寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150401740

感想・レビュー・書評

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  • ジョン・ル・カレを読まずして旅立つことはできないのだよ諸君

    ただ、ひとつだけ告白しておこう
    ずっとジョン・カレ・ルだと思っていたよ
    バーモントか!

    はい、スパイ小説の教科書と言っても過言ではない『寒い国から帰ってきたスパイ』です
    1961年刊行でイギリスとアメリカの最優秀ミステリー賞を同時受賞した傑作であります

    いやー、こっち側もいいですなぁ
    巻末の解説にもありますがいわゆるスパイ小説というのは「超人的な能力の持ち主である主人公が、《手に汗握る危機一髪》的な事件で活躍する《神話》であった」のに対して本作は圧倒的なリアリズムを持ってスパイの世界を描いているんですな

    そしてもちろん、それだけでは英米同時受賞なんてことにはならないわけで、とんでもないどんでん返しとスパイの世界を象徴するような結末が待っているわけです

    いやー、ジョン・カレー・ルー(開き直った)おもろいわ!
    スパイ小説、どっち側もおもろいわー!

    • ひまわりめろんさん
      まぁ大人の男は中辛ですよ
      これがハードボイルドですよ
      まぁ大人の男は中辛ですよ
      これがハードボイルドですよ
      2023/07/14
    • 1Q84O1さん
      大人の中の大人の男、ハードボイルドの上を目指して辛口で攻めますよ( ̄ー ̄)ニヤリ


      けど、辛いの嫌いなんだよなぁ…
      大人の中の大人の男、ハードボイルドの上を目指して辛口で攻めますよ( ̄ー ̄)ニヤリ


      けど、辛いの嫌いなんだよなぁ…
      2023/07/14
    • ひまわりめろんさん
      わいも辛いのダメ
      ほんとは嫁や娘は辛口がいいんだけどお父さんが辛いのダメだから妥協して中辛が真相
      ごめんなさい、ちょっと見栄はっちゃいました
      わいも辛いのダメ
      ほんとは嫁や娘は辛口がいいんだけどお父さんが辛いのダメだから妥協して中辛が真相
      ごめんなさい、ちょっと見栄はっちゃいました
      2023/07/15
  • 誰が真実を語り、誰が嘘をついているのか、信じる根拠も曖昧な諜報の暗く陰惨な世界。ベルリンの壁建設後の60年代初め、英国情報部員アレック・リーマスは、ある任務を託されるが、その任務自体に幾重もの巧詐があり、真の目的を完遂する為に利用され、騙され、操られ、偽情報を渡される。全て目的は手段を正当化するという原則に基づいた情報部のシナリオ通りだったと気付いた時は…
    複雑な伏線が至る所に張られ、読了後に確認して合点させられる。

  • スパイものの古典かつ金字塔と言われる作品らしい。その手の『分野で一番』と言われる作品は読めるうちに読んでおきたい、と思って読んでみた。

    ラスト30頁で見事に世界が反転する様は、ミステリーファンなら嬉しい騙され方でしょう。
    ラストは切ないけど。

    守りたいものを守るために、敢えて嵌めに行って失敗させる、という大変逆説的な作戦で、人間の心理として、こんな作戦がとれるものだろうか、と言う気もしたが、少なくとも撹乱戦法としては機能するような。

  • 池上彰さんがお薦めされている、しかも珍しくフィクション(勝手な印象ですが、よくノンフィクションをとり上げられているイメージなので)というところに興味をひかれ、はじめてのスパイ小説に挑戦。

    主人公は、冷戦下の東ドイツで諜報活動を行っていた初老のイギリス人スパイ・アレック。
    宿敵ムントとの戦いに敗れ、全てを失い帰国するものの、復讐のために再び戦いに身を投じる……という筋書き。
    要するに、すべての設定が渋めです。
    もちろん私の普段のごく平凡な暮らしぶりと何ら共通する要素はないのですが、それでも引っ張られるように最後まで読みました。
    とにかく、物語の緊張感がすごい。

    冒頭に、「喋らないことも嘘の一種」という一節が出てくるけれど、この言葉どおりの、喋らない、語らないことによる嘘の応酬が、本書の全体を通じて繰り返されています。
    それが特によく表れているのが、登場人物同士1対1で展開される尋問や法廷闘争の場面。
    個々のエピソードが、緻密に組み合わされて、大きな筋書きを描き出す様子は読んでいて圧巻で。

    そして、本書の凄さは、ああ面白かっただけでは終わらない読後感だと思います。
    筋書きが巧みであればあるほど、もっともらしいイデオロギーを掲げたって戦争は結局は暴力のぶつかり合いで、誰しもその中ではなすすべがない、あまりに小さな存在であることが胸につきささります。

    期せずして終戦記念日近くに読んだ本書。
    恐らくは非常に高いクオリティでつくらているNHKスペシャルなどの戦争特集番組も怖くてみられない、気が小さすぎる私だけど。
    どんな理由があっても戦争が、暴力が正当化されることなんてありえないのだと、強く感じる1冊でした。

  • 【しょうらいのゆめ】
       〇〇7くみ  やまどり ぶんこ

    ぼくわ おとなになったら スパイに なりたいです。
    スパイになって てきをだまして やっつけたいです。
    どうしてかというと 气もちが いいです。

    でも もっとなりたいのは 二じゅうスパイです。
    二じゅうスパイは うそをついて みかたをだましています。かっこいいです。からです。

    でも ほんとおに 一ばんなりたいのは、てきも みかたも 知らない ひみつの 二じゅうスパイです。このひとは てきも みかたも やっつけることができます。このひとは 一ばんつおいスパイだとぼくわ思う。

  • 冷戦下、イギリスと東ドイツのスパイ小説。
    騙しているのか騙されているのか、確かだと思えるものが何もない。焦燥感を煽るような文章ではないけど、不安で周りを窺いたくなっちゃうような落ち着かなさで、どっしり構えていることが出来ない。
    小説を読んでいるだけでそうなのだから、実際に当時の情報部員は気が狂いそうにもなったんじゃないかと思う。
    全容が見えたときは愕然とした。命懸けの作戦の、根底にある思想が恐ろしい。

  • この暑い最中に読み終えることになったけど、どこか晩秋の湿り気のようなものを感じる本。

    ざっくり言うと……、
    ・季節感のあるスパイ小説だということが、他の作品とは一線を画している。
    ・どんどんダメになってきた主人公の状況、これこそが冬枯れであり、体にしみるような肌寒さが読後感として残った。
    ・残虐な場面も出てくるが、「サーカス」とか「スマイリー」とか、時々出てくるカタカナの響きが可愛い♡
    ………………………………………………………………………………

    落ちぶれて(……かな?)図書館勤めに身をやつし職場恋愛なんかもして、静かな暮らしを送っていた諜報員リーマスが、再び陰謀の網の中へ。拷問なんかも出てくるので、とても穏やかな気持ちでは読めるものではないですね……。

    冷酷無慈悲で卑怯なラスボス・ムント氏は、不都合な相手の息の根を止めていく、全部読んでも得体の知れない恐ろしい化け物のままです。
    また、そういうムントを憎み、罠にかけようとしたはずが逆に苦しめられる(のかな)リーマス自身も、どこか卑怯さの感じられる男でした。
    そんな中で、行きずりのつもりで(多分…。)関係を持った女司書が××党員だったことが、リーマスの運命を左右することに――。男の戦いを描いた殺伐とした作品でありながらも、意外にロマンスの横糸も強めに絡んできます。

    って内容ですよね……?
    実は、以前一度読んでいるのですが意味が分からなかった。今回も、やっぱり分からないことが多かったです★
    一体、彼らはなぜ戦っているのだろう? 怪物たちは二重、三重スパイとなって、闇のなかを渡り歩いているってことかな。なかなか理解しがたい生態です……。

    はい、話なんかもう分からない。もういいや。でも、闇の中を二人の男女が逃げていて、サーチライトに照らし出された道が罠だと分かっていてもそこを走るしかなくて、その細い光の中を乾いた風が吹き、枯葉が飛ぶような光景を、ちらっと見た気がするのですよ。

    あらすじより、こういう印象が刻まれるかどうかが、読書ではとても大事だと思っています★ 読後、時間が経てば彼らの抗争についてのいろいろは、私は忘れてしまう。
    「二人は逃げていた。冥路だろうと、希望を持ったまま走っていた」それがすべてになるのです。

    あとは、秘密情報部を「サーカス」と呼んだり、大物が「スマイリー」という可愛い名前だったりと、原語だと全然笑いどころではないのに、日本人的な感覚で聞くとふとほほ笑み漏れちゃう言葉がちりばめられているのでした。「スマイリー」さんは、ル・カレの作品にたびたび出てくる人物だという。チャーミングなお名前……☆

  • ティンカー、テイラー…がものすごく面白かったので、(スマイリー三部作の一つと勘違いして)読み始めました。
    確かに色々古いんだけれど、そんなこと関係なく面白い!!素晴らしいストーリーテリングや描写力。特に人物描写がすごい。どんな登場人物にも存在感がある。
    著者が訴えたかったことは、今も全く改善されていないと残念ながら思うだけに、今の戦争を舞台とした著者の小説も読んでみたいと思った。
    スマイリー、ギラムはほんの少し出てきます。
    あと、後味は悪いです。

  • ハデな銃撃戦とかじゃなく、リアリティのあるジメジメした感じの諜報活動がスパイ小説としては新鮮なんじゃないか。
    何回ひっくり返すんだってぐらいどんでん返しがあって、淡々と進むストーリーながら退屈しなかった。ただ突っ込むなら寒い国から帰ってねぇだろと。

  • 〝薄汚れた壁で東西に引き裂かれたベルリン。リーマスは再びこの街を訪れた。任務失敗のため英国諜報部を追われた彼は、東側に多額の報酬を保証され、情報提供を承諾したのだ。だがすべては東ドイツ諜報部副長官ムントの失脚を計る英国の策謀だった。執拗な尋問の中で、リーマスはムントを裏切者に仕立て上げていく。行手に潜 む陥穽をその時は知るよしもなかった……。英米の最優秀ミステリ賞を独占したスパイ小説の金字塔。〟

    宿敵ムントにより東ドイツのスパイ網を壊滅させられたリーマスは、情報部をクビになり図書館の臨時雇いとなる。そこで知り合ったイギリス共産党員の女性リズと恋仲になったリーマスは、リズの仲介で東側のスパイとなり、東独へと渡る。実は全てがリーマスとスマイリーとが計画した作戦だった。

    単純にムントへの復讐を遂げることを目的としたリーマスも利用されていた。実はムントは英国の二重スパイで、ライバルのフィードラーを失脚させることが英国情報部の真の狙いだった。

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