走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2022年11月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784150315375

作品紹介・あらすじ

文化人類学、SF、バーチャルアイドル――《信仰》をテーマに繋がる柴田勝家の真骨頂。「クランツマンの秘仏」ほか全6篇の短篇集

感想・レビュー・書評

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  • 本書を知るきっかけは『世にも奇妙な物語』
    そして、作者が柴田勝家!

    柴田勝家さんの本は二作品目になります。
    本作品も、近未来っぽい世界のSF短編集になってます。

    オンライン福男:お正月に走る福男をオンラインでやってみたら・・・

    クランツマンの秘仏:秘仏研究科の人生を追う物語、開帳しない秘仏って本当に入っているの・・・

    絶滅の作法:人類が滅亡した地球で暮らす異星人達の話!?異星人達は地球人の文化に触れる事で!!!

    火星環境下における宗教性原虫の適応と分布:宗教の成り立ちと布教についての新解釈。

    姫日記:一番サクサクと読めた!主人公は毛利元就に仕える軍師、クソゲーの話!?実話?

    走馬灯のセトリは考えておいて:人が死んだ後に自分のライフログを素に『ライスキャスト』を作れるようになった世界!ライフキャスターの『イノル』は末期の患者からバーチャルアイドルのライフキャストの作成を依頼される!?
    →本作が世にも奇妙な物語でやってました!

    表題作で、連作短編か長編小説を読んでみたいと思いました!!!

    因みに、帯に書いていたのですが、柴田勝家生誕500周年らしいです!

  • 『じゃ、これが私なりのお葬式だから。みんな、楽しんでいってね!』
    こうして彼女のラストライブが幕を開けた。すでに死んでいる彼女が、生前の意思を残したバーチャルアイドルとして歌う最後の時間。
    引退するのは、私達の世界──この世。

    というSF短編集。
    柴田勝家やっぱり好きだなという気持ちと、やりたい放題だな?こいつ?という気持ちがごちゃ混ぜになって襲ってきます。
    6作中最後まで読めんと思ったのは宗教を寄生虫になぞらえた論文、という体のお話。体力のある時でないと読み切れない。

    表題作が好き。
    バーチャルアイドルをテーマにしたSFは今の時代でないと書けないだろう。


  • 安定のおもしろさ。壮大なホラ話を読んだような何とも言えない爽快感がある。だからといって荒唐無稽に過ぎることはなく、精緻で細かい舞台設定がリアリティにもつながって、少しも陳腐な感じがしない。

    コロナ禍で福男の神事がオンラインで行われ、どんどんエスカレートしていく近未来を描いた「オンライン福男」、信仰には質量があるという自らの学説に取り憑かれた男の顛末を描いた「クランツマンの秘仏」の2本は特に印象的。

    だが何と言っても、書き下ろしの表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は傑作である。生前のライフログからAIが生成した分身を残せるようになった世界。この世とあの世の境界が曖昧になりつつある世界で、往年のバーチャルアイドルが、この世からの「卒業」ライブを決行する。正に今にドンピシャな物語。

    どの作品も想像力がガシガシと掻き立てられる。これぞSFの醍醐味。読むなら今。

  • 宗教とか生と死とに関連するSF短編集。
    「火星環境における宗教性原虫の適応と分布」は宗教の伝播を原虫に繁殖になぞらえて論じています。固い文章でもっともらしく書いていますが、こういった遊びがいかにもSFです。
    表題作である「走馬灯のセトリは考えておいて」は、ライフログや日記などから、死後にその人の人格(もしくは人格を模倣するもの)をAIとして残せるようになった世界を描いています。死後に人格が残るお話はほかにもいろいろあるし、いつか実現しそうな技術ですが、現実としてはどうなんだろうとか思ってしまいます。でも作家死後にAIが続きを書いてくれるとかはいいかもと思ってしまったり。

  • タイトルからして興味と期待が膨らみ、「走馬灯」と「セトリ」が併記される字面に面白味を感じながら手に取った。「走馬灯」は偶発的に過ぎるイメージだが、その「セトリ」を自発的に考える世界ではどんな未来になっているのだろうかなどと読み始める前から妄想が始まる。

    本作は6編の短編集であり、表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は最後に掲載されている。死者の生前の記録から「ライフキャスト」というAIを作成できる世界で、大人気だったバーチャルアイドル「黄昏キエラ」の再現を依頼される小清水イノルと依頼者の物語。推し活の文化を踏まえた上での話ではあるが、大切な人や家族との絆や深い繋がりが、主人公と依頼者の間で築かれていく様は感動的でもあった。アイドルとファン、生と死だけではない、短編ながら読み応えのある作品だった。

    他にも「オンライン福男」では十日戎のリアルとメタバースのあれこれにクスッと笑わせてもらい、「姫日記」ではバグだらけの『戦極姫』のゲームをプレイする筆者に大いに楽しませてもらった。「クランツマンの秘仏」では信仰についての学術レポートや手記のようであり、「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」も火星文明における信仰についての論文のようで、理解が追いつかないところもあるが硬派な内容もまた面白い。かと思えば、「絶滅の作法」は地球滅亡後の異星人による地球移住ライフが描かれていて飽きない短編集だった。

    読み終えてみて「火星環境下~」は『異常論文』樋口恭介編にも掲載されており、なかなか読み始めないまま積ん読になったままのこちらもいずれ読もうと思う。

  • 宗教を原虫として描いた短編がお気に入り

  • 不思議な世界の短編集。
    実際にありそうな世界だし、これから起こるかもしれないであろうストーリーたち。

    オンライン福男はなんか読んだことある気がした。
    どこで読んだんだろ。でも間違いなく読んでた。

    全体的に面白いけど難しい。
    頭が悪いので「クランツマン〜」「火星環境下に〜」は難しくてよくわからなかった。

    絶滅の作法の心のあり方が理想すぎた。
    とことん日本人だなおれも。

    一番面白かったのは「姫日記」
    読んでて思わずふふッと声が出た。

    解説はVtuberが書いてて、これまた時代だなぁと思った。

  • 表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
    人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
    2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
    自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。

    本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。

    巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。

    “葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)

  • ?から入って次第に興味が出てくる
    SF世界 面白かった
    クランツマンの秘仏
    信仰さえあればいかなる物質も存在
    できる論は面白いと思った
    絶滅の作法
    人類が滅亡した地球に、異星から思考を飛ばし日本人の肉体に入って生きてみる
    稲を育て米を炊き、マグロを釣り捌いて鮨を握り食べる
    走馬灯のセトリ
    死者の生前を再現し駆動するAI
    ライフキャストを作る生業の主人公
    元バーチャルアイドルのライフキャストを作りラストライブをすることに
    お父さんが亡くなってたとは
    信仰とは生への不安感を解消し安寧を得るための手段

  • ――

     大霊界である…!


     柴田勝家満喫セット。これ程バラエティ豊かな短編集をひとりで組めるなんて恐ろしいことである。名前以上にすごいひとだ…

     壁、や境界、が文学のテーマになって久しいけれど、純文学がその境界を越えようとするのに対し、SFはその境界を曖昧にしようとする独特の死生観がある。そのあたり、所謂「非科学的」な幽霊や妖怪変化と通じるところがあるというのも不思議なもの。
     技術で死を克服しようとする、という形は万国共通でも、例えば造り物の生命を繋いで克服するのと、死後もコミュニケーションを取れるようにすることで克服するのとではアプローチが違っていて。
     それって死後の世界が身近な日本ならではのSF発想なのかとも思ったのだけれど、そのあたりは後続の研究が待たれるところです。いや探せばもうあるだろうけど。

     繋がる、ことで境界を克服するというのは、場合によっては甘々なだけの理想論に聞こえてしまうが(それは世界中が繋がりつつあるいま、そのネットワーク上に蔓延する不理解が示しているわけだけれど)、それでも繋がること、繋がっていることが希望であって欲しいというのは、切り癖のある自分としてはあまりに身勝手で、そしてその分切実な想いでもある。


     はてさて。
     ポストコロナSFである「オンライン福男」に始まり、異常論文の嚆矢である「クランツマンの秘仏」、少し不思議なディストピア小説とも読める「絶滅の作法」から、宗教に説明をつけるかのように挑戦的な「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」、自伝的小説(爆笑)とも云える「姫日記」に、これぞ表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」。
     「クランツマンの秘仏」は民俗学SFミステリ。あまりの完成度に舌を巻く。こういうのばっかり読んでると、フィクションと現実の区別が付かなくなるのよ?
     「火星環境下における〜」は宗教の伝播を寄生虫の繁殖に重ねて、風刺的に見えるのだけれど実際核心を突いているようでぞっとしない。小島秀夫の声帯虫のような発想にも繋がる恐怖があった。
     そして表題作たる「走馬灯のセトリは考えておいて」。
     有り得べき未来、というSFの根本をベースにして、バーチャルライヴというエンタメを中心に据えた物語は、一冊を通してある、境界や繋がりへの視座を纏め上げるものであり、
     その上で、『ニルヤの島』から横たわる生と死の相克、と云うテーマが、急激に明転するのを感じた。

     心強い返歌のようで。☆4.4

  • 私にとってSFはどうやら合う合わないの振り幅が大きいらしい。
    生死や信仰をテーマにしたこの短編集は、読めないお話もあった。
    理解できない設定で小難しい言葉を並べ立てられると私の乏しい頭はバクハツしてしまうwww
    言葉が上滑りの滑りまくりで地につかないし、入ってこないのでなんの感情も湧かない
    そんな中で気に入ったお話がいくつか

    「オンライン福男」
    年1の行事が第18回って18年も!?
    福男にかける熱意が素晴らしいw
    インターネットの海は広大だ

    「クランツマンの秘仏」
    ホントにそんな史実があったのかと思っちゃうくらい真実味があったw
    意外と古い昭和の時代の設定なのが湿った空気感を出していてよい
    これが元で異常論文って書籍ができたんだって?

    「姫日記」
    はわわ…がツボwww
    単純に面白かった。
    バグばっかりのゲームも楽しいもんですよw

    「走馬灯のセトリは〜」
    いちばん共感が深いお話だった
    このくらい生と死の境界線が曖昧になったら死ぬのも怖くないのかな…

  • 自分や大切な人の魂を記憶をバーチャルとして保存できるとしたら『死』とは一体何なのだろう。
    『死=この世からの引退』と言われる世界で、壮大なラストライブが始まる。

    やっぱり著者が書く架空世界は突き詰められていて面白い。

  • 信仰や死といった概念が科学技術の進歩によってどう変化してゆくのかというテーマの短編集。人間の根幹にあるこの概念が人間たらしめる変わらなさを感じた。

  • これはおもしろい。それに読みやすい。SFならではの難解な世界観や描写は抑えられていて、民俗学的な要素が物語の奥行きを広げている感じ。
    AIや異星人など、生身の人間ではないものを主体にすることで人間らしさを浮かび上がらせるのが絶妙に巧い。

    ■オンライン福男
    感染症の拡大の影響から新年の福男をオンラインで決める話。話が発散して無茶苦茶になっていく。コロナ禍を思い出す一話。

    ■クランツマンの秘仏
    深い信仰には質量がともなうというエセ科学?に囚われた男と、その男の名誉を回復したい子どもたちの話。これは事実なのか?と思わせるノンフィクションのようなスタイルに引き込まれる。

    ■絶滅の作法
    人類が絶滅した後の地球で、人類のようにふるまいたいロボットが米を育てたり寿司を作ろうとする話。昔に想いをはせるようなノスタルジックな味わいがいい。

    ■走馬灯のセトリは考えておいて
    故人の生前を再現するAI「ライフキャスト」でバーチャルアイドルのラストライブを作っていく物語。最期の近い「中の人」の想いに胸が熱くなる。

  • 柴田勝家はなかなか食指が動かず今回このタイトルのあまりのキャッチーさに心動かされ初めて手に取る。

    短編集なのだが、信仰とはなにか、信仰の役割とはなにかということをSF的に切り込んだ作品が半数を占める。
    昔から存在する宗教からアイドルに対する偶像崇拝まで。対象を問わず、なにかを純粋に信じることで生まれる力と、その力がもたらす心の安寧。拠り所の重要さ。
    なかなかに深いテーマを軽妙な題材に乗せ、我々にわかりやすく伝える技術が素晴らしく、食わず嫌いをするものではないなと反省。

  • 人文科学系SFの泰斗、柴田勝家氏によるバラエティ豊かな短編集。現実と非現実、本物と偽物、生者と死者、といった文化的な対立項を巧みに活かして一つの作品にまとめ上げる、氏の手管の技を堪能できる一巻です。

    表題作が巻の3分の1ほどを占め、作者的に最も力を入れた作品だろうと思います。・・・が、鴨的には主人公の2名のどちらにも感情移入することができず、ちょっといまいちな感じ。それよりも、前半に納められた洒脱で知的好奇心に溢れる軽い作品の方が、楽しく読めましたね。
    人によって好き嫌いの出る作家さんだと思います。今の日本SFシーンにおいて貴重な作風だと思いますので、これからも期待しています。

  • 絶滅の作法は面白かった

    表題作について
    面白かった。解説も含めて、アバターを被ったアイドルであるブイチューバー、また一般のアイドル、推し活について考えを深めることになった。50年後はどうなるんだろう。

  • Vtuberを題材にした文学や議論もかなり増えてきて、技術も日進月歩。もはやSFとの境目が曖昧になってきたけど、やっぱり魂の所在についてはずっと考えてしまう。全部同じ人が書いてんの?ってなるくらい雰囲気がバラエティ豊かで面白い。表題作と届木ウカさんの解説目当てだったけど、クランツマンの秘仏が骨太でかなり刺さった。仏像、大好きだからな。

  • 短編集です
    表題の「走馬灯のセトリは考えておいて」が、秀逸でした。

     技術によって生と死が曖昧になった世界で、人々はどう生きるのか。多くのSF作品が発展した文明のビジュアルや利便性を描く中、この短編は文化や思想の変容を通してその世界を表現している。
     また、物語では全く語られないものの、他人の死は曖昧だが自分自身の死は終わりであるというリアルな前提も、作品に深い奥行きを与えていると感じた。

     単なるガジェットSFではない、人間の本質に迫るこの視点こそ、真のSFなのかもしれない。

  • 『オンライン福男』『クランツマンの秘仏』『走馬灯のセトリは考えておいて』が良かった。

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著者プロフィール

SF作家。ペンネームは戦国武将の柴田勝家にちなんだもの。1987年、東京都生まれ。成城大学大学院(文学研究科日本常民文化専攻)在学中にハヤカワSFコンテスト・大賞を受賞し、『ニルヤの島』で2014年にデビュー。このほか著作に、『ワールド・インシュランス』(星海社FICTIONS)、星雲賞日本短編部門を受賞した表題作を収録する『アメリカン・ブッダ』(ハヤカワ文庫JA)などがある。

「2022年 『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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