嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
3.83
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本棚登録 : 1016
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315276

作品紹介・あらすじ

稀代のマジシャンが本物の時間旅行に挑む「魔術師」、名馬スペシャルウィークを仰ぐ傑作青春小説「ひとすじの光」など全6篇収録

感想・レビュー・書評

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  • 「王と道化の両方」
    初めて読む作家さん。
    親子で継ぐいい話系と狂気じみた展開だったりふざけてるのかどうかすら怪しいくらい計画的な犯行っぽい作品もあり、だんだんどっちに振り切るのかわからない状態で次の短編へ読み進めるのが楽しくなっていった。

    「嘘が正典になるにら正典とは何か?」と言う思いが頭を巡る。

    他の方の感想見ると「短編も面白い」って言葉が気になりますよ…それ聞いたら長編も読みたくなるって.

  • 表題作「嘘と正典」は、冷戦下のソ連で、アメリカのCIAが、過去を改竄するように、時空間通信という技術を使って共産主義を抹消させようとする話で、共産主義の父とも言われるマルクスの親友でもある、エンゲルスの裁判を改竄させようとする。
    エンゲルスの罪を無罪から有罪にすれば、エンゲルスは、オーストラリアに流刑となるので、その後の世界で、共産主義の概念が無くなり、ソ連という国が生まれないと感じて、CIAのホワイトは、過去を未来から変えようとした。
    小川さんの作品は、SFと世界の歴史を上手く交差させて、実際にあったんじゃないかと、想像させる
    ことができる作品が多いので、とても面白いし、歴史の勉強にもなるなと個人的には、感じました。
    その他の作品も、一つの競走馬に自分を重ねた作家の話や(ひとすじの光)、音楽が通過、財産になる島の話(ムジカ・ムンダーナ)など、違ったジャンルのストーリーが楽しめるので、小川哲作品初心者の人に読んでほしいです。

  • 表題作の中篇を含む6篇の短篇集。また、時間を題材にした作品集でもありました。
    どれも良かったですが、特に気に入ったのが
    『魔術師』『ひとすじの光』『嘘と正典』です。

    『魔術師』
    売れっ子マジシャンとして大成した父は、積年の夢だった「魔術団」を結成します。しかし、天才的な演出力や演技力があっても、事業を取り仕切る才に欠け、借金を重ねて零落し、ついには妻と離婚して姿を消します。

    ある時、再び表舞台に復帰した父は、僕と姉を公演に呼び「仕掛を見破って、恥をかかせたくないか?」とマジシャンになっていた姉を挑発してきます。はたして、父の人生を賭けたタイムトラベルマジックは本物なのか…

    マジシャンがやってはいけない三つのことという「サーストンの三原則」。これに挑戦するという演出から、過去の好きな時間に飛ぶ片道のタイムトラベルは、アニメ『シュタインズゲート』のバイト戦士(鈴羽)の手紙を思い出して、涙腺が緩みそうになった。ラストは、読者に想像を任せる終わり方なので、謎は謎のままですが、これはこれでいいと思いました。

    『ひとすじの光』
    亡き父の残した競走馬と病室で書いていた未完の原稿。生前は、相続に関する手続きをほぼ終えてしまうほど几帳面だっただけに、競走馬の処遇を決めずに逝ってしまったのが謎でした。

    その謎を解くため、父の原稿を読み始めたところ、スペシャルウィークの系譜を遡るところから始まっていた…

    実在のダービー馬であるスペシャルウィークの血統を遡って行くうちに、作家の息子が父の思いを理解していく感動作。終盤は、まるで競馬の実況を聞いているような臨場感。ラストは、そこから新たな物語が始まるかのような終わり方が秀逸でした。

    『嘘と正典』
    時は米ソ相対する冷戦時代。ある日、モスクワ駐在の米大使館員(CIA工作員)が、接触してきたソビエトの電子電波研究所の技師から機密情報を得るようになります。周囲はKGBの監視が張り巡らされた、不自由な諜報活動。そんな中、技師は偶然にも「過去にメッセージを送る方法」を発見します。

    それを知ったCIA工作員は、自分の過去に影を落とす共産主義を消滅させるため、マルクスとエンゼルスの出会いを阻止しようと歴史改変を試みます…

    ミステリではないですが、伏線の回収が見事ですね。後半は、スパイ小説さながらのハラハラドキドキしながらの読書でした。しかしながら、何をもって正しい歴史とするのかとか、最後はいろいろ考えさせられました。

  • 「魔術師」、「時の扉」、「ムジカ・ムンダーナ」、「最後の不良」、「嘘と正典」を収録。いずれも摩訶不思議な物語。不思議な読後感。

    「魔術師」
    稀代のマジシャンが披露した世紀のタイムトラベルマジック。

    「ひとすじの光」
    父親が残した遺稿に沿って名馬スペシャルウィークの系譜を辿る物語。

    「時の扉」
    時間の流れを止め、過去を抹殺する「時の扉」の魔力をヒトラーに語るオッペンハイム???

    「ムジカ・ムンダーナ」
    音楽を貨幣、財産として所有し取引する不思議な島、デルカパオ島。演奏されたことのない名曲中の名曲。

    「最後の不良」
    流行を追い求めることを止める「虚無」の風潮が蔓延する世の中に反旗を翻す桃山。

    「嘘と正典」
    過去にメッセージを送り、歴史改変を可能とした「時空間通信」技術がもたらした歴史戦争。

  • SFマガジン2018年4月号魔術師、6月号ひとすじの光、12月号時の扉、2019年6月号ムジカ・ムンダーナ、Pen2017年11月最後の不良、書き下ろし嘘と正典、の6つの短編を2019年9月早川書房刊。2022年7月ハヤカワJA文庫化。魔術師で語られる、トリックかタイムマシンかという二者択一の真相に迫る展開が秀逸。嘘と正典に出てくる時空間通信にまつわる世界構築のアイデアと展開が楽しい。

  • 短編集。表題作「嘘と正典」が気に入っている。
    冷戦下のモスクワで活動するCIAのスパイSF小説。
    過去に干渉して歴史は変えられるのか。
    共産主義が生まれないようにするために、変えるべき一点はそこだったのか、しかしそう上手くいくのだろうか。
    彼らだけに注目していたらもっと大きな枠を見せられて、面白かった。

    「時の扉」もよかった。
    千夜一夜物語のようで寓話的なのに、どうも現実的だなあと感じる内容なのが面白い。
    最初は「王」が誰なのかが気になり、徐々に見えてきてからも「私」との繋がりが気になって釘付けになってしまった。

  • 短編小説集とは知らず
    ゲームの王国を読んで以来、小川哲さんにひかれ
    全部読みたいと思って購入しました。
    6作品いろんな顔をもつ話で
    こんなにあちこちからよく思いつくなー
    と本当に感心しました。

    どこか哲学的であるところ
    哲学や、外国の話が日本人が書くから
    読みやすいのも魅力ではないでしょうか?

    特に好きなのは
    ムジカ・ムンダーナ
    最後の不良
    嘘と正典

    SFの世界と本当の世界のギリギリのラインを
    攻めるところが、現実味のある
    ありえるかも的な面白さで
    引き込まれました。

    薄い本なので、ぜひ手にとってみて欲しいです。

    君が手にするはずだった黄金について
    も全然日常的ながら、SFよりではないのに
    最近とても面白かったし
    内容や、書き方も
    幅が広すぎる、素晴らしい作家さんです!

    余談
    地図と拳も読みたいけど、太すぎてー
    電子書籍を利用してないので
    電子書籍端末を買おうか悩むくらい。
    でも、まだ本がすきなんですよねー
    本の匂いと、質感がたまらなく好きで
    本好きの方はもう電子書籍にしてるんだろうかー??

  • 「地図と拳」で直木賞を受賞した著者の2019年、1回目の同賞候補作。時間や歴史が全編を通したテーマとなっているが、解説にもある通り、まさに「ジャンル越境的」な魅力の詰まった6編。とても濃厚な短編集だった。何と言っても「魔術師」と「嘘と正典」の歴史改変ものが出色。短いけれど、流行を皮肉った「最後の不良」も面白かった。小川哲氏に従来の「SF作家」のイメージを重ねるのはもうやめようと思う。

  • この短編集の感想を書くのは難しい。バラバラの話だが同じような世界観で描かれているような。
    時間を超えてマジックを見せていくような魔術師、共産主義の時代を将来から過去に繋げていくような嘘と正典、名馬の血統の繋がりを探し出すひとすじの光。
    この感じが好きな人にはハマるだろうという作家は多いが、私にはちょっと面白さがわからなかった。他の人の感想にあった回収が見事、という点を探し出せないところが多くあり。

  • 6篇の短編集。「ひとすじの光」と「ムジカムンダーナ」父親が亡くなったことにより残された息子が宿題を解く物語だと思った。「嘘と正典」が一番面白かった。最初に書かれた部分をよく覚えておくと最後になるほどと納得する。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年『ユートロニカのこちら側』で、「ハヤカワSFコンテスト大賞」を受賞し、デビュー。17年『ゲームの王国』で、「山本周五郎賞」「日本SF大賞」を受賞。22年『君のクイズ』で、「日本推理作家協会賞」長編および連作短編集部門を受賞。23年『地図と拳』で、「直木賞」を受賞する。

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