スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (575ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150404390

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  • スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折しかねない。タイトル通り、物語はスマイリーに主軸を置いている。かつての仲間が犠牲となっていく非情な諜報戦のただ中で、老体に鞭打ちながら真相を求めて歩む孤独な後ろ姿は、影の存在でありつつも、自国他国問わず真っ先に国家の使い捨ての駒となるスパイの悲哀を物語っている。
    冷たい怒りを抑えつつも、或る瞬間には滲み出てしまう吐露に、終わりなき闘いの不毛ぶりが表れている。実体がほとんど明らかにされていなかった〝カーラ〟が、ようやく姿を現す終盤のシーンは、本作のみならず三部作全体を通してのクライマックスであろう。「勝つ」ためには、自らも薄汚い手段を取らざるを得なかったスマイリーに去来する思いは、苦く空しい。

  • 決着がついた、ということに驚いた。「スクールボーイ閣下」の終わり方を思えばむべなるかな、とも思うが、終わりのない──既にグレートではないにしろ──ゲームなのだと思っていた。
    第一部の敗北は最後までスマイリーを打ちのめしており、読者もその苦い響きを忘れることができない。それでも、カーラの敗北はスマイリーの敗北であり、だから来るな!撃て!と思わずにはいられない。
    全編を通して、最早世界の主役ではない英国、という感覚が見えるところがあり、その傲慢な自意識も面白かった。
    シリーズが進むほど読みやすくなる作品。

  • 老いの風景が描かれている。
    私が一番に感じたのはそれだった。
    聡明な”酒飲みおばあさん”の描写はせつない。
    一対の裏表と評された彼らの国家を背負った戦いも一区切り。
    まぁ、国家間の戦いが消滅したわけではなくて、個人の争いがってことで。

  • スマイリー三部作のラストで、宿敵カーラとついに決着が。
    ティンカー・テイラー〜と比べると全然読みやすいのは翻訳者が違うせいですか?
    人物をまずザーっと出して、読者を混乱させてから最後にババババっと纏めていくのがル・カレの作風なのかな。
    あくまで鈍くさく、でも実は頭良さそうなスマイリーが、じわじわと網を張る様がリアリティな面白さですね。
    ちなみに私は何故かピーター・ギラムが好きです。

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