堕天使拷問刑 (ハヤカワ文庫JA)

  • 早川書房 (2025年1月22日発売)
3.96
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Amazon.co.jp ・本 (912ページ) / ISBN・EAN: 9784150315870

作品紹介・あらすじ

中学生のタクマを待ち受けていたのは、魔術崇拝者の祖父の密室死、ある一族の女三人の斬首、「月へ行きたい」と呟く謎の少女……

感想・レビュー・書評

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  • 900ページ超えの本自体のボリュームもさることながら物語の構成要素がものすごく多かった。
    閉鎖的で排他的な村と独自の慣習、次々と起こる怪死・斬首事件、魔術崇拝、土着信仰、食人、異常性欲、青春(少しだけ)と恋愛…

    大体の要素は本筋とあまり関係がなく、ただただ回収されなかっただけなのかブラフなのか、未消化の部分も多かったが、文体がとても読みやすかったのでページ数に反してサクサク読み進める事ができる。
    結局どんな物語だったかと言ったら、壮大な遠回りと脱線を含むボーイ・ミーツ・ガールかなぁ…
    要素が多いだけに読み手によって受け取る印象がかなり違ってくる作品だと思った。

  • 中古価格が4万円の幻のミステリーが文庫化!

    本屋をぷらついていると平積みされていた
    物騒なタイトルの鈍器本を発見。

    面白いのかな~と調べてみると、
    中古でとんでもなく高額で取引されていた
    幻のミステリーが文庫化されたとのこと。

    幻だったミステリー!気になる!
    しかも魔術崇拝に因習村とかワクワクしかない!
    とお迎えいたしました。

    900ページある鈍器本だったが意外と読みやすく、
    中盤からはイッキ読み。

    主人公は中学生の如月タクマ。
    両親を亡くし母方の祖母宅に引き取られる。

    魔術崇拝者の祖父は以前に亡くなっており
    自宅にある離れで無惨な姿で発見されていた。

    そのことで村の不良たちから目を付けられるも、
    物騒なタイトルからは想像しなかった
    友情あり恋愛ありの爽やか青春小説。

    ・・・とはならず、

    タイトルとおり物騒でちょい?グロいシーンもある。

    手に汗を握る展開もあり、
    犯人は人なの!?悪魔なの!?なんなの!?と
    ミステリーで誰が犯人か悩むことはあれど、
    人か人外かで悩んだのは初めての経験だった。

    書店限定の特典付きだったのだが、
    こちらは大学生になった不二男くんの物語で
    7ページしかないのにとんでもない
    インパクトを残す小冊子だった・・・。

    • ハニロビさん
      こんばんは⭐︎

      えー(ll゚Д゚ノ)ノ中古が4万円?!

      とんでも作品ですね!!

      魔術に因習村?!ワクワクしかないですね!笑

      鈍器本…...
      こんばんは⭐︎

      えー(ll゚Д゚ノ)ノ中古が4万円?!

      とんでも作品ですね!!

      魔術に因習村?!ワクワクしかないですね!笑

      鈍器本…読み切れるか分からないですが、めちゃくちゃ気になります!!(*>ω<*)
      2025/03/30
  • 私は何を読まされたのだろうか。

    魔術崇拝者の祖父が密室で怪死した。
    中学生の如月タクマは、祖父は悪魔により惨殺されたという噂を聞く。
    因習に囚われた村で次第に疎外されていくタクマはそんな中、「月へ行きたい」と呟く少女、江留美麗と出会う。


    ミステリー✕オカルト✕ホラー✕青春小説

    ミステリーとするにはトリックは甘く、オカルトと言うには蘊蓄量は少ない。

    ホラーと言うには雰囲気は軽く、青春小説と言うには甘酸っぱい香りは薄い。

    しかし、900頁にわたる物量を読ませきる興奮はそこにあり、妙に納得感のある結末は爽やかですらある。

    魔書と言うと大袈裟かもしれないが、ジャンルレスな怪書であることは間違いないと思うし、なんだかんだで結局面白かったという。

  • 長らく幻のミステリだったらしい。早々に廃版になっていたけれども界隈には熱狂的ファンがいて、知る人ぞ知る作品で、幻になりすぎてなんとAmazonで三万円くらいで流通していたこともあるらしい。そんな幻の本が、このたび文庫で再出版された!!そんないわくを聞いては、読まずにはいられないと、手に取った。

    900ページくらいある。長い。でも読みやすい。読み始めてすぐ、独特な不思議な世界観に引き込まれた。なるほど、廃版になって幻になって、でも三万円だしても手元においておきたいと思う熱狂的ファンを生むのに相応しい世界観と書きっぷり…(私には文庫でちょうどよいけども)

    舞台はものすごく田舎の閉ざされた集落。両親がなくなって、その集落の名家である祖母のもとに引き取られた主人公。中学に転校するが、なにやら不穏。ミステリクラブで友人ができるが、それ以外の生徒からは距離を置かれる。ツキモノイリと呼ばれ…。そして目にするツキモノハギというリンチのような儀式、森で会うヒトマアマという恐ろしい生き物、辺鄙なところにあるガラクタを集めたような私設美術館。失踪する祖母、悪魔の召喚にのめり込んで奇っ怪な死に方をした祖父。立て続けに起こる親族の連続猟奇殺人。村から爪弾きにされている謎の美少女は、魔女なのか天使なのか悪魔なのか…?

    おどろおどろしいアイテムのオンパレード。なのになぜか飄々と物語を進める主人公の一人称語り。最後までユニークな親友。そして文庫の裏のあらすじにあるワード、「ボーイミーツガール」。そう…最後まで読めばわかる…これは、ボーイミーツガールの物語なのだ。

    こんなに話の筋を追うのが楽しい長編作は、めったに会えない。なんの感傷も共感もなく、ただただ、ストーリーテリングを楽しむ極上の作品。すごいものを読んだなぁ。好き嫌いは分かれそう。

  • とんでもないタイトルに惹かれて。
    900ページ超という、その圧倒的ボリュームにビビり散らかしていたけど、終わってみれば体感400ページぐらいだった。
    めちゃくちゃ読みやすくて、面白かった。

    ただ、エログロみたいな描写は少なからずあるので、そういったものが苦手な方には辛いかも?

    ジャンルで言うなら
    『閉鎖的ド田舎で繰り広げられるホラー・ミステリー・ボーイミーツガール』
    といった塩梅の、欲張り小説。

    全体のボリュームとしては鈍器になりそうなぐらいタップリだけど、章立てが細かいので展開にメリハリがあり、本が重い(物理)こと以外に読みにくさは一切感じなかった。

    悪しき風習に疑いを持たず、余所者である主人公を徹底的に排斥せんとする村の人たちに腹が立ってしょうがなかった。

    作中起きる色んな事件それぞれに対して、一応ちゃんと推理が展開されるが、ちょっと都合が良すぎるのがチラホラあったので、星4.5ぐらい。

    京極夏彦が好きな人は、きっとこの作品も合うのでは?(自分は「姑獲鳥の夏」しか読んでないけど…)

    また我が家の小さな本棚を圧迫するサイズの本を買ってしまった。でもこの本は、きっと売ったりしない気がする。

  • あの入手困難名作が遂に文庫化!閉鎖的村社会での主人公と不思議な雰囲気を持った少女との純愛推理小説。
    魔術崇拝、村社会、異形な因習、首切り殺人とまさに悪魔的要素がライトで端正な文章で綴られ飛鳥部小説世界に無理やり引き摺り込まれる!
    竹本健治解説も面白く、文句無しの良作!

  • 後半のスピード感は徹夜確定のおもしろさだった。
    アンコントロールで足元から掬われていく騒然さと、時が止まったような青春のひとコマのコントラストが味わい深かった。

    和洋折衷の因習村。
    恋は気まぐれに搾取し、友情は無償の愛だった。
    人が悪魔を呼び出すのか、人が悪魔なのか。
    様々な視点、視線でどこまでも振りまわされる。

    感想もままならないが、後ろ姿が消える前にもう一度読まなくては、という気持ちだけはわかる。

  • 京極堂シリーズ並の鈍器本。
    非常に不思議な世界観で、本格ミステリの比重が高めの変格ミステリであり、民俗学ミステリであり、SFでありホラーであり青春小説であった。
    正直、両手をあげて大絶賛というわけではないが、この厚さを飽きずに読めたのだから面白かったことは間違いない。ただある種の歪さが心をぞわぞわさせる。
    ★は4だけど気分的には3.5くらい。

  • 辺境の村の因習、祖父の変死とその祖父が召喚しようといていた悪魔とそのための魔法陣…そして村の部外者たる主人公が来てから発生する殺人事件

    閉鎖的な村×オカルト×ミステリというてんこ盛り要素で900ページ超えの長編
    一見すると怪しい雰囲気すら感じるあらすじだが、最後まで読み切ると不思議な甘酸っぱさと少しだけだが爽やかさすら感じられるボーイ・ミーツ・ガール的作品

    ミステリ的観点から言わせてもらうと、ハウダニットが流石に無理矢理だと思わざるを得ないが、この作品は本格ミステリではなく、様々な設定を盛り込みつつそれをミステリに昇華した"変格ミステリ"と踏まえるとその風呂敷の広さに感服した

    とりあえずこの小説に含まれてる全ての要素(閉鎖村、忌まわしき因習、オカルト、ボーイ・ミーツ・ガールetc…)が全て自分に刺さった

    あと、ある人物の手記として書かれたこの小説の構造も好み

  • 読んでてとにかくわくわくする、都合のいい童貞くささにやや辟易もさせられたけれどそれも必然性のあるものだったのだと知ってやられたなあと思った、とはいえそれでも残る気持ちわるさはあるし、諸々の事件の壮大さのわりに真相はなんだかなあと思う部分もあるし、ところどころ主人公のとる言動がわけわからないけれど、とにかくわくわくしたのでいいやと思う

  • 独特な読後感が不思議と悪くない一作。
    閉鎖的な田舎の集落にある独特な風習や価値観を
    気味悪く表現されていて、主人公:如月タクマは
    壁へとぶつかる。味方も少なく、絶望感を漂わせている
    ストーリーには引き込まれました。
    登場するキャラクターは、全員個性的で
    覚えやすく印象的です。
    田舎の限界集落に眉目秀麗な同世代が多くないか?と
    そんな気持ちになりました。ストーリーテーラーの如月タクマが
    他人の醜美に頓着がなく、主観的にほぼ全員にそう思っていただけなのかも知れませんが。

  • 異常な集団、異常な精神、異常な建築物、異常な生物、異常な自然現象、異常なものを見てしまう精神、異常なロマンス。異常尽くしのホラーとミステリのごった煮、唯一無二の作品。

    異常に博識な中学生の口を通して語られるホラー・ミステリへの愛と少年ならではの自己中心的な世界認識を懐かしむように振り返る描き方から感じる哀愁と慕情。

  • もう、タイトルだけで勝ち確定。

    陸の孤島。
    余所者。
    因習。
    横溝正史やら三津田信三やらなキーワードしか出てこないが、全体に流れるポップさ。

    ジャンルでいうならばミステリーなのだろう。
    連続殺人であり、オカルトも絡み、様相は20世紀後半のホラーであり悪魔崇拝的なものになっていく。
    しかし、読者はみんな分かっている、それはあくまで見立てで真犯人は単なる人間だと。
    そしてすべてが明らかになった時に、ついこう思う。
    プロローグの事件はなんだったのだ?!

    900ページの大作を読了して、ミステリーとしては清涼院流水のコズミックを読み終わった時の読後感になるのかと思いきや、
    最後は見事な青春の甘酸っぱさを余韻に残すボーイミーツガールもの。

    良い。

  • 光が死んだ夏の配信を待ちながらホラーを求めていたので読んでみました。
    途中の展開の目星はついてしまったけど、最後まで読んだらすごく面白かった。

    ホラーと銘打たれるとどうしてもこのあたりで脅しにくるな、って考えてしまう。
    このあたりで読者を怖い場所に連れて行かなくちゃいけないんだろうな、って考えてしまう。
    ディスコが名探偵ネタ全部紹介しやがったので、3人目の探偵のパターンか、とかなってしまう。

    悪魔は誘惑するもの、天使は断罪するもの、という理解だからなんとなく、悪魔が通り魔みたいに人を襲うわけないのにと思ってた。
    聖書でも天使に会った人間が驚き怯える描写が多いから天使の方こそ怖いはず。

    ただし!この展開で人間が結局1番怖い、ってならなかったのは素晴らしかった。ホラーにはお化けや不思議が必要。

    シャーリージャクスン的恐怖は、うーん、時代のせいかぴんとこないというか。
    そう思うと澤村伊智って感覚を時代に合わせてアップデートしててすごい。

    夢のない話をしてしまえば、現代日本人は税金がもったいないから病院も警察も使いまくるし、年金が欲しいから姥捨なんてまずしない。
    けちで楽していい思いをしたいのが日本人の特徴だと思うけど、どうして自分たちのことを美徳のかたまりみたいに認識できるのか不思議。

    もちろん最後までわからなかった謎もあったし、会話がゆるかったりして読者への思いやりを感じられたので、この作者の本はまた読んでみたい。
    どんなに舞城に馬鹿にされても私はまだミステリが好きなのだ。

    何も考えずに一日中本読んでたい、という願望が叶えられたのはよかったです。
    Answered prayer. 叶えられた祈り。
    神様はお祈りにanswerするんだな、って面白い感覚だなと思いました。日本語の叶える、という語感と少し違う。

    大人や社会やそんなことより、本当に大切なのは青春なんだぜ、ってスタンスに拍手。

    因習の村という設定自体がミスリーディングで、そちらに気を取られているとヒントを見逃すという。うん、すごく上手。

  •  密室で怪死した魔術崇拝者の祖父、転校先で『ツキモノイリ』という謎の罵倒を浴びせられる主人公・如月タクマ、おぞましい因習『ツキモノハギ』、五年前と現在で起きた斬首事件、物語を引き立てる悪魔と天使の存在、ミステリアスな雰囲気の少女・江留美麗という面白い要素の闇鍋とも言うべき作品で、魅力的な謎と終盤で訪れるカタストロフィが凄まじく、禍々しいプロローグからは想像できないボーイミーツガールがもたらす甘酸っぱい読後感と「すごいものを読んだ!」という達成感が堪らなかった。

  • 知人から強く薦められたので、かなり分厚い本だったが読んでみた。

    因習村の閉塞感や不気味な感じは良かった。長編ではあったが、すーっと読みやすい文体でもあった。

    しかし、プロローグやエピローグでも語られている「月へ行きたい」と語る少女・美麗に関しては正直作中の印象がそこまで強くなく、物語の大事な部分として語られても白けてしまう気がした。

    また、タイトルの「堕天使拷問刑」に関しても、作中の事件を説明する荒唐無稽な仮説でしかなく(真相は別)、肩透かしな感じがした。
    そもそも中学生のタクミや不二男の発言が大人びすぎている。知識量が半端じゃなくとてもすんなり受け入れられない。

    極め付けは、ラストの大蛇が暴れる場面。まずそんな大蛇は存在するのか?いくら閉鎖的で思い込みの強まった村人とはいえ、あんな凄惨なことになるのだろうか?そもそも祖父の死も大蛇の仕業だったなんて…
    ガラスで首をすっぱ抜くというのもうーん、という感じだし、そんなことなら本当に悪魔が事件に絡んでいた、という結末の方が良かったと感じてしまった。

    読めないほどつまらない本ではなかったけど、900ページも読む必要があったのかは疑問…

  • #読了 #飛鳥部勝則 #堕天使拷問刑 #ハヤカワ文庫 #読書好きな人と繋がりたい 

  • 変格ミステリとしてちゃんとしてはいるのだろうが、こんな因襲に囚われた町はないだろうし、こんなに博識で大人びた中学生はいないだろう。それになんといっても、やはり語り口、文体の面で間違いだと思う。タイトル、文庫本としてのボリューム、「魔書ここに屹立す!」という帯の文言によってかき立てられた期待は……あっけなく外れた。ごめんなさい。

  • ラノベかってくらい読み易い。体感400ページ。内容は実質エロゲなので新鮮味はなかった。むしろ凡庸・王道であり安心感がある。諸要素の「ごった煮」だともぜんぜん思わない。本作が好きな人は逆に00年代エロゲをいろいろ漁ったほうがいい。

    私は「純愛」アンチなのでもちろん京香さん派です!


    7000字の感想メモ→
    https://note.com/kksk/n/n3349f1272362

  • 途中、後半からとても面白くなりました。終わり方もよかった

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