- 本 ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150314064
作品紹介・あらすじ
百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する……まるで「ゲーム」のように。規格外のSF巨篇!
感想・レビュー・書評
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小川哲さん「ゲームの王国」下巻
上巻から一変して現代の話がメイン。
上巻では「ゲームの王国」というタイトルの持つ意味が曖昧なものだったが下巻で明らかになっていく。
結果から書くと自分にはあまりはまらなかった。物語の中盤から後半にかけて面白味が得られなかった。
下巻の最初の方で展開と結末の予想ができてしまいその予想通りで終わってしまった。
もっとラブロマンスが深くてもよかったと思うし、逆に敵対するならばもっと敵対してもよかったのでは?という読後感が残る。
この作品の本質的な部分は何だったのだろうか?
独裁者、政治、国家、汚職、人命、人権等のテーマが空回りしていく。
そもそもこの作品はそういうものがテーマではなかったのかもしれないと思うほどほとんどが触れているだけで深く読み取る事ができなかった。
登場人物も非常に多く、関わってくる人間も多い。しかしその大半の人々に重要性が特別感じられなかった。あの人は何の為に登場したのだろう?という疑問が幾人にも残る。誰もが関わってくるようなもっと複雑な世界観を期待しすぎてしまったのかもしれない。
SF系の作品と言われればそうなんだと思うが、魔術的なオカルト色が濃くSFとも違う感覚を抱かされる。その辺りは好みの問題なのだが、上巻の史実全開の流れの継続され展開された下巻が読みたかった。本当に一変してしまい別の作品を読んでいるのか?と思うくらいだった。
「地図と拳」も読もうと思っていたが一旦白紙に。今は読みたいと思えなくなってしまった。時間をおいてから読む機会をうかがいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
凄まじい情報量に溺れる。
なんとか結末までたどり着いた、ふぅ〜
それぞれの理想の王国=ゲームの王国を追い求めるソリアとムイタックの決別と邂逅。
読み応えがあるものを読みたい人におすすめ。
♫DREAM OR TRUTH/BUCK-TICK(1987)
←櫻井敦司さんの訃報に言葉もなく…ご冥福を祈るのみです。-
2023/10/25
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naonaoさん
ほんとです。あるんですね。
まだ若い。
でも、最後までステージ上で輝いていた。
櫻井さんにとってこの亡くなり方が本望だっ...naonaoさん
ほんとです。あるんですね。
まだ若い。
でも、最後までステージ上で輝いていた。
櫻井さんにとってこの亡くなり方が本望だったなら、せめて報われるけど。
この曲は僕にってバクチクとの出会いの曲です。たぶん中学生の頃、PVで見たんだけど、長い髪を逆立て、派手なメイクをした強烈なルックス(ヴィジュアル系のはしり?)と見た目にそぐわないカラフルな楽曲に、ひとめで引き込まれました。
最近の曲はまったく聴いてないけど、活動を続けているだけで嬉しい。
たまに昔の曲をひっぱりだして、ひとりでこっそり聴く。
そんなファンとは言えないファンだけど、やっぱり残念だな…2023/10/26 -
たけさん
おはようございます。
わたしも ほとんど通ってなくて、日常的に聴くバンドではないのですが、大好きでその場でライブを観ていたお客...たけさん
おはようございます。
わたしも ほとんど通ってなくて、日常的に聴くバンドではないのですが、大好きでその場でライブを観ていたお客さんからしたら、かなりの衝撃だろうな、と。
もし自分が、同じ気持ちで同じ会場にいたら、と思うと苦しくて…
ご冥福をお祈りするばかりです。2023/10/26
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上巻から約50年後の2023年を描いた下巻。
上巻は独裁下のカンボジアを描いた歴史的な内容だったけど、下巻は現代が舞台でガラッと雰囲気が変わり、その変わり様に最初はちょっと戸惑った(・・;)
政治だ、脳科学だ、個人的にはあまり得意でないカテゴリーの話だけど、上巻からの流れや、クセのある登場人物達に思わず笑ってしまうところも大いにあって、グイグイ面白く読めた。
それにしても脇を固めるクセ強キャラ、ベンもカンもヘモグロビンも、本人は大まじめなんだろうけど面白すぎる。
あと上巻から出てる泥と鉄板も、さらにおかしな事になってるし笑
二人の主人公、ソリヤとムイタック。
二人がそれぞれ目指した「ゲームの王国」。
結末があっけなくてちょっと呆然としたけれど、結局二人はあの時の事が忘れられず、待ち望んでたその日が来ることにもう満足出来たんだと思う。
上巻が圧倒的に面白かっただけに、それに比べると下巻は少しテンション下がったけど、それでもとても面白かった!
文庫本で読みましたが、小川さんのあとがきもめちゃくちゃ良かった〜!! -
上巻から50年後2020年代のカンボジアを描いた本書。
本書からはかなりSF的要素が満載だが、いまいち著者がなにを言いたいのかわからなかった。
主人公である二人の少年少女はもう初老の時期に入り、少女は政治家を目指してカンボジアの政権を取ろうとし、少年は研究の世界で名前をなす。
最終的に二人がたどり着く世界は一体どうなってしまうのか。 -
時代は21世紀に飛び、歴史小説から近未来思弁小説風に。SFとして特に目新しさはないものの、脳波を用いるPCゲームの設定に過去の記憶を絡めていく流れは面白かった。さて、肝心の主人公2人の〝対決〟の行方は…それこそ全て「無意味」と思えるような呆気ないラストだったが、後味は決して悪くない。著者のあとがきを読んで色々と納得した。選ぶ題材も作風も特異な作家さん。本作執筆中に30歳を迎えたという年齢をみても、やっぱり只者ではないと思う。
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上巻の感想でゲームのルールについて書いたけど、下巻ではゲームのセーブポイントについても少し思い巡らしました。
大事なイベントや選択肢、ボス戦の前に大体のゲームプレーヤーが行うであろうセーブ。もし選択肢を間違えても、ボスに敗れてもセーブさえ忘れていなければ、そのセーブしたところまで戻れます。
しかし人生はゲームのようにはいかない。ルールを守っていても、突然転落することもあれば、セーブをして、大事な場面のからやり直しもできない。それでも進んでいかなければならない。
上巻から一気に時間が経ち約50年。カンボジアから不正や腐敗を無くし正しい国にするため、政治家となったソリヤ。一方で脳科学者となったムイタックは、脳波を使った新しいゲームの開発を進め……
脳波を使った科学的な話もあれば、政治の駆け引き、国や正義のあり方、人生の行方、強大な力の暗部と、シリアスな場面や展開もあり、嘘を感じると性的に興奮するジャーナリスト、ヘモグロビンの話ばかりする医者と、笑わせにきてるのか、なんなのか、シュールだったり、超常的だったりするキャラや展開もあり、
物語の軸というか、背骨に当たる部分は見えているような気がするのに、細部を掴もうとするとニュルンと通り抜けてしまうような、骨太かつ、つかみ所の無い力作であり、そして怪作だったと思います。
ルールやセーブポイントといったゲームに関係することを色々思い浮かべたこの『ゲームの王国』なのですが、語り手たちが入り乱れ、時に彼らが非情な運命に終わるのも、ある意味ではゲーム的に感じました。
ゲームをやっていると「あ、これ死んだわ……」といった瞬間や、イベントの流れから「これ、選択肢間違えたな……」といった瞬間に出会うことは多々あります。そして時に初見では絶対攻略できないようなボスや、イベントがあって、理不尽さを感じるときもあります。
権力であったり武力であったり、そうした巨大な力の前に倒れた小説の中の人々の姿。それはルールも決められず、攻略法も分からず、セーブもできない世界や人生のゲームの理不尽さに直結しているよう。
ソリヤは自分たちが法や憲法、つまりルールを作る側に回り、正義が正しく遂行される「ゲームの王国」を目指しましたが、この本のタイトルである『ゲームの王国』はソリヤの理想だけでなく、歴史の影に隠れた登場人物たちの死すらも、ゲームに意味づけし、そして人生に意味づけしているように感じるのです。
国家という大きな枠組みの物語でもあったのですが、読み方を変えると、永遠の子どもの物語にも変換できそう。ソリヤとムイタック、二人とも子どもながら過酷な運命に翻弄され、多くの死に触れ、子どものままでいられず、そして決別した二人。
でもつまるところ、この物語のもう一つの本質は、ソリヤとムイタックが初めて出会い、カードゲームを始めた時から、何ら変わっていないようにも思えました。
作者の小川哲さんのあとがきにあるように、とにかく熱量が半端ない小説だったと思います。その熱量こそが『ゲームの王国』を唯一無二の作品にしているように感じます。
第38回日本SF大賞
第31回山本周五郎賞 -
下巻…いきなり現代に切り替わり、日本人も出てきて「おぉ」と期待しながら読み進めたが、絡む事なくそのままカンボジア舞台の話が続く。上巻であれだけ面白かった場面展開や登場人物も下巻も同じパターンの踏襲にやや食傷気味に。ハッピーエンドは期待してないものの何か報われる、救われる登場人物がいても良かったような。ちょっと読むのが辛かったです。
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上巻に引き続き、あっという間に読み終えた。すごい筆力だ。久々に世界観に没頭できるフィクションだった。下巻を開いた瞬間、上巻とは別世界のようで、それも面白かった。ノーマークの著者と著書だったので、読み終わってすぐに、家族や友人におすすめしまくってしまった笑
下巻も変わらずカンボジアが舞台だが、上巻が1950-1970年代のポルポトやクメール・ルージュの史実を元にした時代だったのに対し、下巻は2000-2020年代に一気に飛ぶ。下巻になり、SFというジャンル設定がはじめていきてくる。脳波でコントロールできるメタバース的なゲームが登場する。どのように物語が着地するのか、誰かの命がいつ奪われるかわからないスリルを味わいながら読み進めた。
時代が行きつ戻りつしながら物語は進み、主人公の一方が政治家になった経緯、もう一方が教授になった経緯が少しずつ明かされ、そこに新たに登場する若い世代の登場人物たちが絡んでゆく。
新しい時代だが、時折上巻の登場人物が上巻の時代の価値観のままで登場しては不穏な空気を醸し出す…
今のカンボジアで生きるということは、そういうことなのかもしれない。つまり、新しい時代の顔をしてるが、古い時代の悪しき遺物がそこここに根を張って生活を支配している。負のスパイラルから抜け出すのはたいへんだ。カンボジアでNPO, NGO活動をする際の徒労感や、背徳感のない不正の横行や、悪意のないルーズな働き方の常態化など、どうしようもない状況がよく伝わった。
ちなみに、上巻のラストで袂を分かった主人公の少年少女は下巻では、老齢に差し掛かっている。上巻の最後のページまでは少年や少女だったのに、下巻の1ページ目をめくってすぐに、彼らが初老を迎えていることに気づく構成。それなりの地位にいる彼らを確認しながら、人の一生ってすごい!という気持ちになった。どのような人生を送ってそこにたどり着いたのか。人生ってあっという間だし、千差万別だし、予想もつかないものだよね…と、人生まだ道半ばの私は不思議な感覚に。日々の積み重ねがどこにたどり着くかなんでわからなくても、きちんと積み重ねていくことが、子ども時代の自分に対する誠意かなぁという気持ちになった。全然この話の本筋とは関係ないのだけれど。一生懸命生きていた子供時代の自分に、報いなくてはね…
作者のあとがきも良かったです。
半分アマチュアな時に描いた作品とのことで、今の自分にはなぜこれが書けないのか、について、作者の素直な言葉に触れた気分。このあとがきも含めて、読後感の良さがある。 -
上下巻の二部作をようやく読み終えました。
歴史小説然とした上巻は自分がカンボジアの歴史について不勉強な事もあり、重苦しい歴史の追体験も辛すぎる上、数の多さと読み慣れない名前で登場人物が覚えられず、中々読み進められず断念しそうになるほどでした…
しかしながら、登場人物達が時代のうねりに翻弄され続ける上巻を通して自分の中に蓄積された「記憶」のような何かが、下巻で2人の元少年少女の愛の物語の結びを読むためのエッセンスだったと思うと、とてもくたびれましたが最後まで読み切って良かったと思える作品でした。
著者プロフィール
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