走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 449
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315375

作品紹介・あらすじ

文化人類学、SF、バーチャルアイドル――《信仰》をテーマに繋がる柴田勝家の真骨頂。「クランツマンの秘仏」ほか全7篇の短篇集

感想・レビュー・書評

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  • 本書を知るきっかけは『世にも奇妙な物語』
    そして、作者が柴田勝家!

    柴田勝家さんの本は二作品目になります。
    本作品も、近未来っぽい世界のSF短編集になってます。

    オンライン福男:お正月に走る福男をオンラインでやってみたら・・・

    クランツマンの秘仏:秘仏研究科の人生を追う物語、開帳しない秘仏って本当に入っているの・・・

    絶滅の作法:人類が滅亡した地球で暮らす異星人達の話!?異星人達は地球人の文化に触れる事で!!!

    火星環境下における宗教性原虫の適応と分布:宗教の成り立ちと布教についての新解釈。

    姫日記:一番サクサクと読めた!主人公は毛利元就に仕える軍師、クソゲーの話!?実話?

    走馬灯のセトリは考えておいて:人が死んだ後に自分のライフログを素に『ライスキャスト』を作れるようになった世界!ライフキャスターの『イノル』は末期の患者からバーチャルアイドルのライフキャストの作成を依頼される!?
    →本作が世にも奇妙な物語でやってました!

    表題作で、連作短編か長編小説を読んでみたいと思いました!!!

    因みに、帯に書いていたのですが、柴田勝家生誕500周年らしいです!

  • 安定のおもしろさ。壮大なホラ話を読んだような何とも言えない爽快感がある。だからといって荒唐無稽に過ぎることはなく、精緻で細かい舞台設定がリアリティにもつながって、少しも陳腐な感じがしない。

    コロナ禍で福男の神事がオンラインで行われ、どんどんエスカレートしていく近未来を描いた「オンライン福男」、信仰には質量があるという自らの学説に取り憑かれた男の顛末を描いた「クランツマンの秘仏」の2本は特に印象的。

    だが何と言っても、書き下ろしの表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は傑作である。生前のライフログからAIが生成した分身を残せるようになった世界。この世とあの世の境界が曖昧になりつつある世界で、往年のバーチャルアイドルが、この世からの「卒業」ライブを決行する。正に今にドンピシャな物語。

    どの作品も想像力がガシガシと掻き立てられる。これぞSFの醍醐味。読むなら今。

  • 宗教とか生と死とに関連するSF短編集。
    「火星環境における宗教性原虫の適応と分布」は宗教の伝播を原虫に繁殖になぞらえて論じています。固い文章でもっともらしく書いていますが、こういった遊びがいかにもSFです。
    表題作である「走馬灯のセトリは考えておいて」は、ライフログや日記などから、死後にその人の人格(もしくは人格を模倣するもの)をAIとして残せるようになった世界を描いています。死後に人格が残るお話はほかにもいろいろあるし、いつか実現しそうな技術ですが、現実としてはどうなんだろうとか思ってしまいます。でも作家死後にAIが続きを書いてくれるとかはいいかもと思ってしまったり。

  • タイトルからして興味と期待が膨らみ、「走馬灯」と「セトリ」が併記される字面に面白味を感じながら手に取った。「走馬灯」は偶発的に過ぎるイメージだが、その「セトリ」を自発的に考える世界ではどんな未来になっているのだろうかなどと読み始める前から妄想が始まる。

    本作は6編の短編集であり、表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は最後に掲載されている。死者の生前の記録から「ライフキャスト」というAIを作成できる世界で、大人気だったバーチャルアイドル「黄昏キエラ」の再現を依頼される小清水イノルと依頼者の物語。推し活の文化を踏まえた上での話ではあるが、大切な人や家族との絆や深い繋がりが、主人公と依頼者の間で築かれていく様は感動的でもあった。アイドルとファン、生と死だけではない、短編ながら読み応えのある作品だった。

    他にも「オンライン福男」では十日戎のリアルとメタバースのあれこれにクスッと笑わせてもらい、「姫日記」ではバグだらけの『戦極姫』のゲームをプレイする筆者に大いに楽しませてもらった。「クランツマンの秘仏」では信仰についての学術レポートや手記のようであり、「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」も火星文明における信仰についての論文のようで、理解が追いつかないところもあるが硬派な内容もまた面白い。かと思えば、「絶滅の作法」は地球滅亡後の異星人による地球移住ライフが描かれていて飽きない短編集だった。

    読み終えてみて「火星環境下~」は『異常論文』樋口恭介編にも掲載されており、なかなか読み始めないまま積ん読になったままのこちらもいずれ読もうと思う。

  • 表題作の『走馬灯のセトリは考えておいて』がとても面白かった。
    人が死んだ後にライフログをもとに自分の分身を残せるようになった未来の話。
    2023年時点においてすでに故人の生前のライフログやアーカイブを元に、あたかも亡くなった人が目の前にいるかのように再現できる技術が生まれていることから、そう遠くない未来に、終活に向けて自分のアーカイブを整理するという行為が当たり前になるのかなと思った。
    自然言語処理のAIの台頭により、故人の受け答えの癖を再現できるAIのような存在も現実味が増してきていると感じる。

    本書においても、技術の進化と共に死との向き合い方が変化してきていることの説明や、ライフログから試写を蘇らせることによる葛藤が描かれていて色々と考えさせられる内容だった。

    巻末の解説では、アイドルに対する「推し活」の心理と、宗教における「信仰」の類似性から本作品の構造を説明しており、作品を理解する上で非常に参考になった。

    “葬儀とは死者の人生に生者が意味付けをするための宗教的儀式であり、それ自体が他者を重み付けする「推し活」である”(解説より)

  • ?から入って次第に興味が出てくる
    SF世界 面白かった
    クランツマンの秘仏
    信仰さえあればいかなる物質も存在
    できる論は面白いと思った
    絶滅の作法
    人類が滅亡した地球に、異星から思考を飛ばし日本人の肉体に入って生きてみる
    稲を育て米を炊き、マグロを釣り捌いて鮨を握り食べる
    走馬灯のセトリ
    死者の生前を再現し駆動するAI
    ライフキャストを作る生業の主人公
    元バーチャルアイドルのライフキャストを作りラストライブをすることに
    お父さんが亡くなってたとは
    信仰とは生への不安感を解消し安寧を得るための手段

  • ――

     大霊界である…!


     柴田勝家満喫セット。これ程バラエティ豊かな短編集をひとりで組めるなんて恐ろしいことである。名前以上にすごいひとだ…

     壁、や境界、が文学のテーマになって久しいけれど、純文学がその境界を越えようとするのに対し、SFはその境界を曖昧にしようとする独特の死生観がある。そのあたり、所謂「非科学的」な幽霊や妖怪変化と通じるところがあるというのも不思議なもの。
     技術で死を克服しようとする、という形は万国共通でも、例えば造り物の生命を繋いで克服するのと、死後もコミュニケーションを取れるようにすることで克服するのとではアプローチが違っていて。
     それって死後の世界が身近な日本ならではのSF発想なのかとも思ったのだけれど、そのあたりは後続の研究が待たれるところです。いや探せばもうあるだろうけど。

     繋がる、ことで境界を克服するというのは、場合によっては甘々なだけの理想論に聞こえてしまうが(それは世界中が繋がりつつあるいま、そのネットワーク上に蔓延する不理解が示しているわけだけれど)、それでも繋がること、繋がっていることが希望であって欲しいというのは、切り癖のある自分としてはあまりに身勝手で、そしてその分切実な想いでもある。


     はてさて。
     ポストコロナSFである「オンライン福男」に始まり、異常論文の嚆矢である「クランツマンの秘仏」、少し不思議なディストピア小説とも読める「絶滅の作法」から、宗教に説明をつけるかのように挑戦的な「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」、自伝的小説(爆笑)とも云える「姫日記」に、これぞ表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」。
     「クランツマンの秘仏」は民俗学SFミステリ。あまりの完成度に舌を巻く。こういうのばっかり読んでると、フィクションと現実の区別が付かなくなるのよ?
     「火星環境下における〜」は宗教の伝播を寄生虫の繁殖に重ねて、風刺的に見えるのだけれど実際核心を突いているようでぞっとしない。小島秀夫の声帯虫のような発想にも繋がる恐怖があった。
     そして表題作たる「走馬灯のセトリは考えておいて」。
     有り得べき未来、というSFの根本をベースにして、バーチャルライヴというエンタメを中心に据えた物語は、一冊を通してある、境界や繋がりへの視座を纏め上げるものであり、
     その上で、『ニルヤの島』から横たわる生と死の相克、と云うテーマが、急激に明転するのを感じた。

     心強い返歌のようで。☆4.4

  • 面白かった。柴田勝家はVRなど(アメリカン・ブッダ)の口調が基本論文なのでふっと不安になるのだが、そこ(倫理のあるなし)のレンジが広い感じがするので逆に安心感がある。論文的な話ばかりなのかと思いきや、「姫日記」やセトリでは砕けて面白く、「絶滅の作法」では「案外情緒的なんだ…」と驚かされる。
    表題作は読むのに体力要りそうと思っていたが、頑張って読んだ甲斐があって、心の動きの細やかな、魂の深い作品で泣いた。解説がとても良い。
    「絶滅の作法」は個人的に推しておきます。感性が美しいので。

  • 自分や大切な人の魂を記憶をバーチャルとして保存できるとしたら『死』とは一体何なのだろう。
    『死=この世からの引退』と言われる世界で、壮大なラストライブが始まる。

    やっぱり著者が書く架空世界は突き詰められていて面白い。

  • 信仰や死といった概念が科学技術の進歩によってどう変化してゆくのかというテーマの短編集。人間の根幹にあるこの概念が人間たらしめる変わらなさを感じた。

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著者プロフィール

SF作家。ペンネームは戦国武将の柴田勝家にちなんだもの。1987年、東京都生まれ。成城大学大学院(文学研究科日本常民文化専攻)在学中にハヤカワSFコンテスト・大賞を受賞し、『ニルヤの島』で2014年にデビュー。このほか著作に、『ワールド・インシュランス』(星海社FICTIONS)、星雲賞日本短編部門を受賞した表題作を収録する『アメリカン・ブッダ』(ハヤカワ文庫JA)などがある。

「2022年 『メイド喫茶探偵黒苺フガシの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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