- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150314200
作品紹介・あらすじ
SFマガジンに掲載された「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」をはじめとした、SF界若手最注目の奇才による六篇収録。
感想・レビュー・書評
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「横浜駅SF」のヒットを機会に短編の依頼があり、「たまったら短編集を出しましょう」ということでできた本がコレ。
2017年~2019年の5作品と作家デビュー前の2014年の1作品を纏めている。
何年か前に、中国で「社会信用スコア」と言って個人の信用力を数値化しているニュースを見たが、
『たのしい超監視社会』はそれに似た社会を描いた物語。
個人は点数化されており、点が高いほど快適な生活ができる。
他人の反政府的な言動を通報することでも信用値が増える。
つまり、国民が国民を監視する社会を描いたもので、コロナ禍ではいたる所に自粛警察が現れたがそれに近いものがある。
『人間たちの話』は、この短編集のための描き下ろしで宇宙生命定義の話。
『宇宙ラーメン重油味』が面白かった。地球人とは異なる組成の体を持つ宇宙人が客として来るラーメン店の話。
本書のタイトルの「人間」とは「地球人」のことだと気づかされる。
『記念日』は、30歳の誕生日に突然部屋の中に現れた巨大な岩の話。
主人公は30歳の一人暮らしの男性だが、岩と生活していて家族のある暮らしが少し理解できるようになる。
『No Reaction』は、透明人間の話。これがデビュー前の作品。
「ぼくは自分の顔を知らない。」とか「自分以外の透明人間を見たことがない。」なんて言ってる。
そもそも透明人間がいるとしたら、光が体を透過するので、目が見えない(網膜が光をとらえられない)はずなんだけど、、、
まあ、それでは物語にならないので他人からは自分が見えない透明人間が人間の行動を観察する。
「人間」のことを「不透明人間」と表現して、他者がいる時とは違う一人でいる時の行動を揶揄したりしている。
柞刈湯葉さんの作品は、「まず牛を球とします。」に続いて2冊目だが、発想が奇抜で面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アンソロジーで知り気になってた作家。思っていたよりとっつきやすくて安心感。設定がどうとかいうより主人公たちに好感持った。6篇とも楽しかったが『人間たちの話』『宇宙ラーメン重油味』『記念日』が特に好き。作者あとがきも良い。
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ハイ!
お気に入り柞刈湯葉さんです♪
柞刈作品を読むたび、発想力の凄さと文章の面白さを楽しんでます
本作は全6篇を収録
『冬の時代』
舞台は一年中雪に覆われた細長い島
ゲノムデザインによって生まれた寒冷化適応の人口動物たちと、人間の都市の遺物と、氷平線の果まで続く雪原
もしかすると何十年、何百年、何千年先の日本列島の姿かも…
『たのしい超監視社会』
相互監視制度を導入し、相互に私生活を監視し、反体制的な言動を報告すると、した側の「国民信用値」が上がり、された側は下がるという楽しい監視社会を迎えた…
『人間たちの話』
宇宙生命とのファースト・コンタクトは探査機による発見ではなく会議による認定だろうという宇宙生命SF
『宇宙ラーメン重油味』
太陽系外縁部で営業しているラーメン青星
店主はキタカタ・トシオ(地球人)
従業員はジローラモ・インダストリー製自立式二脚戦闘機「LOVE&PEACE」重火器マシマシ装甲硬めモデル(殺戮兵器)
ソフトボール大の透明球体「マルチャン」(正体不明)
お客は消化管があるやつは全員
とにかくすごいラーメン屋w
『記念日』
マグリットの「記念日」という絵をググって見てください
そんな話ですw
『No Reaction』
あなたのなりたいものは…?
健康な男子中学生がなりたいものと言えば「透明人間」と決まっている
けど、透明人間はみなさんがイメージしているのとはちょっと違って案外大変かも…
一番のお気に入りは『宇宙ラーメン重油味』かな^_^
ラーメン青星行ってみた〜い!
みなさんも柞刈ワールドにハマってみませんか?-
あゆみりんさん
理解できない…
わかりますw
初めて読んだ著者の作品が『まずは牛を球とします。』なのですが、何だこれって思いましたw
けど、...あゆみりんさん
理解できない…
わかりますw
初めて読んだ著者の作品が『まずは牛を球とします。』なのですが、何だこれって思いましたw
けど、それがツボにはまって気に入っちゃいました!2023/06/16 -
ゆーき本さん
監視社会にもいくつか抜け穴があるみたいですw
全国180万人の男子中学生の願望の具現体となった透明人間の主人公ですw
けど、...ゆーき本さん
監視社会にもいくつか抜け穴があるみたいですw
全国180万人の男子中学生の願望の具現体となった透明人間の主人公ですw
けど、透明人間って結構不便みたいです…w2023/06/16 -
ほん3さん
ゆばさんです!
ゆばワールド全開でしたw
本作はうちの図書館にも置いてなかったので取り寄せてもらいました( ̄ー ̄)ニヤリ
このゆ...ほん3さん
ゆばさんです!
ゆばワールド全開でしたw
本作はうちの図書館にも置いてなかったので取り寄せてもらいました( ̄ー ̄)ニヤリ
このゆば本もぜひ見つけてみてください♪
良かったですよ〜!2023/06/17
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初めて読んだ作家さんだが面白かった。表紙のイラストも良いし、雰囲気合ってる。楽しさと淋しさと、明るさと難解さと、情緒と理性と…、「相反する」というほど単純でない何かと何かが不思議とよく混ざった滋味深い味。でも(「でも」ってどういうことだと思いつつ)令和風。
■冬の時代
意外に爽やか。良い滑り出しだ。ヤチダモ、エンジュ、ガジュマル。
■たのしい超監視社会
ディストピアものだが明るい。しかし、うすら怖い。
■人間たちの話
なんかわかる。
■宇宙ラーメン重油味
たのしい。
■記念日
おー、記念日かあ。読み終わってみてタイトルが沁みる。三十才、家族か。
■No Reaction
ポップだが孤独。 -
「冬の時代」(寒冷化した未来の日本を橇を引いて旅する二人)、「楽しい超監視社会」(反体制活動を密告するとポイントが貰える、ゲーム感覚の相互監視社会、"1984"のパスティーシュ)、「人間たちの話」(国際会議の投票で決まる、宇宙生命との地味なファーストコンタクト)、「宇宙ラーメン重油味」(宇宙人向けにむちゃくちゃなラーメンを出す〈ラーメン青星〉)、「記念日」(研究者が住むアパートの部屋に突然巨大な岩が。マグリットの「記念日」に触発された作品)、「No Reaction」(この世界に何の作用も及ぼせない透明人間中学生の独白)、の6つのSF短篇を収録。
味のある作品が多かった。「人間たちの話」と「記念日」は特に良かったな。どちらも、風変わりな(孤高の)研究者のルーティーンが乱される話。他人(他物)とふれあうことで、研究者の心情に変化が訪れる、というオチ。この作品を読んだ後、グリットの「記念日」をネットで見た。あまりにピッタシで納得した。 -
まあまあ面白かった。ただ、やっぱり短編が苦手(主観)、なんというか短すぎるのって、居酒屋で出てくる不必要な突出し(おちょこに1杯ないぐらいの量のやつ)ぐらいの物足りなさというか、、。もちろん短くてもみっしりと面白いのもあるんだが。読みノってきたぐらいで終了するので、スーンとなるのだろう。
冬の時代
たのしい超監視社会
宇宙ラーメン重油味
記念日
No Reaction
表題の『人間たちの話』が一番面白かった。ゾワっと怖い。
『記念日』の中で、”うるかす”という語句がでてきたので、やはり作者は北海道か、東北の出身者なのかと思った(どうでもええんだが)、以前読んだ大学生の話でも、福島県の出身という設定であったが、横浜駅SFにしても、西日本よりも東日本、というか北日本についてのほうがリアリティがあるような印象を受けた。これで、実は九州出身とかだったら驚くねぇ。ラーメンはとてもビジュアル的で素晴らしい。 -
「これ、重油だよね?」
「ええ。疎水性体質のお客さんにいいと思いましてね」
「やっぱりなあ。ガソリンじゃ味が軽すぎると思ってたんだよ。うれしいなあ」
という、太陽系の片隅に浮かぶなんでも作ります系ラーメン屋の短編『宇宙ラーメン重油味』ほか5篇収録。
コンセプトは奇書だけど内容は堅実な技術系SF小説、「横浜駅SF」の著者イスカリユバ先生の初短編集です。
元大学教員らしい(?)理屈っぽさが魅力の作家さんです。
宇宙ラーメンが一番好き。
いろんな異星人に飯を食わせるお話。
「たのしい超監視社会」
テクノロジーで一挙手一投足がすべて監視されている社会で、それが普通のこととして生まれ育っている若者たちが楽しく生きてる話。
路上で突然始まる「三分間ヘイティング」で敵対国家のヘイトを叫ぶ群衆には憎しみの感情はまったくなくて、単にゲームとしてそれをやっていたり。
「冬の時代」
全球凍結してるっぽい未来の地球を旅する二人の少年の話。二人が旅の途中で自律移動している車の中で冬眠している女の子を発見して…特になにも起きず(起こしたりせず)旅が続くのが好き。いやそこから物語が始まるんじゃないのか!ってとこで終わる。もっと読みたい。
「人間たちの話」
表題作にして一番長いお話だけど上手く消化出来なかった。
また読み返したい。
「記念日」
ある日自宅に帰ると部屋の中央に大きな岩がある。ただそこにある岩と共に暮らすシュールSF。ルネマグリットの絵画「記念日」を検索して横目に読む短編。
「No Reaction」
世界と全く相互作用を及ぼすことのできない真の透明人間が主人公。初期のネット投稿作っぽさが今の作品と少し違う雰囲気になっている。
自分から触ったり見たりすることは出来るが作用反作用もなく視覚以外のなにものによっても知覚されない彼は実存的存在なのか。それは読者のみぞ知る。 -
ライトな読み心地のSF短編集。
全体的に面白かったですが、ジョージ・オーウェルの「1984年」をパロってコメディチックにした「たのしい超監視社会」、"消化管があるやつは全員客"をモットーの店主が営業する「宇宙ラーメン重油味」火星の新生命を調査する科学者を文学的な表現で描いた表題作がお気に入り。
個人的にですが、表紙のあらゐけいいち先生のイラストが可愛いくて好きです。読書中もキャラの造形があらゐけいいち先生のイラストで脳内再生されていました。 -
柞刈湯葉さん、初読。
理系の人の思考回路って、こんなかな…という面白さだった。
「冬の時代」
ご本人による解説で椎名誠さんの作品への言及があり、あーなるほどと思った。過酷な環境下でも淡々と旅を続ける、どことなくトボけた空気の野郎ふたり、って味が…
「宇宙ラーメン重油味」
宇宙人向けのラーメン店に、とんでもない客が…という話。消化管のある奴は全て客!あらゆる宇宙人の嗜好に合わせたラーメンを提供するぞ!というのが面白い。
「ゑゐり庵」が、どんな宇宙人相手でも日本蕎麦!なのとは対照的なこだわりの一杯ですな。
「たのしい超監視社会」
あー、なんかもう、ありそう。ディストピアっぽいのに、なんだかんだで適応して楽しくやってる人々。噂話と覗き見が大好きな人には、本当に楽しそうだ。
私はあっという間に評価下がりそうだ…
「記念日」
結局、謎の巨岩についての謎解きもなく、中から美少女が出てくるとかでもなく、謎のまま部屋の中にある物体。シュール。まさにマグリット的。
でもなんだか、ホッとする一編。
…感想を書いてたら、やっぱりかなり面白がっていた自分に気づいた。
次の作品も、もっともっと読もう!という感じではなく、ちょっと珍味というか、たまたま見かけたらつい手に取りたくなりそうな、不思議な味。
短編なのも良かった気がする。
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どの短編も割とガチなSF作品にも関わらず、そのどれもが読みやすく、いい意味でびっくりしました。本当に面白かったです。
中でもお気に入りは「たのしい超監視社会」「宇宙ラーメン重油味」の2作品。特に1984年の同人的立ち位置のたのしい超監視社会は、まさかこんな方向に突き進むとは思わず、爆笑しながら読んでしまいました。と同時に、現代はオーウェルが思い描いたものとは別の監視社会であるというメッセージにはハッとさせられるものがあり、色々考えさせられもしました。