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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784150314460
作品紹介・あらすじ
忽然と消えた依頼人を探すうち、沢崎は金融絡みの事件の渦中に……。「伝説の男」の復活に読書界が沸いた話題作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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原尞『それまでの明日』ハヤカワ文庫。
私立探偵・沢崎シリーズの第6作。もはや続篇は無いだろうというくらい前作の刊行から長い年月が過ぎている。読み始めて、そうだ沢崎という探偵が主人公で元パートナーの渡辺から引き継ぐ形で探偵事務所を続けていたんだ、などと本筋から外れた些細なことを思い出した。
今や古典とも言われるようなスタイルのハードボイルド小説。著者がこのスタイルを頑なに守っているのが嬉しい。複数の登場人物の思惑や欲望が複雑に絡み合い、単純な事件を一層複雑怪奇な事件に仕立て上げるのだが、探偵の沢崎はその一つ一つを解きほぐすように真実に迫る。久し振りにハードボイルド小説というスタイルで感情を揺さぶられるような素晴らしいストーリーを堪能した。
或る日、興信所からの下請け調査中の私立探偵・沢崎の元を金融会社の支店長・望月皓一が訪れ、融資予定の料亭の女将の身辺調査を依頼する。しかし、沢崎が望月なる男と会うのはこれが最初で最後だった……
という淡々としながらもリズミカルな滑り出しだけで、充分に事件を予感させる。
その後のリーダビリティあふれるストーリーは読んでのお楽しみ。一つだけ明かすなら、この物語は2011年3月11日の14時46分で終わることだけを書き添えておきたい。
文庫版に「著者あとがき」を収録。
本作のような、私立探偵と馴染みの警察に暴力団、同業の探偵が登場するという設定は、関川夏央と谷口ジローの傑作『事件屋稼業』にも似ている。探偵が軽口を叩きながらも事件を解決してしまう辺りも『事件屋稼業』を彷彿とさせる。いずれ、遠い昔となった昭和の時代を感じさせる設定である。
本体価格900円
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ヘビースモーカー探偵沢崎にもう会えないなんてこんな寂しい事はありません。13年ぶりの新作を堪能させていただきました。おきまりの作風に読む手が止まらず一気読みでした。探偵沢崎よ永遠なれ!
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2018年、私立探偵沢崎シリーズが14年のブランクを経てまさかの復活。そして文庫になるのを待っていた一冊。もう嬉しさのあまりの涙モンです。
沢山の登場人物に、複雑に絡み合うプロット、それを繋ぎ止めるのが、我が道を行く沢崎、相変わらずのセリフまわし、一癖も二癖もある警察にヤクザのお仲間(?)たちがワキを固める。原りょうの描くハードボイルドは健在です。堪能。 -
面白くないわけではないが、ページをめくるスピードはあがらなかった。話のテンポが悪い。さらに、具体的には何がなのかわからないが、古臭い。ハードボイルドの文体が持つスタイリッシュな魅力が薄い。
東日本大震災前後で、この国の有り様を大きく変わってしまった。震災以前の世界を意図的に古臭く描いているのだろうか?それとも著者が老いたのか? -
流石の文章力。
10年待った甲斐があったよ。
続き、出て欲しいなぁ。 -
オールタイムベスト級の評判がある”私が殺した少女”を読んだのが5年前。当然、今とは視点も違っていたはずだけど、その時点での自分にとって、イマイチだったという印象。以降、同シリーズを更に追い求めることなく、今まで経過していた。本作は、このミス受賞作ってことで、半信半疑ながら手に取ったもの。受賞を聞いたときには、正直、『ベテランの久しぶり作品だからってことで、サービス授賞ちゃうの⁉』と思ってしまい、今回の文庫化に当たっても、悩んだ挙句、入手したというのが実際の経緯。でも、そんな不埒な気分で臨んですみませんでした!読み始めてすぐにそう思わされるくらい、圧倒的力作だった。慣れかもしれないけど、苦手なハードボイルド色も強くないと感じたし、謎の提示とかひっくり返し方とか、いちいち秀逸。実は、ここまで寡作であることも知らず、となると全読了も難しくないし、今は是非とも全部読み通したいという気持ち。先入観って、ダメですね。
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毎度お馴染みの登場人物達と沢崎との掛け合いがいくつシリーズを跨いでも面白い!ストーリー自体は安定のハードボイルドだが、意外な結末には要注意。
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久しぶりの作者の本を一気読みした。レイモンドチャンドラーが好きで殆ど読了した。原氏の作品に同じ匂いを感じていて、彼の作風のベースのひとつかなと思う。ご冥福をお祈りします。
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ボロ事務所からの立ち退き依頼や家族の話、執筆時の作者の年齢から、シリーズを終わらせるつもりで書いてるのだと思って読んでた
だからあとがきの「それまでの明日」に込められた想いをしって胸が詰まる、、、
もっともっと沢崎の減らず口を聞いていたかった
最後の章を読むまでは、携帯電話が出てきたとしても、どこか自分の時代より前の話のつもりで読んでたから衝撃だった
急に自分ごとになって、作者の思うツボだなって -
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前期長編2作=読者の知らない謎解きを行なう探偵、推理小説→プロットが複雑で分かりにくい、読みにくい?
読みやすい
沢崎の錦織への対応=職業、探偵
海津への対応=素の沢崎?
年寄の性格、人当たりがみんな丸くなった。出てくる言葉は変わらないが=老化
以下、引用。
●田島は柄にもなく悲しそうな表情をみせた。
「おれのことはともかく、課長には嘘をつかないほうがいい。あんたたちのあいだにどういう経緯があるのか知らないが・・・・・・署の先輩たちに訊いても、誰もそれを知っている者はいないようだ。こうまでこじれた間柄になるような、いったいどんな経緯があるんだ?」
「それを聞いたところで、おれたちの大人げない態度に納得はしない」
「だったら、なんでそんな態度をやめようとしないんだ?」
「習い、性となる”というやつだ」
「はた迷惑な話だ」
「ほうっておくか、むしろ面白がるべきだな」
「あんたたちは面白がっているのか」
私は考えてみた。「そんなことはないな」 -
ごちゃごちゃし過ぎ
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気になっていた作家の一人。新聞の書評でみていたが本作だが昨日、何気なく図書館で手に取り読み始め、先ほど読み終えた。偶然とは言えこのタイミングで本作に出会えたことに感謝。
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著者あとがきによれば、すでに続編『それからの昨日』が構想されていたという。なんてことだ!原さん、あんたはまだ死んじゃダメだ!
思いっきり個人的主観が入っているが、日本人なら、チャンドラーよりこっちから読んだほうがいいかも。名作。 -
3.3
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原りょうが亡くなったことを先日知って、そういえばまだ読んでない最後の一冊があったなと本棚の奥から引っ張り出してきた。学生の頃日本のハードボイルドはほとんど読まなかったのだが、それもつまらぬバイオレンスや無駄なアクション、カッコつけるだけのシーンやセリフ、私が読んだのはそんな話ばかりで日本人に期待するのは無理だと考えていたときに彗星の如く現れたのが原りょうだったのだ。
そしてあまりの遅筆ぶりに最後の一冊を取っておいたのだ。それがこれ。私立探偵の沢崎に依頼してきたのは金融会社の支店長。融資先の料亭の女将の身辺調査を頼まれたのだが、女将は既に亡くなっていた。支店長に会いに行くと、そこに強盗が押入り…。更に依頼人は行方不明に。話はどんどん展開していく。原りょうの面白さは、ヒューマンドラマ的な一面にある。登場人物のやるせない人生に共感してしまうのはその文章力にある。沢崎も50歳を過ぎ、息子のような海津と出会い、謎の依頼人と語りあう。もうそのあたりまで行くとトリックや犯人は誰かなどどうでも良くなって、ただ登場人物たちの人生に共感し涙するのだ。そしてそんな素敵な小説を書いてくれて作者のご冥福を祈るのである。 -
後輩が読んでもやもやしたときいて購入。
初めて読む著者。どうやらシリーズ物で14年ぶりの新作とのこと。
ハードボイルド小説というものをおそらく初めて読んだ。
なるほどと思いつつ最後の震災落ちがダメ押しで理解を阻めてきた。 -
正直に言うとシリーズを読んできたからの加点はあるし、実際シリーズを読んできた人への本だと思う。
そして沢崎シリーズをもう一度読み直したいと思った。 -
ハードボイルドって読むの久しぶりだな〜と思いながら読んでで、最後後日談までそんな別になくてもいいのにな〜と思いながら読んでで...
最後のオチのつけ方は正直気ぃ悪い。
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