アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2019年6月20日発売)
3.84
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784150313838

作品紹介・あらすじ

史上初の3刷となったSFマガジン百合特集掲載作の他、陸秋槎、小川一水らの書き下ろし短篇を収録する世界初のアンソロジー誕生

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

多様な視点からSFと百合の魅力を探求する短編集が収められた本作は、読者に新しい体験を提供します。作品には、伝統的な百合の要素が色濃く表現されたものから、意外な形で百合を感じさせるものまで幅広く取り揃え...

感想・レビュー・書評

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  • SFを読もう3冊目。

    めちゃくちゃ百合...!っていう話もあれば、これが百合?っていう話も。「キミノスケープ」とか「色の無い緑」とか。不在百合という概念は読了後に知りました。

    ★個人的ベスト
    「彼岸花」
    大正浪漫、寄宿制女学校、姉妹と盛り沢山。読み進めるにつれて世界観や設定が明かされていくのが面白かった。

    「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」
    バディを組んで命懸けの漁をする、という設定がもう好き。すごくイチャイチャしていた。

    「海の双翼」
    読解力のせいで鱗晶と人形体の仕組みはいまいちピンとこなかったけど、三角関係の微妙な感情が細やかに書かれていて印象的だった。

  • 百合SFアンソロジーと銘打ってありますが、思ったより、ゆりゆりしていませんでした。

    百合作品を楽しむというよりは、SFの幅広さを楽しむ作品集でした。短い作品ですがマンガもあります。
    用語が難解だったりイメージしづらい世界だったりする作品もありますが、何とか読めました。

    なお、収録作の中では、小川一水さんの「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」が百合濃度が濃かったです。収録作は短編ですが、これは長編化しているようです。

  • Twitterで公式様から回ってきた情報が気になって気になって…読了しました。『百合SF』と括らなくても、SFファンなら普通に面白く読めるお話ばかり。もちろん、百合を扱った小説集としても面白いですが…。区分けするのはあまり意味がないかもしれませんね。

    気に入って、特に面白かったのは…。

    キミノスケープ 宮澤伊織さん
    四十九日恋文  森田季節さん
    彼岸花     伴名練さん
    月と怪物    南木義隆さん

    『月と怪物』『彼岸花』は他のお作も是非に読みたいです。『色のない緑』も良かったのですが、途中から、学術的に彼女たちの会話を、きちんと理解したくなってしまって…。そうすると途端に難しくなってしまいました。当たり前です。フィクションなのですから。まして私は機械工学もソフトウェアも、言語学もド素人。

    でも、思うのです。架空のありえないお話を、そこにいるように感じ、扱われている知識や、技術や、いろんな主人公の技能を、自分もたっぷりと理解し、共有し、体感するのがSFや冒険小説の醍醐味じゃないかって。その伝でいけば、このお作は最高。そして、ここに収められたお作はどれも秀逸でした。

    異色で、ものすごく怖かったけど印象的だったのは、『幽世知能』草野原々さん。いわゆる神隠しものの系譜に繋がるのでしょうが、怖い。すごく。ならば読み止めてしまえばいいのに、最後まで読まずにおれず…。湧き上がる怖さと憎しみに、読み終わった夜は、うなされました。

    オタク界隈で言われる『百合』って言葉に惑わされす、ぜひ小説のお好きな方なら読んで頂きたい。逆に『百合』という言葉に惹かれて手に取られた方には、ラブシーンは描かれてなくても、きっちり百合って成立してること、そして何より、SFって面白いんだ!という入り口になってもらえればと思います。

  •  表紙に踊るは百合SFアンソロジーなる文字。そして裏の内容紹介を読めば、目を惹くのは『ソ連百合』なるパワーワード。

    「これはネタに走りすぎだろ…」などと読む前まで思ってました。スミマセン…、早川書房さんと担当編集さんと収録作家の皆さんetc. いやはや、これはすごい!

     SFと一言で括ってはいるものの、収録作品の幅はかなり広い! 宇宙ものもあれば、言語SFあり、ファーストコンタクトもの、共感覚、人類消失、妖怪、意思情報のエネルギー化、霊界との交信、前世の記憶…。

     結構ハード目のSFもあれば、ソフトなものに変化球、果てはマンガの作品まで、本当に多種多様。ある意味SFの見本市でもあります。

     しかし、すごいのはそんなバラバラのSFたちがいずれも、誰かを想う気持ち、あるいは焦がれる気持ちを表現する上で、効果的に機能していること!

     SFと百合、一見何の関係性も脈絡もないジャンルがこんな化学反応を起こすとは…。

     企画された方が、これを狙ってやったかどうかは分かりませんが、とにもかくにも新しいジャンル、もしかすると文学の可能性を開いたアンソロジーかもしれません。

     現実の科学技術が進歩しても、SFというジャンルはそれすらも取り込み、さらに幅を広げ続けているように思います。

     そして百合というジャンルがSFとマッチした事実は、SFの幅の広さと懐の深さを、そしてSFというジャンルの可能性を改めて示したような、そんな気がします。

     大げさに書きすぎたかもしれませんが(苦笑)でも、それだけのことを考えさせてくれた、斬新で新鮮、そして上質なアンソロジーでした。

  • 『アステリズムに花束を』読了。
    世界初の"百合SFアンソロジー"という触れ込みの一冊。
    SFマガジン百合特集号掲載作のなかでは"不在の百合"を探求する意欲作、宮澤伊織「キミノスケープ」が好きかな。
    非収録作の中では"ソ連百合"として(僕の知らぬ間に)バズっていたという南木義隆「月と怪物」はイロモノどころではない完成度。
    本格派言語学SFとしてはもちろん百合としても申し分ない陸秋槎「色のない緑」が白眉。

  • SFマガジンの百合SF特集号に掲載された作品に、書き下ろしも含まれた、百合への期待と思い入れが満ちみちた作品集
    百合SF特集のSFマガジンは三刷の増刷を果たしたことや、伊藤計劃氏の『ハーモニー』の十周年記念で開催された特集であったことなどを語る序文から熱かった…けど、『ハーモニー』は百合認知されてるんですね
    それはそれで嬉しいような、むずがゆいような、百合って枠組みに入れるのは適切なのか迷うような、複雑な心持ちになる

    すごく刺さった作品もあれば、どうもピンと来ない作品もあった作品集なので、感想を書きたい作品のやつだけ書きます

    『キミノスケープ』 宮澤伊織
    人間はおろか、動物や鳥や虫も居なくなった世界で、でも商店の類は変わらず利用できるため、食料品などの物資の調達には困らない…変な言い方だけど“理想的”な終末世界で一人旅をする女の子が、この世界にいるもう一人の誰かの痕跡を見つけ、その誰かを追い求める話
    蚊に刺されないことや、美術館で眠るところがすごくうらやましく感じてしまった(そして展示してあった絵はおそらくデ・キリコの作品…それを伝言板にしちまうのは、光景は美しいが何だと! という気分にもなる)
    宮澤伊織さんの作品って読んでるとナイーブな心境になってくる メンタルがよわよわになってゴロゴロしたくなるような感じ
    結局、痕跡を残していた誰かは何者だったのか?
    彼女はその誰かに会えたのか分からないままで終わるけど、気になるのはこの作品の文体と視点の事で、
    旅する彼女を高次の視点からずっと見守ってる“誰か”が彼女の行動や心理を代弁してるかのような語り口で、彼女が追いかけている誰かとこの語り手は同一人物ではと思えてくる
    この世界は街をつくるシムシティみたいなゲームと、女の子を世話して育てるプリンセスメーカーみたいなゲームが合わさったもので、旅する彼女はプログラムで、語り手はゲームのプレイヤーだったのかなと想像した

    『彼岸花』 伴名練
    耽美な世界観の女学生寄宿舎×交換日記もの
    女学生の寄宿舎にただ一人の人間として編入してきた少女と、その庇護者にして吸血鬼たちを統べる“お姉様”が綴りあう交換日記で語られる
    すでに生身の人間はほぼ死滅しており、人造の血液(造血)をその身に巡らせて生きる吸血鬼たちの魔都となっている世界が日記の文章から少しずつ描写されますが、造血を利用する様々なガジェットやインフラの設定がめちゃくちゃ面白いので長編化してほしい
    伴名氏の短編は長編化して欲しすぎる作品ばかりです

    乗客の造血を啜る電車や造血によって奏でるパイプオルガン、奏者の血が行き渡る描写などは、耽美さとスチームパンクみを共に感じるし、そもそも寄宿舎×交換日記百合なところで要素がてんこ盛りです
    レ・ファニュの『吸血鬼カーミラ』もモチーフになっていると思われますが、原作は未読で『ガラスの仮面』の題材でしか知らなかったので、ちょっともったいないことをしました あれも百合だもんな

    『月と怪物』 南木義隆
    旧ソ連の超能力開発とその軍事転用のための実験施設に囚われた姉妹の話…だけど、このアンソロジーはあくまで百合SFで、その百合カプが思わぬ組み合わせで爆誕してのける展開に読んでてプルプルした
    旧ソ連の国内の描写がたいへん読み応えあります
    (おおっぴらに言えない事だけど、国民に多大な負担と犠牲を強いる国や時代の描写を読むのが好き)
    この話では、想い合っていた2人の会話やデキた過程などはまったく語られず、その事は生き残ったひとりが後年に密やかに知る、という奥ゆかしさがたまらない一作だった
    (一方で、彼女の共感覚と宇宙でのもう一人の彼女の言葉を読むと、やや“そのための設定だった”感をおぼえた 美しい、良いシーンだけど…)

    『色のない緑』 陸秋槎
    ハイスクール時代に共同の研究をして仲良くなっていた3人の女の子のうちの1人が自殺をしてしまい、残されたふたりがその死の真相を調べて、そして過ごした時間を回想する話
    百合SFであり言語SFでもある上に、様々な学術知識がこれでもかと盛られていて、でもそれは難解さに繋がらず知的好奇心がくすぐられる(し、すごく分かりやすい話でもある、凄い)
    言語学や翻訳機、言語の生成にそれが辿る変化と進化を研究していたハイスクールの女の子たち凄いなあ~ってほっこりするし、その後に彼女たちがたどった進路がある意味敵対してしまうものだったとしても、3人でいられた記憶がずっと支えだったり、現在の研究への情熱を燃やす理由だったりしたんだろう
    (もちろん、自分のやりたい事であるのは一番として)
    甘やかな百合成分はごく控えめだけど、萌の要素と言語学のところが濃密で凄く好きです この作品集の中のベスト作

  • 2021.3.20市立図書館 →入手(2021.4.5)
    川添愛「ヒトの言葉 機械の言葉」(角川新書)の次に読む本としておすすめされていて予約を入れてた本。
    アステリズム=星群。⁂。「百合SFアンソロジー」と銘打たれているが、一般的に想像される狭い意味での百合ではなくシスターフッドも含む女性同士の関係性をえがいた佳作がつまっている。「百合」とか「SF」とかおいといて、短編物語としておもしろい作品ばかりだった。

    冒頭の宮澤伊織「キミノスケープ」、コミックの今井哲也「ピロートーク」どっちも切ない。草野原々「幽世知能」、やるせない。吉屋信子オマージュ(大正浪漫)×ヴァンパイアっぽい伴名練「彼岸花」そしてソ連百合こと南木義隆「月と怪物」は米原万里の長編小説を連想させてよみごたえあり。
    後半、櫻木みわと麦原遼による共作短篇「海の双翼」は異文化というより異種族間コミュニケーション、読みにくいけれど深い。チョムスキーを想起させるタイトルだけで言語の話だと直感してわくわくさせられた陸秋槎(稲村文吾訳)「色のない緑」(←これが本命の近未来言語・人工知能SF作)、自分の世界にどんぴしゃりで打ちのめされそう。最後の小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」は「百合×SF」真打ち登場という感じ。

    長女(高3→大学生)は荷造りの隙間でちょこちょこ読んで読了。「彼岸花」がいちばん好みで「色のない緑」もよかったとのこと。(わかるわ…)

  • 百合目当てというより、伴名練さんと陸秋瑳さんの短編を目当てに手にしました。佳作ぞろいで当たりでした。伴名さんはややホラー気味、陸さんは言語研究などが難しいテーマ。最後の小川一水さんの短編が活劇風で楽しくよめました。お気に入りは、森田季節さんの「四十九日の恋文」。別れの日に向けて揺れ動く2人の表現力が楽しくも、切ない物語でした。

  • 一話目の『キミノスケープ』が導入としてあんまりきれいで、期待が胸の中でブワッと広がるのが感じられた。これから出会う貴女のことを考えずにいられない素敵な一作目。
    百合的な要素も含めて一番好きだったのは、『海の双翼』
    あなたのことはなんでも分かるはずだったのに、その全てを壊してあなたを新しくしてしまう存在が現れてしまった、その絶望と焦燥感、触れ合うことのない心。かたや新たな出会いはどれだけ遠い存在でも心を通わせることができることをキラキラと主張していて、関係性の対比に苦しくなる。その苦しさが愛おしかった。

    あと読みながらこれってNTRか…と思っていた。

  • ソ連百合にやられた。胸がいっぱいだ

  • 女性どうし互いを思いやる気持ちが美しく描かれた良質なSF短編集。特に、陸秋槎「色のない緑」は、亡くなった親友との思い出話と人工知能による翻訳に対する議論から彼女が亡くなった真意が浮かび上がる不思議な展開がとても印象に残った。

  • 普段は全くと言って良いほど立ち入らないSFコーナーで『ハヤカワ文庫の百合SFフェア』を発見し、第一の衝撃を受けた。えっ?百合フェア??そのジャンル、公でやって良いの???と思って(百合含め特殊な性癖が関係している嗜好品は陰でこっそり嗜むものだと認識していたので)。

    SFは苦手だ。でも、百合は読みたい。
    ということで世界初の百合SFアンソロジーを読んでみた。
    端的に言って普通に面白かった。
    個人的に気に入ったのは『四十九日恋文』『彼岸花』『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』なのだが、特に『彼岸花』が一番のお気に入り。SFといえばSFなんだろうけれど、ちょっとファンタジーな風味を感じられるのが良かった。思わず恍惚感の混じった溜め息が出ちゃうぐらいには好み。

  • ジャンルという概念は定義不可なので固執する必要はないのだけれど、好きな傾向というものはあって、でも求めているのは今まで読んだことがないものであって、ということで、国境のない広大な「SF百合」のためのアンソロジー。
    書き下し三作は、前衛的(?)SF百合、王道SF、王道百合、みたいな分かりやすさがある。これは、意図的に書き分けてもらっているのかなあ。どちらであっても、職業的なすごさを感じる。

  • ほとんど初読の作家さんばかりで面白く読んだ。
    繰り返し読んだのは、南木義隆「月と怪物」。商業デビュー作だそう。分かりやすかったというのもあるが、史実のような淡々とした語り口の内側に穏やかに聞いてなどいられない残酷な展開があり、ほとんど見えない奥の奥にたった一つ灯った情熱がある。そのギャップ、切なさが良かった。
    陸秋槎(訳・稲村文吾)「色のない緑」も面白かった。増え続けるブラックボックスの話にはハッとさせられるところがあったし、colorless greenについて語り合う部分もいい。
    「現実に、そんな文脈なんて存在するの?」
    「いまこのときがそうかもしれないし」「まだそのときは来ていないだけかもしれない」
    小川一水「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」はイメージを次から次へと喚起させられて息つく暇もないという感じ。船に魚に、部屋に2人の女の子。キュートさとスピード感が爽快。

  • 百合SF、ってわざわざくくられないようになるといいな。たっぷりなアンソロジーでした。
    小川一水はいつもいい世界創るなぁ。
    ピロウトークが絵柄と併せてほんわかしました。

  • なんとなく購入。
    百合って定義もいつからこんな世間一般に定着するようになったんだろうなぁとか思いつつ。でも女の子二人が出てくれば百合って訳じゃないと思うんだけどな、と読み終わって思ったり。

    キミノスケープ
    これ、百合なのか?女性に限定しちゃうと反対に世界観が狭まりそう。個人的には生き残ったのが両生類とかでもAIとかでもいいと思うんだけどどうだろうか。

    幽世知能
    これも百合?なのか?
    同情で付き合うとかマウント取るために友人にするのはわかるけど、女性はシビアだから切るときは切ると思う。ましてやアレと…ねぇ?後女の子はなんだかんだ言ってきれいなモノが好きだから執着するならもっと…とか思ったりもする。

    四十九日恋文
    あの世との通信。ちょっと面白い。

    ピロートーク
    まくらさがし。パラレルワールドみたいな感じ。

    彼岸花
    耽美系百合って感じ。正統派だな〜と言う感想。

    月と怪物
    結局怪物は誰だったんだろう。お話としては面白かった。

    海の双翼
    映像化したら綺麗そう。
    個人的には語り部の方が可哀想で好きかも。

    色のない緑
    百合?なのかはわからないけどなんか好き。
    色のない緑がってフレーズは面白い。

    ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
    恋愛に振り切ってるなぁ。二人の人間の関係性を書くという意味ではスゴイ恋愛小説。漁がなんだか楽しそう。

  • 24:よいアンソロジーでした。正直、「百合SF!」って大々的に宣伝しなくてもどんどん売れて欲しいし、それだけの力のある作品が揃ってると思う。こうして、いわゆる「パワーワード」を冠することで、新しい客層にリーチするならそれも商業的な戦略として正しいのかもしれないけど、若干モヤりはします。

    後半、書き下ろし三作が凄かった。作風としていちばん好きなのは「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」やけど、正統派?百合の「海の双翼」の儚さと美しさ、「色のない緑」で描かれる言葉と感情、どれも方向性が違ってどれも読みたかった作風。
    肉体関係が描かれる作品がほぼなく、ほとんど比喩に留まるのが好みでした。

  • 《目次》
    「キノミスケープ」宮澤伊織
    「四十九日恋文」森田季節
    「ピロウトーク」今井哲也
    「幽世[かくりょ]知能」草野原々
    「彼岸花」伴名練
    「月と怪物」南木義隆
    「海の双翼」櫻木みわ×麦原遼
    「色のない緑」陸秋槎/稲村文吾訳
    「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」小川一水

  • アンソロジーかつSFということもあり、割と何でもありな各々という印象。ここに入っていなければ読まなかっただろうなというのも複数あり、アンソロの利点をかみしめる。
    正統派は『彼岸花』…なんだろうか。耽美さは随一。
    雰囲気でいうと『海の双翼』が、ギミックも含めておしゃれな感じだ。
    個人的な一番は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』。これを基にした長編があるようで、大変に嬉しい。

  •  世界初の百合SFアンソロジーをうたっており、主に日本人による9篇のSF短篇が収められている。「百合」の定義について、本書では「女性同士の関係性を扱うもの」という幅広い解釈をいったん提示している。
     期待したほど面白い作品は少なかったが、後に『なめらかな世界と、その敵』を上梓する伴名練の『彼岸花』だけは出色の出来で面白かった。ソ連百合として有名になったという南木義隆の『月と怪物』は、百合というよりも超能力者舞台を作ろうとしたソ連崩壊ものとしてなら楽しめた。『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』は、後に出た長編の方を先に読んでしまっていたが、キャラクター造形があざとすぎて入り込めなかった。
     女性同士の関係性を扱ったSF作品は他にも色々あると思われ、必ずしも本書に収められた作品が粒揃いで代表作であるとは限らない。それでも、2019年の時点で本書を出版したことは、ひとつのジャンルを確立する手助けをした金字塔になるのは間違いない。

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