スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

制作 : 村上 博基 
  • 早川書房
4.07
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本棚登録 : 194
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (575ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150404390

感想・レビュー・書評

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  • スマイリー三部作完結。
    これが一番文章が読みやすかった気がする。
    スマイリーがひとりで動く場面が多く、視点が安定してたのも読みやすかった要因かもしれないけど。

    ちゃんとカーラとの決着はついたものの、手放しで喜べるような終わり方ではく、哀愁が漂う終わり方なのが作者らしくて良い。

    ティンカー〜…から結構かかったけどやっと読み終わった。
    達成感というか…なんというかこみあげてくるものがある。

  • スパイの世界とは何の関係も無い、平凡な人間の視点から始まる語り口はいつものことながら、ある殺人事件をきっかけとして謎を追っていく展開は、文字通り「スパイ・ミステリー」というジャンルらしいお話でした。

    色々な人物の視点がころころ入れ替わる過去作に比べ、今作では大部分がスマイリー視点で進みます。かつてサーカスの長として自分の「仲間たち」に任せていた情報収集の役割を、今度は自分一人でこなし、老体に鞭打って進み続けます。人に会い、話し、嘘と事実を注意深く選り分ける。

    特に17章は読んでいて興奮が止まりませんでした。
    遠路はるばるハンブルクまでやって来たスマイリー。ようやく鍵を握る人物の居場所を見つけたと思ったが、しかしカーラの方が一足先だったことを知ります。ここで手がかりは無くなったかに見えたその時、黄色のチョークの伏線が効いてきます。
    「いったいあと何人の死者の遺産をうけつがねばならないのかと思った。」
    追う者は追われる者に変わります。警察の目をごまかすため、レンタカーを隠し、乗るつもりの無い飛行機の席を予約し、服を買って着替え、自分の別人格を生贄にして、本当の目的地に向かいます。
    この用心の深さに、いちスパイとしてのジョージ・スマイリーの知識と経験の豊かさを改めて感じ取ります。この一章の中に、スパイ小説に私達が期待するスリルが詰まっています。

    ところで、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』で終盤で強調されていたのは「アンチクライマックス」の予感でした。結末に向けて物語がどんどん盛り上がるのではなく、どんどん盛り下がっていく。
    単純に組織の裏切り者を捕まえてめでたしめでたし、となるのではないことを、あえて何度も念押しすることの意味は、物語の主眼はそこには無いからです。だから、スマイリーは部屋に入って直接目で見る前から、声で裏切り者の正体を先に知ってしまいます。
    ミステリーものの定石のように、誰かを悪者として捕まえれば全て解決するような分かりやすさは、現実の世界にはない。結局その裏切り者も、社会や体制が、あるいは冷戦という構造が生み出したものの一つに過ぎない。だから、物語の目的が裏切り者を見つけることであっても、本当に伝えたいことはそこにはない。少なくとも『ティンカー、テイラー…』ではそう感じました。

    それでも、この『スマイリーと仲間たち』の終盤には、純粋なエンタメとしてのクライマックスを予感せざるを得ませんでした。「彼」は来るのか、来ないのか。殺されるのか、生きのびるのか。ハラハラドキドキとその決定的瞬間を待ち、そしてついにそれは訪れる。

    個人的にはとても納得のいく、ある意味ほっとする結末でした。どんな人間にも弱みはあること、諜報戦とはまさにそれをえげつないほどに利用し合う戦いであること、それでもなお今回だけは、冷戦という戦いに勝つためではなく、資本主義の優位性を示すためでもなく、ただ大切な人を守るためであったこと。
    ベルリンの壁という舞台は、『寒い国から帰ってきたスパイ』の忘れえぬラストと同じ場所ですが、こうも違った結末が待っているとは思いませんでした。

    「スマイリー」シリーズの新作が25年ぶりに出るという話も聞きましたが、とりあえずそれまでに全作読めて良かった……と思ったらまだ読んでいなかったのが『死者にかかってきた電話』でした。読まねば……

  • スマイリー三部作完結編で、旧ソ連の宿敵〝カーラ〟との最終的決着までを描く。重厚な筆致は更に磨きが掛けられており、ル・カレ独自の世界がゆっくりと始動する。前作の漠然とした分かりにくさは消え、より引き締まった構成ではあるが、集中力を欠くと挫折しかねない。タイトル通り、物語はスマイリーに主軸を置いている。かつての仲間が犠牲となっていく非情な諜報戦のただ中で、老体に鞭打ちながら真相を求めて歩む孤独な後ろ姿は、影の存在でありつつも、自国他国問わず真っ先に国家の使い捨ての駒となるスパイの悲哀を物語っている。
    冷たい怒りを抑えつつも、或る瞬間には滲み出てしまう吐露に、終わりなき闘いの不毛ぶりが表れている。実体がほとんど明らかにされていなかった〝カーラ〟が、ようやく姿を現す終盤のシーンは、本作のみならず三部作全体を通してのクライマックスであろう。「勝つ」ためには、自らも薄汚い手段を取らざるを得なかったスマイリーに去来する思いは、苦く空しい。

  • スマイリー3部作で一番好きだった。コニー!コニー!

  • 取り返しの付かないもの。他人。自分。人生。

  • 三部作の最終作。ストーリーには入りやすく、後半の静かなスリルは圧巻です。ふう。

  •  20数年ぶりの再読! ある意味“苦行”と言われたスマイリー三部作のフィナーレにして、スマイリーシリーズの最高傑作!
     とにかく、メリハリ、サプライズ、そしてカタルシスがないのに、物語を読み進める内にじわじわと滋味が溢れてくる。それは淡々ではなく粛々という印象。
     読書の魅力は、年を経て再読するとそれまでの印象がガラッと変わるところ。だが、この作品は意外なほど変わらない印象。それは、私が未熟なだけか……。
     
     カタルシスはないと書いたが、ラストの雪のベルリンのシーンは、過去に読んだ全てのスパイ小説の中で最も美しく胸を打つ場面だった。暫く目を閉じずにはいられなかった。

  • スマイリー三部作の終わり!
    やっと大物カーラの秘密を見つけて直接対決。
    今回ばかりはスマイリーが重い腰を上げて動き回ります。
    読んでるこっちは「やっとカーラをギャフンと言わせるぞ!」と思っても、そうはいかないのがこのシリーズの素敵なところ。
    はっきり勝敗がついたはずなのに、ラストは何とも言えない。
    スマイリーは自分の人生を狂わせた男を捕まえたけど、それは幸せに結びつかない。
    カーラの描写も良かった。
    くたびれた普通の中年男なんだよね。得体の知れない、恐ろしいほど策略家なロシアの超大物が。

  • (欲しい!/文庫)

  • 久々の再読。三部作の中では圧倒的に読みやすい。スマイリーが、殺された元エージェントの謎を辿っていく過程はスリル満点。真相が見えてきて宿敵を倒すために動き出すが、何故か周囲ほど乗り気になれないスマイリーの気持ちはよく分かる。前作、前々作で確約したコニーやギラム他の登場も嬉しい。スマイリー三部作の終わりかたとしては大満足だ。

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