信長島の惨劇 (ハヤカワ文庫 JA ジ 13-1 ハヤカワ時代ミステリ文庫)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 215
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150314620

作品紹介・あらすじ

本能寺の変の後、謎めいた島の館へと招かれた羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、徳川家康の4人は、一人また一人と殺害されていく。

感想・レビュー・書評

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  • アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品。

    本能寺の変の十数日後、死んだはずの信長からの招待状が羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、徳川家康に届く。彼らは招待状に書かれた通り、三河湾に浮かぶ小島<信長島>を訪れる。そこには饗応役として本能寺の変で死んだ筈の森蘭丸、信長の忠僕・弥助、光秀の娘・玉、そして茶人の千宗易もいた。
    信長に対してそれぞれ後ろ暗いものを抱えている四人は、なかなか姿を表さない信長に焦れていくがそんな中で第一の殺人が起こる。それは本能寺の変後、今日で流行り始めた奇妙なわらべ唄をなぞるかのような死に方だった。

    トンデモ設定なのに面白かった。途中、島内の建物の図が出てきたりして本格物っぽくなるのかと思っていたら、やっぱりトンデモミステリーだった。
    設定より気になっていたのが四人が抱える「後ろ暗い」事情。柴田勝家と羽柴秀吉は見当が付くものの、高山右近と徳川家康については半分しか分からなかった。

    序盤に本能寺の変に行き着くまでの事情がざっと描いてあるが、ここにすでに手がかりはあった。まるである映画のようなワンシーン、なるほど。

    四人がみんな殺されてしまっては歴史通りにならなくなってしまう…という心配も必要なし。
    清州会議までにきちんと決着がつく。これまたトンデモ決着だけれど。
    それでもきちんと歴史通りに収めたところは作家さんのうまいところ。ある伝説も上手く利用している。
    読み終えて巻末の補遺を読むと、奇妙な納得感が湧く。
    ミステリーというより、こんな設定をどう上手く歴史通りに収拾するのかということを楽しむ作品。

  • 楽しかった一冊。

    まさか歴史上の人物と孤島に行けるなんて。
    しかもオマージュを体験できるなんて。

    時は本能寺の変から十数日後。信長からまさかの招待状が届いた。
    ドキハラで島に渡った秀吉、家康ら四人の武将。

    しかも「余は知っておるぞ」という意味深な招待状末尾の言葉に冷や汗たらたらの彼らとお決まりの殺人事件ににこちらはワクワクがいっぱい。

    みゃあみゃあ探偵がちょっとうるさいけど、そんな馬鹿ななツッコミも跳ね除け武将たちの逸話も使いきちんとミステリに持っていくってすごい。

    奇抜な発想、遊び心いっぱいのむふふな時間って楽しい。

  •  なかなか面白い。織田信長が本能寺で明智光秀に討たれて十数日後、羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、徳川家康に信長から書状が届けられる。三河湾に浮かぶ小島に一人で来いと。

     そこで、わらべ歌にそって連続殺人がおこる。クリスティーの「そして誰もいなくなった」のオマージュだ。信長に呼ばれた4人の武将の思惑がそれらしく描かれているところがミソか。ラストも上手くまとめており、楽しめるミステリーとなっている。

  • 本書との出会いはブクログ!


    本能寺の変とその後の謎
    ・信長は本当に死んでいたのか?
    ・その後の光秀に勝算はあったのか?
    ・秀吉の中国大返しは何故あんなに速かったのか?
    ・徳川家康の軍師 天海入道の正体とは?

    色んな作家が挑戦する歴史ミステリーの定番ですが本書は本能寺の変のミステリーにも触れながら、絶海の孤島で繰り広げられる本格ミステリー!?

    メンバーが超絶豪華!!!

    豊臣秀吉、徳川家康、柴田勝家、高山右近!!
    そして、細川ガラシャ、森蘭丸、弥助と千利休!!?

    本能寺の変の後の山崎の戦い以降、清洲会議前のタイミングで、明智光秀により弑虐されたはずの織田信長より上段の4人が三河湾に浮かぶ島に呼び出される!?
    下段の4人は死んだ筈の信長より、上段の4人の接待を命ぜられる???

    死んだ筈の信長が生きているのか死んでいるのか、疑心暗鬼に苛まれる招待客達の最初の晩餐で犠牲者が・・・

    アガサクリスティのそして誰もいなくなったのように、次々と死んでいく招待客達・・・

    思わず『清洲会議大丈夫?』と思ってしまいました?



    歴史の知識とミステリーの要素が複雑に絡み合う新訳本能寺の変!

    気になる方は是非お読みください!!!



  • 本能寺の変にて死んだはずの織田信長を名乗る書状が、羽柴秀吉、柴田勝家、高山右近、そして徳川家康の元に届く。三河湾の小島に一人で来るようにと。
    信長の死に対して何らかの負い目のある彼らは不審に思いながらも招待に従う。
    そして、京で流行りだした童歌の歌詞の見立て通りに島では殺人が起きる。
    アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」へのオマージュ作品と銘打った時代本格ミステリー。6年ぶりに発売されたこの時代小説がすごい2022年版で4位にランクイン。
    4人の武将の特徴が手く書き分けられストーリーに没入する。
    本能寺の変に対して、驚愕の真相が待ち受ける結末。んな訳あるかい。さもありなん。フィクションならではの面白さ。

  • 織田信長と周辺人物+『そして誰もいなくなった』っていう素っ頓狂なテーマがもう最高だよね。
    各登場人物のキャラ付けはだいたい大河ドラマとかに出てくるときのそれと近い感じだからすんなり受け入れやすく、でも逆に「この武将ならこう考えて動くはず」ってイメージが若干ミスリードを誘う部分も?
    基本的にはバカミスかつ超解釈歴史ものなのに、最後の最後で本来の歴史の流れに無理やり合流させるのずるすぎるw

    オチの部分でミステリとしては掟破りなトリックがあったりもするけどそもそも設定自体がトンデモだから割とすんなり受け入れられてしまった……。

  • 戦国時代版『そして誰もいなくなった』!
    その上、あの仕掛けが最高だった。
    本能寺の変で非業の死を遂げたはずの信長公から届いた無人島への招待状って設定が素晴しい。
    集められたのは柴田勝家に豊臣秀吉、徳川家康、高山右近。
    実は、そうじゃないかと思っていたのが当たっていて大きくガッツポーズw
    もしや?いや、まさか?とか思っちゃった私ってすごーい。
    あれを、あんなふうに見事に生かした作品がもっとすごいのは言うまでもなく。
    なんか変じゃない?な伏線がきれいに回収されるって本当に快感。
    補遺までが作品というのも好き。

  • 本能寺の変のわずか十数日後。
    死んだはずの信長から届いた書状で
    はなれ小島に集められた武将たち。
    本当に信長は生きているのか?
    何のために召集をかけたのか?
    書状に書かれた「余は知っておるぞ」の文字。
    疑心暗鬼でお互いの出方を探る彼らだったが
    ひとり、またひとりと死んでいく…。

    おお〜。
    登場人物と舞台こそ戦国時代ですが
    内容はバッチリ『そして誰もいなくなった』

    私が知っている程度の歴史の知識でも
    信長と光秀の確執や
    秀吉、家康、勝家の腹の探り合い
    右近やガラシャの邂逅など
    実はこういうことだったのではという
    歴史の「if」まで楽しませてもらいました。

  • 本能寺の変後、信長を名乗る何者かによって無人島に集められた武将たち。それぞれに秘密を抱えた彼らはやがて、わらべ歌になぞらえるようにして順に殺されていく……と、「そして誰もいなくなった」シチュエーションなのは言わずもがな。犯人は誰なのか、果たして信長は本当に生きているのか、いやそもそも本能寺の変はなぜ起こったのか、などなど謎がいっぱいの歴史時代小説にして本格ミステリです。これが史実だったらめちゃくちゃ面白い(笑)。
    あまり日本史には詳しくないのですが。それでも充分に楽しんで読めました。お勉強にも……なるかも? ミステリとしてはもちろん楽しくて仕方がありません。謀略に次ぐ謀略、そしてすべての真相は……そんなのありですか! さすが田中啓文さん。どこまでも笑わせてくれますが、ミステリとしては筋が通ってるので本格なのは間違いないです。

  • 本能寺の変を題材に、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」にオマージュを捧げたミステリ。
    戦国時代、本能寺の変に関わりのある武将や人物を登場させ、「実は本能寺の変では…」という設定で現在、一般に知られている当時の武将たちの性格をうまく利用し描かれている。「そんなことはあり得ない」と誰もが理解しているが、それでも「最後はどのような結末になるのだろう」と先を読まずにはいられなくなる展開だ。
    暇な時に、さらりと楽しめる一冊。

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著者プロフィール

1962年大阪府生まれ。神戸大学卒業。93年「凶の剣士」で第2回ファンタジーロマン大賞佳作入選、短篇「落花する緑」で「鮎川哲也の本格推理」に入選しデビュー。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第62回日本推理作家協会賞短篇部門を受賞。ミステリー、ホラー、伝奇と様々なジャンルで活躍し、時代小説では「鍋奉行犯科帳」「浮世奉行と三悪人」などのシリーズなどがある。

「2023年 『貧乏神あんど福の神 秀吉が来た!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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