ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.15
  • (15)
  • (18)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 161
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314064
#SF

作品紹介・あらすじ

百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する……まるで「ゲーム」のように。規格外のSF巨篇!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 上巻から50年後2020年代のカンボジアを描いた本書。

    本書からはかなりSF的要素が満載だが、いまいち著者がなにを言いたいのかわからなかった。

    主人公である二人の少年少女はもう初老の時期に入り、少女は政治家を目指してカンボジアの政権を取ろうとし、少年は研究の世界で名前をなす。

    最終的に二人がたどり着く世界は一体どうなってしまうのか。

  • カンボジアのポル・ポト政権下で不条理な抑圧、虐殺が横行するなか、天才的な頭脳をもつ少年と少女が出会う。それぞれが平和を願いながらも、進む道は分かれ対立していき…。

    上巻は、カンボジアの暗い時代をたどる重苦しい展開で、歴史小説のよう。その50年後つまり少しだけ近未来の下巻では、上巻の歴史自体が大きな伏線となって新たな物語が提示される。
    情に流されない淡々とした語りは、ときにはかなり理屈っぽくなるのだが、読みにくさはない。わき役は個性的で、土と会話したり輪ゴムで人の生き死にがわかったり、陰茎で不正を察知するなど、滑稽ですらある。
    たくさんのものがごちゃ混ぜになって、整理し切れていない部分もあるのだが、帯にある「規格外のSF巨篇」というコピーがぴったりだ。

    じつは、SF大賞という冠や「ゲームの王国」というタイトルから、ラノベ的な科学ものを想像して敬遠していた。でも、『嘘と正典』がおもしろかったので購入した文庫本、山本周五郎賞も受賞していてなかなか読み応えがある作品だった。

  •  この下巻では上巻の終わりまでに描かれていた時代から50年余りの時間が経過している。上巻では史実に基づいた部分と絡めて流れ行く時代の奔流の中で奮闘する二人の天才少年、少女の物語が時系列に沿って展開していた。打って変わって、下巻では時代的には近未来に位置しており、テクノロジーが発達しているが、政治、社会は不正がはびこるディストピア的世界観の中で進行していく。ムイタックとソリヤのゲーム対決は時を経ても続いており、次第に人生の目的自体はこの対決のためでありそれ自体が人生であったと気づく。
     下巻で登場する「ブラクション・ゲーム」は上巻でムイタックたちが考案した、楽しむこと自体がゲームの構造に組み込まれているという新たなゲームの概念の定義が形をとったものだ。最後に二人が対決するのはこのゲーム上で展開され、地味になりがちな頭脳戦がアクションシーンとして派手に描かれている。またこのゲームの構造によってプレイヤーに自然と記憶の刷り込みができるというアイデアも示唆的で興味深かった。唯一不可解な、登場人物たちの持つ突飛すぎる超常的能力の描写は、この小説を構成する文章自体がブラクション・ゲームをプレイし、ムイタックの記憶を追体験した際の脳波、P120から文書生成アルゴリズムによって出力されたものなので、記憶の細部が現在の主観によって書き換わっているというメタフィクション的要素によるものなのではないかと思った。

  • 半世紀後の近未来に舞台を移し、政権奪取を誓うソリヤとゲーム開発に勤しむムイタックの対比が描かれる。ジャンルは最早上巻と別物で、SF・脳科学・社会問題と様々な要素が盛り込まれていて興味深いが、舞台設定の華々しさに反し、人間ドラマの書き込みが圧倒的に不足しており、上巻との温度差に少々落胆。奇人変人の生態よりも二人が再戦に至る迄のカタルシスを味わいたかった。物語を小さく畳むにせよ、もっと盛り上げようはあったと思うが、その様なエンタメ志向は著者の意に反する印象。短編の方が純粋に設定や世界観を楽しめる作家だと思う。

  • 個人的には「ジワジワ効いてくるタイプ」の下巻。エンディングまでの流れが完璧すぎるせいで、終わり方があっけないように感じてしまう。

    しかしそれは、内容が濃すぎるせいでそう見えるだけで、完璧な終わり方だと気付けたのは、読み終わってから2日後だった。

    特に、幕間から始まる冒頭は素晴らしい。本編に突入する直前の台詞は鳥肌もの。実写化すると陳腐になってしまいそうな、活字だからこそ出せる緊張感に鳥肌が立った。

  • 上巻のレビューで、「登場人物は皆、愚者か狂人か天才、あるいはその全て」と書きました。が、下巻にはこれに聖者も加わりました。登場人物は皆、愚者か狂人か天才か聖者、あるいはその全て。壮大にして壮絶な、群像劇です。

    ポル・ポトの遺児であり、天才的なカリスマ性と政治的センスを持つ大人びた少女・ソリヤ。
    愚鈍な両親から生まれながらも奇跡のような洞察力と計算力を持つ潔癖性の少年・ムイタック。
    物語はこの二人がそれぞれにカンボジアの平和を目指し、しかしそれぞれの価値観の違い故に敵味方へと別れ、数十年後に再び邂逅するまでを描きます。この二人を中心に物語は進んでいくのですが、二人の内面の描写は、その天才性を際立たせるためにか、まるでテストの回答文のように素っ気なく情感を排した描かれ方で、一人の人間として感情移入することが極めて困難です。

    鴨が思うに、この二人は物語を進めるためのドライバーに過ぎず、作者が真に描きたかったのは彼らの周囲でその天才性に巻き込まれながら世界を形作っていく、多種多様な人々の姿だったのでは、と感じます。このサブキャラがまた、どいつもこいつもやり過ぎなぐらい個性的で(笑)、自分自身にしか通用しない世界観・価値観・行動規範の中に生きている者たちばかりです。彼らが互いに通じ合わない会話を続ける様は、独特の諧謔味すら感じさせ、それがまた天才・ソリヤとムイタックとの差異を強く感じさせずにいられないファクターにもなっています。

    が、そんな「個性的な凡人」たちこそが、世界を構成する主要素であり、天才同士のゲームだけで世界を変えられるわけはない・・・そんな当たり前のことを、史実と幻想を交えたこの不思議な物語の形で、小川哲は伝えたかったのかもしれません。
    SF風味は薄めですが、小説と言う創作ジャンルにおいて、間違いなく傑作だと思います。ただし、軽い気持ちで読み始めるとあっという間に置いていかれますので(笑)気力・体力ともに充実した状態で読むことをおススメ。

  • 上下巻纏めて。
    カンボジアを舞台にした壮大な物語。ジャンルとしてはSFになっているのだろうが、そういうカテゴリーを超えた、ただただ面白い本を読んだという気分だった。良かった。

  • 上巻のオビには、個人的ハズレなし国内作家部門の男女筆頭である、伊坂幸太郎さんと宮部みゆきさんの推薦文!
    これは、僕の記憶が確かなら、あの「虐殺器官(伊藤計劃)」の文庫刊行時と同じ組み合わせです。期待が高まらないわけがない。

    そんな思いで読み始めた上巻は、1950年代から60年代をささっと駆け抜け、主としてポル・ポトが率いるクメール・ルージュが支配し、不正と猜疑と虐殺が横行する1970年代のカンボジアを舞台に、終始憤りとやるせなさと苦しみが重たくのしかかるストーリーが展開されました。
    本作のダブル主演ともいえる、人の嘘を見抜くことができる少女ソリヤ、並大抵の大人を凌駕する論理的で明晰な頭脳を持ち、極度に潔癖症でもある少年ムイタック(本名ではなく"水浴び"という意味の通り名)はじめ、主要な登場人物もこの上巻で揃います。
    人民を幸せにするはずだった革命の理想を貫き、その失敗を認めたくがない故に失敗の本質を見ようとせず、革命の主導者たちが革命の同士や人民を犠牲にして血みどろのディストピアを現出させていく様は、読むのがしんどいのに読まずにはいられない異様な迫力と臨場感に溢れています。
    奇妙な縁の巡り合わせで出会い、あるゲーム遊びを通じて互いへのリスペクトを抱いたソリヤとムイタックですが、出会ったその日に革命の影響で離れ離れになり、全く異なる数奇な人生を歩むこととなります。
    そして上巻のラストには、大きな衝撃が待ち受けているのですが…

    気が急いて、カバーをつけるのももどかしく下巻のページをめくると、いきなり舞台は2023年。何ですとーーーーー!?
    「続きはどうなったの?、いや下巻は現代と回想形式の過去を行きつ戻りつの展開か?」とも考えましたが、それもしばしのこと、現代パートは現代パートで、70年代パートに勝るとも劣らぬ引き込まれ具合で一気に読み通しました。
    ラストのとある登場人物の、神への祈りの独白には、身も心もグググッと震えました。決して甘くはないけど、これ以上はないであろう納得の終わりに、ページと一緒に目を閉じて深ーい余韻に浸りました。
    エンドタイトルとしては、Simon&Garfunkelバージョンではなく、Gregorianバージョンの"Scarborough Fair"がふさわしいかな。

    中世以前ならともかく、僕が生まれて間もない頃に同じアジアの中であった出来事やのに、この本を読むまで、ほとんどカンボジアの壮絶な悲劇を知らないままやったこと、ソリヤやムイタックに対して恥ずかしい。
    そういった歴史以外にも、目まぐるしく、慌ただしくいろんなことを真剣に考えさせられる物語でした。

  • むー、後半は伏線が回収されるしドキドキするエピソードもあるんだけど、前半と同じく「よくわからない話がわからないまま終わる」感じ。

  • SFだとかSFでないだとか、ジャンル分けは正直どっちゃでもよい。「こういう話が書きたいんや…」という作者の熱量に圧倒される。しかし、万国びっくりショー(お若い方はご存知ないか?)並の奇人変人が続々と登場し、しかもこれがカンボジアというちょっと謎めいた土地柄のせいか(笑)妙に存在感というか説得力というかがあってだ、メチャメチャなんだけど迫力満点だった前編と比べると、後編は少々考えすぎというか、散漫な印象がある。正直必要性がよくわからない登場人物もでてくるし、視点がとっ散らかった感が否めない。主人公ムイタックの兄ティウン(個人的には一番共感できた人物)から見た世界がもっと見たかったかな。
    そして何より、結末の付け方、というか結論というかには不満がある。正直青臭いし、ありきたり。だが、それを差し引いても読後は大満足である。

全20件中 1 - 10件を表示

小川哲の作品

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)を本棚に登録しているひと

ツイートする