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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784150314811

作品紹介・あらすじ

小川一水、北野勇作、菅浩江、津原泰水、飛浩隆、林譲治らベテランから、小川哲、高山羽根子、藤井太洋ら新鋭まで豪華19作家競作

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

多様な視点からアフターコロナの世界を描く19篇の短編が収められた本書は、SFファンにとって新たな発見の場となるでしょう。著名な作家から新鋭まで、各作家が独自の切り口で人類とパンデミックをテーマにした作...

感想・レビュー・書評

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  • ○○洋子さんという同窓生がいた。
    小川某氏と結婚して "小川洋子" になっていた。
    これだけでも、「おおっ!」となるが、
    男の子を産んで "哲" と命名していた。"小川哲"。
    凄い名前の親子だと思うだろうが、なんと "哲" 君は、あの "小川哲" だった。

    つい最近そんな事実を知り、読んでみようと思ったのが本書。
    エッセイがあれば読みたかったのだが、まずは短編に触れて作風を知ってみようかと。
    小川哲さんに加えて柞刈湯葉さんの名前もあったので、この二人の作品だけでも読んでみようと思った次第。
    本書の19名のSF作家さんのうち、名前を知っているのはこの2名だけだった。

    小川哲さんの作品は「黄金の書物」というタイトルで一番目に登場する。
    とても読み易く、面白かった。
    こういう感じの作品は好きな部類だ。

    小川哲さんは、まだ若いのに、日本SF大賞、山本周五郎賞、直木三十五賞などを受賞している。
    私が最も信頼している本屋大賞でも『君のクイズ』が6位と、一般読者にも受け入れられているようだ。

    読みかけの本や、読みたい本は沢山あるのだが、どこかにねじ込んで、
    『君のクイズ』と『君が手にするはずだった黄金について』は読んでみようと思う。

    本書はまだ小川哲さんの作品しか読んでいないが、それが目的だったのでレビューを上げておく。
    なので、評価はなし。読書状況はズルして読み終わったにしておきます。

  •  19の短編からなるアンソロジー。編者が既存の作品から特定のテーマに沿って集めたものではなく、19人のSF作家が人類とパンデミックをテーマに書き下ろしたもの。予めテーマが決められているせいか、駄作と言えるものは入っていない(と思う)。
     パンデミックを描いた小川一水氏の「天冥の標2 救世群」を読んだ後だけに、興味深く読めた。

  • 「ポストコロナ」がテーマの書き下ろしSFアンソロジー19篇。

    かなり時間がかかりましたが少しずつ進めて読み切りました。535ページ、贅沢な内容です。価格のことは普段は口にしませんが、これで1166円!?という贅沢さです。

    個人的に印象に残ったものの一言感想。

    小川哲「黄金の書物」…運び屋のプレコロナとアンダーコロナ。
    伊野隆之「オネストマスク」…最後に出てくるマスクが欲しい。
    高山羽根子「透明な街のゲーム」
    柴田勝家「オンライン福男」
    若木未生「熱夏にもわたしたちは」…可愛い日常百合SF。少女には幸せが似合うな。コロナ下でも子供は幸せであってほしい。
    柞刈湯葉「献身者たち」…国境なき医師団in中東。天使のような目で医師を見た看護師が行きついたのは人体実験。
    林譲治「仮面葬」…閉鎖社会といじめ。
    菅浩江「砂場」…飛沫感染ではないウイルスと子どもの遊び場。
    津久井五月「粘膜の接触について」
    立原透耶「書物は歌う」…ポストコロナと図書館。ファンタジー色強め。
    飛浩隆「空の幽契」
    津原泰水「カタル、ハナル、キユ」
    藤井太洋「木星風邪(ジョヴィアンフルゥ)」
    長谷敏司「愛しのダイアナ」
    天沢時生「ドストピア」

    吉上亮「後香(レトロネイザル) Retronasal scape」…個人的ベスト。匂いによる言語を使用する人種と戦地で匂いを失った人間。登場人物の性別が不明なので如何様にも読める。最初BLかと思ってしまった。

    小川一水「受け継ぐちから」…宇宙船飛行がもたらす百年単位の時間のずれ。それでもコロナは進化し続ける。
    樋口恭介「愛の夢」…愛は関数。コロナによる死を乗り越えるための賭けと1000年後の人類の選択。
    北野勇作「不要不急の断片」…100文字単位で話が進む。うーん、読めなかった…。


    玉石混交、かなぁ。合う合わないの好みもあります。

  • 2021年4月ハヤカワJA文庫刊。書下ろし。新型コロナ以降の世界をテーマにした、19編の短編アンソロジーと2020年の第40回日本SF大賞に関わるエッセイを収録。COVID‑19パンデミックの経験が長いめなので、よく考えられた力作が多い。各人各様のポストコロナの世界観が興味深く、楽しかった。コロナにとらわれない話もあり、多彩。少し玉石混交ありました。

  • 現実がSFじみてくる世界のなかで、あえて「ポストコロナ」を描くことのできるSFというジャンル。あらためて、いま、SFが元気だよなと実感する。おもしろかったものをいくつか。

    ・柴田勝家「オンライン福男」なんで福男?(笑)それだけでもう笑えるし、このどんどんエスカレートしていく感じ(しかも、すごくこまかいのに壮大w)ほんとおもろい。
    ・若木未生「熱夏にもわたしたちは」 日常が回復されたけれど接触忌避の生活様式が残る世界、ってリアルだな。でもそれ以外はふつうにかわいくてみずみずしい、女の子同士の青春だった。
    ・柞刈湯葉「献身者たち」柞刈さんて生物学者だったのか。国境なき医師団の感染症対策班のとてもリアルな物語でよかった。
    ・林譲治「仮面葬」葬儀代行サービスというパンデミックの時代にいかにもありそうなセッティングで、子ども時代の恐怖の対象に意外な形で出くわす男の物語。
    ・菅浩江「砂場」 ・津久井五月「粘膜の接触について」 どちらにも全身を膜で覆うアイディアが出てきて、おお、となった。
    ・立原透耶「書物は歌う」 子どもだけが生きのこる世界で、伝説上の存在だった「図書館」に出会った少年の物語。図書館ものっていいよね。本作では図書館と図書館がつながっていくのだけど、頭の中で今までに読んだ図書館物語もつながって、なんか多重構造のようになった。
    ・小川一水「受け継ぐ力」。Covidがうんと変異しまくっている未来の宇宙での話。そうだよね。完全に清浄な世界なんてもともとないしこれからもないよね。俯瞰させてくれるSFの力を感じる作品。
    ・樋口恭介「愛の夢」 これもまさにSF的な作品。壮大で、心をはるか彼方まで飛ばせてくれた。
    ・北野勇作「不要不急の断片」は100文字SFの流れ。SFというより風刺、風刺のオンパレードでにやっとしちゃう。

    あとがき代わりの「SF大賞の夜」は記録として貴重だと思う。ツイッターや新聞など同時性のあるメディアはどんどん流れていって残りにくいので、こういう形でそのときの空気を閉じこめたものを書籍に残すのは大切。

    総じて、読みごたえのあるアンソロジーでした。

  • コロナ後の世界を描いたSF短編アンソロジー。
    恥ずかしながら、著者の皆さんは殆ど知らない方ばかり。
    読んでみて、SFって肌に合う作家さんとそうでない作家さんがこんなに顕著なのかなあ、という感想を抱きました。
    個人的に好きだと感じた作家さんを今後は掘り下げることにして、短編アンソロジーはある意味、そこが肝のような気がしています。
    自分の趣味に合う作家さんを発掘すること。そのためには数多くの作品に出会わなければならないのですが、短編アンソロジーともなると、この本一冊で19人もの作家さんの作品が手軽に読めるわけです。
    一つの話が10~15分くらいで読み切りなので、「この作風は私には合わないな」と思ったとしても、すぐに次の作品にとりかかることができるのです。
    そう言うと作家に失礼だとか、作品を作る側の思いを汲めないのか、という意見が出てきそうですが、個人的には気に入られないで自分の作品が腐るよりも、短編でいわばお楽しみとしてアンソロジーなり何なりを読んでもらって、本当に興味がある方にじっくり楽しんでもらいたい、と思う作り手もいるんじゃないかなと思います。

    ここまで書いて、個人的に気になった作品を挙げますと、
    ・黄金の書物
    ・熱夏にもわたしたちは
    ・粘膜の接触について
    ・カタル、ハナル、キユ
    の4つです。

    「黄金の書物」[小川哲(おがわさとし)著]
    は流れて行くストーリーというよりは、後半の不可思議な世界認知の描写が素晴らしく、こういう表現をするのって才能だなと感じました。
    実際には体験できそうもないことを疑似体験させるというのが小説の醍醐味ですから、その点でこの作品はSFを読むうえで一番の肝となる「想起できる不思議」が存分に展開されていると感じました。しかもあの分量で、実に濃厚な世界が展開されていることに驚きでした。

    「熱夏にもわたしたちは」[若木未生(わかぎみお)著]
    これは青春物語と言えるのですが、それと同時に、衛生面での新しい技術が導入されていく社会で、旧時代を生きてきた人間(ここでいうジャクジーのおばさんたち)と今の時代を生きている人間(主人公たち)の「幸せ」という観念の違い、互いにとっての「普通」の違い、といったかなり社会的な話が盛り込まれたお話です。しかし、それでいて主体となるのはシロとナツカの恋愛、という絶妙なバランスで両者がまぜこぜになった話でもあります。心理描写が細かく、読んでいてほっとするような感じがありました。いつの時代になっても幸せは別の形で存在していると思ったら、そこに救いがあるんだなと感じました。

    「粘膜の接触について」[津久井五月(つくいいつき)著]
    これは「スキン」と呼ばれる装備が開発された世界で、主人公を含む三角関係が描かれている物語です。三角関係が描かれている、と言っても恋愛メインの話ではなく、実際には別の形でウィルス感染の危機がある世界で考え方の違いから軋轢が生まれてくる、という感じのストーリーです。
    スキン越しに互いに触れ合う世界において、直接肌に触れるということの意味合いが変わってしまったので、主人公たちはスキン越しでなければ快楽を感じない(またはすごく薄れる)ようになってしまっています。哺乳類というのは肌の接触によって育つ動物だと言いますが、この世界ではスキンというものの開発によって、哺乳類の基本的な性格さえも変化させられてしまっています。
    ラブ・パレードと呼ばれる交流会のようなイベントの描写が凄まじく、ある一定の温度を持って迫ってくるような感じが個人的に好みでした。

    「カタル、ハナル、キユ」[津原泰水(つはらやすみ)著]
    野生動物が媒介する病気が流行する寺に、取材で訪れた男と唯一の日本人である関係者との交流を描いたお話。
    コロナ禍においてもウィルスを媒介した動物はなんだったのか? という話題が昇ったことがありましたが、この物語の主格は動物媒介ではなく、その裏にある社会の秘密にあります。
    最後のシーンの物悲しさがとても美しいお話でした。

    今だからこそ楽しめる短編アンソロジーです。
    気になる方は是非、あえて今ステイホームの中で読むのが良いんじゃないかと思います。

  • 2021年のコロナ禍に買ったけど、日常もコロナ、読書もコロナになってしまい、読んでて辛くなったので積んでいたもの。
    こういう企画ではその時期の状況や空気感も本の一部なので、すぐに読んだほうがよかったなとは思った。
    2022年末の今では、その後のウクライナ戦の衝撃と影響が強すぎて、疫病の影響のみ受けた未来には違和感を感じてしまう。

    疫病の影響が文化となって取り込まれ、さらにその先の未来の話が面白かった。特に「カタル、ハナル、キユ」「木星風邪」、コロナ関係なく「オンライン福男」「熱夏にもわたしたちは」も好き。

    現代人はみんな大なり小なりコロナ禍を体感したわけで、これからSFに出てくる疫病の描かれ方も変わってくるんだろうな。
    少なくても、危機にリーダーシップをとって迅速に対応する政府とかはもう出なさそう。

  • 久しぶりに、SFという文学ジャンルの底力を見せつけられた作品集です。一昨年あたりからSFアンソロジーが大量に発刊されていて鴨もいろいろと読みましたが、これが一番読み応えがありました。

    「ポストコロナ」という1点をお題として、現代日本SFを代表する気鋭の若手からベテランまでが、全て書き下ろしで臨んだ作品集。表紙に並ぶ参加作家名を目にするだけでも錚々たる眺めで、これだけタマが揃っているなら半分ぐらいは当たりかな〜、なんてちょっと失礼な期待を持ちつつ読み進めたところ、ほとんどがあたりというクオリティの高さ。日本SFの最新シーンを体感するには持ってこいだと思います。

    そして何よりも、「ポストコロナ」という共通のテーマでの共作でありながら、ここまで多様性に満ちたランドスケープが広がる文学ジャンル・SFの豊穣さ。コロナ禍という災厄そのものを中心に据えた作品はほとんどなく、大半の作品においてはコロナ禍は何かのきっかけかガジェット、または歴史に溶け込んだ背景に過ぎません。メインテーマとして描かれているのは、コロナ禍を超えた先に各SF作家が幻視する、人の意識と社会の変容です。
    現実問題として、ワクチン接種や医療体制の拡充が進んでコロナ禍がひと段落ついたとしても、社会が「コロナ禍前」と100%同じ状態に戻るとは考えづらい、漠とした不安感が世界中に広がっていると思います。そういった、まるで「現実こそがSF」的な時宜を得た、いろいろな意味で興味深い作品集だと思います。鴨が好きなのは柴田勝家、藤井太洋、小川一水、北野勇作各氏の作品。他の作品も粒揃いです。でも、百合だけはよくわからんなぁ(^_^;

  • 「ポストコロナ」という、まさに今読むべき小説。19人のSF作家の書き下ろしはかなり贅沢だ。ポストコロナってどんなにも変化しうるんだと想像できるし、どの短編も読み応えがある。まず、池澤春菜のまえがきから面白い。柴田勝家の「オンライン福男」と天沢時生の「ドストピア」のぶっ飛んだ発想がとても面白かったが、1番印象に残っているのは樋口恭介の「愛の夢」。スケールがデカすぎて、凄いという感想しかない。

  • ・柞刈湯葉のツイートで知り、柞刈湯葉をめあてに購入。
    ・『異常論文特集』(「裏アカシックレコード」)ではふざけた柞刈湯葉が最高だったが、こちら(「献身者たち」)のまじめな柞刈湯葉も最高だった。とくに好きだったのは、コロナ禍の嵐によって隠れてしまったものが書かれていたところ。
    ・ほかにも、とくに比較的若い書き手の作品をおもしろく読んだような気がする。

  • 結構分厚い文庫だが、一作品それぞれは結構短くてサクサク読める。
    それもあってそれぞれの感想を書くのはちょっとむずかしい。
    一言だけ書いていくかな…
    途中で気づいたが、作品が替わるときはタイトルページ左下に黒いグラデーションがあるため、あとなページくらいで終わるのかというのがだいたい分かる。電子書籍ではできない利点。まあ、ネタバレにもなりうるので純粋に利点ではないかもしれないけど。個人的には、そしてこの短編集では助かるデザインだった。
    それで見てみると、各作品の長さはほとんどが同じくらいで、やたらと長いものと短いものが混ざっている、ということはなかった。

    しかし、読書するときって結構一気に読んでしまいがちなのだが、本作品は結構区切りをつけながらちまちま読んでいくことになった。自分の集中力がちょっと落ちているというのもあると思うが、以下の要因があった:
    ・コロナをテーマにした短編集ということでひとつひとつ全部がそれなりに重い。重くなくてもこっちが勝手にいろいろ考えて重くなる
    ・短編と言ってももちろん起承転結があるため、読了するにはそこそこのエネルギーを使う
    ・19名のSF作家が参加しているので19作品ある
    ・当然だが、19名それぞれ文体や書き方が違うため、読み始めるときにチューニングが必要になる
    ということで、2作品くらい読んだ時点で結構情報処理に脳のリソースを使われてそこそこ疲れるっぽく、図書館で借りたのに最初の返却期限までに読み終えられなかった。まあ、だからといってこの本が悪いとかは全然なく、むしろとても良い本だった。

    ・黄金の書物
    SFではあるけど未来の話ではなく、IF世界に近い話。運び屋をしていたら途中でコロナが起きてやりにくくなり… という流れだった。
    違法ではないものの運び屋として働いていたはずの主人公が、コロナの影響とはいえ普通に違法薬物を運び始めたのがなんかなー。

    ・オネストマスク
    表情筋を読み込んでマスクに顔として表示されるというクソマスク。というかもはや内心どう思っているかが表情として出てしまっていて、会議中に別のことを考えててマスクが笑ってるみたいな事態が起きていてトラブルになるという話。それ、表情筋じゃなくない?
    なんか全体的にイラッとする内容だった。こんな社会にならなくて良かった。

    ・透明な街のゲーム
    コロナが治らない病気になって、毎日送られてくる薬を飲まないとそのうち死んでしまうことになり、しかも外出がほぼ禁止になってどんな建物もほぼ無人に。そんな街を練り歩いて写真や動画を撮るアクティビティの話。コロナ初期に誰もいないUSJの広場の写真を撮りに行った記憶が蘇った。

    ・オンライン福男
    急にぶっ飛んだ話だった。リモート環境が整えられた話を基軸に、福男をオンラインでやり、舞台も宇宙規模になったりならなかったり。

    ・熱夏にもわたしたちは
    あら〜な話。コロナの影響で三密回避が更にきつくなってもう人同士の接触が完全にゼロになった世界。

    ・献身者たち
    柞刈湯葉さんだ!そういえばSF作家だったわ。横浜駅作家ではなかった。
    そしてこの人の作品は大体若いにいちゃんが主人公だったようなイメージがあったが今作は国境なき医師団に所属する女医という、ちょっと意表を突かれる設定。しかもユーモアさはほとんどなく、コロナが収束しないまま発展途上国で猛威をふるい続けているという、もはやSFではなく普通にリアルっぽいお話。

    ・仮面葬
    これは明らかにSF。2038年にVID-38が流行している世界線。コロナが収束しておらず、毎年10万人が亡くなるのが常識になってしまった世界。ただそれ以外は特に大きくは変わっておらず、コロナ文化が混じっている、という感じだった。
    内容としてはなぜか一番好きかもしれない。日雇いに近い主人公が固定資産税の支払督促が来て故郷に戻ったタイミングでロックダウンが起き、住民票の住所じゃないからワクチン接種に追加費用がかかるけどそんなお金はないので日雇いの仕事を続けなければならないという、やたらと生々しい設定。現在収入がない自分に刺さる。
    で、葬儀の代行参加バイトという流れになり、そういえばタイトルが仮面葬だったわ、と思い出す。リモート参加でいいだろうに、葬儀というものは文化的に生身の人間の参加が重要視されるので、ビデオ機能のついた仮面をかぶった人間が出席するというのもまたありそう。

    ・砂場
    色々打っているワクチンがどんどん増えてワクチン35種セット通称「カクテル」を打つのも当たり前になったりしている未来の話。それでもワクチンを嫌がる反ワクや潔癖症の人などがいたり、それがテーマかと思ったらなんと目から光学感染する新しい感染症が出てきたというとてもSFな話が出てきて、情報量が多い!

    ・粘膜の接触について
    最初に父親が息子に「スキン」を渡すシーンがいきなり叙述トリック。
    しかし全身を覆って皮膚と一体化するという仕組みが最後までよくわからなかった。しかもインターフェイスでもあり、情報のやり取りが可能。最後も急に数百年後になるし、うーむ、難解系SF。

    ・書物は歌う
    これは良いSF。世界設定としては、コロナが強すぎて大人が生き残れなくなり、子どもばかりになり、文化や技術もほとんど失われてしまった世界という絶望的なものなのに、美しい。主人公がこの環境を悲観的に捉えてないからだろうか。
    そしてなぜか音で人を呼び、その人に読んでもらった読書エネルギーとでも言える力で移動する図書館が登場。図書館というか、本がそういうエネルギーを持ち、本能的に人を求めるという。
    移動したり、他の本を持つ建物と争ったり、勝利して相手の本と人間を奪ったりして暮らしていき、主人公は30代後半というその頃の寿命で満足そうに死ぬ。

    ・空の幽契
    飛浩隆作品もあるのか!これはハズレがない… と期待したらやっぱりハズレがなかった。というかこの人のSFはなんというかスケールが違うというか。いきなりイノシシ人間と鳥人間が出てきて、これまでのSF作品は少なくとも人間が主人公だったのにあっさりとそこを打ち破っていく!さすが飛浩隆!と思ったけど、特にそんなことはなく、作品内作品という話だった。2つの話が順番に進み、主人公の女性とお世話ロボットの交流が描かれる。時代設定や背景もかなり未来、というか今の世界とは違う設定なのにスラスラと読めてしまう。不思議だー。長編で読みたいな…

    ・カタル・ハナル・キユ
    かなりのSFだった。というかコロナ関係ない!でも、コロナをテーマにした作品だから何も間違ってない。架空の文化、架空の楽器、すべてが架空だけど空気感は似ている不思議。
    手の入れ墨が楽譜であり、葬儀ではそれを読み取って曲にするというのが美しい。葬儀がすべて前提にある文化。でも手が失われるような事態になったらどうなるんだろうな。

    ・木星風邪
    地球のメディアが作り出した風評被害で月の経済が破壊されるという、うーん、このメディアのリアルさ。
    この作品で描かれるコロナは、コロナウイルスとコンピューターウイルスを置き換えたものだが、未来なので人間の体内にOSが走っていてその中のプログラムが変異していくという話で、根っこは一緒。
    主人公がウイルスの正体的なものを暴きそうなところで終わる。短編なのでサクッと終わるのが良い。

    ・愛しのダイアナ
    これもまた別世界のSF。人類が肉体を捨て?データ世界に生きるようになった話。
    でも現実のデータセンターとかは存在しているらしい。生身もいるのか?
    両親はまだなんかデータ人間という感じがするが、娘や子どもたちがやたらと人間臭い。SFは好きだが、背景設定が余りにも現実とかけ離れているとなかなか理解が大変だ。

    ・ドストピア
    宇宙ヤクザSF。良すぎる。ギャグSFもいいなぁ。
    コロナがテーマなんだっけ、と忘れてしまいそうになるほどヤクザがテーマ。ずっとニヤニヤしてしまう。もはやニンジャが出てきそうな雰囲気に。
    と思ったら突然21世紀に発生したコロナがまたおきた、という豪快な説明が入る。
    でも主人公とか人間描写に幽遊白書や刃牙ネタが出てくる2200年。やりたい放題だな!でも好き。タオリングは実際に見てみたいかもしれない。

    ・後香
    これまただいぶ未来、だけど文化的には現在とあまり変わらない、というかむしろちょっと昔の戦時という感じがする。
    コロナの影響で嗅覚を失った人たちが祖となった部族では、匂いを使った言語が発達しており、その調査に行っている人が、その言語の習得に従い、過去の失われたはずの記憶を取り戻し、秘密に気づいてしまう。こんな短編なのに世界観もストーリーもバッチリ過ぎて読後感がとても充実している。

    ・受け継ぐちから
    コロナが何百年も根絶されないというSF。というか実際それに近い状態になっているのでは…
    まあ、毒性が強いままという状態ではないから現実の方がまだマシなのかもしれない。
    しかし、コールドスリープで未来に病気治療を託すというのはやっぱりSF定番で、わかりやすくておもしろいな。これも短編なのにきちんと裏の裏をかいてくる。

    ・愛の夢
    難しい!
    作品内で合計2000年が経つわけだが、ずっとコンピューターが人類に代わってすべてを管理していた。そして1000年後に起こされた大統領は、コンピューターの文化の方がしっかりしてるし、これを人類が管理できる気がしないから人類イラネとなってまた寝て人類文明終了。あっさりだぜ。

    ・不要不急の断片
    100文字のツイッター文章みたいなのがたくさん並んだ作品。一応それぞれゆるくつながってるらしいが、なんだかよくわからなかった。SFでもないような…

    ・SF大賞の夜
    作品ではなくあとがきだが、コロナ開始時のSF作家クラブのてんやわんやを興味深く読めるので作品と同じくらい面白かった。確実にSFではないけど…

  • 最後のやつと後書きが良かった。

  • 感想の言語化に断念。
    なかなか理解しにくいものもあったが、
    少女同士の恋、本の運び屋、あたりが面白かった。

    ポストコロナ、どんな未来がやってくるのか。
    そもそも「ポスト」と胸を張って言えるほどに
    収束するのだろうか、疑問。

  • とりあえず個人的ベスト3
    小川哲『黄金の書物』
    菅浩江『砂場』
    津久井五月『粘膜の接触について』

  • 2021-10-18
    ガッツリ読み応えのある19編
    収束後の設定がなく、基本的に悲観的予想なのは、編まれた時期を考えれば当然か。希望が残る物語が多いのも然り。
    翻って現実をみると、楽観的だが希望が見えにくいという皮肉。
    やはり事実は小説よりも奇なり、ですよ。否定的な意味で。

  • SF作家の想像力に脱帽。そして、日本SF作家クラブ会長の心意気にも。よくぞ今、これを書き、まとめてくれました。
    お気に入りは以下4作。

    『熱夏にもわたしたちは』
    現在と地続きだけど、確かに新しい世界
    『カタル、ハナル、キユ』
    架空の音楽とそれを奏でるための楽器。なんと魅力的な。
    『ドストピア』
    濡れタオルで戦うだなんて。ああ、ばかばかしい。大好きだ。
    『SF大賞の夜』
    記録を残してくれて、こうして読ませてくれてありがとう。

  • 感想の言語化をこころみるも、苦戦。短編集であり、ごった煮の玉石混交。率直に言って、わたしの期待に応えてくれた作品は三分の一もなかった。「ポストコロナ」や「SF」をタイトルに掲げられるのかなぁコレ…与えられたお題通りではなく自分の好き勝手に書いただけじゃない?と感じてしまったものも多い。それでも作者がのびのびと書いて面白ければ良いのだが、正直「…で?」という感想しかもてなかった。もちろん個人の好みや相性というものがあると思う。わたしには合わなかったor勝手に期待してしまっただけだ。
    コロナを経た人類は、世界は、あるいはSF作品は、どう変わっていくのだろう?というものを、わたしは読みたかった。

    とくに楽しく読めた作品:「献身者たち」「空の幽契」「木星風邪」「受け継ぐちから」

  • 「ポストコロナ」というお題目の制限付きのアンソロジー。現在活躍著しい19名のSF作家たちが枚数も制限される中での競作、見方を変えればこれで各作家の力量が比較されることになる。勿論、それぞれ読む人によってお気に入りの作家が異なり、自分が推している作家の作品に寄せる期待は大きくなるだろう。そういう意味では、私が好きな作家が選ばれないのは残念ではあるが、選択に関しては日本SF作家クラブが推薦する(承諾が得られた)作家なのだからそれを信頼して読むのも良かろう。ただ、コロナを題材にする限り、コロナの科学的特性を生かした作風の方がSF小説らしい。それに対し、まるでコロナの表層を軽く撫でるだけ、自分のスタイルを優先させる作品も見受けられる。まあ、それはそれで現代風ということで納得はできるが。ということで、私が気に入った作品は・・・

    〇菅浩江/砂場
    〇立原透耶/書物は歌う
    〇津原泰水/カタル、ハナル、キユ
    〇藤井大洋/木星風邪
    〇長谷敏司/愛しのダイアナ
    〇吉上亮/後香
    〇小川一水/受け継ぐちから

    わたしにとってのベストワンは、小川一水。

  • 2021年5月13日読了。2021年4月刊、ポストコロナ時代を踏まえ、「人間と世界はどう変容するのか、また変わらないものは何か?」を問うSF短編20本を収録したSF作家クラブ編のアンソロジー。コロナに翻弄された総会・授賞式開催向け調整を綴る、事務局長による後書きが一番生々しいのは皮肉・SFの限界を感じたりもするが、コロナ以前には生まれなかったであろうアイデアに満ちた短編も多く、コロナにより人間の想像力が刺激されて変容した、ということが実感できる本だった。小説自体はそうでもないが「光学汚染」のアイデアなどを見ると、手洗いマスクで防げるCovid-19なんて後世から見ればかわいいもの、と思えるのかもしれない…。柴田勝家の短編がバカバカしい想像力と意外に真面目なメッセージ性、「ツッコまれ度」の高さから個人的にはベスト。あと後書きで小林泰三氏が2020年に亡くなったことを知りショックを受けた…知らなかった。

  • コロナウィルスをモチーフにした短編集。
    Covid19が今後どうなるかわからないが、ちょっと怖くなるような内容のお話もある。
    小川一水の「受け継ぐちから」や樋口恭介の「愛の夢」が自分は好きなパターンのSF。短編でも楽しめる。

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