細部での作者の巧さにも気づけた。私はあまりたくさんミステリーを読むほうじゃないけれど、どのタイミングでどこまで種明かしするかのセンスはやはり大切で、津原泰水はそれが絶妙なのだと思う。ローズマリー、タイム、パセリときてセージの登場のタイミングや、洋佑のある秘密に竺原はずっと気づいているのだけれどそれを読者に知らせるタイミングとか。

    あと主要人物以外の、つまりヒッキーではない脇役たちがすごく魅力的なのがとてもいいなと改めて。吹奏楽部の文太くんとか、ブリューゲルゼミの葵と鬼塚とか、竺原の幼馴染のお亀さんとか、こういう人たちの当たり前のようなさりげない善良さに世界は支えられているのかも。

    ところで大きなお世話だけど、津原泰水は基本はミステリーながらたいへん幅広いジャンルを手掛ける作家で、本作はややライトなほうだけど、真骨頂(というか単に私の好み)はもっと幻想文学よりのハードめの作品だと思うので、一連の騒動で津原泰水を知ったというひとむけに勝手に以下のような分布図(?)を参考までに。※個人の主観および既読のものだけです。

    <ライト(青春・お仕事)>
     ↑

    『ルピナス探偵団の当惑』『ルピナス探偵団の憂愁』(ルピナス探偵団シリーズ)
    『爛漫たる爛漫』『廻旋する夏空』『読み解かれるD』(クロニクル・アラウンド・ザ・クロックシリーズ)
    『エスカルゴ兄弟』(→文庫『歌うエスカルゴ』)
    『ヒッキーヒッキーシェイク』
    『ブラバン』
    『赤い竪琴』
    『たまさか人形堂物語』『たまさか人形堂それから』(たまさか人形堂シリーズ)
    『蘆屋家の崩壊』『ピカルディの薔薇』『猫ノ眼時計』(幽明志怪シリーズ)
    『綺譚集』(短編集)
    『11 eleven』(短編集)
    『バレエ・メカニック』
    『少年トレチア』
    『妖都』
    『ペニス』

     ↓
    <ハード(幻想・SF)>

    本作がとても面白かった!という方にはその前後に位置する『エスカルゴ兄弟』や『ブラバン』をおすすめ。これらは入手も簡単なはず。個人的にはやはり幽明志怪シリーズは是非とも読んで欲しい。耽美、幻想、SF系が好きな人には短編集『綺譚集』『11 eleven』、長編ならサイバーパンクな『バレエメカニック』を。私がいちばん好きなのは『少年トレチア』。『妖都』や『ペニス』は絶版なので入手が困難。これを機会にハヤカワ文庫か河出文庫あたりでなんとかならないかしら。あと私もまだ入手できていない『アクアポリスQ』も。

  • タイトルは、チャン・ロメロという人のロック曲「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」のもじり。ヒッキーと言えば宇多田ヒカル。ヒッキーが「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」歌ったらカッコいいよな…と思う。

    ヒッキー(ひきこもり)ズが人間創りをするという、興味深いプロジェクトの話。小気味好い展開で面白く読めたけど、ドライな印象の小説。

  • 津原泰水という作家を知らなかった一人。
    Twitterの顛末を知って、『11』を買ったけど、合わなくて、この作品も買った。悔しいけど、合わなかった(笑)

    というわけで、津原泰水は私にとってのユーファントなのかもしれない。

    引きこもり達がインターネットを通じて、人間を創るというプロジェクトに携わっていく。
    それぞれがエピソードの中で、自分なりの扉を開けていくという、お話。
    メインの目的地が見えていながら、まず脇道で立ち尽くしたのが、イハイトの爪という挿話だ。

    有名なギタリストの兄を持つ妹が、兄の爪が欠損したときのために爪を伸ばしている。
    という短い挿話で、なぜか一気に耽美な方向へ(笑)

    幻の象、ユーファントの話も、痴漢から果敢に美少女を救うブリューゲルゼミの話も、面白い。
    なのに、肝心のアゲハにまつわるメインストーリーにハマれなかった。
    不思議なことも、あるものだ。

    世界は何次元で出来ているのだろうか。

  • いつも利用しているe-honの予約ランキング上位に突如登場していて、刊行を知った。これまでこんなに力を込めて予約ボタンをクリックしたことはない。そうだよね!買うよね!話題になったから読んでみるという人も多いだろうけど、「津原泰水を売れない作家扱いしやがって。見とけよ見城!」と鼻息荒く購入する人も私だけじゃないと思う。

    ヘイトスピーチを垂れ流す「人気」作家。「コイツの本は売れん」と公言する出版社社長。悪夢のようだが、これについてはもう言わない。今回自分が一番痛切に感じたのは、「買わなかったらこんなこと言われちゃうんだ」ってこと。好きだったり、おもしろいと思ったりしている作家でも、買わなかったら支持者としてカウントされない。本って生活必需品じゃないから、買うのにどうもそこはかとない後ろめたさがつきまとうのだけど(この気持ちも私だけじゃないよね?)、ええい、買うよ!これからはもっと!…限度はあるけど。

    で、すぐさま読んだ本作の感想だが、やっぱり素晴らしかったー!…と言えたら良かったのだけど、まことに残念ながら、そうとは言いがたい。私が津原作品で好きなのは、幻想系の「バレエ・メカニック」(イメージの奔流が最高)、ミステリでは「ルピナス探偵団の憂愁」(切ない~)、ホラーでは「蘆屋家の崩壊」(マジ怖い)、普通小説なら「ブラバン」(青春音楽ものの傑作)など。あらためてこうあげてみると、実に多彩な才能だなあと感嘆してしまう。結構たくさん読んでいると思うが、あんまりピンとこないのもちらほらある。本作の印象は、例えばその一つである「エスカルゴ兄弟」に似ている。

    いや、作品世界としてはまったく違うのだが、読んでいるあいだずっと、これはどういうたぐいのお話なのか腑に落ちず、とは言ってもどこかしら惹きつけられるようでもあり、どうにも居心地が悪いまま読み終えてしまう、という点が共通しているのだった。要するに、好みではないということだろうけど。

    もちろん、胸に響いてくるものはある。ある登場人物の「ほかの人生はないのだ」という言葉が忘れられない。そう、誰だってそれぞれ、そこに至るのっぴきならない道のりを歩んで今があり、これからだって「ほかの人生はない」のだ。語り方が自分のストライクゾーンではなかったけど、芯にあるものは充分受け取ったと思う。

  • 軽妙で、お茶目なんだけど、描写が誠実というか、「引きこもり」の人たちを決して馬鹿にしたり、過剰に持ち上げたりしていないところにものすごく書き手として信頼できる人だなって感じる。とはいえ読んでいちばんの感想は「とにかく、ただ面白い」。大好きな作家さんが1人増えました。

    題材としてタイムリーなものがたくさん出てくるし、しっかりと練られているんだろうなあとは思うんだけど、そういう練り具合を読者に押し付けてはこないところが読んでいるときの純粋な心地よさに繋がっているのかなと思う。あとは文章として、奇抜な、豊かな語彙の比喩も出てくるし、言い回しが凝っているんだけど、テンポの良いストーリーの邪魔にならないのは何でだろう、決して鼻につかないし、すごいなと思った。「掃除機の予備吸い込み口のような」って!!でもよく分かる。

    その一方で、Twitterでのクールなご対応(褒めてます笑)から、すごく複雑な描写ばかりかもと勝手に思ってたら、登場人物の、「信じてもらえたら嬉しい」「褒められたら嬉しい」「不安だけどちょっと頑張ろうと思えた」というような、共感できたり励まされたり応援したくなったりする心の動きもストレートに描かれていて、とても良いなと思った。決して頭が良くないと読めないようなことはなくて良かった。笑

    登場人物みんないいところもダメなところもあって好きだけど、いちばんパセちゃんが好きだったな!まっすぐで、自分の弱さにもまっすぐで、そういうところ素敵だよって、言いたくなるような子。「ほかの人生はないのだ!」この一言に心震わせずにいられる人がいるだろうか?ただの事実なんだけど、その事実を、噛み締めて満喫して生きていきたい、と思った。

  • 津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』、6月6日(木)ハヤカワ文庫JAより発売|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/na222fd34db21

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    『ブラバン』「五色の舟」など現代最高の小説家による新たな傑作
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    https://www.gentosha.co.jp/book/b9846.html

  • 予約済み。出版が楽しみ。

  • 話題の1冊(笑)。とはいえ、津原ファンとしては注目を浴びるのは良いことではないでしょうか。非常に読みやすく、物語の展開も早い。登場人物それぞれの姿もまた一つの物語になりそうですが、そこは余白として読者の想像にゆだねるスタイルなのかもしれません。全然話は違うけれど、『ブラバン』のテイストを思い出して懐かしかったです。広島の人間には、竺原の故郷がもろに広島なので、ニヤッとできます。

  • 担当編集者が
    自身の進退を賭け
    世に送る一冊!
    「この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます」。織田作之助賞最終候補の話題作、6/6刊行

  • うわあ,こういう小説だったのか。ひきこもりカウンセラー竺原がクライアント3人と伝説のハッカーを巻き込み,「人間創り」(?)のプロジェクトを立ち上げるが,登場人物の思惑は互いにもつれ合い,思わぬ方向に進んで行く。竺原の目的は何なのか,プロジェクトをハッキングするjellyfishとは何者なのか。ひきこもりたちのリハビリ物語でもあり,その点でほぼ同時期の作品『エスカルゴ兄弟』と通じている。

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著者プロフィール

津原泰水(つはら やすみ)
1964年、広島市生まれの作家。青山学院大学国際政治経済学部卒。1989年、津原やすみ名義で『星からきたボーイフレンド』を執筆し、デビュー。1997年、津原泰水名義で『妖都』を刊行。以後、『蘆屋家の崩壊』などの「幽明志怪」シリーズ、『綺譚集』『少年トレチア』などの幻想小説で人気となる。2006年、吹奏楽部での体験を基に『ブラバン』を刊行し、ベストセラーに。2014年には「五色の舟」がSFマガジン「オールタイム・ベストSF」国内短篇部門1位となり、コミカライズ作は第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。2016年、『ヒッキーヒッキーシェイク』が第33回織田作之助賞最終候補になり、同作は2019年6月6日、早川書房から文庫化される。

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