- Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150400071
感想・レビュー・書評
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第二次世界大戦中に英国からユリシーズ号がソ連を援助するための船団を護衛する。当然だがドイツ軍はUボートなどで作戦を阻止するのだが、そのユリシーズ号の絶望感が半端ない。北極圏内での戦闘は死と背中合わせの状態で、常に極限状態でいることをクルーに求められる。ドイツ軍の攻撃も容赦ない。次々に撃沈される船、そして次々と死に至るユリシーズ号の男たち。自分が暖かい場所にいても凍えてしまいそうな描写に舌を巻く。軍事作戦を遂行する男たちの勇気や責任感を感じる作品である。
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冒険小説の傑作として名高い。期待を込めて読んだ。
想像を絶する北極海の大時化、敵方ドイツ軍のUボートとコンドル爆撃機の襲来。この世のものとは思えぬ壮絶凄惨な戦いに屈せぬ男たちの物語に、心を熱くする場面がいくつもありました。一番心に響いたのは大男ピーターセンの自らの命と引き換えの献身。
映画の「ポセイドン・アドヴェンチャー」のラストのシーンを彷彿とさせました。もっとも「ユリシーズ」の方が発表は早いので、ポセイドンの方が真似っこしたのかもしれませんが。
一つだけ残念なのは、戦艦や航海、戦闘の専門用語がわからないので、船やその場面の状況が掴みにくい。本の冒頭に艦内配置図はあるのだが、少し詳しい註をつけてくれると良かったと思う。 -
熱かった…
正直読みにくいし少しでも流し読みするとすぐ話が分からなくなるので集中力はいるけど、ぐんぐん引き込まれた。
主人公がいないので、客観的目線から描かれているせいか、人間ドラマが押し付けがましくなく冷静なタッチで描かれてるけれど、それがよりこたえる。
敵、波、寒さ、あらゆるものが襲いかかる世界。とても怖かった。 -
第二次大戦の英独海戦。表紙見ただけでどんな話かわかるってもんだけど、読み終わってぐったり疲れた。もし私がユリシーズ号に乗ってたら最初に死ぬ。
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母大推薦の海洋冒険小説。
不屈の男達の闘い。 -
読み始めは、なれない艦の種類や役目。当時の階級制度。ユリシーズ号の艦内配置図を見て、乗組員、総勢725名もいる仕事場に驚いたり、日付ごとの航路図を眺めたりしながら、海戦の描写にも、自分の無知で読むのにどんなに手間隙がかかるか、我ながらこれは大変だと思った。
それでもつっかかりながら、ユリシーズとともに錨地を離れ北極海に乗り出した。
何度も航海を成功させた無傷の伝説の船が、何とドイツの戦艦をおびき出す囮だった、艦長はそれを伝えるが、もう疲れ果てた乗組員は、休む間もない朝の全員配置の呼集ラッパに叛乱を起こしかねないほど苛立っていた。
戦術家ティンドル司令官。ユリシーズの魂のようなヴァレリー艦長。ブルックス軍医と副軍医のニコルス。乗組員の名前や、配置図や航路が分かったころには、ソ連向け船団と護衛官総数32隻はソ連のムルマンスクに向かっていた。
北極海の異常気象に襲われ、ER77という船団は苦難の連続であった。
ユリシーズは4個のスクリューで39ノットを越すスピードと、360度回転する最新型レーダーアンテナを装備、爆雷、魚雷の必殺戦闘火薬を積み、特殊迷彩で濃い霧の中から救世主のように現れ、長い甲板に積んだ砲台が火を噴くと、護衛船団はそれだけで常に伝説を作った。
商船団、ER77の32隻はドイツのUボートの攻撃で次第に数を減らし、応戦した補助空母も戦闘不能で帰路に着いた、駆逐艦、巡洋艦も魚雷を受けて沈没、ついに13隻から生き残ったのは7隻だった。油送船を中に商船、左右にユリシーズとサイラスを配置、背水の陣を敷く。
あと少しでソ連の援軍が来る、しかし最新のレーダーを搭載した爆撃機に対して、ユリシーズは誤爆した自己の魚雷で艦尾は水に沈み、マストが折れる。もう砲弾も残ってなく、砲手も被爆した。
沈没船から救助した後組員で 船室を満タンにしたサイラスを見ながら、ユリシーズは高く戦旗を上げて敵艦めがけて高速で突っ込んでいく。
戦いの模様は、敵はドイツ軍だけでなく、雪も嵐も身を切る凶器になる、5分で凍りつく気温と艦の頭上をで砕ける波頭の先の泡が氷片になって降ってくる。甲板は波を被るたびに凍って厚みを増し滑る。激戦と極寒の気温との戦いは酸鼻を極わめ、乗組員が撃たれ、または凍って死んでいく。
これは「熱い男たちの物語」、ヴァレリー艦長の死で甦る乗組員魂が、最後まで読ませる。それぞれのエピソードにも泣ける。そして登場人物たちの勇敢だったり悲惨だったりする最後の姿を読むと、さすがに長い年月、読み継がれてきたことに感動する。
そして本を置いて我に返ると、やはり歴史の流れは、ユリシーズも例外ではないと感じる。既にミサイルの時代、進歩したレーダー、コンピュータによる人工衛星などの高性能の探知力は、あの頃のように目視で砲弾を発射する時代ではない。
アニメやSFで見る戦闘場面や、海戦であってももう宇宙規模である。
第二次世界大戦、最後の戦艦ユリシーズが戦闘旗を掲げて十数名の乗組員を載せて疾駆する、命がけの姿に胸が躍るが、我に返るとそれは、そうしなければならなかった戦争のドラマの追想という思いも少し混じる。
そして、戦争の悲惨さ人命の軽さを改めて感じる -
大昔一度ハ-ドカバ-を読んだことがあった。今回再読。ほとんど忘れていたから良かった。ユリシ-ズ号とソ連向け船団の滅びていく美学。もうメチャクチャやられるお話し。酷寒の海を感じるには、酷寒の季節に読むのが適している。それにしても、この後のソ連との冷戦を考えると、ここまでしてソ連向けに補給して犬死みたいに思えるが、ナチスドイツの敵は味方の考えだったのでしょうね。イギリスにとって皮肉なものですね。平家物語とは全く趣を異にするが、滅びの美学を書きたかったのでしょうか、マクリ-ンは。?彼の作家人生の第一作目です。記念すべき本であります。
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久しぶりに直球でぐんぐん迫ってくる話だった。どうしてもこの話を語りたい!という作者の熱気に圧倒される。膨大な登場人物や繰り出される専門用語に、初めは付いていけるか不安になったけど、戦いが始まった頃から俄然のめりこんだ。ほぼ死ぬことが確実な戦艦に乗り込んで、それでも艦長の為、友の為にに戦い黙々と海に散っていく乗組員の姿に涙せずにはいられない。彼らが国の為家族の為ですらなく、ただ敬愛する艦長の為に戦うという所がまさにこの本の真骨頂だと思う。
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第二次世界大戦中、極北の海で輸送船団を護衛する任に当たった英国巡洋艦ユリシーズ号の、壮絶で痛ましく、過酷で無謀で熾烈で無慈悲…といった言葉が読後脳内に逆巻く作品でした。
もちろん読んでいる最中にもそれらの言葉はよぎるのですが、読みすすめるほどに夢中になってのめりこみ、その時々では感想なんて生易しいものには思い至らなかったのです。
軍事関係の専門用語はふんだんですが、少々分からなくても、そんなものは蹴散らし進んで構わないかと思います。
もちろん分かるに越したことはないのでしょうが、充分、もしかしたら今は絶滅に瀕している男侠というものを堪能できるかと思います。
読了後、とにかく独りになって、ユリシーズの面々に思いを馳せるひとときが必要かと。