鬼神の檻 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2024年8月21日発売)
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本棚登録 : 211
感想 : 17
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  • 本 ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150315771

作品紹介・あらすじ

秋田県御荷守村に伝わる、超人的な力を持つ「鬼神さま」の正体とは!? 大正、昭和、令和――三世代の謎が絡み合う伝奇ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 西式豊『鬼神の檻』ハヤカワ文庫。

    行き付けの本屋に目立つポップと共に平積みされ、内容の紹介文とおどろおどろしい表紙の鬼のイラストが気になり、購入。

    初読み作家。初読み作家の場合、最初の数行のを読むと第一印象が決まる。西式豊の文章はなかなかやるではないかという印象。何よりも風景描写が良い。冬の秋田の里の風景を『冬は、風景から色を奪う。』という一文で的確に描いてみせた。

    大正12年、昭和48年、令和5年という3つの年代を背景にした伝奇ホラー推理SF小説。

    こうまで小説の内容が次々と変化していく小説は珍しいが、それに付いて行くのには、かなりの煩わしさがある。

    大正12年が舞台の第一部は伝奇ホラー小説の色合いが濃く、第二部の昭和48年が舞台になると、4つの旧家の因縁が渦巻く、横溝正史のミステリー小説のような展開を見せる。最後の第三部で令和5年が舞台になると、新人女性記者を主人公にした正統派の推理小説と思わせながら、SF小説へと変貌して行くのだ。しかし、そのSFがやけに安っぽいことが全てを台無しにしている。


    大正12年、50年に一度の嫁取りと引き換えに村を護る貴神様を信仰する秋田県御荷守村で、その年の貴神様の嫁となる『御台』に選ばれた北白真棹は貴神様が超人的な力を持つ残虐で邪悪な存在であることを知る。真棹を見初めた将校の鷹籐と部下の志賀に寸でのところで救出された真棹だったが、24人もの村人らが貴神様により惨殺される。

    それから50年後の昭和48年、御荷守の東峰家と縁のある星河瑞希は、東峰勝蔵に呼び戻され、『御台』候補として他の3人の娘と共に『御見立の儀』に参加する。しかし、『御見立の儀』を発端に数え歌になぞらえたような凄惨な連続殺人が巻き起こる。

    さらに50年後の令和5年、秋田県で昭和48年の事件と類似した凄惨な殺人事件が起きる。新人記者の幸弘蒼はこの事件に興味を持ち、取材を進めると昭和48年の事件で殺害された星河瑞希が自分と酷似した相貌であることを知る。

    本体価格1,220円
    ★★★

  • 2025年初の1冊。
    まず表紙が怖い!小さい子供なら泣きそうなくらい迫力あり。
    因習村と言うワードだけでもうそそられる。
    ハヤカワからホラーテイストの小説なんて珍しいなと思っていたら
    終盤ではしっかりとSFしてた。

    ホラー、ミステリ、SFと色々な要素がてんこ盛りでわたしは大満足。

  • 伝奇ホラーミステリ、まさにそのとおり。
    大正時代の50年ごとの秘祭から始まり、それぞれの時代での『鬼』の存在が少しずつ変化しながら伝わっていきます。

    大正では鬼そのもの。
    昭和ではミステリ仕立てで謎に迫る。
    令和にはまさかの展開。

    それぞれ個別でも楽しめます。
    ページ数に慄いてましたが続きが気になって読了。
    鬼の手のひらに踊らされていた四家(+御荷守家)でした。
    未来を変える干渉をしてたけれどそこら辺が少しだけがモヤモヤ。

  • やれること全部やりました!
    みたいな因習村ホラーミステリー。
    大正、昭和、令和と時を横断する壮大な謎、めちゃくちゃ面白かった。

  • 民俗学かと思いきや横溝正史、京極夏彦かはたまた諸星大二郎か。更に其れを超えてくる畳み掛けるような、重層する物語。惜しむラクは、蒼のキャラがもう少しはっきりしていて欲しかった。しかし何人死んだのか。ちょっと大袈裟な気もする。このエンディングを受け入れられないのは、年のせいか。まだ、ヒ一族みたいなほうが、、。ホラーかと思いきやホラーで無くなってしまい肩透かし。

  • 面白い。
    伝記小説で始まった物語が、横溝正史の犬神家のような展開をし、最後はSFのデストピアにターミネーター風味を見せて終わる。こう書くと、ごちゃごちゃしているように感じるかもしれないが、伝記、横溝、SFの間は50年ずつあくので読んでいて混乱はないと思う。
    けど、SFと知らないで読んだ方が絶対面白かったと思う。
    半村良に伝記小説にSF的要素が混じった名作がいくつもあるが、久しぶりに読み返してみたくなった!

  • 25/03/22読了
    ホラーでありSFでもあるけど、ミステリとして面白いのがうまい。
    姫たちそれぞれに肩入れしたくなるよさがあって、失礼な物言いだけども年上の男性の作とは思えない。

  • ホラー怪奇因習村SFミステリーみたいな感じでしょうか?

    個人的にはやはり第二部の貴神様の嫁取り儀式からの数え唄見立て殺人がたまらなく好き。

  • 秋田県御荷守(おにもり)村では50年に一度、貴神の嫁取りと呼ばれる祭が行われる。四家と呼ばれる村の名家からそれぞれ姫と呼ばれる嫁候補が集められ、そのうちの一人が御台として貴神の嫁に選ばれる。
    大正、昭和、令和の三章を通して貴神もとい鬼の正体と嫁取りの儀の真相に迫る。

    大正パートはいわゆる因習村ホラーだったものが昭和パートでは横溝正史風のミステリーになり、令和ではSFへと展開する。
    ホラーのつもりで読んでいたから急展開に正直混乱する部分もあったけど、昭和のミステリーについてはきちんと論理的に解決したし、読み応えはあった。昭和パートが1番面白かったかな。

  • 50年に一度行われる貴人様の嫁取りという儀式の謎に、大正・昭和・令和の三世代をかけて迫っていくジャンル横断小説。
    伝記ホラーからはじまりいくつかジャンルを変えていくが、軸としてあるのはフェミニズムだと思った。優生思想・性差別・家父長制に命がけで立ち向かう女たち。
    大昔から続き、ようやくこの数年で問題視されるようになってきた、"立場が上の男に媚びたい男たちがおこなう女の献上"、それを容認しているとどうなるか……を闘い続ける数多の女たちと共に描く。
    テストステロン値が高い白人男性だけで社会を運営するべき、とのたまったイーロン・マスクみたいな男が出てくるしそういう連中と闘争する話ですよね。ほかにも権力に忖度するマスコミや現政権への怒りも伺えて、小説に現実の怒りと「しかし弱きとされる者が勝って欲しい」という願いを込め伝記ホラー・ミステリ・SFとして描いた(ジャンル横断させるのがネタっぽさもありエンタメとしてもおもしろい笑)作品かな、と。
    こういう小説だと思ってなかったから色んな意味でいいもの読んだなと思いました✊✨

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