ペニス (ハヤカワ文庫JA)

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  • 早川書房 (2020年1月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784150314132

作品紹介・あらすじ

井ノ頭恩賜公園の管理人として、チャイコフスキーとともに日常を送る男は、ある日、少年の死体と遭遇する。初期長篇、復刊第2弾

みんなの感想まとめ

物語は、井ノ頭公園を舞台にした公園管理人の視点から描かれ、過去と現在、現実と幻想が交錯する独特な世界観が広がります。主人公は、幼少期の思い出と父の死という重いテーマを抱えながら、公園の中でさまざまな出...

感想・レビュー・書評

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  • 都会の中の鬱蒼とした公園、昨日も訪れた、私には馴染みの井ノ頭公園が舞台。この公園がジクジクと膿む巨大なカサブタみたい。主人公の公園管理人は、この隆起して、街に侵食の幅を広げる、カサブタの膿の中の幼児に思える。インポテンツ。私とほぼ同い年。うわぁ。

    公園管理人の「彼」にとって、井ノ頭公園全体は、幼い頃に通った「杜」と地続き。性が目覚め、そして父の縊死の果てを発見した、「杜」。この「杜」を「彼」は局部に飼うことになったのだろう。

    終始、迸るような勢いの筆致に放心。鬼気迫る言葉に、心身が弄ばれた。取り扱い注意。

  • 双葉文庫版(https://booklog.jp/item/1/457550923X)を既読なのだけど、『妖都』と同じく、復刊してくれたハヤカワ文庫さんに感謝の気持ちで購入再読。

    主人公は50歳男性、井の頭公園の管理人分室で一人で働いている。ある日、いつものように仕事をさぼって風俗へ出かけ(でも不能)さらに酔っぱらって戻ってくると、管理人室の使っていないロッカーから見知らぬ少年の死体が出てきて…。

    これをミステリーとしては私は読まないけれど、最終的にミステリーとしての辻褄は一応きっちり合うようにできているのがすごい。個人的には最初に読んだときより悪夢感が強かった。目覚めて冷静に考えたらどう考えてもおかしい行動を、夢の中ではそれが当たり前のようにとってしまうあの感じ。そもそも殺したわけではない死体をみつけたら警察に連絡すればいいだけなのに、主人公は信じられない行動をとる。

    公園にいる兎に餌を与えたがる老人たちと、犬を散歩させている自称小説家との攻防、理不尽なクレーマー、公衆トイレのテノール歌手、公園をねぐらにするホームレス、少年からの虐待を訴える少女ウッチェロ。そして管理人をなぜか「イワミさん」と呼び一方的な電話で自分語りを繰り広げるメグミという女。(このくだり不条理劇の戯曲のよう)やがて少年を探す母だという女が現れ、本物のイワミも姿を現す。

    これらの一応現在進行形の筋書きの合間に、ひたすら主人公の性的な体験の回想と妄想が織り込まれている。同級生の女の子、友人の姉、作家を目指していた頃の女性編集者、女性ホームレス、誰に対してもこの男のしたことはおよそ正常とは言い難いが、その根底には彼自身が同じ目にあわされたいというそこはかとないマゾヒスティックでホモセクシュアルな願望が見え隠れしており、最終的にそれは一種の成就をみる。他者との交わりに交歓はなく、ただただ欲望のはけ口としての自己完結的な性欲の結果として、この男が懐胎したものの正体は…。

    タイトルからも察しの通り、とにかく性的な描写(しかもロマンチックとは程遠い不潔で暴力的)が多々あるのだけれど、それほどポルノグラフィックな印象は残らず、その不毛さが、ひたすら物悲しい。主人公のイマジナリーフレンドとして現れる「ジミニー・クリケット」(名前はピノキオのコオロギだが見た目は違う)や、ウッチェロの登場シーンはなんだか可愛いし幻想的で好きでした。3月は大好きな『少年トレチア』復刊!楽しみ。

  • 2025年1月28日、グラビティの読書の星で紹介してる人がいた。吉祥寺が舞台といい、タイトルといい(どストレート)、ぜひ読みたい。すごく古そうな装丁だけど、2020年か。

    「過去と現在、妄想と現実、亡者と生者、が行き来して浮遊しながらウゴウゴと事が起きて、もう色々とめっちゃグロい。だけど津原さんの文章に引き込まれて読み進める事ができた。すっごい消耗したけど、、、間違いなく幻想小説の大傑作!ただ万人におすすめできない。タイトルがタイトルなだけに、内容もかなり人を選ぶと思う。#読書 #読了 」

  • 眼前の現実は1つだ。それをぼくは腑分けして「男/女」「生者/死者」「現実/幻想」「事実/虚構」というように分類している。ならばこの異様なテンションに満ちた作品は、そうした分類された・秩序正しい世界に慣れきったぼくの「寝首を掻く」ものではないか。実際にこの作品を読み進めると、ある箇所から常識/安寧を揺さぶるできごとが矢継ぎ早に起こり始めこちらをたじろがせる。批評的な読解をほどこせるほどぼくは賢くないが、著者はそうした「揺さぶり」を通して何もかもが溶け合った、「1つ」だった世界の実の姿を見せんとするかのようだ

  • タイトル通り、あまりにも直球に物語は主人公が風俗店に行くところから始まる。しかもピンサロである。しかし不能 なのである。

    主人公の取る奇抜な行動のどれをとっても、現実ではやらんやろ、と思うものなのだけど、20年後、30年後の自分の姿としてありえないものではないのでは、と頭の片隅で感じてしまう。「石を投げなさい」のあれに近い感覚を感じた。
    舞台がたまたま自分が住んでいる近くの吉祥寺ということもあるのか、リアルさを越えてグロテスクであった。

  • 『妖都』に続き、本書も復刊(来月には『少年トレチア』も復刊されるので楽しみだ)。
    久しぶりに読んだけれど、予想以上にしっかりと内容を覚えていた。最初に読んだ時、まだ若かったというのもあるだろうが、余程、鮮烈な印象が残っていたのだろう。特に終盤は圧巻。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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