- 早川書房 (2021年6月16日発売)
本棚登録 : 449人
感想 : 28件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784150314897
作品紹介・あらすじ
昨年話題を呼んだアンソロジーに続き、作家別傑作選を3カ月連続刊行。星雲賞受賞の表題作ほか、書籍初収録作を含む奇想&SF集。
みんなの感想まとめ
多様なテーマと奇想に満ちた短編が収められた作品は、異世界の魅力だけでなく、現代のホラー要素を取り入れた物語も楽しませてくれます。特に、表題作の楽団が200年以上続けてきた演奏の姿は、無駄と思えることに...
感想・レビュー・書評
-
表題作、200年以上途絶えたことのない楽曲を演奏し続けてきた楽団の話。
無駄と思えることの中で前に進む人達の姿に自身の想いを肯定してもらえた。
どの話も面白く、異世界の中での一生(またはそれ以上の時間)と異文化が頭の中で拡がっていく楽しさに震えました。
異世界ではなく現代を舞台にし、ホラーの要素が入ったモノも良かった。
こういう作品が埋もれるのはもったいない。
「日本SFの臨界点」再発見のための企画はとても良い。
解説がボリュームがあって、熱い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初作家。伴名練『なめらかな世界〜』からこちらにやってき。中短編あわせて11篇あるが、なんと言っても「暴走バス」がいっちばん好き。いろんな想いを抱くこの結末を胸に——「ひかりより速く〜」は生まれたんだなぁと。この他だと「絶壁」「見果てぬ風」「例の席」など…筒井康隆風味を感じさせる作品も多く、わたし好みの作品集でした。
-
面白かった!
ホラーっぽいのからガチのSFまでいっぱい読めて良い。
1作品だけよく分からんのあったけど既存作品の外伝だったから納得した。花の中で〜が印象深かったです。
巻末の解説読んだら他の作品も読みたくなったので、編集部ほんとお願いします…! -
久し振りに、自分にとって特別な作家に出会えたと感じられる素晴らしい短編集を読んでしまった。もともと他ジャンルと相性の良いのがウリのSFだけれど、ホラーや純文学作品として、ここまで昇華させられるセンスがある作家には出会ったことがない。
楽団メンバーが3時間交代となって、200年間一度も演奏が途絶えたことのないオーケストラを紡いでいく「山の上の交響楽」は、設定のスケール感から既にワクワクものなうえ、演奏するということの意味を通じて人生について考えさせられる大名作。
突如謎の男性2人が殴り合いを始める現場につどつど遭遇する「殴り合い」は、そのシュールさが印象に残りやすいが、なぜ殴り合いが始まってしまったのか?? を考えると、読後感がとんでもなく切ない。いま自分が置かれている状況に不満はないし、幸せだと感じていても、時折り妙な寂しさを感じてしまう…という心境を見事に描写した名作。歳を重ねてからまた読み直したい。
個人的に一番素晴らしいと感じたのは「見果てぬ風」で、手塚治虫の『火の鳥』を読んでいるかのような感覚になった。着想や大まかなストーリーは童話的ですらあるのに、哲学や純文学要素をこれでもかと詰め込んだ大名作。こんなに考えられるストーリーを、たった80ページに落とし込んだ手腕も凄い。ひとことで言うと、まさに「人生」のような作品。
タイトルからして高い文学性を感じさせる「花のなかであたしを殺して」も素晴らしい。両極端なはじまりとおわりが一体化してる文明と、異文化民のフィルターを通して描かれる藍の物語が、切なくも考えさせられる。
これらの短編〜中編的な長さの作品の間に、ショートショート感の強いホラー的作品が散りばめられているのも、作者・中井紀夫氏の引き出しの広さを感じさせる。
巻末にある編者の後書きは、なぜここまで才能のある作家の作品を、現代で読むことが難しいのかがしっかり書かれており、歴史書としても価値の高い一冊。 -
本書の中井紀夫については全く知らなかった。日本SFの臨界点:恋愛編での「死んだ本書の中井紀夫については全く知らなかった。日本SFの臨界点:恋愛編での「死んだ恋人からの手紙」で予習はしていたが、本書を以って本格的に中井ワールドに突入した。
一番初めの「山の上の交響楽」がオーケストラを題材とした作品ということもあるが、それ以上に奇想天外な設定に引き込まれた。これは他の作品にも言えることで、先ずはそれをきちんと理解することで、きちんと自然に作品に沈み込んでいける。
愛についての描写はあくまでも純粋なもの、性についての表現もあくまでも種の保存的な表現なので、人によっては無機質に感じられるかもしれないが、それが中井のSF小説スタイル。筒井康隆の様な、人間にグサグサと突き刺さる性描写とは真逆の世界を作り出している。
私にとっては珍しく、不快な作品、意味不明な作品、途中で読むのを諦めてしまう作品は一つもない。編者の伴名練が、次なる傑作選を計画しているようなので、それに全面的に期待したい。出来れば早い機会にお願いしたい。
6月に光文社から新作2作品が出たという情報が入り、早速明日届く予定。楽しみです。
本のカバーデザインにホルンを持つ女の子が描かれていて、ちょっと気分が上がった。 -
初期作品からのセレクトだから当然なのだけれど、昔のSFだなあという気がする。昭和の頃の日本SFって日常描写がとにかくベタなのよ。この感じは懐かしいなあ。SF系では表題作や「山手線のあやとり娘」、ホラーでは「例の席」が好み。
-
『暴走バス』『絶壁』『花のなかであたしを殺して』が好き。
-
それぞれ味わい深いが、やはり表題作が一番好きかな。これ読んで「聴きたい!」と思わない人はいないのではないだろうか。次点が「満員電車」。毎日体感してるシチュエーションなだけにリアルに伝わる。動けないんだよホント。読書率下がってる一因じゃないかと半ば本気で思うぐらいに。だって文庫本開けないけどスマホはギリ見れるから。見れない場合もあるけど。そしてそんな時にこんな事になるんだろう。
あと相変わらず編者のSF愛が熱くて楽しい。 -
奇想&SF作品集。表題作は終わりの見えない交響楽を数百年間演奏してきた楽団の話。超然的な話かと思いきや、続出するトラブルに奔走するお仕事小説だった。その他の話も心情描写が豊かで読者に親身。超展開に突き放されがちなSFにおける良心かも。
-
-
中井紀夫の著作群は雑に括るなら幻想SFと呼ぶんだろうけど、それにとどまらない想像世界の豊かな広がりがあった...もぐもぐ。
「見果てぬ風」の果てなきフロンティア精神はその視座を象徴するもののように感じた。
個人的にはやはり「死んだ恋人からの手紙」も良い。トンチキや不可思議の中にじんわりと未来を見せてくれるような、そんな短編集だった。 -
やはり表題作が別格。
こういうほのぼののんのかSF、もっと読みたいな~~。 -
2023-03-15
幻想味というかマジックリアリズム調の作品が並ぶ中、チラチラとホラー描写が挟まってくるのが面白い。物語に深く踏み込まず、会えて少し離れた位置から見通しているような感覚。時代に関わらず重層的な読み方も出来そう。 -
短編集なのでSF初心者でも読みやすいと思います。こういう設定どうやって思いつくのか、不思議ですね。
-
短編集。日常で体験するような場面に、オカルトが混じったらどうなるだろう?という、作家の遊び心を感じた。
-
「そうは言っても一昔前のSF作品だし…」などと思っていたら、各短編の多彩なアイディアの数々に、時に壮大、時に怖い、時に切ない、様々な感情を浮かび上がらせるストーリーの数々に、一編一編読むごとに、中井紀夫という作家の紡ぐ世界に夢中になっていったように思います。この作家の傑作集が、こうして出版されたことに感謝です。
アイディアの面白さでは、表題作の「山の上の交響楽」がピカイチ。永遠に終わらない交響楽を演奏する800人の大交響楽団。時にユーモラスに、時に抒情をもって語られる劇団の内幕に、アイディアだけでは終わらないストーリーテラーぶりが光る。
日常から急に奇妙な世界の扉が開く。そんな奇妙な味の短編や、すこし・ふしぎのSF作品も魅力的な作品が数多い。
時間の流れがゆっくりになってしまったバスと、そのバスを見守る人々を描いた「暴走バス」のように切ないものもあれば、「なぐりあい」は語り手の前にどこからともなく男たちが、現れただただ殴り合う、というシュールなもの。このシュールな話が意外な読み心地につながっていくのも、またすごい。
「満員電車」や「山手線のあやとり娘」など、電車や駅での日常の場面が一気に不思議な世界、不条理な世界に一変してしまうのも好き。
「見果てぬ風」は冒険者のロマンを感じる一編。二つの長大な壁に囲まれた世界で、壁を途切れる場所を目指し、ひたすら旅を続ける男の一生を描いた短編。
世界観や主人公が訪れる国の数々の想像力の素晴らしさはもちろんのこと、主人公の選択や生き方に憧れてしまいました。荒涼とした風景や世界の中に、それでも旅を続ける男の、言葉にできない熱が感じた名編。
「花のなかであたしを殺して」の異星人たちの奇妙な文化を細かく書き上げる様は、まさにセンスオブワンダー!
そしてラストを飾る「死んだ恋人からの手紙」は、タイトルや展開である程度ネタの予測がついたとしても、それでも切なさに心つかまれる。
書かれた時代もあって最近のガジェットやハードSF的な設定は出てきません。だからこそ、どこかノスタルジックな雰囲気も、この作品集には含まれている気がします。
しかし、それはただ昔を懐かしむためのノスタルジックではなく、アイディアと抒情があれば、最新の技術やガジェットがなくても、いくらでもSFは時代を超え面白くあることを証明するノスタルジックでもある気がします。
編者であり解説を務める伴名練さんの熱も素晴らしかった。日本SF冬の時代と、作家活動の最盛期が不幸にも重なってしまった中井紀夫。それに光を再びあてたのが2010年代最もSFを愛した作家と評される伴名練。
時代を超え愛される作家とは、作品とは、ということが伝わった一冊でした。 -
なんてこった、と思った。1話目を読んで、50ページに満たない物語で鳥肌が立ち、目を閉じて空を仰ぎたくなった。
楽器をやっていたからだろうか。吹奏楽とオーケストラでは全く違うだろう。
多数と奏でる音楽はいいものだ。
誰かと奏でることに、今の感情の動きがある。 -
2021年10月3日読了。SF・ホラー・ショートショート・ノベライズなど多岐にわたる作品を作り続ける作家・中井紀夫の特選短編11本を収録。表題作『山の上の交響楽』はSF短編ベストに長年に渡ってランクインし続けた人気作らしい。名前のイメージからか、いかにも昭和的人情短編の書き手、というイメージが(なんとなく)あったが、藤子不二雄的なSFワンダー、すこし・ゾッとする感じ、雄大でロマンチックな感じが大変おもしろい作家だった。大風呂敷を広げて投げっぱなす短編が魅力的、特に「見果てぬ風」は胸をかきむしるような熱い思いとさみしさがあふれていてとても印象に残る短編。「殴り合い」も中年のおっさんとなった自分が読むと実に味わい深い。面白かった。
-
『山の上の交響楽』
『見果てぬ風』
『死んだ恋人からの手紙』
は再読。
結構印象深い作品が多いがやはり上記3作品は良いな。
この本が好きな人におすすめの本
中井紀夫の作品
