ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.15
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本棚登録 : 297
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314057

作品紹介・あらすじ

百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する……まるで「ゲーム」のように。規格外のSF巨篇!

感想・レビュー・書評

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  • カンボジアのポルポト政権下を舞台とした冒険小説。
    SF作品として数々の賞を受賞しているが、上巻ではSF的な話はあまりない。

    ポルポト、クメールルージュといえば、映画『キリングフィールド』が有名であるが、それを文章化した本といえばわかりやすいだろうか。

    原始的な生活を至上とし、数多くの知識人を虐殺したポルポト政権下のカンボジア。
    そのような状況のなかで生き抜く二人の少年少女。
    二人の生きざまには手に汗握るものがあった。

  • 面白いと言えるかどうかはまだ分からない。それでもこの『ゲームの王国』が持つただものでない雰囲気は、上巻序盤で伝わってきます。ゲームなんかをやっていると、バトルの時のBGMの入りで「これヤバイやつや……」となるのですが、そんな印象を受けます。

    物語は1950年代から70年代のカンボジアが舞台。権力者や警察による弾圧的な政治や捜査が横行する時代。革命を目指す地下組織クメール・ルージュが活動する一方で、
    彼らを追いかける秘密警察は、一般市民に対しても理不尽な捜査や拘留、そして拷問すらためらいなく行い、自分たちの都合の良いように調書を作り上げます。その秘密警察によって、育ての親を殺されるソリヤという少女。

    同じくカンボジアの小さな集落。常人には理解できない言動で、親をはじめ村人たちからも気味悪がられながらも、独自の生活リズムを崩さない少年のムイタック。そのムイタックの才能を、村で唯一勘づいているムイタックの兄、ティウン。

    彼らが運命の邂逅を果たしたその日。革命が起こり政府は倒され、クメール・ルージュが新たに権力を握ります。理想の共産国家を目指す彼らは、その思想の元、国民に新たな生活を強いるのですが……

    このクメール・ルージュの支配下の描写がえげつない……。自分たちに牙を向ける可能性のある一般の知識人たちをまず粛正し、その後、組織に刃向かうそぶりを見せた者、組織の思想に合わない者も処刑。
    結果、誰もが密告を恐れ、疑心暗鬼となりクメール・ルージュ内でも、幹部たちによる密告合戦の様相を呈しはじめ、一方で誰もが処刑を恐れ、失敗や間違いを公に認められなくなり……

    一方でムイタックたちは独自のルールを作りクメール・ルージュの支配下でも理想郷を作ろうとするのですが、それも上手くいかず……。

    この二つの例から、統治された組織、そして国家まで作るのはいかに困難か、というのが現われているように思います。ムイタックは作中でルールには二種類あると語り、ルールそれ自体と、ルールを縛るルールがあるとしています。

    例えば憲法なら、憲法の条文それ自体がルールであり、そもそも憲法は守らなければいけない、という前提であったり、あるいは、国民投票なんかで憲法を改正してもいい、というのがルールを縛るルールということなのだと思うのだけど、
    それをムイタックはゲームのルールになぞらえつつ、国や革命を見通していきます。この辺の論理がだいぶ面白かった。

    一方でソリヤは、正義を遂行しカンボジアを変えるため権力を指向するようになっていきます。そしてその道は、捨てるもの、諦めるものを選択する道でもあり……

    カンボジアというあまり見ない舞台設定に加え、統制される思想と運命や暴力に屈し、不条理に倒れる人々と、物語は暗く重く、そして話の流れもなかなか見えてこないので、読むのはやや苦労しました。

    しかし最初に書いたように、物語全体に漂うただものでない雰囲気に飲まれ、いつの間にか、歴史と思想、虚実入り乱れる壮大な物語に憑かれてしまったようにも思います。

    こんな重たい話でありながらも、ところどころブラックユーモアというか、下品なネタに、頭の中で常に綱引きする男。土と会話し操れる男。百発百中のゴム占いをする少年と、とんでも要素を物語の一部に組み込んで、そしてなぜか成立させてしまうあたりが、また不思議で仕方ない。これも『ゲームの王国』が持つ物語の力なのかも。

    そしてここまでの壮大かつ壮絶な物語がある意味で、上巻ラストの前フリにすぎないという事実にも、また末恐ろしい気持ちがします。

    凄い物語と、面白い物語は、自分の中で必ずしも一致するわけではありません。だから、上巻読み終えた時点では面白いとは、言い切れないのだけど、この『ゲームの王国』は凄い小説、ヤバイ小説、とんでもない小説なのは、まず間違いないと思います。

    第38回日本SF大賞
    第31回山本周五郎賞

  • 「あれ…?この小説、SFなんだよな…?」という疑問を頭の片隅に抱えながらも、数十年前のカンボジアの凄惨な状況に意識が向き、次第にSF作品かどうかなど気にならなくなる大作歴史小説…と思いきや、これが全て前振りになってしまうのが同書の凄いところ。

    ポル・ポト政権の凄まじさは一般教養程度に知っていたが、ポル・ポトの名前があまり出てこないのでWikipediaで調べてみたら、重大なネタバレを発見…とショックを受けたが、全くネタバレではなかった。

    というか、上下巻を読み終える頃には「その設定すら完全に前振りなんかい!」とツッコミたくなるので、むしろWikiでポル・ポトについて調べてから読んでも良いかもしれない。

    完璧な下巻のために書かれた完璧な上巻。

  • 週末に上下巻を一気に読了。
    いやー、なんかスゴいもん読んじゃったなぁ、と思います。登場人物は皆、愚者か狂人か天才、あるいはその全て。語弊を恐れずに言えば、J・G・バラードっぽいです。「夢幻会社」とか、あの辺り。
    詳細は、まとめて下巻レビューで。

  • 物語では絶望的な世界に登場人物たちが置かれており、目を背けたくなるような惨状のシーンが繰り返し登場する。登場人物達が次々死んでしまうので、読後感が悪い章も多い。独裁政権に至ってしまう構造や、なぜそれが皆間違っていると分かりながら持続し、進んでしまうのかという社会組織の構造がそれぞれの立場の人間の視点から描かれていてわかりやすかった。ムイタックとソリヤという二人の天才がポル・ポトを打倒するという同じ目的を持ちながら、その道を分かつという物語の大枠は典型的でありながらも、興味を惹きつけられた。途中、泥や輪ゴムの超自然的能力が登場し、どういう世界観なのか混乱した。下巻でどういう結末にもっていくのか期待大。

  • 下巻にまとめて。

  • 物語の舞台はポル・ポト政権下のカンボジア。クメール・ルージュの革命活動により政権が交代しようと、独裁者の首が挿げ変わるだけで、人民は圧搾され続ける過酷な現実。自分が産まれる僅か数年前にこんなにも凄惨な虐殺事件が起きていたことに驚愕する。生き残る為には、思考を研ぎ澄まし【ゲーム】に勝ち続けるしかない。作中の『賢くなるとは、臆病になることだ』という台詞には思わず虚を衝かれた。ポル・ポトの隠し子ソリヤと天賦の神童ムイタック、略奪され続けた少女と少年のジュブナイルは訣別を経て悲劇的な方向へ舵を切る―。下巻へ。

  • 本作、書面で発見し帯に惹かれて購入。

      …少しは内容確認して購入する癖つけよう。

    カンボジアが舞台となっている。
    カンボジア、カンボジアの歴史、背負ってるもの、お恥ずかしい限りだが私には全く知識がない。
    慌ててWikiでほんのカケラほどの情報を得たが、全然足りない。

    そして登場人物、登場人物の名前が覚えられない。
    (吉川英治さん作三国志もこの問題と、読めない漢字が多過ぎて断念した)

    サムとかソムとかサルとか(ToT)

    そして本作「日本SF大賞」受賞作品と帯にあったのだか、これSFなのか?

    と、なかなか入り込めなかったのであるが、上巻の後半にもなると細かい事はスルーできるほど展開に乗っていけた。

    さて、下巻へ

    が、しかし

  • ポル・ポト、虐殺とはよく聞くが、詳しくは知らなかった。
    物語の舞台はポル・ポト政権が立ち上がる前後のカンボジア。
    視点、時間が変わりながらも描かれる世界はどれも酷く、読むのも苦しくなる惨状。
    人の命が軽すぎる。。。
    白も黒になる、あまりに不条理な世界に何が正義かわからない。

    「ここで引き金を引かなければ、スパイだとして別の処刑人に殺されてしまう」
    こんな言葉が出てくる世界。
    上巻ではまだ彼らの世界は変わらない。
    下巻で世界は変わるのか?いや、変わって欲しいと願う。

  • 本書発売時から、面白いという噂を聞いていたけど、
    タイミングがなく、文庫化したこのタイミングで購入。

    SFというよりは、歴史小説と言ったほうがしっくりくるかも。
    カンボジアのポルポト時代の前から、ポルポト時代に書かれている。
    その革命前後に、主役級の人が躊躇なく死に、
    時代が変わる恐ろしさを感じながら、
    読む側が慎重になるほど展開が潔い。

    今後の展開が分からず、下巻が楽しみになる一冊でした。

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