ベルリンの葬送 (ハヤカワ文庫 NV 184)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150401849

感想・レビュー・書評

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  • スパイ小説の巨匠としてル・カレと並び称されるデイトンだが、いささか日本での人気に差があるのは、作風の違いというよりも、屈折した構成の物語に拒否反応を示す読者が多いからだろう。
    読み終えてみれば、本筋は粗方理解できるのだが、それもぼんやりと浮かびあがってくる類いのもので、諜報戦の只中に放り出されて路に迷うこともしばしば。早いテンポで章が変わる都度、主人公の名無しのスパイは、場所を移し、違う相手に軽口を叩き、不確かな真相に迫りつつも小出しにし、またも前後の説明を一切省いて、次から次へと渡り歩く。読者はとにかくついていくしかないのだが、それでも面白く読ませてしまうのは、皮肉屋ながらも己のビジネスをきちんやり遂げていく、雇われスパイのハードボイルドタッチのスタイルに心引かれてしまうからだろう。
    全てが曖昧模糊とした世界にこそ、スパイは生息し、そこには始まりも終わりもない…とデイトンが告げているかのようだ。

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